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2016年度地方財政対策とその課題

                                        2016年2月8日
                                  於:地方自治総合研究所
                                            澤井 勝

 

2016年度地方財政対策の主な論点

                            201628

                       東京・地方自治総合研究所

                                澤井勝

 

1、2015年度の地方財政の規模(通常収支ベース)

 

・東日本大震災分を除く通常収支ベースの地方財政の歳入歳出規模は、総額857700億円程度となった。これは2015年度に比較して、5000億円程度、0.6%程度の微増である。・地方財政の規模の最近の推移は以下の通り。

2016  857700億円   第三次安倍内閣(改造)(201510月から)

2015  857300億円   第三次安倍内閣(201412月発足)

2014  837300億円

2013  819154億円   第二次安倍内(2012年12月〜2014年12月)

2012  818647億円   野田内閣(2011年9月〜201212月)

2011  825054億円   管内閣(2010年6月〜2011年9月)

2010  821268億円   鳩山内閣(20099月発足)

なお、12年前の2005年(平成17年)度の地方財政規模は837689億円だったから、地方財政規模自体が一時圧縮されたのち、12年度を底に拡大してきている。

 

また、国の一般会計の歳入歳出規模は2016年度予算では、967218億円で前年度比3799億円、0.4%増である。国のほうが1.12倍となっている。2005年度の一般会計の規模は821829億円だったので、この当時は、国の一般会計より地方財政規模のほうが大きかったことがわかる。国は地方の0.98倍である。

 

2、地方一般歳出の総額(地方財政規模のうち公債費と地方交付税不交付団体の水準超経費を除く)は、699200億円で、前年度比6100億円、0.9%増。

 なお地方債依存度は10.3%程度。交付税特別会計借入金残高を含む地方財政の2016年度末借入金残高は1958100億円程度(前年度末1988986億円で、前年度末比3900億円程度の減少となった)。

 

3、また通常収支の一般財源(地方税、地方譲与税、地方特例交付金、地方交付税、臨時財政対策債の合計)は総額616792億円で前年度比1307億円、0.2%増である。

 地方譲与税とは、国が徴収するが、地方税として地方自治体に譲与するもので、地方揮発油譲与税(国税の揮発油税と合わせてガソリン税、都道府県と市町村に譲与)、石油ガス譲与税(液化プロパン、都道府県、政令市)、自動車重量譲与税(国税を市町村に譲与)、航空機燃料譲与税(空港周辺市町村)、特別トン譲与税(港所在市町村)、地方法人特別譲与税、がある。

 地方法人特別譲与税は、200810月から、地方税の偏在性の是正のため、本格的税制改革までの間、法人事業税(所得割)のうち、外形標準課税適用法人の税率148%を、また外形標準課税非適用法人の税率を81%としてこれを地方法人特別税として国税化し、全額を道府県に人口と従業者数で案分して譲与する。2016年度の見込み額は21234億円(2505億円)である。なお、2015年度の改正で、148%67.4%に、81%43.2%に改めている。

 

 また「地方特例交付金」とは、国税の恒久的減税によって、都道府県民税、市町村民税が減少となる場合に、それを補てんする交付金(法律による)で、現在は住宅借入金等特別税額控除の影響に充てられる。平成26年度で1126億円となっている

 

4、国の税制改正大綱による地方税制改革

1、法人税改革(法人の実効税率を平成30年度に2974%に引き下げる、現32.11%)

               2015    20162017   2018

 法人税率          23.9     23.4      23.2

 法人事業税所得割       6.0     3.6       3.6

 国と地方合算の実効税率   32.11    29.97      29.74

 (2916年度までは地方法人特別税を含む)

 

○法人事業税の所得割の税率引き下げと外形標準課税の拡大(資本金1億円以上の法人)

 

標準税率  平成26年度 平成27年度 平成28年度以降

所得割      7.2%    6.0%    3.6%

付加価値割    0.48%   0.72%    1.2%

資本割      0.2%    0.3%    0.5%

 

○地方法人課税の偏在是正

ア 法人住民税の交付税原資化(2017年度以降)

 消費税率10%段階において、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図りために。法人住民税所得割の一部を交付税原資化。

(1)  法人住民税法人税割の税率改正

       2014   2015   2016

道府県民税  5.0%  →3.2% → 1.0% △2.2%

市町村民税  12.3%  →9.7% → 6.0% △3.7%

 

(2)  地方法人税 (国税ですべて交付税原資)の税率改正(2017年度以降)

4.4% → 10.3

 

イ 地方法人特別税・譲与税の廃止等(2017年度以降)

○地方法人特別税・譲与税を廃止し、全額法人事業税に復元

○法人事業税の一部を、都道府県が市町村に交付ずる法人事業税交付金を創設する。

   交付額 法人事業税の5.4%

   交付基準 従業者数

 

 

