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2000年度地方財政対策の特徴と課題

(初出:『自治総研』2000年2月号)


目次
はじめに
1、財政危機の現在
2、1998年度の市町村決算から
3、2000年度政府予算
4、地方財源不足は13兆3699億円
  うち通常収支不足は9兆8673億円
 (1)一般会計からの加算
 (2)清算の繰り延べ
 (3)交付税特会の借り入れ 短期金融市場への依存
 (4)財源対策債
 (5)なぜ通常収支不足か
5、恒久的な減税に伴う地方財政への影響とその補填
 (1)地方税の減収補填 たばこ税の一部移転、法人税の交付税率、特例交付金
 (2)交付税の減収
6、公債費負担対策
7、国の一般会計からの後年度加算
8、統合補助金の創設
9、介護保険の導入と財政措置
10、分権の財政的基盤を

はじめに
 来年度の地方財政対策は、1999年の12月24日に自治と大蔵両大臣の折衝によって、決着を見た。20世紀最後の地方財政対策は、主として次のような特徴がある。
(1)地方財源不足が前年度に引き続き、13兆円を超える規模となり、
(2)そのために地方交付税法第6条の2第3項の事態に引き続きなった。
(3)交付税特会の借入金は8兆8千億円にのぼるが、資金運用部の原資不足のおそれから、全額民間の短期市場からの借入れでまかなうこととされた。
(4)98年度決算ベースでは、公債費負担が上昇して財政の硬直化が今までにない水準に達した、
(5)一方で、財源対策債の大量発行もあり、公債費負担対策が大きく拡大された。
(6)単独事業費は前年度比マイナスとなり、地方債依存度も若干低下するなど、地方財政の景気対策への動員に限界が見えたこと、などである。

1 財政危機の現在
 98年度の途中から明確になってきた、第三次地方財政危機の状況は、都道府県の98年度の決算に次のように現れている。(1999年12月13日の自治省発表資料による)。

 決算収支では、実質収支に赤字を計上したのは、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の4都府県である。

4都府県の実質収支(億円)
 1998年度1997年度
東京都△1,067594
神奈川県△30322
愛知県△22879
大阪府△12010

 このように、都道府県が実質収支の赤字を計上したのは、1981(昭和56)年度以来で、17年ぶりということになる。しかも、4都府県が一斉に赤字になるということは、単独の自治体が赤字に転落する場合のように、その団体の経営が失敗したというような個別の自治体の問題ではないのであって、いわば地方財政が直面している構造的問題が、4団体の実質収支の赤字として表面化したのである。

 単年度収支、実質単年度収支も2,300億円以上の赤字となった。この結果、都道府県の積立金(財政調整基金と減債基金、特定目的金の合計)は、1997年度末の5兆4,854億円から1998年度末には4兆6,789億円に、8,065億円も縮小した。

 一方で、財政の硬直度を示す経常収支比率は、この集計を始めた1969年度以降で最も高かった1997年度の91.7%よりも2.5%も上昇して、94.2%となった。経常収支比率が100%を超える団体が大阪府など3団体、90%以上の団体は前年度から6団体増加して22団体となった。この経常収支比率を上昇させた要因は、公債費負担の増加である。公債費負担比率は7年連続して上昇し、過去最高であった97年度の14.6%を1.0%上回る15.6%となった。公債費負担比率が15%以上の団体は、35団体である。

 また性質別経費でみると、人件費は前年度に比較して0.1%の伸びで、ほぼ横ばいであった。額で言えば、97年度の15兆9,208億円が98年度は15兆9,344億円となり、136億円の微増である。しかし、公債費は、4兆7,910億円が5兆990億円に、6.4%の増加となった。そして生活保護などの扶助費は、4.1%増加の1兆3,534億円と拡大した。

