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財政構造改革予算のもとの2002年度地方財政対策
 段階補正の全般的縮減は市町村合併を推進するか

(初出:『自治総研』02年02月号)


目次
1、02年度地方財政対策の前提条件
2、02年度の地方財源不足は、通常収支不足が10兆6650億円
3、その補填措置 交付税特会の借り入れと財源対策債、赤字地方債
4、恒久的減税に伴う地方財政減減収3兆4510億円 税の一部移譲、地方特例交付金、減税補填債
5、地方交付税の総額19兆5449億円、マイナス4.0%
6、地方税は3.7%減の34兆2563億円
7、歳出面では投資的経費が10%減
8、02年度の地方財政計画は史上初めて1.9%減
9、政府債務残高は02年度末693兆円
10、地方交付税制度の改正 事業費補正の縮減 段階補正の全般的縮小
11、市町村合併の推進と府県の役割
12、個人引き受けの公募債という発想  投資主体としての市民の発生
13、ワークシェアリングなど雇用労働政策
14、財政の中期計画とローリング

1、02年度地方財政対策の前提条件
 2002年度の地方財政対策は、2001年の12月18日、政府予算の財務省原案をまとめるに先立って、総務省と財務省との間で合意された。この地方財政対策を考える前提条件としては、とりあえず次の諸点が挙げられよう。

(1)小泉改革の予算編成上の枠として、新規国債の発行枠を02年度の当初予算では30兆円としたこと。財政構造改革の象徴的な政策であるこの枠の設定で、公共事業費の10%削減が掲げられた。このことは、地方財政にとっては地方交付税の総額の削減と、建設投資全体の抑制に結びつくこととなった。

(2)わが国の経済は、不良債権の整理が進まないままデフレ状況が深まり、産業空洞化が進行し、失業率は5%台に達することとなった。関西や北海道などは6%台半ばとなっている。経済産業省の発表によれば、今回の景気の山は00年10月で、99年一月を谷とする21ヶ月で、統計を取り出してから最も短命の景気上昇だったということになる。
 このため、国税も地方税も年度途中から落ち込みが目立ち、02年度予算の発射台がより低下することとなった。大阪府では、法人住民税と法人事業税が01年度当初予算に比較して200〜300億円不足し、02年度は行財政計画案(01年9月)の水準より700億円程度下回る見通しである。この事情は、全ての団体にその強弱の差はあれ共通の予算編成事情となっている。

(3)他方で、新しい財政需要が拡大する。少子高齢化の着実な進行と、それにともなう医療保険財政の逼迫と児童扶養手当などの拡大があり、在宅福祉の拡充とともに施設福祉の基盤整備が急務である。地球環境対策への積極的対応と狂牛病などへの対応。IT革命といわれる情報基盤の整備、および世界的な再編に対応しうる物流と人流のインフラ整備、など。

(4)地方分権改革の進行を支える財政基盤の確立という大きな問題もある。国税から地方への税源移譲を含む地方財源保障、不交付団体拡大を伴うような地方交付税制度の見直し、自主課税権の活用と市民公募債などの工夫、外形標準課税の導入など。

(5)大失業時代に対応できる、国、都道府県、都市、町村における雇用政策の展開が求められ、多様な働き方を実現できるような制度の整備も急がれる。

(6)市町村合併は、01年夏ごろから新しいステージに入っている。1000市町村という政府目標が視界に入ってくるかどうかはまだ不透明だが、府県のありかたを含めて次の制度改革の議論が加速する状況にある。

2、02年度の地方財源不足は、通常収支不足が10兆6650億円
  前年度より700億円増加して最大に

 02年度については、94年度以来続いてきた地方財源不足状況を改善し、財源不足額を圧縮することが、01年の夏の段階での政策課題であった。この財源不足圧縮によって、地方交付税特別会計における新しい借入金を全廃することが、地方財政構造改革のひとつの目標として考えられていたはずである。なお、この地方財源不足とその補填措置については、後掲の付表2の「地方財源不足と補填措置」を参照していただきたい。

 すなわち、01年8月30日の経済財政諮問会議に「平成14年度に向けての政策推進プラン」の一部として総務大臣が提出した資料によれば、「地方財政構造改革プラン」という項目で以下のふたつが掲げられていた。

