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2003年度地方財政対策の特徴と問題点
三位一体改革の行方と交付税、デフレ経済下の財政構造改革

(初出:『自治総研』03年02月号)


はじめに/ 2003年度地方財政対策/ 最大規模の地方財源不足/ 恒久的減税にかかる補填措置/ 国庫補助負担金の一般財源化に伴う財源措置/ 一般財源化の意味/ 三位一体改革/ 困難な分権推進型の三位一体改革/ 今回の一般財源保障 第二種地方特例交付金と交付税増額/ 人口比例による配分方式の採用へ/ 在宅福祉事業費の一般財源化/ 一般財源化は時期尚早/ 地方交付税の総額は7.5%のマイナス/ 縮小する地方税/ 膨らむ公債収入/ 歳出規模の圧縮とその方向/ 6年は続くグローバルなデフレ経済で賃金はなお下がる/ デフレ経済と生活そして雇用/ 職員定数の管理と行政責任/ 建設事業は半減する/ 福祉産業と環境産業への転換/ 自治体の財政構造改革

はじめに

 2003年度地方財政対策は、02年12月19日に総務省と財務省との折衝で大筋が確定した。この地方財政対策は、以下のような主な特徴をもっている。

(1)地方財源不足が通常収支の不足で13兆4457億円、恒久的減税にかかわる額が3兆2437億円、合計で16兆6894億円に達することになり、過去最大の財源不足額となったことがまず第一にあげられなければならない。
(2)これは去年の夏に予想したよりも、はるかに大きな国税・地方税の税収の落ち込みがあったことが最大の理由である。これに昨年のような国債発行30兆円枠が外され、デフレ経済克服策によって歳出の抑制が効きにくいという事情が重なる。
(3)このため、国の一般会計予算においても、国債の発行額は36兆4450億円、国債依存度44.6%とこれも過去最大となっている。また、国税収入は、前年度の46兆8160億円の見込みを10.7%下回る41兆7860億円にしかなっていない。
(4)その中で、いわゆる国庫負担金の削減と税源移譲、交付税の削減という三位一体改革の芽だしが行われ、かなり地方には厳しい方向が示されたとみる必要がある。
(5)これらの結果、地方交付税は出口ベースで前年度比7.5%、1兆4756億円のマイナスの18兆693億円と、これも昨年夏の見込みを大きく上回る削減となった。これで交付税は3年連続してマイナスとなる。すなわち経済財政諮問会議での合意と、それを受けた閣議決定による「地方交付税の総額の抑制」および「財源保障機能の縮小ないし廃止」という方針が着実に実行されていると言って良い。
(6)国税と地方税において、経済活性化を中心にしながら、かなり特色ある税制改正が行われた。不動産取得税など土地関連の地方税制の縮小、法人事業税への外形標準課税の導入、所得税の配偶者特別控除の縮小、自動車税のグリーン化、道路目的財源による直轄事業、新規事業所税の廃止など。
(7)地方交付税特別会計の借り入れという非常手段は、通常収支不足の補填措置として全廃された(恒久的減税の補填措置としては残る)。その分、臨時財政対策債(赤字地方債)が拡大し、5兆8696億円、という規模になった。対前年度比81.9%の増加である。ちなみに02年度は3兆8746億円、赤字地方債が導入された01年度は2兆4225億円であった。
(8)地方交付税改革では、都道府県の留保財源率(基準財政収入額への地方税の算入率の残余部分の割合)を、市町村と同じく25%(従来は20%)に引き上げることが決まった。これは、地方交付税制度に組みこまれない自主財源を拡大して、税源涵養の動機づけを強めるところに狙いがあると説明されている。このために、基準財政需要額をその分だけ縮減する必要がある。この具体的な作業結果は、6月の普通地方交付税の算定作業で明らかとなる見込み。
(9)市町村合併が進んだ後の基礎的自治体のありかたを提起した西尾私案をきっかけに地方制度改革の動きはかなり本格化している。そのもとでの地方財政の改革の議論が求められている。小さな自治の可能性と制度的検討、都道府県合併や道州制も一定のリアリズムを持って議論されるステージに上ってきたのである。

