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一般財源債の発行と財政構造改革
 2001年度地方財政対策の問題点と地方財政の課題

(初出:『自治総研』2001年2月号)


地方交付税は諸悪の根源か
記録を更新した地方財源不足
その補填措置
交付税特会の借入金の原則廃止と臨時財政対策債
「臨時財政対策債」の意味
臨時財政対策債の評価
その仕組み
個別団体の臨時財政対策債
発行するかどうかは自治体の裁量
恒久的減税による地方財源不足
交付税の総額の地方単独事業
交付税制度を守るための改革
政府債務の残高
公債費負担対策
市町村合併準備補助金など
「財政構造改革」に向けての課題

地方交付税は諸悪の根源か
 新しい世紀である2001年度の地方財政対策は、2000年の12月18日に当時の自治省と大蔵省との間で合意を見た。今回の地方財政対策の最大の焦点は、第一に地方財源不足をどの程度と見込むか、第二に、累増する交付税特会の借入金をどう扱うか、第三にそれとからんで、地方交付税法第6条の3第2項にいう、地方財政制度の改正をどのように考えるかであったといってよい。

 この背景の事情のひとつとしては、政府の税制調査会などで噴き出した地方交付税制度を諸悪の根源とするような批判になんらかの対応をとることが求められていたことがある。この批判は、地方財政事情の無理解を示す粗雑なものではあるが、同時に、学者や評論家、ジャーナリストなどの一部に根深くある「放漫な地方財政」という固定観念に呼応するもので、また「財政錯覚(イリュージョン)」とか「モラル・ハザード論」といった経済学的な用語で飾られてもいる。この議論は、現在の交付税制度が、国の財政政策の結果として歪んだものになっている側面を見落としている。その結果、地方財政の収支のアンバランスをひたすら地方自治体の責任に帰するという一面性を持っていることは、後にも見るように、基本的な問題点である。

 しかしながら、膨大な交付税特会の借入金によって支えられている現在の地方交付税が、決して合理的に運営されているとはいえない、ということも次第に地方自治体の関係者のあいだにあっても共通の認識となってきているのではないであろうか。特に交付税を交付される団体は、借金で賄われている交付税という意識なしに交付税依存の世界に浸っているように見える。それだけ自らの財源確保に関心を薄くしたり、歳出のスリム化を推進しようとする緊張が緩んでしまうという状況が間々見られるということも事実であろう。

 また巨額の地方財源不足を、本来の制度改革によって解消していくために地方自治体が蓄積すべきエネルギーが、取りあえずの借入金によって拡散するという大きな弊害をも伴っている。この場合の「本来の制度改革」とは、地方交付税法第6条の3第2項の定めるもの。その中心は、第一に地方交付税率の引き上げ、第二に地方税の拡充と税源移転、第三に歳出の調整である。ちなみに2000年度から法人税の交付税率の引き上げ(32%から35.8%へ)、やたばこ税の一部移譲などが行われている。これら制度を改めるという意味ではは大きな意義をもつが、残念ながらいずれも恒久的減税の影響をカットするための方策で、通常収支の不足を本格的に解消するためのものではない。

 いずれにしても、現在の地方財源不足を解消する方向を明確にする必要がある。具体的には、地方財源不足を極力圧縮することが求められている。すなわち第一に借入金によらない地方一般財源の拡充と確保、他方での地方歳出の調整とその構造転換である。

 では今回の地方財政対策はどのようなものと評価すればいいのであろうか。

記録を更新した地方財源不足
 2001年度の地方財源不足は、通常収支における不足額が10兆5923億円、恒久的減税の影響額が3兆4330億円となった。この両者の合計では14兆253億円である。これは、前年度の不足額、すなわち通常収支で9兆8673億円、減税分で3兆5026億円、合計で13兆3669億円を6000億円ほどオーバーする不足額である。付表1に見るように、この地方財源不足は94年度から発生するようになり、これで連続8年度にわたって生じていることになる。この付表1から、次の点を指摘することができる。

 第一に、バブル経済の崩壊過程にあたる94年度からの財源不足は、主として地方税収の落ち込みと地方交付税財源の縮小の一方で、景気対策による歳出増加による、歳入と歳出のギャップによって生じたのであろう。このギャップは、97年度、98年度と縮小し5兆円以下に圧縮される。順調に税収が回復していけば、このギャップは2,3年で解消することも可能であったようにも観察できる。