「地方交付税の改革」
○ 地方公共団体の自主的・主体的な財政運営を促す方向で、

1) 事業費補正の縮小
2) 段階補正の見直し
3) 税収確保努力へのインセンティブ強化のため、留保財源率の見直しの検討
 等の改革を行う。

「地方財政計画の改革」
○ 地方財政計画の歳出については、地方の個性ある活性化、まちづくり等いわゆる重点7分野の経費を拡充する一方で、
1) 規定経費の見直し
2) 定員の計画的削減
3) ハコ物投資の抑制、地域情報化等のインフラ整備への重点化等により地方単独事業の削減(平成14年度はマイナス10%程度)
 等によって計画規模を抑制することにより、地方財源不足額の圧縮・借入金の抑制を図る。

 このうちの「地方財政計画の改革」の中心であった「地方財源不足額の圧縮」は達成できなかったことになる。なお、「地方交付税の改革」については、後に述べるが、事業費補正の縮小と段階補正の見直しが行われ、留保財源率の見直しは先伸ばしとなった。
 この状況は、平成8年度(1994年度)以降7年連続して地方交付税法第6条の3第2項の規定に該当するものである。
 この最大の原因は、国税収入および地方税収入の予想以上の落ち込みであった。これは景気の後退が夏以降にはっきりしてきたこと、それに9月のニューヨークでの世界貿易センタービル、ワシントンの国防総省ビルへのテロにともなうアメリカ経済の停滞、基礎的にはIT不況、が拍車をかけたと言える。一方で単独事業の10%削減や定員の減など経費の削減を相殺するような公債費の大幅な伸び(01年度の12兆7990億円から13兆4300億円に5.0%の増加)が見込まれることとなった。

3、その補填措置 交付税特会の借り入れと財源対策債、赤字地方債
 この通常収支の不足を補填するため、次の措置がとられた。基本的な考え方は、この財源不足を、国と地方が折半して補填する責任を持つ、という点である。

(1)まず各都道府県と市町村に、建設地方債の増発をお願いする。これによって建設事業の見通しに基づきその限度一杯に発行するとして、1兆9200億円を補填する。
 これは起債充当率の引き上げで行う。すなわち30%の通常債の上に、60%の財源対策債分を上乗せして認める。ただし、これにも見直しが行われ、全体の充当率は01年度の95%から02年度は90%に引き下げられることとなった(一般公共事業)。この財源対策債の元利償還金については、その50%は、公債費方式又は事業費補正方式によって、50%については単位費用において標準事業費方式により、基準財政需要額に後年度算入する。

(2)次に国の一般会計からの加算には二つある。ひとつが「既往法定加算」分で、平成13年度の地方財政対策により、平成14年度に加算されることとされていた地方交付税法の付則第4条の2第2項(国の負担に係る借入金の利子負担額)による加算額1578億円、および同条第6項(公共事業等臨時特例債の利子負担額)による加算額1400億円、合計2978億円である。

(3)この財源対策債と既往法定加算を除く財源不足額8兆3537億円を、国と地方が折半して補填することとなる。

(4)国負担分4兆1769億円については、まずその4分の3については、国の一般会計からの加算額の第二として、臨時財政対策加算額3兆1326億円を交付税特別会計に繰り入れる。残りの4分の一に相当する1兆443億円は、交付税特会借入金(国の一般会計の責任でその元利償還を行う)で賄う。
 この元金償還相当額は、法律の定めるところにより平成20年度以降の各年度に国の一般会計から交付税特会に繰り入れる。利子相当額は、その発生年度において一般会計からの繰り入れを行う。

(5)地方負担4兆1769億円については、その4分の3の額、3兆1326億円をいわゆる赤字地方債である臨時財政対策債の発行により補填する。これは前年度の発行予定額1兆4368億円の2倍以上となる大きさである。
 臨時財政対策債は、この他に、平成13年度の補正予算にともなう地方財政補正措置において、臨時財政対策債に代わるものとして行われた交付税特別会計借入金の元利償還分394億円、および平成14年度の臨時財政対策債の利払い費(541億円)に充てる臨時財政対策債がある。このため平成14年度の臨時財政対策債は、合計3兆2261億円と見込まれている。

(6)地方負担の残りの4分の一にあたる1兆443億円については、交付税特別会計借入金により補填し、この元利償還は地方の将来の交付税原資から行っていくこととなる。

(7)これら交付税特会の借入金については、財政融資資金の原資の状況から、財政融資資金のほか、前々年度から行われている、民間金融機関からの短期資金の取入れでまかなうこととされている。。

 このように、基本的には、予想を超える国税と地方税の減収という状況を前に、地方財源不足の縮小が不可能となり、むしろ最大の財源不足に陥った。そのため01年度に合意を見た、地方財政構造改革に向けた交付税特会の借り入れの廃止は延期され、財源不足額の4分の一の規模で特会借り入れが残ることとなったのである。