 以上が大体の地方財政対策の姿であり、その前提となっている諸条件でもある。

2003年度地方財政対策

(1)最大規模の地方財源不足
 昨年の夏以降になって国税と地方税の税収の落ち込みが予想以上に進んだことと、歳出はむしろ拡大することによって、地方財源不足も最大規模のものとなった。すなわち通常収支の不足が13兆4457億円、恒常的減税の要補填額が3兆2437億円とカウントされた。これに、今回は先行減税による減収額6873億円が加わる。

<1> 通常収支不足の補填
 1)財源対策債
 通常収支不足にかかる補填措置は、三つの方策を組み合わせたものとなっている。まず、建設地方債の増発を、各地方自治体にお願いする。この増発は、通常の起債充当率(30%から40%程度)を超えて、充当率の引き上げで行う。原則として90%まで充当率を引き上げる。これを財源対策債というが、対象となる建設事業に限りがあるため来年度は1兆8400億円を財源補填のためにまず充当する。対象事業は、一般公共事業債、義務教育施設整備事業債、一般廃棄物処理事業債、一般事業債(公園緑地事業)、地域活性化事業債、臨時地方道整備事業債、臨時河川等整備事業債とされている。

 2)地方交付税の増額措置 臨時財政対策加算および既往法定加算
 この財源対策債で補填した後の残余11兆832億円については、国と地方が折半して補填することとされた。これは従来のルールどうりである。
 この通常収支不足の国の責任おける補填分である5兆5416億円は、国の一般会計から臨時財政対策分として、地方交付税特会に繰り入れ、加算される(臨時財政対策加算)。この原資は特例公債、すなわち赤字国債である。
 これにこれまでに地方交付税法付則で当該年度に加算されることとされていた額、1945億円が加算される(既往法定分加算)。

 3)臨時財政対策債(赤字地方債)
 地方の負担分である5兆5416億円は、臨時財政対策債(赤字地方債)の発行により各自治体レベルでの起債措置となる。この臨時財政対策債の将来の元利償還金は、全額、地方交付税の基準財政需要額に参入される。すなわち算入される年度の交付税が増額されることになる。ただしこの基準財政需要額への臨時財政特例債の元利償還金の算入後も、普通地方交付税の不交付団体となる団体は、全て自分の財源で償還することとなる。
 ところで、この赤字地方債は、各自治体ごとに起債可能額として示されるが、これを全額起債する義務はなく、それぞれの自治体においてどこまで発行するか判断すればよい。おおくの自治体がほぼ満額発行するとしても、東京都など不交付団体など、全額発行を積極的に見送るところもあった。当然のことである。財政対策債という自治体の負担にならない(すなわち交付税措置された)資金で、過度に事業規模を拡大することは、慎重であるべきだという見解もなりたつからである。
 なお、03年度の臨時財政対策債としては、上記の他に02年度の補正予算にかかる交付税特会借り入れからの振り替え分837億円、国と地方負担の調整措置分1230億円、既往の臨時財政対策債の利払充当分1213億円、合計3280億円があり、5兆5416億円と合算して、5兆8696億円となる。

(2)恒久的な減税にかかる補填措置
 恒久的な減税とは、平成11年度の税制改正において実施された税制改正である。これは、次の抜本的税制改革(おそらく消費税の大幅引き上げ)までの制度改正という意味で、「恒久的」という形容詞がついているものである。このときの税制改正では、次のような措置がとられている(主なもの)。

 1)所得税

  • 最高税率を3000万円以上50%から、1800万円超の所得について37%とする。税率の段階を、10、20、30、40、50%から10、20、30、37%の4段階とする。
  • 定率減税 本来の年税額から20%を税額控除(上限は25万円)。
  • 扶養控除の加算 年齢16歳未満の扶養控除に10万円加算。
  • 個人住民税については、700万円超の課税所得の税率を15%を13%に。(5、10、15%の3段階を5、10、13%の3段階に)
などが行われた。

 2)法人税

  • 税率の引き下げ  普通法人を34.5%から30%に。
             中小法人については25%を22%に。
             公益法人等についても同上。
  • 法人事業税の引き下げ 11%を9.6%に。
 この恒久的減税の03年度への影響は、地方税の減少と、地方交付税の減少のふたつの領域で生じる。まず。地方税減少分である1兆8137億円程度は、国たばこ税の一部移譲1230億円、法人税の地方交付税率の引き上げ(35.8%に)によって3463億円、地方特例交付金(第1種)で8890億円、減税補填債によって4534億円というかたちで補填される。
 また、国税の減収によって地方交付税が1兆3449億円減少することに対する補填策は、国と地方の折半ルールによって、国がその半分(交付税特会の借り入れ6724億円、一般会計負担の利払い加算420億円)を負担する。残りの半分については、地方が負担する(交付税特会借入金6724億円、と利払いに充当する交付税特会借り入れ431億円)。