 第二に、99年度から様相が一変する。通常収支における地方財源不足が一気に10兆円台に拡大し、減税による影響額も増加する。これは、日本経済が97年度以降再び下降局面にはいるとともに、法人税収を先頭に税収が急降下し、同時に北海道拓殖銀行や不動産銀行などの経営破たんに見られる金融システムの危機が明確になったことを受けて、大規模補正予算を組むなど、厳しい財政状況によって生じたものと考えられる。これを平成第二次不況ともいうことができるが、この不況の特徴は、わが国の金融システム全体の動揺とデフレスパイラルに巻き込まれる危機をその内容にしているところにある。そして、年金制度などへの不安や、リストラクチャーという名の雇用調整、すなわち失業に対する不安をもつ生活者の危機感を基礎にした、消費不況という様相を強めてきた。

 すなわち、税収の陥没と終わりの見えない減税と公共事業頼みの不況対策による歳出圧力の増大を、国債と交付税特会の借り入れ、財源対策債という借入金で賄ってきたことの結果である。

その補填措置 交付税特会の借り入れ原則廃止と臨時財政対策債
 今回で地方交付税法第6条の3第2項の状況になって5年になる。そのための制度改正は、新たに2001年度から2003年度の3年度間の措置として次のような仕組みを導入することが自治、大蔵(現総務、財務)両省間で合意を見た。

 第一には、財源不足対策として交付税特会による借入金は行わないことが取り決められた。この借入金は、通常収支不足の補填分、および所得税と税法人税の減税による交付税減の補填に係る補填分、合わせて、99年度に8兆4,200億円、2000年度に8兆881億円とされたものである。

同時に交付税特会の借入金の元利償還を平成19年度、すなわち2007年度以降に繰り延べる。この繰り延べは、2001年度は1兆7,300億円である。また、1994年度から復活した財源対策債(建設地方債)による補填措置は引き続き行う。さらに地方交付税法付則に定められた財源対策に係る国の一般会計からの利子補給を中心とした法定加算を行う。

 第二には、以上の(1)借り入れ金元利償還繰り延べ、(2)財源対策債、(3)法定加算、の措置をとってもなお残る地方財源不足については、国と地方とが半分ずつ責任を持って補填することが合意された。国の責任による補填措置としては、一般会計からの加算金として「臨時財政対策交付金」を交付税特会に繰り入れる。

 そして地方の責任における補填措置は、「臨時財政対策債」を発行することとした。これは交付税特会ではなく、都道府県・市区町村が発行する一般財源債である。いわゆる赤字地方債である。

 これが、2001年度の地方財政対策のハイライトである。つまり、交付税特会による借り入れを各地方自治体が行う一般財源債に振り替えるということになる。いいかたを変えると、交付税特会の借入金によって交付税を増額(法定の交付税率による交付税額を上回って交付税を増額)し、それによって一般財源不足を補填してきたのだが、その増額分を一般財源債という地方債に振り替えることになる。そのためもあってか、この「臨時財政対策債」の元利償還金相当額は、その全額を後年度の地方交付税の基準財政需要額に算入することとされている。

 これらの措置を地方交付税法第6条の3第2項に定める制度改正とし、地方交付税法や地方財政法などの改正を行うとしている。  このことを「財政課長内簡」(平成13年1月22日総務省自治財政局財政課長 河野栄)は次のように言っている。「平成10年度から12年度までの間においては、基本的に財源不足を交付税特別会計借入金によって措置し、その償還をそれぞれ国と地方が折半して負担する措置を講じてきたところである。

 平成13年度の地方財政対策においては、これを見直し、国と地方の責任分担の明確化、国と地方を通ずる財政の一層の透明化等を図るため、平成13年度から15年度の間においては、この間に予定されている交付税特会借入金の償還を平成19年度以降に繰り延べることとした上で、なお生じる財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については「地方財政法」(昭和23年法律代109号)第5条の特例となる地方債(以下「臨時財政対策債」という。)により補填措置を講じることとしたところである。」