4、恒久的な減税の伴う地方財政の減収3兆4510億円
   たばこ税、法人税等の一部移転、地方特例交付金、減税補填債

(1)所得税等の恒久的な減税の実施による地方税の減収の補填1兆9418億円

1) 国のたばこ税の一部を地方へ移譲。1281億円。
2) 法人税の地方交付税への算入率を35.8%に臨時的に引き上げる。4246億円。
3) 地方特例交付金9036億円。地方税の減収見込み額の4分の3から@とAの措置分を控除した額としての見込み額である。
4) 残りの4分の一の額は、減収補填債4855億円の発行を認める。
(2)恒久的減税による地方交付税の減収見込み額の補填
 平成14年度に新たに発生する地方交付税の減収額1兆4430億円についても、国と地方とが折半して補填することとされ、それぞれの責任において交付税特会の借り入れを行う。国の負担分については、元金償還に必要な額を、法律の定めるところにより、平成20年度以降の各年度に交付税特会に繰り入れる。利子負担については、その発生年度において繰り入れを行う。
 なお、平成11年度以降の恒久的減税の地方交付税への影響額補填にともなう交付税特会の借り入れの国負担分に対する、平成14年度分の利子相当額328億円を一般会計から繰り入れ、地方負担分の利子相当額334億円を特会借入金で措置する。

5、地方交付税の総額は19兆5449億円、対前年度マイナス4.0%
   2年前に比較して10%、2兆2千億円の減となった

 以上のような地方財源不足の補填措置をとった結果、02年度の当初予算における地方交付税の総額は、19兆5449億円と見込まれた。これは前年度に比較するとマイナス4.0%となり前年度、01年度に引き続き2年連続で交付税総額は減少することとなった。地方交付税の特別会計から各地方自治体に配分される地方交付税を、出口ベースの地方交付税というが、これが縮小してきたのである。
 出口ベース交付税A 臨時財政対策債BA+B
00年度21兆7764億円   
01年度20兆3498億円△6.6%1兆4368億円21兆7866億円
02年度19兆5449億円△4.0%3兆1326億円22兆6675億円
 つまりこの2年間で、交付税の出口ベースでの総額は、10.0%のマイナスであり、縮小額は2兆2315億円となる。
 もっとも、この地方交付税の減少は、前述の臨時財政対策債に基準財政需要額を振り替えた結果でもある。この臨時財政対策債を加えると、広義の一般財源ベースは02年度の場合も、01年度に比較して9000億円程度、拡大していることとなる。

6、地方税は3.7%減の34兆2563億円
   国庫支出金も2.7%減の12兆7213億円、地方債は6.2%増の12兆6493億円

(1)地方税の歳入見積もりは、都道府県税が6.5%減少の14兆5544億円、市町村税が1.6%減の19兆7019億円と見込まれている。地方税の合計では、34兆2563億円の3.7%減となった。
 国庫支出金は、新規国債発行30兆円枠の設定の影響もあって、これも3.7%マイナスの12兆7213億円となっている。
(2)地方債は臨時財政対策債が前年度の2倍以上の発行を見込むことや、財源対策債の引き続く発行などにより、普通会計債ベースで12兆6493億円、6.2%増と大幅な伸びを示すこととなっている。もっとも臨時財政対策債や財源対策債などはその元利償還金が全額、あるいは高率で後年度に地方交付税の基準財政需要額に算入されることもあって、それほどの負担感はないものと考えられる。
 しかし、表面的な公債費負担は将来的に大きくなることは避けられないから、適切な財政運営に対する監視がこれまで以上に必要となるに違いない。

7、歳出面では、投資的経費がほぼ10%マイナス
   計画人員は12300人減、公債費は5.0%増

 歳出を見ると、まず目に付くのは、投資的経費の縮減である。単独事業については、既に01年の8月の段階で10%削減が定められていたといっていいが、そのとうりの10%削減で15兆7500億円とされた。これは、しかし、決算と予算の実績に近づける措置ということもできる。「計画と決算の乖離問題」の大きなひとつが、この単独事業にあるとされてきたのでもあった。投資的経費の補助事業についても、7.5%マイナスの8兆8485億円に抑制されている。
 人件費については、0.2%の給与関係費の微増があるが、計画人員は12300人を削減する計画となっている。
 一方で公債費は、5.0%増の13兆4300億円となり、歳出全体の15.3%を占めることとなった。