 なお、03年度においては、この恒久的減税に加えて、先行減税分(法人税の投資減税、研究開発減税など)の影響額6873億円についても、補填措置がされている。このうち地方税の減収見込みについて減税補填債2410億円を充てる。この元利償還金全額を後年度に基準財政需要額に算入する。地方交付税の減収見込み額4463億円については、交付税特会の借り入れによって措置する。この借入金は地方の負担に属するものとされ、後年度の交付税財源の増収額の中で返済することとされた。

(3)国庫補助負担金の一般財源化にともなう財源措置
 今回の地方財政対策のもうひとつの中心は、国庫補助負担金の一部の一般財源化とその財源措置のあり方であった。これについては竜頭蛇尾に終わったともいえるが、いわゆる三位一体改革の芽を出せたかどうか。
 結論的には義務教育教職員給与費国庫負担金の一部(共済長期国庫負担金)2184億円を一般財源化する。これに在宅福祉事業費補助金等の一部160億円を一般財源化する。合計2344億円の国庫補助負担金が廃止されることとなった。
 国庫補助負担金が廃止することを一般財源化という。なぜなら、国庫補助負担金が廃止されても、その国庫補助負担金などの対象事業は都道府県や市町村が実施すべきものとして残るから、この事業に必要な財源は都道府県、市町村がそれぞれの一般財源で賄うことになる。このように国庫補助負担金を廃止しても、事業が自治体に残る場合は、自治体の一般財源負担がその分増加するから、その一般財源はなんらかのかたちで保障されなければならない。特にそれが、義務教育教職員の設置費(給与費)などであれば、全面的な財源保障が必要である。さもなければ、義務教育の水準を維持することができず、国の行政責任の放棄になるからである。

(4)一般財源化の意味
 この一般財源化にともなう財源措置は、本来なら地方のもっとも基幹的な財源である地方税によって補填すべきものである。府県であれば、地方消費税の税率の引き上げなどが考えられる。市町村であれば、住民税の所得割の税率を一定率引き上げるなど。これに対応して国税の消費税や所得税の税率を若干引き下げ、地方税の増税を国税の減税で相殺する。いわゆる「税収中立」である。

(5)三位一体改革
 今回はいわゆる三位一体改革の芽を出すということが予算編成の目標として掲げられた。「三位一体改革」とは、02年11月20に片山虎之助総務相が経済財政諮問会議に提出した、「三位一体の改革について」では、以下のように示されていた(一部を要約、抜粋)。

「I、国庫補助負担金の廃止・縮小
 国の関与を縮小し、地方の権限と責任を大幅に拡大する観点から、国庫補助負担金を大幅に廃止・縮小し、所要額を地方の自主財源として移譲。「改革と展望」の期間中に数兆円規模の廃止・縮小を行うことが重要。
(注:02年1月25日の閣議決定、「構造改革と経済財政の中期展望」のことを「改革と展望」という。この「期間中」とは02年度から06年度の5年間を指す。)
特に次のような国庫補助負担金については速やかに一般財源化。職員設置費、法令施行の事務費、施設の運営費、住民に身近な生活基盤整備に係るもの、公共施設の維持補修、改良等。

II、税源移譲を含む税源配分の見直し
 地方税中心の歳入体系とするため、国から地方への税源移譲等により、国税:地方税=1:1を実現(歳出規模との乖離の是正)。

III、地方交付税の改革
 三位一体の改革の中で,次のとおり地方交付税が担う財源保障機能の見直し。

1) 交付税総額の見直し
  交付税総額については、三位一体改革の中で、税源移譲に伴う増収と国庫補助負担金の廃止・縮減に伴う減収に対応して見直し。
2) 交付税依存からの脱却
  税源移譲等による地方税の拡充により、交付税に依存しない団体の割合を高める。
3) 地方財政計画の歳出の計画的抑制