「臨時財政対策債」の意味
 今回の臨時財政対策債は、地方財政法第5条の特例として定められることになる。現在の地方財政法における起債の原則は、建設地方債しか認めないところにある。この原則を認めながら、緊急避難的に赤字地方債の発行を認めるようにという要求は、地方財政の危機のときを中心にしばしば表面化した。昭和40年代の東京の美濃部都政のときがその最も激烈な表れであった。また、1998年の大阪府財政の危機を回避する手段として、赤字地方債の発行が真剣に検討され、一時、日本経済新聞などに自治省が検討しているといった情報が登場したこともある。後者の場合は、恐らく財政局レベルで棄却され、改めて歳出削減策を先行させ、徹底させる方向で事態がまとめられていったように見受けられる。

 もっとも、赤字地方債(一般財源債)は、現行の地方債制度のもとでも、次の場合は例外として認められている。それは退職手当債と減税補填債、減収補填債である。この中で退職手当債は、その許可の条件が厳しく、職員定数の削減や給与水準や手当ての抑制、適正化が強く求められる事例が多い。

 さらに、今回の赤字地方債と類似の一般財源債を単年度であるが認めたことがある。昭和50年度からの第一次オイル・ショックによる景気後退にともなう税収の落ち込みにより昭和51年度の地方財源が2兆6,200億円と見込まれた。この財源不足に対処するために、1兆2,500億円を地方債の増発で、残りの1兆3,700億円を交付税特会の借入金で賄うとされた。この増発地方債のうち4,500億円は、地方財政法第33条の2の規定による特例債で、建設事業の裏づけのない赤字地方債であった(ぎょうせい『地方財政小事典』)。

 いずれにしても、赤字地方債というものは、一時的・例外的な対策であるし、そういったものとして取り扱う必要がある。恒常的あるいは経常的経費の財源として地方債という借入金を充当することは、財政秩序を維持すためには、厳格に戒めることが必要である。緊急避難的に認めるとしても、それはあくまで短期の例外としてのものでなければならない。この扱いを間違うと、財政膨張に歯止めがかからず、放漫な財政運営を放置することになるからである。

「臨時財政対策債」の評価
 今回の臨時財政対策債は、まず交付税特別会計が借入を行わず、その振り替えとしてそれぞれの府県、市町村に発行が認められる。つまり、交付税特会が借金をするのではなく、各府県、市町村が直接に借り入れを行うことを意味する。このことは、各府県、市町村からは見えにくかった借金を表面化させることとなる。地方交付税特会の借入金の最大の難点は、前にも触れたように、地方自治体が借金をしているという感覚を持ち難いという点である。

 たとえば、2000年度の場合、交付税特会の出口ベースの交付税は21兆7,764億円であるが、そのうち借入金は8兆884億円(前出)であるから、交付税総額の約37%が借入金で構成されていることになる。したがって、100億円の交付税を配分された都市であれば、そのうち37億円は借入金なのである。しかし、配分を受けた都市にとっては、あるいはその議会や市民にあっても、借金をしているという感覚を持つことは難しい。借金をしながら、しかもそれに大きく依存しながら、借金をしているという気持ちを持っていないということは実は困ったことなのである。

 そういった観点から、今回の地方自治体自らの借金を表面化させる、臨時財政特例債の措置については積極的に評価したい。それは、歳入以上に膨張した歳出をコントロールするためには、債務の状況をしっかり把握することから始めなければならないからである。また、元利償還金というコストを、それぞれの持分として明晰に帳面につけておくことが不可欠だからである。

 特に平成12年度からは、この借入金は短期金融市場からの借入金であるから、直接的に金融市場に依存する交付税といういびつな姿になっているのであって、金融市場とのつきあいという観点からもコスト意識を研ぎ澄ますことはなおさら強く求められるのである。

 もちろん、この間の歳出膨張の最大の要因は、景気対策としての公共事業(建設国債を原資とする国庫補助)、年度途中の補正予算による事業の押し付け(地方負担を全額充当できる補正予算債による)、などであることは周知の通りである。中央政府の景気対策の相棒として、直轄事業負担金も拡大している。ひとえに自治体の責任で財政膨張が生じたわけではない。国の責任は重い。とはいえ、これら公共事業などの景気対策に一対一的に対応する必要はないのであって、各自治体の状況に応じて的確に対応し、選択すればよいことなのである。

 しかしながら地域の実情は、多くの首長や議会は、国の補助事業や交付税措置のある単独事業を優先的に選択し、それをむしろ活用してきたといってよい。国の施策に従って、地域での建設投資を進めることが賢い選択だと捉えてきたのである。その財源的裏づけが借入金での交付税なのであった。つまり、この公共事業などに悪乗りしてハコモノなどに安易に投資してきた自治体の責任も重いといわざるを得ない。