 今回の財政危機は、第一には、豊かな地方税という財源的に恵まれた大都市部の都府県と、そのエリアの都市において顕在化したのが特色である。つまり、地方交付税に依存しない不交付団体かそれに近い自治体ほど、財政的な危機に立たされたのである。過疎地などもともと地方税という財源基盤が無く、地方交付税に依存する度合いの強い団体は、交付税というバッファーのおかげで、比較的ショックを受けにくかったといえる。

 したがってまず、地方税の減収、それも大幅な減収を、基金の取り崩しと起債によってカバーする努力が続けられたのである。この歳入の減少に対応して、歳出を削減できれば財政危機は生じないわけである。

 ところが歳出の抑制ないしカットは早急にはできないまま推移したから、その間に収支バランスが大きく崩れることとなった。つまり公債費や扶助費という経費が増加の一途をたどる一方、人件費はベース・アップの凍結などの非常手段と、定員不補充を主たる政策手段とした抑制ないし縮減の努力にもかかわらず、一定水準を下回ることができないという条件がある。さらに、この税収の陥没を招いた根本原因である平成大不況は、1998年の年末にかけてはデフレ・スパイラルに陥るようなかたちで悪化したために、引き続き公共事業の拡大を起債に依存しながら追求せざるを得ず、この点からも歳出は膨張することとなったのである。これに特別減税・制度減税、さらに99年からの「恒久的減税」が追い討ちをかけることとなっている。

2 1998年度の市町村決算から
 2000年の1月に公表された1998年度の市町村の普通会計の決算も、都道府県ほどではないものの、前年度に比較してかなり悪くなっている。

 決算規模は歳入総額で54兆1,768億円(対前年度比2.6%増)、歳出総額では52兆3,806億円である(同1.9%増)。財政規模が拡大した要因としては、歳出では経済対策が実施され、景気対策への地方財政の動員が引き続き行われたこと、扶助費(6.8%増)や公債費(5.4%増)が増加したことなどが挙げられる。

 ただし、普通建設事業費は、3年連続して伸びがマイナス(1.3%減)となったことが注目される。これは単独事業費が大きな減少を示したことによる。単独事業費は6.0%減、補助事業費は7.2%の増加、国直轄事業負担金は24.0%の著増である。

 歳入面では、地方交付税が借入金に依存しながら5.1%増加した。地方消費税交付金の平年度化に伴う増加もある(340.7%増)。国庫支出金(これも国債に依存したものだが)も15.6%も増加している。

 実質収支の赤字団体は、3,255の市町村のうち、25団体が赤字となった。これは1997年度に比較すると、12団体増加した。新たに赤字団体となったのは18団体である。ただしこのうち4団体は、合併に伴う打ち切り決算によるものである。したがって、通常の決算では新たに14団体が赤字を計上することとなった。

 経常収支比率は、集計開始以降(1969年度以降)で最も高かった1997年度の83.5%をさらに1.8%上昇して、85.3%となった(特別区と一部事務組合を除く加重平均)。これは9年連続しての上昇である。この比率の上昇は、経常収支比率の分子である経常歳出充当一般財源の伸びが、公債費などの増加で3.5%も増加したのに、分母である経常歳入が地方税の減少などにより1.4%増と伸び悩んだ結果である。

団体区分別経常収支比率
 大都市中核市都市町村
1998年度91.4%82.8%86.7%80.1%
1997年度88.2%82.2%85.1%78.6%

 公債費負担比率は、8年連続して上昇し、一部事務組合などを含む加重平均では、15.8%と集計開始後(1969年度)最悪の記録を更新した。いまや公債費負担が財政の硬直性を強めている第一の要因となっている。市町村(特別区と一部事務組合を除く)では、警戒ラインといわれる15%を超える団体が1,939団体となり、全市町村煮染める割合は60.0%(前年度56.4%)となった。20%以上の団体は766団体と71団体増加している。