 上記の改革と合わせて、「改革と展望」の期間中、地方財政計画の歳出の計画的抑制を図ることにより、財源不足額の圧縮を図るとともに交付税総額を抑制。

(1)国の施策の見直しによる歳出規模の抑制
  国庫補助負担金の廃止・縮減、法令基準を通じた国の関与の廃止・縮減により、地方歳出を抑制・効率化
(2)地方単独施策等に係わる歳出の計画的抑制
  「改革と展望」の期間中(平成18年度まで)、地方独自でコントロール可能な地方歳出を計画的に抑制

i)給与関係経費
   定員の計画的削減と増員の抑制により、平成18年度までの4年間で地方財政計画上人員を4満員以上純減
   平成14年度地方財政計画上の職員数 2,490,466人
   削減対象職員(義務教育、警察等を除く) 1,080,777人 ii)投資的経費(地方単独事業費)
   平成18年度までの4年間で逐次、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前(平成2〜3年度)の水準を目安に規模を抑制
   平成14年度計上額   157,500億円
   4年間で3兆円程度を縮減(毎年平均マイナス5%程度)
iii)一般行政経費等
   一般行政経費等の地方単独事業については、平成18年度までの各年度を通じ、現在の水準を上回らないよう抑制
(注)ii)およびiii)については、国庫補助負担金の廃止・縮減に伴い、新たに地方単独事業となるものを除く。
 平成15年度地方財政計画においても、上記方針を踏まえ、歳出の抑制に努め、計画規模を前年度以下に抑制することを目指す。」

(6)困難な分権推進型の三位一体改革
 すなわち、「三位一体改革」とは、第一に、国庫補助負担金を分権推進の観点から廃止・縮減する。その規模は、06年度までに「数兆円規模」とされ、その最大のターゲットは、義務教育教職員給与費国庫負担金である。02年度の地方財政計画ベースで30,548億円。
 三位一体改革とは第二に、国庫補助負担金の廃止・縮減にともなう一般財源として自主財源を自治体に付与する。またはそれに代わる財源を付与することである。しかし、実際にはこの自主財源すなわち地方税の付与、すなわち国税の地方税への移譲は極めて困難である。この困難さは今回の03年度地方財政対策によっても明確になった。

(7)今回の一般財源保障 第二種地方特例交付金と交付税増額
 先にも見たように、今回、義務教育教職員給与費国庫負担金のうち共済長期負担金と在宅福祉事業費など、2,344億円が一般財源化されることとなった。
 その財源手当は、第一に地方特例交付金によってその半分の額(1,172億円)について行う。この地方特例交付金は、「第二種地方特例交付金」として新設される。「第一種地方特例交付金」とは、「恒久的減税に伴う財源補填」のための交付金である。
 第二に、地方交付税を1,172億円増額する。これは交付税特会の借り入れによるが、その4分の3は国が元利償還する。地方負担は4分の1ということになる。
 この第二種特例交付金の配分方法は、注目に値する。すなわち、「見直される国庫補助負担金の対象事業の実施主体に応じて、都道府県分(1,116億円)及び市区町村分(56億円)に分別し、各都道府県及び市区町村の最近の国勢調査人口により各々の総額を案分して交付することとしている。」(平成15年1月20日付け「財政課長内かん」)

(8)人口比例による配分方式の採用へ
 なぜ注目に値するか。それは、配分方法として、国勢調査人口という「簡便な」方法を採用した点に注目したいのである。このように交付金等を「人口に比例して」配分するという方法は、地方交付税の配分の簡素化を要求する議論では以前から強い。それが、常に退けられ、細かい需要算定等の手続きを経るべきものとされてきた長い歴史がある。それがここであっさり採用されているのである。これは経済財政諮問会議のおける地方交付税の廃止あるいは財源保障機能の廃止・縮減の議論と併せて、繰り返し算定方法の簡素化が論議されたことと無縁ではありえないであろう。
 この「人口比例による配分方式」は、今回もうひとつ、採用されている。それは、臨時財政対策債5兆8,696億円についてである。この臨時財政対策債は、地方交付税の増額の代わりに起債することになる。そのため、地方財政計画の上では、普通地方交付税を計算するときに用いる「基準財政需要額」から、それに相当する額を削減する必要がある。このことを先の「財政課長内かん」は次のように言っている。