歳出の抑制という観点からは、できれば、後年度における償還金相当分の交付税への基準財政需要額の全額算入についても、是正していくことが検討されるべきである。

その仕組み
 2001年度において臨時財政対策債は1兆4,368億円の発行が予定されている。これは次のような過程を経て算出された額である。

 通常の収支不足の額は10兆5,923億円。まず、交付税特別会計の借入金の償還額で2001年度に償還すべき額1兆7,334億円を繰り延べる(平成19年度以降に)。建設地方債の増発を適債事業の拡大と起債充当率の引き上げで行う額が2兆5,300億円。すなわち財源対策債である。このふたつの措置の後、平成12年度以前の地方財政対策に基づき地方交付税法付則に定める加算額(既往法定分)5,695億円を交付税特別会計に繰り入れる。このうち地方交付税法付則第4条の2第2項(国負担借入金の利子負担額)に基づく加算額が1,725億円、同条第6項(公共事業等臨時特例債の利子負担等)に基づく加算額が3,970億円である。

 残余の5兆7,594億円については、国と地方とが折半してそれぞれ補填する。国負担分については、その2分の1の額(1兆4,368億円)を一般会計からの加算として交付税特別会計に繰り入れる(臨時財政対策加算)。残余の2分の1の額は、交付税特別会計が借り入れを行う(国負担の借り入れ1兆4,368億円)。これは原則として特会借り入れを行わないという新ルールの初年度の例外であって平成13年度限りの措置である。この借入金の償還に必要な財源は、法律の定めるところ(交付税法)により、平成19年度以降の各年度において一般会計から交付税特会に繰り入れる。

 地方負担分ついては、その2分の1の額(1兆4,368億円)を臨時財政対策債の発行によって補填する。残りの1兆4,368億円については、交付税特会における借入金(これも平成13年度限りの措置)で交付税を増額する。ところで、この臨時財政対策債の利子分ついても、臨時財政対策債をもって充てる(2001年度120億円)こととしている。このため2001年度においては、臨時財政対策債の発行額は1兆4,488億円を計上している。

 なお、交付税特会の借入金については、財政融資資金のほかに2000年度と同じく、民間金融機関(シ団、シンジケート団)からの借り入れに依存することとなる。

個別団体の臨時財政対策債
 臨時財政対策債は3年据え置きで償還年限20年。資金については政府資金7,244億円を用意しているが、市町村に優先的に配分する。その政府資金の個別団体の配分額は、投資的経費に充てられる一般財源相当額の範囲内としている。したがって一般財源債といいながら、実際の配分では、その多くが、特に市町村にあっては投資的経費の地方負担に充当されることになるから、発行目的は制限されることとなる。

 また、基準財政需要額の全体計画では、経常経費にかかる「企画振興費」及び「その他の諸費(人口)」について減額(臨時財政対策債に振り替え)、そして投資的経費の「その他の土木費」及び「その他の諸費(人口・面積)」の減を、単位費用の引き下げによって行う。つまり基準財政需要額から1兆4,488億円を減額する。

 この需要額の減少幅は、おおむね各団体の平成12年度の当初算定における「企画振興費」および「その他の諸費(人口)」の基準財政需要額の道府県分にあっては40%程度、市町村分にあっては15%程度に相当する。また投資的経費の「その他の土木費」及び「その他の諸費(人口・面積)」の道府県分で25%程度、市町村分にあっては20%となる見込だとされている。

 そして臨時財政対策債の各団体ごとの発行可能額は、基準財政需要額からの振り替え相当額として基準財政需要額の計算に準じて算出し、各団体の普通地方交付税の額と合わせて決定することとされている。

 また各団体がこの臨時財政対策債の発行可能額を全額発行しているものとして、それの償還に要する財源の全額を、後年度に基準財政需要額に理論算入するとしている。

 これらの措置の結果、基準財政需要額は、平成12年度当初算定に比較して、経常経費で1.0%程度(府県、市町村とも)、投資的経費で道府県が13.0%程度、市町村で9.5%程度の減少と見込まれている。

臨時地方財政対策債を発行するか
 個々の自治体にとって、ひとつの選択が求められている。それは、この臨時地方財政対策債を発行するかどうかという選択肢である。もちろん、地方債である以上起債するかどうかは最後には各自治体の裁量に属する。特に起債許可制度の廃止に向けて、2000年度で380団体程度が、また2001年度には430団体程度が、事実上起債発行について「協議制度」に移行している点を考えると、一層この選択は重要になってくる。

