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2018年度地方財政対策の特徴と論点
     地方財政計画、この10年を見ながら

                        2018年2月9日 奈良地方自治研究センター)                                        奈良女子大学名誉教授  澤井 勝

2018年度地方財政対策の特徴と課題

1、 地方財政計画とはまず財源不足を測定すること

・地方交付税法第7条は、「内閣は毎年度、翌年度の地方自治体全体の歳入と歳出の総額の見積額を記載した書類を記載した書類を作成し、これを国会に提出しなければならない」と定めている。この「書類」が「地方財政計画」とされている。
 この趣旨は、政府の予算案を国会に提出するにあたり、その、裏づけとなる地方自治体の財源保障が十分になされているか、もし財源に不足があるときは、それを地方交付税やその他の一般財源等で補填されていることを示すところにある。
 すなわち、翌年度の地方自治体の一般財源に不足があるかどうかの測定と、不足がある場合は、その補てん措置を国会に提出することが求められる。それが、「地方財政計画」と、それに先立つ、「地方財政対策」とされている。

・このような地方一般財源の「財源不足」に対しては、本来は、地方交付税よって補てんされることが期待されている。そのために、同じく地方交付税法の第6条の3第2項では次のように定めている。「毎年度分として交付すべき普通地方交付税の総額が引き続き第10条第2項本文の規定によって各地方公共団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第6条第1項に定める率の変更を行うこととする」としている。

この場合の「著しく」とは、総額の1割以上、「引き続き」とは、「3年以上」を指すとされている。

注(1)地方交付税特別会計について 「国の予算と地方財政計画」別紙1
注(2)財源対策債と起債充当率
    事業規模10億円で補助率5割の投資的事業を行うとき、地方負担の一部を起債で賄うことが許されている。この補助事業の地方負担は5億円である。この地方負担(一般財源)のうちどの程度まで起債を充てることができるかを示すのが起債充当率である。普通は起債充当率は30%から40%程度。30%だと必要な一般財源は3億5千万円となる。財源対策債の場合は、この通常債の上に、充当率引き上げ分の起債を認める。起債充当率を90%にすると、必要な一般財源は5億円の1割、5千万円になる。差し引き3億円の一般財源がこの建設事業から浮くことになるので、それを他の事業の財源とすることができる。財源対策債と言われる由縁である。


2、 地方財政計画の規模等 第1表「地方財政計画の10年」参照

地方財政の規模の推移
(1)10年前の2009年度の地方財政計画の規模は、82兆5600億円。その後、2012年度に81兆8647億円へとやや減としたのち、3018年度まで6年間連続して漸増して86兆9千億円となった。2018年度の計画規模は2009年度比較して5.26%増加している。
 ただし、政府の一般会計の予算規模は、2009年度が88兆5480億円、2018年度が97兆7128億円であるので、伸び率は10.35%である。国の一般会計当初予算のほうが地方財政計画よりかなり伸びが大きい。

(2)地方財源の不足を計算するためには、歳出と歳入の比較をするわけだが、この場合の歳出は、第1表で言えば「地方一般歳出」に当たる。一方の歳入は、「一般財源の総額」になる。
 一般歳出は2009年度に66兆2200億円、2018年度は71兆2700億円とかなり伸びてきている。7.63%の伸びである。
 一般財源とは、財源不足補てん措置後の一般財源総額を指す場合が多い。すなわち地方税、地方譲与税、地方交付税総額、地方特例交付金、それに臨時地方財政対策債の歳入見込みの額である。
 一般財源の中心は地方税であるが、これは2009年度には36兆1860億円。これが2018年度には39兆4294億円と見込まれている。9.96%の伸びだ。一般歳出の伸びをかなり上回る。
 地方譲与税は1兆4618億円から2兆5754億円に76.2%の伸びとなった。これには、2008年度に法人事業税の一部を国税化して地方法人特別税とした上で譲与税とし都道府県に配分したのが効いている。
 地方交付税の総額は、2012年度に17兆3734億円となったのち、2018年度に16兆85億円まで縮小したが、地方税と譲与税の伸びがこれを上回って伸びたため、一般財源総額は59兆800億円から62兆1159億円と増加傾向を維持できたといえる。

3、地方財源不足の額
 地方財源不足とその補てん措置の流れは、第2表にある。財源不足の総額は、2010年度に18兆220億円と山をつくるが、その後、2018年度の6兆1783億円まで傾向としては、減少している。
 以下、第2表によって、補てん措置の内容を見ていく。財源不足の補てん措置は、国と地方が折半して補てんすることが原則だが、その折半措置を取る前に、地方側ができる範囲で財源不足を埋めることとなっている。それが「折半対象以外の補てん措置」である。2018年度の数字を見ておこう。
 「折半対象以外の財源不足額」              5兆8472億円
1、 財源対策債の発行                    7900億円   
2、 地方交付税の増額による補てん            1兆2362億円
・既往法定分                      5367億円
・交付税税特会の剰余金の活用(交付残り剰余など)     750億円
・国税決算精算の先送り(前の年度で税収が減った分をもらいすぎた分を返還すべきところ、先送りする。)                  2245億円
・地方公共団体金融機構の利子変動準備金の活用       4000億円
3、 交付税特会の借入金返済の繰り延べ
4、 臨時財政対策債(既往債の借換債) 3兆8210億円
5、 別枠の加算 (2016年度に廃止)                      