 「前年度に引き続き臨時財政対策債の発行に伴い、5兆8,696億円を需要額から減額することとしていること。
 なお、臨時財政対策債への振り替え方法については、従来の振替対象5費目の単費用の引き下げという方法を改め、臨時財政対策債への振替えを考慮せずに算出した需要額の総額から、別途算出した臨時財政対策債振替え相当額を差し引く方法とすることとしているので留意すること。その際、臨時財政対策債振替相当額は、人口を測定単位とし、「その他の諸費(人口)」(経常経費)の補正係数(加算分に係わるものを除く。)を基礎として算出することとしていること。」
そしてこの内容は、2月はじめに次のように報道された。
「総務省は4日、今国会提出予定の地方交付税法等改正案をまとめ、自民党などに提示した。交付税の臨時財政対策債振替えに伴う基準財政需要額の縮減では、人口一人当りで道府県2万4858円、市町村1万7308円の「マイナスの単位費用」を設定。まず通常の方式で仮の需要額を計算した上、この額に各団体の国勢調査結果による人口を乗じた額を差し引いて需要額を算定する。」(「官庁速報」03年2月5日)
このように振替額の算定方式を変えた理由としては、「各団体の事務簡素化のため」(「官庁速報」03年2月17日)とされている。

(9)在宅福祉事業の一般財源化
 いずれにしても、国庫補助負担金の縮小・廃止の方向に踏み出した点は評価すべきものの、地方分権の観点からは内容はかなり厳しいものとなった。国庫補助負担金の一般財源化のメインであるべき地方税への移譲は一切なく、第二種地方特例交付金という「あてがいぶち財源」と、地方交付税(借入金による)による財源保障となったからである。
 なお、今回の一般財源化では、次の事業が対象となり、自治体の現場ではいろいろな影響が出るものと予想される。

  • 在宅福祉事業費補助金(生きがい活動支援員の配置費)
  • 疾病予防対策事後費等補助金(骨髄提供希望者登録推進事業費及び都道府県臓器移植連絡調整者設置事業費)
  • 児童保護等補助金(障害児(者)地域療育支援事業費)
  • 身体障害者福祉費補助金(市町村障害者生活支援事業費)
  • 精神医療適正化対策費等補助金(精神医療適正化対策費補助金)
  • 精神保健対策費補助金(精神障害者社会適応訓練事業費)
  • 介護保険事業費補助金(介護保険制度施行支援事業費及び苦情処理業務支援事業費)
  • 児童育成事業費補助金(障害児保育事事業費)
 これらについては、一般財源化されるが、その内容に分権の観点から問題はあるにしても、明確な財源措置がされているから、その事業の継続には基本的的には支障がないはずである、すなわち第二種特例交付金及び、増額交付税である。これらはいずれも人口比例で配分されてくるから、それを特定することは容易にできる。財政当局が補助金の一般財源化によって事業を打ち切るということは許されない。これらの事業は、障害者福祉事業の中に「溶け込んでいる。」 だから一般財源で措置するのが望ましいと判断されたのであろうからである。

(10)一般財源化は時期尚早
 もっとも、今回の一般財源化はこれらの事業については時期尚早の感じが強い。いずれもこれから事業を立ち上げ、安定したもののとするべき初期的事業だからである。これら後発の新しい事業は、なお包括補助金などのかたちをとりながらも、確固とした事業展開を国庫としても支援すべき事業だと考えられる。特に、在宅事業は自治体現場になじみが薄く、どちらかといえばお荷物的扱いを受けやすい。ところがこれらの事業は、その立ち上げと積極的推進に専門的能力を必要とするが、利用者にとっては生活の自立に必須の事業だからである。自治体の仕事として、十分に定着するには時間が必要であり、安定した目的財源による支えがあってしかるべき事業だと考えられる。