 実質的な財政運営を考える場合には、地方交付税の振り替えといっていい、この一般財源債を発行しない手はない。ほとんどの団体が積極的に起債をするであろう。しかし、起債の権限をもつ地方自治体として、起債しないという選択肢もあっていい。これを機会に、歳出抑制の方向に転換するひとつのてことして考えることも、ひとつの見識であろう。

恒久的減税による財源不足補填
 恒久的減税による地方財源不足は、第一には地方税の減少となり、第二には地方交付税の減額となっている。この両者で3兆4,330億円である。この補填は、

(1)地方税の減収(1兆9,793億円)の補填

1) たばこ税の一部地方移譲1,328億円。

2) 法人税の交付税率の引き上げ 32%から35.8%に。4,499億円。

3) 地方特例交付金 減収見込み額の4分の3から上記のふたつの措置を除いた額、9,018億円。

4) 減税補填債4,948億円。

(2)地方交付税の減収1兆4,537億円の補填。

  国と地方が折半して補填する。それぞれが交付税特会の借り入れを行う。

地方交付税の総額と単独事業
 以上のような措置がとられた結果、2001年度の地方交付税の総額は、20兆3,498億円となり、前年度比1兆610億円減少した。これは5.0%の減少率となる。2001年度の予算を考える場合、普通地方交付税も特別地方交付税も2000年度を下回るものとしておかなければならない。そのもっとも大きな要因は、基準財政需要額の臨時財政対策債への振り替えであることは既にみてきたとおりである。

 もうひとつの要因は、地方単独事業の規模是正であると考えられる。地方財政計画上の単独の建設事業は、2000年度の18兆5,000億円から17兆5,000億円に、1兆円、5.4%の減となった。これで単独事業は、地方財政計画上3年連続して減少することとなった。この減額は、実績値に近づけるためのもので、現在の投資水準を引き下げるものではない、と説明されている。事実、2000年の秋の段階でも、年度の実績として13兆円を越えるかどうかという水準であったと伝えられる。特に府県における単独事業の落ち込みが著しいようだ。

 これは直接的には、第三次地方財政危機のもとで、特に府県での税収の落ち込みが大きく、他方で今までの投資のつけとしての公債費負担の急上昇という財政負担の顕在化によって、単独事業を取捨選択する動きが本格化したためであろう。つまり、ここには一種のビルト・イン・スタビライザー機能が働いているといってもよいのであろう。

 もっとも、国庫補助事業もマイナスになっている。すなわち、2000年度の9兆9,147億円から、2001年度においては9兆6,705億円と、2,482億円、2.5%の減となっている。これは補助事業の絞込みが行われた結果とも考えられる。

 一方、一般行政経費は、前年度の19兆7,087億円から、20兆5,994億円と、額にして8,907億円、率にして4.5%の伸びとなっている。

交付税制度を守るための改革
 これらの結果、地方財政計画の規模は、89兆3,071億円になり、前年度を若干上回ることとなった。(またこれらの措置の結果、国と地方との財政関係は付表2のようになった。)しかし、これは公債費が前年度の12兆991億円から12兆7,901億円に5.7%も伸びる一方、一般歳出は73兆9,854億円から73兆5,548億円に0.6%マイナスになったため、その差し引きを反映したもなのである。つまり、借金返済分が伸びて歳出の規模を拡大している一方で、行政サービスは縮小せざるを得ないという現実を浮かび上がらせるものとなっている。

 その歳出規模の実質的な縮小は、投資的経費の抑制として現れている。経常経費系統はむしろ伸びているのである。

 このことは、歓迎すべきことである。というのは冒頭に触れたように、国の財政構造改革と連動して、財政秩序の回復、自己責任原則の確立を主張する側から、地方交付税廃止論を含む地方財政批判が強いなかで、地方財政調整制度としての地方交付税制度の意義を守るためにも、交付税の規模を抑制することが必要だと考えるからである。

 地方交付税制度の意義とは、基本的には、この国のどこにいても等しく行政サービスを受けることができるという結果の平等を実現するところにある。それに対して、交付税廃止論に代表されるのは、合理的個人を主体とした自己責任の世界の実現であり、結果の平等ではなく機会の平等の徹底である。