3 2000年度政府予算
 2000年度の政府の予算案は、前年の補正予算を引きつぎ、公共事業等の予備費に5,000億円を計上するなどして、高い水準での公共事業量を維持しながら、一般歳出を前年度比2.6%増とした。この財政規模の拡大は、32兆6,100億円という公債に依存して行われた。このうち建設公債は9兆1,500億円、特例国債が23兆4,600億円である。これは、度重なるアメリカ政府やIMFなどからの、国際的な日本経済に対する拡張の要求もあって、財政再建を先送りしながらの政策判断の結果である。

 税収の見込みは、48兆6,590億円と前年度の47兆1,190億円を3.3%上回る伸びを見込んでいる。しかし、この伸びは、郵便貯金の定額貯金が満期を迎えるための、利子課税分が3兆円以上に見込まれるためであって、これを控除すれば、恒久的減税の平年度化の影響もあってかなり大きな落ち込みである。

 国債費は、21兆9,653億円と10.8%の、対前年度比での伸びとなった。公共事業は、前年度の当初予算と同額の9兆4,307億円となった。

 なお、「平成12年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」においては、2000年度の国内総生産(GDP)は498.9兆円程度、名目成長率は0.8%の伸び、実質成長率は1.0%アップとなっている。なお地価を含む物価の下落基調にある。

4 地方財源不足は13兆3,699億円  うち通常収支の不足は9兆8,673億円
 2000年度の地方財政は、7年連続して地方財源不足となった。内訳は、通常収支の不足分が9兆8,673億円。恒久的減税の平年度化にともなう影響額が3兆5,026億円と見込まれている。

 この結果、2000年度も1996年度以降5年連続して地方交付税法第6条の3第2項の規定に相当することになった。つまり通常収支での財源不足が9兆円をこえ、交付税総額の1割以上、三年度連続して、という条件に該当するわけである。このために、地方財政にかかる制度の改正、又は交付税率の引き上げ、地方行政制度の改革が求められているのである。

(1)一般会計からの加算
 既に1999年度において、法人税の交付税率を32%から32.5%に引き上げ、2000年度において35.8%にする改正、および国のたばこ税の一部を移譲するなどの措置がとられているが、さらに来年度については、国の一般会計からの繰入金を7,500億円とやや拡充したのが目立つ。この中身は、第一には、地方交付税法付則第4条の2第2項(国負担借入金の利子負担相当額)に基づく加算額が2,087億円、同条第6項(公共事業等臨時特例債の利子負担相当額)に基づく加算額が3,913億円である。
 第二には、臨時特例加算額1,500億円が新しくとられた措置で、これについては同条第6項により2001年度から10年間、それぞれの年度の交付税に加算する額から差し引くというかたちをとる。つまり公共事業等臨時特例債にかかる国の一般会計からの将来の加算額を、前倒しして2000年度の財源とするのである。

(2)精算の繰延
 1999年度に地方が超過して配分を受けた交付税を一般会計に返済する額、1,981億円については、これを2001年度以降に繰り延べる。この返済を免れた額を2000年度の交付税財源とする。

(3)交付税特会の借入金 短期金融市場への依存
 以上のふたつの措置をとったのち、残る不足額、つまり要補填額のうち6兆4,892億円については、国と地方が折半して、それぞれの責任において特別会計での借入金をすることで補填する。このうち国の負担にかかる3兆2,446億円については、後年度(2001年度以降)にその元利償還に要する経費を、国一般会計から交付税特別会計に繰り入れる。
 なお、1999年度まではこの交付税特会の借入金は、もっぱら郵便貯金や年金原資を運用している資金運用部から、短期の、つまり一年未満で返済するかたちで借入をしていた。
 2000年度については、郵貯の定額貯金の流出の程度によっては資金運用部の原資が不足するおそれがあり、基本的には民間の短期金融市場から調達することが、大蔵省と自治省の間で合意されている。つまり、交付税の原資に、民間の短期金融市場のマネーが動員されることとなった。これによって財政と金融の垣根は非常に低くなることが予想されるのである。金融市場の短期金利、長期金利の動向によっては、交付税財源が不安定になり、あるいは目減りや、資金の確保そのものに問題が生じる可能性が高まったといえる。