8、02年度の地方財政計画は史上初めて1.9%減に
 以上の歳出と歳入、それに国の一般会計の間の姿を示したのが、後掲の付表1、「2002年度 国と地方の財政関係」である。この図に示した02年度の地方財政計画の特徴を以下に整理してみよう。
(1)02年度の地方財政計画の総額は、歳入・歳出とも87兆5700億円となったが、これは対前年度比1.9%減である。このように地方財政計画の総額が前年度から縮小するのは、地方財政計画を策定するようになった地方財政平衡交付金時代の昭和25年以来、初めてのことだという。財政の縮小均衡時代への曲がり角の、これは象徴的な出来事ということもできる。
(2)国の一般会計予算は、対前年度1.7%減の81兆2300億円。歳入では税収の落ち込みが激しい。所得税が18兆5720億円から、15兆8310億円に、法人税が11兆8390億円から11兆1740億円に、それぞれ減少。国税の消費税も10兆1290億円から9兆8250億円に縮減している。これはデフレによる価格低下が、消費価格総体を引き下げている影響と考えられる。酒税も振るわない。1兆8230億円が1兆7350億円に低迷する見込である。これも酒の消費が発泡酒など低価格商品にシフトしている影響であろうか。
 この結果、租税印紙収入は46兆8160億円と7.7%減と50兆円台を切ることとなった。
(3)国の公債金収入は、30兆円。そのうち建設国債が6兆7900億円で、残りの23兆2100億円は特例国債(赤字国債)である。
(4)地方交付税の法定分(所得税と酒税の32%、消費税の29.5%、法人税の35.8%、たばこ税の25%)は、12兆7318億円。これに法定加算額と臨時財政対策加算を加えた一般会計から交付税特別会計への繰り入れ額(すなわち交付税特別会計の「入り口ベースの交付税」)は、16兆1080億円となる。
 これに交付税特会の借入金3兆5649億円を加え、借入金の利子と元金償還額を差し引いた額が、交付税特別会計の出口ベースの地方交付税19兆5449億円である。

9、政府債務残高は02年度末で693兆円
        地方の債務残高は195兆円程度 そして実質的な国民負担率は47%

 財務省の予算関係資料によると、国の長期債務残高は、02年度末で普通国債残高が414兆円程度、その他の債務を合計して528兆円に上る見込みとなっている。地方の債務残高は195兆円程度と見込まれるので、国と地方を合わせると、02年度末の政府の長期債務の残高は693兆円程度との見通しである。この政府債務残高のGDP(国内総生産)に対する比率は、139.6%になる。この政府債務残高の対GDP比は、次のように増嵩してきている。
(財務省14年度予算関係資料から作成)
 政府債務残高GDP比
92年度末301兆円62.2%
97年度末492兆円94.6%
00年度末642兆円125.2%
01年度末668兆円133.4%
02年度末693兆円139.9%
 このストックとしての政府債務残高の対GDP比率は、EUの場合は、通貨統合のグループに参加できる条件として3%という枠が定められ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダなど全ての参加国がこの基準をクリアーしているのである。30%ではない、3%なのである。
 地方の債務残高195兆円の内訳は、地方債の残高が165兆円程度(公営企業債の普通会計負担分を含む)、交付税特会の借入金の地方負担分が30.3兆円(国負担分を入れると46.1兆円)、となっている。
 なお、租税と社会保険料とを合わせて、それが国民所得(NI)に対してどの程度の比率になるかを見る指標として「国民負担率」がある。推計値も含めてそれを見ると以下のようになっている。
(財務省資料から作成)
 国税地方税租税負担社会保障
負担
国民負担率財政赤字を
含む負担率
98年度13.49.422.914.036.846.4
99年度12.99.222.113.835.947.4
00年度13.99.323.214.037.246.6
01年度14.09.623.614.938.548.2
02年度13.49.522.915.538.346.9
 この特徴は、表面上の国民負担率は30%台後半と低いが(ヨーロッパ諸国は50%以上である)、財政赤字を実質的な国民負担と考えれば、40%台後半にまで負担率は上昇するという点である。実は、このことは国民負担という点では極めて大きな問題を持っているのである。当面の借金は、国民の負担として意識されないが、確実に将来世代の負担になるからである。しかも、利子がつくのであるから、現在世代が借金として消費した以上の負担が子ども達に転嫁されるという点に十分な注意が払われる必要がある。

10、地方交付税制度の改正
(1)交付税の総額の圧縮は、臨時財政対策債への需要額の振り替えによって進められたというように見える。このことが、借金の主体を交付税特会から各地方自治体に転換することを意味することは、昨年度のこの欄(『自治総研』01年2月号)で述べているので参照されたい。
 今回の交付税制度の改正の最大の特徴は、これに加えてふたつある。第一は、事業費補正の縮小であり、もうひとつは段階補正の縮小である。このふたつの補正係数の見直しは、交付税制度そのものの大きな転換となる可能性がある改革である。
(2)事業費補正の縮減 財政課長内翰によると以下の通り。