 つまり、市場の競争にさらすことによって、自己責任による効率的な行政運営が実現できるという考え方に対して、どこに居ても受けることのできる行政サービスの等しい水準を保障することで、政治的あるいは社会的な安定を確保し、人々の生きる権利を保障しようというのが地方交付税制度の意義だと言ってよい。このことは、交付税の財政調整制度としての基本的意義であり、なお維持すべき機能である。

 ただやっかいなのは、このような交付税に結果の平等の実現を強く求める立場は、しばしば強い集権制とパターナリズムをもたらす場合があり、自由で自治的な社会システムの構築という命題と対立することがあるという点である。市民社会を新たにつくり自治を発展させるという点では機会の平等と同時に社会的に公正な競争を実現し、そのための適切な公的規制が求められる。競争的市場の社会的規制と、市場によらない公的セクターとの組み合わせ、すなわちセイフティーネットの構築が必要である。つまり両者のバランスのいい制度ミックスこそ望ましいといえるのである。

政府債務の残高
 2001年度の国と地方の予算案では、既に指摘してきたようにいずれも多大の債務を前提にして組まれている。国債発行額は、建設公債が8兆7600億円、特例公債が19兆5580億円で合計28兆3180億円となっている。公債依存度は34.3%となっている。前年度は、当初予算では、建設国債9兆1500億円、特例公債123兆4600億円、合計32兆6100億円であった。対前年度比4兆2920億円マイナスだが、これは税収の回復を読み込んだ結果である。

 地方債は、地方債計画においては16兆4998億円(前年度16兆3106億円に対して1.2%増である。)が計上されている。このほかに、交付税特会の新規借り入れが4兆3487億円、公営企業債の増加などがある。

 このために、2001年度末には、国の債務残高は506兆円程度でそのうち普通国債残高が389兆円程度と見込まれている。また、地方政府の債務残高は、188兆円程度となる見込み。そのうち交付税特会の借入金残高は42兆5000億円で、地方の負担にかかる額は28兆5000億円程度となる。

 このように政府債務の残高は、666兆円にのぼるとされている。これは政府の経済見通しによる国内総生産(GDP)に対する比率では、128.5%に達する。

公債費負担対策
 この間の地方財政の硬直化の第一の要因は、何度も触れてきたが公債費の増嵩である。このため、個別団体の公債費負担を軽減するための対策が、前年度に引き続いてとられるとともに、大幅に拡充されることとなった。

(1)普通会計における高利の公的資金に対する特別交付税による利子補給

1) 平成11年度の起債制限比率が全国平均以上

2) 同経常収支比率が全国平均以上

3) 同財政力指数が全国平均以下

 のいずれかに該当する団体について対象とし、利率7.0%以上の地方債について。利率5.0%を超える部分に対して、利子補給を行う。対象となるのは2600団体程度、500億円程度が見込まれている。

(2)公営企業借換え債についても、資本費負担が著しく高い一定の地方公営企業債について措置することとされている。

市町村合併準備補助金など
 2000年度に創設された合併準備補助金と合併市町村補助金に加えて、新たに都道府県体制整備補助金を創設する。

 その他に、次のような市町村合併推進策が盛り込まれた。

(1)平成17年3月までに合併を行った団体に3ヶ年にわたり特別交付税措置。コミュニティ施設、公共料金格差是正。公債費負担格差是正。土地開発公社の経営健全化など。10万人同士で12億円程度、5万人同士で9億円程度、1万人同士で6億円

(2)合併移行経費に対する財政措置(特交)電算システムなど。

(3)普通地方交付税の算定特例。合併算定替えを10年間。

(4)まちづくりの建設事業への財政措置。特例地方債を充当(充当率95%)、原理償還金の70%を交付税措置。

(5)合併市町村振興基金の造成に対する財政措置。特例地方債(95%充当率)、70%交付税算入。

(6)合併直後の臨時的措置に対する財政措置。普通地方交付税の合併補正、基本構想等の改訂、システム統一、住民負担平準化など。

(7)都道府県の行う支援措置に対する財政措置。(特交措置)

(8)合併準備措置への財政措置。(特交措置)