(11)地方交付税の総額は7.5%のマイナス 00年度から15.6%の減少
 これらの地方財政対策の結果、03年度の地方交付税の総額(地方交付税特別会計の出口ベースで)は、18兆0693億円となった。すなわち地方交付税総額は、対前年度比7.55%減となり、3年連続で減少した。ピーク時は00年度の21兆4107億円であったから、額にして3兆3414億円、率にして15.6%の減少となった。
 内訳は、地方交付税の法定率分から精算分を差し引いた額が10兆6141億円。一般会計における加算分(法定加算2369億円と臨時財政対策加算5兆5416億円)が5兆7785億円。交付税特会借入金の新規1兆9515億円(恒久的減税補填、先行減税補填、国庫補助負担金の一般財源化分)。他に、交付税特会の借入金の支払利子などを差し引くなど。すなわち、地方交付税は縮小しつつあり、それも予想を超えるスピードで総額の減少が始まっているのである。

(12)縮小する地方税
 付表の「一般財源の状況(00年度〜03年度)」を参照されたい。まず、地方税は00年度と01年度に35兆5千億台であった。それが、景気後退とデフレの影響で減少してきている。 03年度は都道府県税13兆4339億円で7.70%の前年度比マイナス。市町村税も18兆7396億円と4.88%減である。合計では32兆1725億円であって、01年度からは 3兆4805億円と9.88%の減少となった。
 これは、第一には住民税個人所得割が、給与所得の減少によって縮小していることの反映である。失業者の増加、40歳から50歳代のリストラ、パート、臨時、嘱託、派遣労働者の増加による就業構造および産業構造の変化が、この個人所得のマイナスに影響している。月平均給与所得の減少は、昨年9月公表の01年の「民間給与の実態」では、00年と比較して7万円減となっている。これで4年連続で減少となった。
 道府県の場合は、法人所得の著しい減少が響いている。法人住民税と法人事業税がいずれも落ち込んである。
 ただし、03年3月期においては、かなりの企業が配当を復活し、あるいは増配に転じる見込みであるので、03年度には持ち直す可能性はある。ただし、この企業収益の回復は、増収増益という景気回復パターンではなく、基本的にはリストラによるコスト削減が輸出とともに大きく寄与している。したがって回復感なく、豊かさなき収益回復といえる。その分、失業対策や雇用政策など公的部門への負担拡大、負担転嫁による企業業績の回復なのである。
 これに、市町村の場合は固定資産税の縮小が加わる。市町村の基幹的な税である固定資産税の減少は、基礎的には、戦後一貫して右肩上がりであった「地価上昇の神話」が崩壊したように、土地価格の低落という、これも21世紀に入って本格化した地価水準の調整過程の劇的進行に依拠している。不動産関連の研究機関によれば、この地価下落は今後10年でさらに現在の50%水準まで、つまり半分に落ち込むとも予想されている。

(13)膨らむ公債収入
 このような地方交付税と地方税の縮小にともなう地方一般財源の縮小を補うために、国の一般会計は、臨時財政対策交付金を特例公債で、地方は、臨時財政対策債という赤字地方債を併せて11兆円以上発行せざるをえない、というのが来年度の地方財政の姿である。

(14)歳出規模の圧縮とその方向
 この状況を打開するためには、全体の歳出規模を圧縮して、地方財源不足を歳出面の抑制によって解消する努力が必要である。これに歳入確保策が求められる。この歳出抑制策は、しかし、住民と職員、そして事業者、サービス利用者という、ステークホルダー(利害関係者、当事者)に対する十分な説明が行われ、特に究極の主権者である住民の深い理解を得ながら行われる必要がある。では、どのような歳出規模圧縮施策が考えられるか。
 第一には、人件費の抑制である。人件費の抑制は、給与水準の是正と職員数の適正化というふたつの側面がある。まず給与水準については、すでに昨年来マイナス勧告となった人事院勧告を上回る給与削減提案が相次いでいる。
 最近では、長野県の労使が3年間、5%から10%の給与削減することで、1月19日に妥結している。24日の交渉では県側がこのような提案に至ったことを謝罪している。