この後に、残った財源不足を国と地方が折半する。
「折半対象財源不足額」                    3311億円
国は「地方交付税の増額=臨時財政特例加算」。          1655億円
地方は、「臨時財政特例債」(新規分)。              1655億円

この補てん措置の状況を地方交付税の総額の確保という視点で整理すると第3表のようになる。

4、 交付税制度を国の施策推進のために活用しようとする経済財政諮問会議と民間議員
@ トップランナー方式を18業務の交付税算定に導入 2016年度から
民間委託や指定管理者制度を導入して効率化を図っている自治体をモデルに、このトップランナー方式が導入されている。交付税算定に用いる単位費用の計算にトップランナー自治体の指定管理制度や民間委託導入後の係数を使う。単位費用の縮減を図り、5年間で1500億円程度の削減を見込む。対象事業は、
学校用務員、道路維持補修・清掃、本庁舎清掃、案内、受けつけ、本庁舎夜間警備、一般ごみ収集、学校給食(調理)、学校給食(運営)、体育館管理、プール管理、競技場管理、公園管理、庶務業務(人事、給与、旅費、福利厚生)、情報システムの運用(住民情報、税務、福祉関連の情報システム)の16事業が2016年度から。
17年度からは公立大学運営(独立法人化)、青少年施設(指定管理)の二つが追加。以後、図書館管理、博物館管理、公民館管理、児童館管理、児童遊園管理、窓口業務(戸籍、住民基本台帳業務、税証明業務、福祉業務が検討されている。

注(2)経済財政諮問会議は首相が座長。官房長官、財務大臣、経済産業大臣、総務大臣、日銀総裁と民間議員(伊藤元重学習院大学教授、榊原定征東レ相談役、高橋進日本総合研究所理事長、新浪剛史サントリーホールディングス社長)で構成される。2017年中に17回の会議を開いている。WGが置かれている。メンバーは高樋進、新浪剛史、佐藤主光一橋大学教授、牧野光明飯田市長、山田大介みずほ銀行執行役員。

注(3)普通地方交付税算定台帳 別紙2,3
・各団体の普通交付税額=(基準財政需要額―基準財政収入額)=財源不足額
・基準財政需要額=個別事業ごとに、単位費用(法定)×測定単位(国調人口等)×補正係数(寒冷補正、人口急減補正、等)
・基準財政収入額=標準的税収入額×基準税率(75%)

5、 平成30年度(2018年度)地方財政収支見通しの概要
・歳入計 86兆9000億円。
  ・地方税は横這いで39兆4294億円
  ・地方譲与税は、1.5%増。2兆5754億円
  ・地方特例交付金は、1544億円
  ・地方交付税は▲2.0%、16兆55億円
  ・地方債は0.3%増。9兆2186億円。うち臨時財政対策債3兆9865億円。」
  このほかに主な歳入として国庫支出金がある。
 ・歳出 86兆9000億円
  ・給与関係費 若干減▲0.1%。20兆3100億円。
   地方公務員定数はやや増加に転じている。平成29年12月の定員管理調査では、4月1日現在の職員数は、274万2596人で前年調査より5333人の増となった。平成6年以来23年ぶりに増加に転じた。一般行政部門は2015年から増加しつつある。教育部門はなお減少している。
 ・一般行政部門は1.4%増で、37兆600億円。
 ・公債費は▲3.0%。12兆2100億円。
 ・投資的経費は2.3%増の11兆26億円。うち補助分5兆8100億円、単独分が5兆8100億円、うち緊急防災・減債事業費5000億円。うち公共施設等適正管理推進事業費4800億円。
 ・地方一般歳出は71兆2700億円。

6、 その他
・まち・ひと・しごと・創生事業費1兆円の維持 うち重点課題対応分2500億円。
  少なくとも2019年度までは維持するとしている。

・地方版総合戦略に基づいて、地方公共団体が自主的・主体的に行う先進的な取り組みに対して、地方創生推進交付金1000億円で支援する。
 地方版総合戦略は、2015年度から2019年度を対象期間に、2015年度中に策定することを求められた。人口減少対策が主眼で、人口プラン策定が義務付けられ、KPI(重要事項評価指標)の設定とPDCAサイクルの整備を前提とする計画策定マニュアルに沿って1年足らずで策定した団体が多いように見受けられる。総合計画との整合性に課題を抱えた団体が多いと思われる。
 挙げられている対象事例:ローカル・イノベーション、ローカル・ブランディング(日本版DMO)、商店街活性化、生涯活躍のまち、働き方改革、小さな拠点等。


まとめに換えて
 


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