(9)都道府県の行う調査・研究に対する普通交付税措置。

「財政構造改革」に向けての課題
 以上に見てきたように、2001年度の地方財政対策、地方財政計画は、多額の借入金を接ぎ木して組まれた。このような債務超過状態が長続きしうるとは考えられない。現在はまだ国民の異常ともいえる高い貯蓄率に支えられて、政府債務はなお市場で消化されている。債券市場は株式市場とはことなり、外国資本はほとんど算入していない(算入できていない)ために内国債として取り引きされているから、政府の債務は国民の債権であり、重要な金融資産を構成していることも重要な事実である。しかし、ある日国の信用が失われて国債の未達のような事態が起きたときは、金利の急上昇と株の暴落、国債の日銀引受と財政インフレーションという破滅的な、ハードランディングの展開が無いとはいえない。そしてアメリカの債権暴落を通じた日本発の世界恐慌という、高い代償を払わなければならないというリスクがますます高くなっていることも事実であろう。

 このため、国と地方を通じる「財政構造改革」はすぐにでも着手すべき最重要の政治課題である。

 地方財政の場合は、この「財政構造改革」は同時に「分権的財政構造改革」でなければならない。地方分権改革の財政的根拠をつくることでもある。したがって、次のような諸課題が同時的に追求される必要があると思われる。

(1)まず、歳入の確保策とともに、歳出の見直しが急がれる。これから見通しうる将来においては、歳入は増加するとは考えにくい。もし予想以上に増加した税収は、当面は債務の返済が優先する可能性がある。一方で、高齢社会の圧力は毎年高まるし、廃棄物対策も急がれる。地球温暖化対策や環境ホルモンなどのように、これまで未知の政策領域での行政需要は高まる。増加する歳出と伸びない歳入という構図は、一層深刻化するにちがいない。このような所与の制度のもとでの、歳入・歳出バランスの確保という困難な課題がある。

(2)投資的経費に係る国庫補助負担金を原則として廃止し、地方債に振り替える。国庫補助負担金の裏負担としての一般財源負担(需要額算入分)も同時に起債に転換する。つまり、建設事業は原則として起債によっておこなうこととする。

  これは今回の地方財政対策のメイン施策である、需要額の起債振り替えを、投資的経費全体に拡大することでもある。平成12年度、2000年度の基準財政需要額のうち、都道府県分が4兆6712億円、市町村分が6兆円である。合計では10兆円強ということなる。このほかに、公債費として府県で1兆7162億円、市町村で1兆5622億円ある。この投資的経費の需要額の半分を起債に振り替えることで、財源不足を圧縮することが考えられてよい。

  このことは同時に、中央省庁の建設事業の国庫支出金を廃止することになるから、分権改革の中心的なテーマを実現することでもある。また見方を変えれば、いわば建設国債を地方債に振り替えることでもある。借金の主体を明確にという、赤字地方債を仕組んだ政策意図を徹底することでもあるのではなかろうか。

  しかし、経常的経費にかかる国庫負担金(義務教育教職員給与負担金、生活保護費、高齢者福祉費、介護保険負担金、環境保護経費など)は、重点化しながら拡大強化することも検討すべきである。その際、これらは統合補助金としてより分権的なものに転換することが必要である。

(3)信用不安からのインフレーションや、地域雇用の崩壊、生活破壊に対して、その暴風から住民、特に社会的、経済的なハンデをもった住民の生活を守るシェルターとしての地方自治体の存在が問われている。そのような地域社会の抵抗力を高めるために、地域社会そのものの再活性化が求められている。それは行政と市民と、事業者のパートナーシップを確立することでもある。

  福祉コミュニティの創出を目ざし、共生型の地域循環型の経済構造を組み込んだ地域経済の活性化と持続性を確保することが求められている。ざらに交流人口を積極的に取り込むことのできる、世界に開かれた地域社会を構築することも、シェルターとしての地方自体に求められていることに違いないのである。

(4)そのためにも、現在の各自治体の財政状況の抜本的な改善と、組織的整備、行政改革が課題である。その前提としての財政情報の公開がまず必要であり、その財政情報を読み解ける市民的専門性を確立することが求められる。つまり専門家と市民とをつなぐインタープリター(媒介者、翻訳者)を確保することが重要である。そのための政策評価と事務事業評価によって、真に必要な事業(短期・長期)な政策と事務事業を選択しなければならない。そのためにも、開かれた行政と、その役割の転換(コーディネイターとしての行政)が図られる必要もある。

 いずれにしても、市民とのあいだに、適切な責任関係、と信頼関係とを意識的に構築することがなければならないのである。

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