(15)6年は続くグローバルなデフレ経済で賃金はなお下がる
 実はこの給与水準の引き下げというトレンドは、4年目に入ったデフレ経済を考えると、今後も続くと考えるべきである。デフレ経済(モノとサービスの価格低下)を克服するために日銀総裁の人事をめぐって様々な動きあった。また「インフレ・ターゲット」の設定という「毒薬・劇薬」を処方するかどうかで、議論が行われている。
 しかし、現在のデフレは、あれこれの政策によって、克服できるようなデフレとは異なり、グローバルで構造的なデフレである可能性がますます明瞭になってきている。三菱総研と大和総研はデフレ脱却時期を08年度以降とし、野村総研は06〜07年度以降とする。政府は改訂後の中期展望で05年度としている。おそらく、民間のシンクタンクの予測のほうが適切な見方である。つまりこの見方に従うと、デフレは少なくもこれから6年は続くことになる。年率1%で物価が下落するとすると、6年間で6%以上物価水準が切り下がる(93%程度まで)ことになる。
 このデフレの原因は、中国13億人の市場が02年1月のWTO加盟によって本格的に開かれつつあるところに、まず求められる。賃金水準の低い、優秀な労働力が資本主義市場に大量に参加してきた結果である、とみるべきなのである。すでにこの中国の物価引き下げ圧力は、日本と香港やシンガポール、台湾というアジア諸国・地域に波及している。
 すなわち、1990年のベルリンの壁崩壊以後の、社会主義圏経済の資本主義市場への包摂の伴う、賃金引き下げ圧力が、世界的なデフレの基礎課程として働いている可能性が高い。デフレのグローバル性と構造的性格はそこに求められる。
 なお、1月に入って、原油価格が高騰するとともに、白金など希少金属や穀物の価格が上昇しつつある。これは、イラク情勢の緊迫によるところが大きい。それと並んで天候条件など受給逼迫の傾向もある。このことは、特にウェイトの大きい原油価格の上昇は輸入価格の上昇を通じて物価上昇圧力となる。既に、中国はこの1月、15ヶ月ぶりに消費者物価が前年を上回ることとなっている。
 しかし、賃金を中心とするデフレ圧力が世界的で構造的なものだとすると、原材料価格の上昇を製品価格に転嫁することが困難になることも予想され、企業収益を圧迫する要因となる。デフレ下の不況という、オイルショックを裏がえしにした世界経済の状況が生まれることも懸念される。

(16)デフレ経済と生活そして雇用
 従って、物価下落にともなう賃金下落は、経済の論理として自然である。賃金や年金の物価連動の仕組みが逆回転しつつある。したがって、このような経済論理からする賃金下落圧力に対抗して、きちんとした議論の組み立てをすることが求められる。デフレにもよい面がある。預金と貯金の実質的価値が上昇しているという点である。生活者の観点からすると、暮らしやすい時代だということになる。そのことを確認しながら、賃金の抑制に主体的に関わり、その賃金原資をどのように生かすか、という議論を展開したい。
 例えば、全般的なワークシェアリング制度の構築によって、企業の外での外延的な雇用者数の拡大に連結していく施策を求めたい。デフレを本格的な不況に結びつけないためには、雇用の外延的拡大を実現する雇用政策の創造と展開こそ決定的な要となる。

(17)職員定数の管理と行政責任
 職員定数の管理については、基本的には既存の、そして新しい公共サービスを、市民・住民や事業者とともに展開する方向で考えたい。行政という観点から考えると、これから行政需要、あるいは公共性を確保して解決しなければならない問題、はなお拡大していくと考える必要がある。限られた、あるいは制限された財源のもとで公共性を確保しながら、新しい課題に対応することが求められる。「行政と市民とのパートナーシップ」の確立とはこれからの財政制約下の地方政府にとって、最も重要で切実な課題である。
 これは、単なるアウトソーシングや民間委託ではない。アウトソーシングも民間委託も、事業を受ける側に、行政との対等性が担保されていない。また従来の経験からすると、民間委託したり、アウトソーシングをすると、行政側は単に業務の管理をする管理者に堕落する。ともにその事業を担い、ともに考え、新しい政策イノベーションを実現することから遠ざかる場合が多い。それは、租税を負担し、仕事を負託した住民・市民の信頼を裏切ることに他ならない。行政責任は、本当のパートナーシップの確立のなかに生かされなければならない。

