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地域主権確立への税財政改改革

           奈良女子大学名誉教授 澤井勝(初出:自治日報09年11月13日号)

  来年度の予算編成が、前政権の概算要求を白紙にし、行政刷新会議の「事業仕分け」を念頭に進んでいる。1015日、各省の95兆円強の新概算要求と同時に、総務省は来年度地方財政収支について、10月段階の仮試算を次のように示した。

来年度の地方財政規模の見通しは829千億円。これは09年度当初ベースより4千億円ほど多く、8月仮試算より1千億円増の水準である。地方財源不足は前年度の105千億円弱より2.9兆円増えて、134千億円程度となった。うち国と地方が折半する対象となる不足額は86千億円。交付税は11千億円の増額を交付税率の引き上げで行うとするが、これは「事項要求」となっている。

三位一体改革で44千億円(2007年度)まで急激に圧縮された地方財源不足は、2003年度の水準まで戻った。このほうが、現実に近い。地方財政計画上の地方の経常的事業と、実際に地方が支出している決算の乖離は、少なくもこの程度あると見込まれるからである。

ここで我々が注目し、期待するのは、このような来年度地方財源不足とその補填施策を検討する中で、地域主権確立のための税制、および地方交付税制度をどのような柱に沿って構築するか、という問題への適切な応答がされることである。

第一の柱は、基礎的自治体重視という柱でなければなるまい。そのためには、市町村と府県の地方税制の基本的姿を、年度ごとの改正を含めて明確にする必要がある。一つは、市町村税として地方所得税を確立し、国税所得税の地方住民税への一層の移譲を行うこと。その一環として、都道府県への地方消費税の強化とともに、県民税の個人所得割は市町村税に統合することなどが検討されるべきである。その際に、地方税の所得再分配機能を回復させるために、累進課税の復元があってしかるべきである。なお、大都市部での地方法人課税の維持も意識しておく必要がある。つまり、将来の消費税税率の引き上げと、所得税の総合課税化という税源拡充と所得再分配機能の再構築とを、地方税の充実にリンクさせておきたい。なお地方税の税率のフラット化は、これからますます重装備化する基礎的自治体、特に都市自治体にはそぐわないことも共通の認識としたい。

第二の柱は、ガソリン税等の暫定税率廃止に伴う地方財源の補填措置で、暫定税率の廃止分に相当する化石燃料課税分は、地方環境税として創出することが求められる。全国市長会などからも要望が出ているようだが、2020年までに温室効果ガス排出量を25%カットするという国際的な問題提起から考えても、国と地方が一体となって環境対策を進めるべきで、その柱としての地方環境税導入は不可避である。なお使途は社会保障経費でよい。

第三の柱は、地方交付税を財源の乏しい市町村に傾斜的に配分する仕組みを再構築することでなければならない。縮小された段階補正を大胆に復活、拡充することも選択肢の一つである。水源地や荒廃した森林を生物多様性に満ちた生産と生活の場として再生するために、中山間地や過疎地で「限界集落」を維持し、再生することは不可欠であって、そこに大都市などから移住する働き手を直接に支援する財源として地方交付税を活用したい。それは島根県などが単独事業として行っている移住者に対する生活費や職業訓練費用の直接支給に相当するものである。過疎対策法も来年3月までには、新法に改めなければならないが、その際、従来のように過疎債に依存したハコモノ中心の投資ではなく、定住支援と村の共同社会再生支援のための直接支援が求められる。

4の柱としては、都市部において非正規雇用で働く労働者の就労支援や、生活再建の新しい費用をカバーするような需要額が飛躍的に拡大されなければならない。経済のグローバリゼイションの下で、今後とも雇用者の大きな部分を占めつづける不安定雇用層の労働条件と生活条件を改善する責務が自治体にはある。そのために医療保険や年金保険、雇用保険加入を進める中小零細企業を側面から支援し、それに必要な補助制度をかなり大規模かつ安定的につくることが都市自治体には求められるからである。

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