(4)財源対策債
 残りの通常収支不足分は2兆4,300億円だが、これは建設地方債である財源対策債を各都道府県、市町村で発行してもらう。これは起債充当率の臨時的引き上げというかたちをとる。一般公共事業の起債充当率の臨時的引き上げと対象事業の臨時的拡大、および単独事業である地域総合整備事業債の一部の起債充当率の臨時的引き上げなど。このため、事業によっては、起債充当率が95%となり、また100%という一切、手持ちの現金を必要としないものも生じる。財政課にとっては、こと建設事業に関しては予算が組みやすい状況が続く。もちろん後年度負担を考えなければの話だが。
 しかし、これら財源対策債にかかる事業の利用については今まで以上に慎重にならざるをないであろう。

(5)なぜ通常収支不足か
 このような10兆円になんなんとする通常収支の不足はなぜ生まれるのか。
 第一には歳入面では、
1)平成大不況下で、企業の所得がマイナスを続け、個人の給与所得も譲渡所得も対前年度比マイナスという状況がまずある。とくに法人事業税への依存度の高いところほど強く影響をうけることとなった。
2)は、この不況対策のために、経済の活性化、すなわち個人消費の拡大、投資に活発化をうながす手段として、所得税と法人税の大幅な減税が行われたことである。
 第二には、歳出面である。
3)同じく景気対策としての公共事業の拡大とその投資規模の維持に、地方財政が動員されてきたことによる財政の膨張がある。これはそれぞれの年度での建設事業の水準を、単独事業や補正予算事業を含めて、高水準に維持することになった。それを縮小するのには、政治的にも大きな努力がいる。そして、建設事業にともなう借金の元利償還金の負担の急上昇がある。
4)歳出面では、もうひとつ、府県財政に特に顕著だが、教育費と警察費に係る人件費のように、極めて下方硬直性の強い経費が多いということがある。歳出面での強い下方硬直性をもった経費は、扶助費などを見ても都市的地域であればあるほど構成比も高く、すぐに手を入れられない性格の経費なのである。つまり、地方税という主たる歳入が急角度で落ち込んでも、それに連動して歳出は減少させることが困難なのである。

5 恒久的減税に伴う地方財政への影響とその補填
 恒久的減税にともなう2000年度の地方財政への影響額で、何らかの補填措置が必要とされた額は、3兆5,026億円である。この補填措置は以下のとおりである。

(1)地方税の減収補填

1)たばこ税の一部の地方移転 国のたばこ税の一部(千本当たり410円)を移譲した分が1,358億円。

2)法人税の地方交付税率の引き上げ 35.8%に引き上げることで3,780億円の増収を見込む。

3)地方特例交付金恒久的減税の減収見込額の総額の4分の3の額から上記のふたつの措置を除いた額で9,140億円。

4)減税補填債恒久的減税の減収見込額の4分の1に当たる額、4,759億円については減税補填債を認める。

(2)地方交付税の減収補填
 地方交付税の減収は、1兆5,989億円と見込まれる。これは国と地方が折半して負担することとされ、いずれも交付税特会における借入金でまかなう。国の負担分については、2001年度以降に、一般会計から交付税特会に繰り入れられる。

 地方財源不足を補填する以上の措置をとることによって、2000年度の地方交付税の総額は、21兆4,107億円となった。これは、前年度に比べて5,465億円、2.6%の増となっている。しかし、付税の総額が確保できて良かったといえない地点にまで、われわれは来ているようにも思われる。

 このような交付税の借入金による拡大については、既に財政調整制度の破綻状況を示しているといっても良いのである。地方交付税総額の37.8%が、借入金でまかなわれ、しかも財政資金ではなく、民間の金融市場からの直接の調達という領域にまで踏み込んでいるのである。1999年の夏に見られた光景は、示唆に富んでいる。大阪府が地方交付税として3000億円配分を受けることになり、また大都市部の都市でも予想外の交付税を受けて、財政課の顔が久しぶりほころんだのは事実だ。しかし、交付税を獲得しようとどれだけ努力したであろうか。棚からぼたもち風の交付税への依存関係の進化は、自力での財源確保とそのための行政的、政治的努力をはらう意欲を、なにほどか削いだはずだ。一種のモラルハザードが生じている可能性が高い。