(18)建設事業は半減する
 もうひとつの歳出抑制策は、いうまでもなく投資的経費の削減である。既に、来年度の地方財政計画では、投資的経費は23兆2868億円と、前年度より1兆3117億円、率にして5.3%のマイナスとなっている。このうち補助事業は、8兆4068億円で4417億円、5.0%の減である。単独事業は、14兆8800億円で、8700億円マイナス、5.5%減少することとされた。
 地方財政計画の上での、投資的経費の推移を見ると以下のようになっている。
投資的経費の推移(地方財政計画ベース:単位 億円) 『地方財政白書』『平成15年度地方財政計画』
 199819992000200120022003
投資的経費292183294788284187271705245985232868
補助事業9980610152598885957718848584068
単独事業193000185000193000175000157500148800
 この表でみると、1998(平成10)年度に29兆2183億円という規模であった投資的経費は、03年度には23兆2868億円と79.7%の水準まで下がる。縮小率は20%強と言うことになる。単独事業では同じ時期に5年間で77%の水準に落ち込んでいるから、縮小率は23%である。つまり5年間で8割の水準にまで投資的経費は、計画上圧縮してきていることがわかる。
 先ほど見た三位一体改革のもとでは、06年度までにさらに縮小することが求められている。これがどこまで圧縮されるであろうか。予想は困難であるが、もしフランスの公的投資の水準まで下げるとすると、おそらくピーク時(1999年度の31兆692億円)の半分ということになろう。すなわち投資的経費を16兆円程度まで圧縮するということになる。来年度の水準よりさらに7兆円以上削減することになる。しかし、これまでの圧縮率を見ると、ごく現実的な数字とも見える(注:なお簡単なシミュレーションは『自治総研 02年11月号』のコラム「建設事業を半減する」を参照していただきたい。)
 このことによって地方財政計画の規模はさらに大きく圧縮され、地方財源不足も縮小に向かうことが期待される。このような財政規模の圧縮は、しかしながら、地方自治体の現場には、深刻な影響を及ぼすことは必至である。

(19)福祉産業と環境産業への転換
 まず、建設事業に携わる事業者の整理が進み、失業も拡大し地域経済に大きな不況圧力となる。従って、これら建設事業者と従業者に対する、懇切な対策が求められる。もっとも重要なことは、他の成長産業への転換を援助することである。
 成長産業とは、ひとつは高齢社会に対応した福祉産業である。介護保険事業者への積極的参入を求めてもよい。当然、高齢者や障害者の介護に対するノウハウはないから、事業所ぐるみの研修と研究を相当期間、保障しなければならない。
 第二は、リサイクルなど静脈産業や、バイオマスなどの新エネルギー産業への転換が目指されるとよい。広く地球環境問題、アジェンダに長期的に対応する事業への転身が可能性を切り開く。
 第三は、同じく環境産業だが森林を守り、水源を涵養する事業者への転換である。ごく密度の高い作業用の林道網の建設事業、間伐・除伐、択抜および林産物の管理と加工、などに高い技術を持った事業所が求められている。森林組合と協力しながら、これらの仕事を実行できる事業者の育成がいそがれるのである。長野県や和歌山県の「緑の公共事業」を、各地域で展開することが望まれている。

(20)自治体の財政構造改革
 そして、自治体の内部も大きな変革をもとめられる。まず、土木部や農林部などの職員が相対的に過剰になる可能性がある。既に、今まで委託していた設計事業を内製化するなど、変化は始まっている。また、手の空いた時期に、資材等を融通して府道の道普請をするといった動きも活発となっている(大阪府の場合)。
 根本的には、民生部門の直接サービス現場に人材をシフトさせる、そういう構造改革が求められる。「行政は、コーディネーターに徹するべき」という議論が盛んであり、われわれも同じようなことを行ってきている。しかし、コーディネートするということは、現場で、情報のネットワークを知り尽くしていることが不可欠な条件である。また、常に変化する人々のニーズを把握し、事業者の動きと世界的な変化をつかめていなければ、意味のあるコーディネートをすることはできない。
 最近よく指摘されるホテルの「コンシェルジェ・サービス」は、毎日の顧客のニーズの変化を読み、サービス供給者側の変化を的確に、そして事態に遅れることなく対応する、そのような現場感覚なくして成立し得ないものである。
 そういった現場感覚を研ぎ澄まし、地べたをはうような住民の欲求や希望をつかむ「虫の目」と、同時に、世界と地域の20年先を見通す「鳥の目」をもっての行政構造改革と財政構造改革が、不断に求められているのである。

(なお、最近の国の地方財政に対する政策を整理した「国による地方財政政策の動向」公職研『破綻する自治体、しない自治体』03年3月増刊号所収、も参照していただきたい。)

(奈良女子大学 澤井 勝)

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