1) 公共事業の地方負担に係る地方債の充当率を、現行の95%から90%に引き下げる。地方債の元利償還金の事業費補正方式による需要額への算入率を引き下げ、現行の2分の一の30%までに下げる(港湾、ダムについては標準事業費方式では算定し難いので45%)。引き下げ部分については、単位費用に振り替える。具体的には、通常債の充当率を30%とし、財源対策債を60%とする。この通常債については事業費補正による元利償還金の算入を行わない。財源対策債については、元利償還金の50%を事業費補正方式により算入する。
義務教育と廃棄物処理施設整備事業については、通常債の充当率75%。財源対策債充当率15%として、通常債の元利償還金の算入率を70%、廃棄物処理施設の場合は50%とするとされている。
2) 単独事業については、地域整備事業債を廃止し、ハコ物整備は原則的に対象外とする。その上で地域活性化事業、合併特例事業、防災特例事業を地方単独事業として創設する。
ア 地域活性化事業は地方債充当率を75%とし、元利償還金の算入率を30%とする。
イ 合併特例事業は、合併後事業の充当率を95%、元利償還金の算入率を70%とする。
  合併重点地域の合併前事業については充当率90%、算入率50%とする(府県事業も同じ)。などとするとしている。
(3)段階補正の縮小
 小規模市町村の行政経費の割高という状況をカバーするために、需要額を小規模団体ほど割増していた比率を引き下げる。こんことは職員の兼務や外部委託などによって合理化を進めてきた団体に引き寄せて、割増率を引き下げるものだと説明されている。
 全団体の平均ではなく、経費の安い3分の2の団体の平均を基準とする。02年度から3年度で段階的に引き下げる。見直し対象の費目は、消防費、その他の土木費、その他の教育費、社会福祉費、保健衛生費、高齢者保健福祉費、農業行政費、商工行政費、企画振興費、徴税費、戸籍住民基本台帳費、その他の諸費、である。
 この結果、個別の団体でどの程度の影響が出るかは、7月の算定によらなければわからないが、全くのモデル計算では、ということで次のような試算が示されている。
(自治財政局交付税課 全国都道府県総務部長会議配布資料
14年1月21日)
人口段階見直し影響額h14影響額
1000人前後△24百万円△8百万円
4000人前後△55百万円△18百万円
8000人前後△52百万円△17百万円
12000人前後△50百万円△17百万円
20000人前後△50百万円△17百万円
30000人前後△30百万円△10百万円
 この段階補正の縮小で最も大きな削減を受けそうな人口規模は、4000人前後の町村である。3年後には5500万円の交付税が減るという計算となっている。この額は、それほど大きい額ではないともいえる。しかし、限界的な5000万円であるとしたら、非常に大きな影響を受ける。新規の事業はほとんどできないということもおこり得るのである。
 なによりも、将来的に交付税財源が伸びない、あるいは縮小すると考えて志気が低下することが、もっとも大きな影響かも知れない。
 いずれにしても、小規模町村にとって、頼みの綱である交付税が具体的に減少するというかたちで示されたこの措置が、市町村合併に及ぼす影響は無視できないであろう。結果として市町村合併の推進に向けたムチであることは客観的な事実である。
 そういった点で、地方交付税制度を市町村合併推進の有力な政策手段とした今回の改正は、ルビコン河を渡ったものとして評価されることにもなるのではなかろうか。

11、市町村合併の推進と府県の役割
 市町村合併を財政的に支援する仕組みとしては、以上のほかに、特別交付税措置等があるが、詳細は、公職研『地方自治職員研修臨時増刊 合併する自治体、しない自治体』02年2月の拙稿、「市町村合併の財政問題」として荒削りにではあるが整理してあるので参照されたい。
 ところで、市町村合併が進むとして、次の分権改革の課題として浮上してきているのが、府県のあり方の見直しであり、町村の権限のあり方の検討である。このふたつは一部が表裏の関係になっている。既に財政経済諮問委員会は、02年1月の「構造改革と経済財政の中期展望」において、「地方分権や市町村合併の進展に応じた都道府県や市町村のあり方、団体規模に応じた事務・責任の配分(小規模町村は仕事・責任を小さくし都道府県が肩代わり)など、地方制度調査会審議を踏まえ幅広く検討する」と定めている。
 この中期展望を受ける形で、地方制度調査会の小委員会は2月5日の会議で、今後の審議について意見交換を行った。その結果小委員会の下に分科会を設け、小規模町村のあり方と、それに関連する地方税財源の課題について専門的に検討し、論点整理を行うとしている。
 つまり合併が進む中で、大型合併市が複数出現する府県にあっては、広域自治体としての現行府県の存在自身が問われることは避けられないという事情が第一の問題である。そして、同じく市町村合併が進む中で、合併困難地域として残存せざるを得ない小規模町村が相当多数あるという事情が第二の問題である。
 第二の小規模町村のありかたのほうが深刻である。そこで考えられるのは、ひとつは府県が人的に、財政的に支援する具体的仕組みを作ることである。さらに、町村側から、府県に事務権限を移譲するということも考えられて良い。そのための地方制度調査会の議論のはずである。おそらく地方制度調査会の議論が先にあって、財政経済諮問委員会の中期展望に乗ったのであろう。
 たとえば隠岐郡の島前の三町村(西ノ島町、海士町、知夫村)は合併しても、なお人口は7000人にしかならない。このような町村が、その自治能力を政府の政策によって奪われ、その住民が棄民と化すようなことがあるとしたら、国土と人の心は荒れ果てるに違いないのだから。

