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財政規模7割時代の分散型・分権型都市

(初出:自治日報02年11月10日号「コラム自治」)
奈良女子大学 澤井 勝

 この10月24日、京都市の桝本市長は来年度予算が4年連続で縮小することを明らかにした。02年度は前年度比5.5%減だったが、来年度はそれを上回る減少割合とする方針。主因は、市税の減少と交付税のマイナス見込みである。この傾向は、全ての自治体にいえることだ。時事通信社のまとめによると昨年度、01年度の都道府県の決算は、歳入総額が53兆9千6百億円で0.8%のマイナス、歳出規模は0.9%のマイナスの52兆9千億円。これで決算規模は3年連続で縮小したことになる。一方で公債費負担比率は、30道県で20%を超えている。

 個々の自治体の財政規模は、大きな事業が入ったときと、そういった条件がなくなったときとでは、1割から2割の規模で変動することはよくあることだ。しかし、この間の予算規模の縮小は、デフレ経済が、税収の落ち込みを通して財政規模の縮小に結果してきていることを示している。

 これから先の見通しはいくつかの点でよりシビアである。来年度の総務省の概算要求(8月29日)では、地方交付税は18兆6千億円と3年連続減で、今年度より4.8%マイナス(01年度は4.0%減)である。これで地方交付税は00年度の21兆4千億円から2兆8千億円、13%のマイナスとなる(いずれも交付税特会の出口ベース)。これはもちろん、仮置きではあるが、今回はこれを維持できるかどうか、年度途中の経済状況が気にかかるところである。悲観的に見ざるをえない状況はいくつかある。

 第一に、デフレ経済がなお進む可能性がある。9月の全国のス―パー売上高は、対前年比1.3%減で3ヶ月連続のマイナスである。10月の消費者物価指数は、東京都区部で0.8%下落し、これで37ヶ月連続の対前年割れ。家電価格や家賃の下落が、医療費の自己負担増(医療費の値上がり)を上回ったための下落である。

 この基礎は、全体としての有効需要(貨幣支出を伴う需要)の縮小という局面がなお続いていることを示している。雇用不安や金融不安に対する生活防衛のための支出抑制という傾向は、なお深まっている可能性が高い。

 これに、小泉改造内閣が、「不良債権の処理」を04年度までに完了する「ハードランディング」政策の採用が明確になったことが作用している。既に銀行株や建設株を中心とした株価が下落し、さらに銀行の不良債権を拡大していると推測できる。不良債権処理で倒産する企業からの失業者はさらに150万人ともいわれる。この過程は、順調に進行しても来年度以降の3年から4年は続く。つまりその間日本経済は収縮する傾向が続く。

 そして10年から15年程度のスパンで見れば、今年度末で700兆円の政府債務を増加させない、すなわちプライマリーバランスを実現するためにも、財政規模のさらなる圧縮は避けられない。少なくも、02年度で10兆円という規模の地方財源不足を、借金によらないで解消しないと、将来世代の利払いの負担はますます重くなり、新しい需要に対応すべき財源が決定的に不足することになりかねない。地方税と地方交付税の総額確保によってそれが出来ればよい。同時にそれが出来ない場合のことも考えなければならない。

 将来世代に対する責任を果たすという意味からだけでも、財政規模が20世紀のピーク時に比較して3割以上縮小することを前提として政策選択をしたい。当面、普通建設事業費の削減が先行する。00年度の普通建設事業は既に95年度のピーク時に比して77%に縮小している。しかし、既に始まっているが、この流れは人件費の再構成に及ばざるを得ない。特に、土木部系統の職員は、福祉保健部など、新しい公共サービスの担い手、コーディネーターに配置転換することが求められる。そのための現場研修と職業教育が急がれる。これは民間において、建設業の福祉産業、環境産業への転換が求められ、それに成功した企業のみが生き残れる、そういった状況と同じだ。一定のタイムラグを伴いながら同じことが生じることを見通して、行政機構の改革が求められているのである。そして、市民と行政、事業者のパートナーシップの確立を通じた、「新しい公共サービス」の構築と「分散型・分権型自治都市」こそが、サステイナブルな都市の未来を切り開くことになる。

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