 大都市部の都市については、交付税に依存しないですむ、地方税体系を早急に構築することが求められる。都市の独立税源を確保することが急務である。それと平行して交付税総額を圧縮して、真に財源の脆弱な地域の財源保障に特化した機能的な制度に転換することと、国庫補助負担金の統合化をさらに徹底して進めつつ、奨励的補助金の縮減を行うことなどが必要である。

6 公債費負担対策
 地方財源不足が、再度発生するようになって7年間に、膨大な借金が行われてきた。交付税特会の借入金の残高は、2000年度末で約38兆1千億円。そのうち地方の負担分が26兆3千億円と見込まれている。これは1999年度末での、30兆円と22兆2千億円の見込みをいずれも大きく上回る。

 また、地方債を含む地方の借入金の残高は、2000年度末で187兆円程度と見込まれている。これはGDP(2000年度で498.9兆円程度)の37.5%という水準となる。

 個々の自治体の負担は、ある意味ではもっと厳しい。公債費負担の急上昇で経常収支比率が90%ラインを大きく超える自治体にとって、国の景気対策につきあっていられない、というのが正直な感想だろう。事実、各都道府県の2000年度当初予算はおしなべて前年度比でマイナスとなり、とくに公共事業や単独の建設事業は、政府経済見通しでの事業量をかなり大幅に下回りそうである。

 このこともあってか、2000年度は公債費負担対策が大幅に拡充されたこと目立つ。

(1)指定都市を除く市町村での2000年度の臨時措置として、公営企業金融公庫からの借入金について、借り換えを認める。地方債計画に「臨時特例借換債」の項目を設ける。対象団体は、98年度の経常収支比率が全国平均以上、又は財政力指数が全国平均以下の団体で、利率7%以上の普通会計債である。この対策の対象となりうる団体は1,700団体程度である。対象地方債残高は900億円程度だとされる。

(2)高利の地方債(利率7%以上)について、98年度の地方債許可制限比率(3ヶ年平均)が、全国平均以上の団体が対象で、当該地方債の5%を超える部分について特別地方交付税で利子補給を行う。この対策の対象となる団体は1,200団体で、対象利子額は400億円ほどと見込まれている。

(3)公営企業金融公庫の公営企業債の借換。資本負担が著しく高い、上水道、下水道、工業用水道、地下鉄などの公営企業が対象となり、利率7.3%以上の600億円程度の企業債を借り換える。400団体程度が想定されている。

7 国の一般会計からの後年度加算
 ところで、次の額、6,561億円は、法律(地方交付税法の付則)の定めるところにより、2006年度以降(7年後)の地方交付税に加算することとされた。これらの多くは、本来ならば、2000年度において加算される約束が法律上あったもので、今回一般会計から交付税特会に繰り入れるべき額であるが、国の一般会計に余裕がないため、繰入を先に、つまり7年後に、延ばしたものである。いわば一種の徳政令である。もっとも、これらは地方団体側の債権で、これを利用して将来の交付税財源を一部確保しているということもできるのだが。

(1)1992年度までの国庫補助負担率の引き下げ措置(投資的経費)に伴い、一般会計から特別会計に繰り入れることとしていた額  3,359億円。

(2)1993年度の投資的経費に係る国庫補助負担金の見直しに関し、一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額  938億円。

(3)1997年度の地方消費税の未平年度化の影響に関し、一般会計から交付税特会に繰り入れることとしていた額  80億円。

(4)1981年度、1990年度から1996年度、及び1998年度における交付税特会借入金に関し、一般会計から交付税特会に繰り入れることとしていた利子相当額  1,824億円。