12、個人引き受けの公募債という発想
    新しい市民活動の形態の創造へ

 今回の地方財政対策で、積極的な財政運営への展望と、地域活性化に直結しうる政策は、ミニ公募債の提案である。これは、市民としての個人投資家に、額面を小さくした事業債権を引き受けてもらおうというもので、市場公募債の一種である。
 この政策は、既に群馬県がこの3月から実施するという。むしろ群馬県が先行して事例をつくり、それを総務省自治財政局が全国化を図ろうとするもののようである。他に神戸市など15団体ほどが発行をする予定だという。
 群馬県の場合は、10億円の病院事業債を市民公募で発行する。発行形態は証券形式、額面5万円程度、5年の満期一括償還、応募資格は、第一に群馬県民、第二に群馬県への通勤者、第三には群馬県出身者、となっている。利率は国債の利率を下回らないように設定するとされている。
 この市民公募方式のミニ地方債は、もともと制度的には現行の地方財政法でも可能であった起債方法で、経験としては既に神戸市が丸山地区のまちづくり事業において実施したことがある。ただ後が続かなかったのは、人口移動があって償還がうまく行かなかったからだとされている。

投資者主体としての市民の発見
この市民公募債、すなわちコミュニティ・ボンドの利点はいくつかある。第一には、まちづくりや公的事業に市民が直接出資することにより、その事業に対する市民の関心が高まる。それは当然であろう。投資家としても投資した事業を、自らのものとして関わることになるからである。出来れば出資者総会が年に一度は開かれるようにしたい。つまり株主総会である。ここで事業者は、事業の内容について説明責任を果たすことが求められ、出資者市民は、事業への意見等を述べ、改善提案をすることができる。ここに新しいまちづくりや公的事業の主体としての市民が登場する。

民間資金の動員(モビライゼイション)
 第二には、銀行など金融機関の資金ではなく、個人の金融資産を活性化し、モビライズすることが出来るという点である。いわゆるタンス預金や睡眠口座に眠っている預貯金を、直接に公的サービスの資金として動員できる。市民は、増税には抵抗感がある。それは税がなにに使われるかわからないという政治への一種の不信感、あるいは無力感から発した自然の感情である。つまり歳出について、それをどのように使うか、その決定過程から多くの市民が疎外されてきた歴史的経験によっているのである。
 しかし、特定の目的のために使われるのが明確であれば、積極的に資金を提供する市民は決して少なくはない。公的介護保険制度が導入されるときに、多くの世論調査や意識調査の結果は、介護サービスに使われるのであれば、介護保険料を負担していいという人が60〜70%いることを示していた。そして負担しうる保険料水準も月4000円(年間5万円)程度という人が最も多かったと記憶している。この事実が、介護保険制度を実現する大きな力になったことは間違いがない。導入後の第1号被保険者の保険料の徴収率も高い水準で推移している。
 もうひとつは、02年4月からの定期預金のペイオフの解禁によって、1000万円を超える定期預金がその行き場を探しているという事情がある。普通預金については03年4月からだが、債券市場への個人金融資産のシフトが進行する気配である。この動きに対応して、新しい債券形態を提案することにもなる。

永久債という考え方も
第三には、多様な資金動員形態を開発することができる。特に地方債の許可制度は、06年以降に自由化され、協議制度に完全に移行するが、その際、政府資金に依存せず、新たな地方債原資を個人投資家に求めることは、地方自治体の自己責任で決めればよいこととなる。その場合、この個人の公募債を、永久債として発行することも可能である。永久債とは、株式に他ならない。つまり出資者には、利益が出たときに配当をするが、あるいは利払いはするが、出資元金は償還しない形態の債権である。もっともこの永久債の債券は転々売買されることを前提にマーケットが整備されなければならない。
 第四には、先ほどの小規模町村の資金として有力である。既に名誉村民や、棚田所有者との間で新しい提携関係をつくることが模索されている。すなわち、町村出身者で東京圏や大阪圏に出た人々とふるさとの町村が、新たなモアイ関係を結びなおす紐帯としてこの個人公募債を考えたい。父母や祖父母がお世話になっている、あるいは定年後はそこに帰る故郷としての町や村に、今から資金の提供をしてもらえればよい。東京都に税金を払うのと平行して、出身地にも資金を提供して欲しい。ふるさとへの出資金が税額控除になればもっとよい。(ただし東京都や区や市と話し合いはつける必要がある)。
 もうひとつは、一般財源債としても、その可能性を検討することが必要である。アメリカの州やカウンティなどでは「レベニュー・ボンド」という、一般歳入債の発行が可能なところがある。この償還方法や放漫財政にならないようなコントロール・システムが構築される必要があるが、十分に研究する価値がある。

13、ワークシェアリングなど雇用労働政策
 今回の地方財政対策で、もっとも手薄だと思われるのは、地域雇用政策に対するものである。失業率6%台にもなろうかというこの一年、さらに構造改革による企業の撤退が進むことを考えればこの10年ほどは、大失業時代に入るものと考えておいたほうがよい。
 地方財政対策として手薄となった理由の一つ、は分権改革によって府県の雇用労働行政の基幹部分が国の地方労働局に統合され、一方で新しい府県と都市の自治事務としての雇用労働行政が未整備だという事情もあるのであろう。しかし、雇用開発法の改正によって府県と市町村には新しく雇用政策を担う努力義務が課せられ、そのための独自の政策展開が求められている(次の拙稿を参照されたい。「分権改革と自治体の雇用労働行政」畑中労働経済研究所『労働経済情報』2001年春号、なおホームページ「地方財政情報館」http://www5d.biglobe.ne.jp/~m-sawai/ にも掲載。)
 とはいえ、ここ数年、失業率の上昇を前に、いくつかの府県において新しい試みが始まっている。そのいくつかを見ておきたい。

 第一は、兵庫県におけるワークシェアリングの取り組みである。この取り組みは、県と経済団体、労働団体の三者協定により、民間企業に対していくつもの選択肢を示すガイドライン設定によって、具体的にワークシェアリングを進めようとする。例えばパートタイマーの労働条件を改善し、それによってフルタイム労働と交替可能な働き方を創造することいによって、労働時間差別を廃止する方向を示す。そのことによって、多様な働きかたを可能にし、同じ給与原資をより多数の労働者でシェアする。
 この方式は、いわゆる「オランダ方式」といわれる、パートタイム労働へのシフトによるワークシェアリングの方向を模索する試みである(オランダ方式について、および公務員の超過勤務手当てカットを原資とする臨時職員雇用については、02年2月22日の『自治日報』の拙稿、コラム「ワークシェアリング」を参照されたい。)

 第二は、大阪府が02年度から始める「地域就労支援センター」である。就職に難しさのある高齢者や障害者、母子家庭の母親などに対して、府内の市町村に窓口を設けてもらい、相談員を置く。相談員設置費の半分を、500万円を限度に府が補助する。相談員は常勤か非常勤かは市町村が決めることである。ただし、相談員としては公共職業案安定所のOBなど就労支援業務ベテランが望ましいとしているのがみそだが。「府が配置する相談員は、担当課と連絡をとりあって保育所の空き状況を知らせたり、地元商工会と連携して障害者の雇用実績のある企業を探したりするなど、一人ひとりの状況に応じたきめ細かい対応を考える」としている(朝日新聞大阪本社版、2月12日夕刊)。今のところ大阪市など20自治体が名乗りをあげているというから、注目をしておきたい事業のひとつである。

 第三には、和歌山県の始めた「緑の雇用事業」である(以下は朝日新聞2月12日社説「和歌山方式を広げよう」から)。これは政府が全国で半年という期限を切って50万人を雇用する仕組みを作るという「緊急地域雇用創出特別基金」を利用して行うものだ。和歌山県には42億円が交付されたが、そのうち20億円を充てる。県内の森林組合がハローワークを通じて作業員を雇い、枝打ちや間伐などの森林管理の仕事を行う。日当は1万円から1万2千円。就業相談会は県内ばかりではなく、大阪や神戸などでも実施しており、事前の研修も行った。既に125人が採用されたが、平均年齢は40台半ばで山仕事は働きながら学んでいるという。
 また森林の管理に森林組合ばかりではなく、従来は無縁とされてきた建設事業者を入札に参加させ、脱公共事業ないしポスト公共事業に向けた、産業転換を図る事業を始めたのが長野県である。