(5)2000年度の国民健康保険制度の暫定措置に関する一般会計から交付税特別会計への繰入額  360億円。

8 統合補助金の創設
 国庫補助負担金は、普通会計に係るものは、2000年度には13兆384億円と積算されるが、これは前年度の13兆2,359億円より1.5%減となっている。

 この中で、地方分権推進計画(平成11年3月26日閣議決定)によっていくつかの制度改正が行われている。

 ひとつは一般財源化である。貸し金業監督事務費委託費、文化財保護事務費交付金、母子保健推進費補助金(乳児健康診査費、乳幼児健康診査費)がそれである。

 もうひとつは、統合補助金の創設である。これは、国が箇所付けをしないことを基本として、具体の事業箇所・内容については、地方自治体が主体的に定めることができることを基本的な仕組みとするものである。次の事業において創設される。

・二級河川(一級水系に準じて整備・管理する必要がある水系における基幹的な河川事業等個別補助金の対象となるものを除く)。

・公営住宅棟等

・公共下水道(大規模な事業、水質保全等に広域的な影響を及ぼす事業、終末処理場又はポンプ場にかかるものを除く)

・都市公園(防災公園、大規模公園、国家的事業関連公園を除く)

・港湾の既存施設の有効活用

・農業農村整備事業

・漁港漁村整備事業

 また、国が箇所付けをしないことを基本として、一定の政策目的を実現するために複数の事業を一体的かつ主体的に実施することができるような、次ぎに掲げる統合補助金が創設される。

・まちづくりに係る統合補助金

・住宅宅地関連公共施設等整備促進事業に係わる統合補助金

・都市再開発関連公共施設整備促進事業に係わる統合補助金

・住宅市街地整備総合支援事業における関連公共施設整備に係る統合補助金

 これらの統合補助金の創設は、数少ない分権改革における補助金についての改革提案であった。中心は、国が「箇所付けはしない」というところにある。もうひとつは、複数の事業の一体的推進というところにある。

9 介護保険制度の導入と財政措置
 介護保険制度の運用が開始されるが、その円滑な実施に向けて以下のような、ハード・ソフト面からの地方財政措置が行われる。全体の事業費は2000年度で1,000億円程度である。いずれも交付税の基準財政需要額への必要経費の算入、地方債措置とその交付税措置である。

(1)介護保険制度支援対策  500億円程度。

1 介護保険制度広報啓発

2 介護サービス基盤整備

  例 ホームヘルパー、ケアマネージャー確保対策、介護サービス参入促進事業

3 介護保険事務体制整備

4 高齢者生きがい交流支援

(2)介護保険サービス基盤の緊急整備  500億円程度

1 介護サービス関連施設緊急整備事業(継続)

2 社会福祉施設に係る用地の取得・貸付に係る地方債措置(2年間延長)

10 分権改革の財政的基盤を
 今回の地方財政対策の中では、分権改革の財政面での支持政策がいくつかでてきている。上に見たようにそれは統合補助金の創設であり、あるいは地方税のうち住民税について制限税率を撤廃することとされた点である。

 しかし、なお極めて不十分である。第二次分権改革の時代を切り開くためには、根本的な税源移譲政策と、それと合わせて新地方財源の確保政策が、実行されるべきである。その前提としては、政策評価システムの構築、情報の徹底した公開、大胆な市民参加、それらに基礎をおいた歳出構造の転換と重点化、が実現されなければならない。

 その上で、大都市部の都市と都府県を基本的に不交付団体とするような、地方独立税源を付与することが必要である。これは、既にいくつも提言されているいるような、所得税の一部(3兆円程度)を比例税率で地方所得税として移転する案と、地方消費税の税率の引き上げる案などの、タックス・ミックスが検討されなければならないであろう。その際、地方交付税の算定については、合わせてそれを不可欠な財源とする団体が主体的に係わる仕組みが構築される必要がある。交付税も自ら汗して確保する財源へと転換することが求められている。

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