そして第四には、ここ10年来の事業として、市町村が雇用労働政策の担い手として設置した津山圏域雇用労働センターの取り組みもある。これは、基本は求人情報と求職情報を取り次ぐだけではなく、人と人を結ぶ仕事によって雇用関係を作り出す事業だといえる。

第五には、そのための調査活動を徹底することである。連合京都では、01年の12月にハローワークの出口調査を行った。福知山、下京、伏見の三ヶ所に朝10時から15時まで張り付いて、調査票を配布し、机を出してもらって記入をお願いした(各ハローワークの積極的な協力を得た)。この結果、三ヶ所で700票以上の回答を得た。フリーアンサーでは熱心な要望や切実な訴えが多かった。労働組合への熱い期待も寄せられ、京都連合の財産といっていいその調査結果は、報告書にまとめられ組織で活用されているようだ。
 その分析で、重要な発見が多数あったが、例えば職業訓練に対する厳しい意見や、建設的な提案もあり、直ちに改善をすべき点が明確になったといえる。
 いずれにしても、まず調査有りきなのだ。その設計には大いに知恵を絞ってもらいたいが、初めは不十分であっても、改良をしていけばよいのである。

 以上のような新しい、あるいは方法的に新しい事業展開を次々に受け渡しながら、自治的な雇用労働政策を、国の機関や民間の企業やNPOと共同して構築していく自治体の政策のイノベーションがさらに拡大、深化していくことを期待したい。

14、財政の中期計画の策定とローリング
    事務事業・政策評価システムとの連携と政策の優先順位

 最後に、この困難な時代にあって、財政運営を規律あるものにするために、中期財政計画のより堅固な策定とローリングの実施が必要である。そしてその過程を常に公開すると共に、この計画を読める人材を市民の中につくっていくことが重要だ、ということを確認にしておきたい。さらに政策目標を明確にするような政策評価システムの構築が急がれることを、改めて強調しておかなければならない。
 もうひとつ重要なことは、財政を立て直すためには、国と地方を通じた財政規模の拡大を抑制し、分野によっては縮小することを選択しなければならない。そしてこのことを共通の認識にしなければならない、という点である。それは住民にとっても、職員にとっても、議員にとっても、共通の理解としてもらいたい。そのために必要な条件のひとつは、行政サービスのコストについて、徹底した情報公開が行われ、住民にあっても、お金の使い方についてのできるだけ正確な理解があることである。そのことによって、ようやく創造的で建設的な議論を組み立てることが幾分か可能になるといえる。

市債の使い方を広報する
 ここに、「市債は、このように使われています」というA6版6頁のリーフレットがある。発行者は山形市企画部財政課である。平成11年度末で、普通会計1000億円、公営事業会計1000億円の市債について、事業ごとに既発行額と、なお償還すべき額とが示されている。例えば第一小学校については、今まで7900万円の起債があり、残っている借金は5千万円あることがわる。第9小学校は19億28百万円を借り入れ、なお17億26百万円を返済しなければならない。南沼原公民館には4億82百万円のうち4億49百万円の借金が残っている、ということが一目瞭然でわかる仕組みとなっている。
 われわれは、このようなコスト、特に借入金の内容が事業ごとに明らかにされて予算書および決算書に記述される団体が増えることを望む。また、ハコ物や道路や橋梁には、それを設計した設計者、施工業者、役所の担当課が掲示されるということが考えられてよい。その掲示には、その建設事業の財源内訳、すなわち何省の国庫補助金がいくら投入されたか、府県の補助金はどの課の補助金がいくらか、起債は何年度の何号の起債か、原資はどこか、年度ごとの償還計画も合わせて掲示してもらいたい。そして一般財源がいくらかも。
 加えて、その施設の直近の維持管理費についても、そして年度ごとのそれが可能であればそれも、掲示すべきだと考えられる。もちろん、人件費、水道光熱費など経費の内訳も必要だ。さらに使用料をとっているならその額も示すべきだろう。
 このようにしてストックとしてのコストと、維持管理のコストとを明示することから、どのようなサービスに税金および市民の資金を投入していくことが望ましいか、どこに優先的に資金を投入するか、という率直な議論を行える材料がようやく揃うのではないだろうか。
 財政的に苦しいときこそ、このようにして市民の深い共感を得ながら、負担の構造を転換していくチャンスであると考えたいものである。

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