付注・消費税の10%への税率引き上げと地方財政

 2014年の総選挙を前にして、消費税の10%への税率引き上げは、20174月に延期された。またその後の自公の折衝で、財務省の頭越しに10%への引き上げ時に軽減税率の導入するとの両党合意が行われ、なお実施時期や対象品目等について、また中小企業での事務処理について議論が行われている。

 消費税については、地方財政の面では、一部が地方消費税(都道府県税、市町村には地方消費税交付金)となり、また消費税の一定割合は地方交付税の原資となっている。消費税率8%のときには消費税の1.7%が地方消費税おされた。これが20174月からは2.2%に引き上げられる。地方交付税率は2013年度29.5%2014年度22.3%2017年度には19.5%に引き下げられる。

 

5、地方財源不足とその補てん措置

 2016年度は地方税や交付税原資となる国税(所得税、法人税、酒税、消費税)が増加するなどとする見込まれる一方、社会保障関係費の自然増が見込まれることなどにより、56063億円の地方財源が不足することとされた。これで平成8年度以来21年連続して地方交付税法第6条の32項の規定に該当することになった。

 このため、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発によって補てんするものの残余については、平成26年度に行った28年までの制度改正に従って、国と地方が折半して補てんすることとされた。国の負担分については「臨時財政対策特例加算」によって、地方負担分については、「臨時財政対策債」(地方財政法第5条の特例)により補てんする。それともに、臨時財政対策債の元利償還額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入するものとされた。

以上の結果、地方財源不足額56063億円のうち、まず折半対象以外については以下のような措置することとされた。合計5569億円。

ア、建設地方債(財源対策債)の発行 7900億円   起債充当率の引き上げによる

イ、地方交付税の増額        7536億円

   ・既往法定加算分(地方交付税法付則)  5536億円

   ・地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用  2000億円

ウ、過去に発行された臨時財政対策債の元利償還のための臨時財政対策債 35133億円

 

6、折半対象財源不足額

この結果、財源不足額56063億円のうち、これら56063億円を除く5494億円が国と地方で折半して補てんするものとされた。

・折半対象財源不足額(5494億円)のうち国の負担分2747億円については、臨時財政対策特例加算により、国の一般会計から交付税特会に繰り入れる。

・同じく地方の負担分である2747億円は、臨時財政対策債で補填することとされた。その結果、2016年度の臨時財政対策債は、これに、過去に発行された臨時財政対策債の元利償還に充てる臨時財政対策債35133億円を加えた、37880億円となった。

 

7、2016年度の地方交付税の総額

 以上の結果、2016年度の地方交付税の総額は167003億円(前年度比546億円、0.3%の減)となった。

@    一般会計                         151578億円

ア、地方交付税の法定率分等                

・所得税33.1%、法人税33.1%、酒税50%、消費税22.3%   145106億円

2009年度、2010年度の国税減額補正分            △1811億円

イ、一般会計における加算措置                    8283億円

  ・折半対象外の既往法定分加算措置                5536億円

  ・臨時財政特例加算                       2747億円

A    地方交付税特別会計                     15425億円

ア、地方法人税の法定率分                      6365億円

イ、特別会計における加算措置                    7060億円

(ア)交付税特会借入金償還額                   △4000億円

(イ)交付税特会借入金支払い利子                 △1584億円

(ウ)2015年度からの交付税繰越金                12644億円

   2015年度の国税収入増にともない2015年度補正予算で増額し16年度に繰り越し

ウ、地方公共団体金融公庫の公庫債権金利変動準備金の活用        2000億円

 

8、歳出面での措置等

(1)重点課題対応分(仮称)の創設 地方財政計画の歳出面に計上(交付税措置)

   ○重点課題対応分             2500億円

    ・自治体情報システム構造改革推進事業  1500億円

       自治体クラウドの導入に必要な業務システム等に交付税措置

       マイナンバーの情報連携が始まる2017年までのセキュリティ対策事業

       住民基本台帳ネットワークシステムの立ち上げ等

    ・高齢者の生活支援等の地域の暮らしを支える仕組みづくりの推進 500億円

       中山間地等において日常生活圏を形成している「集落生活圏」を維持するため、「地域運営組織」の形成と運営を支援する交付税措置

    ・森林吸収源対策等の推進                    500億円    温室効果ガス削減目標達成のための森林整備のため、市町村が行う林地台帳の整備、森林の所有者の確定:・協会の明確化、担い手対策等に必要な経費を交付税で措置する。

(2)まち・ひと・しごと創生事業費の確保  引き続き1兆円

     これとは別に、「「地方創生事業の深化」として、先駆的事業を支援する「地方創生交付金」(1000億円)を設ける。

(3)公共施設老朽化対策の推進    維持補修費に12200億円程度

     2016年度中にほぼすべての団体で「公共施設等総合管理計画」が策定されることを踏まえて、増額する。

(4)歳出特別枠の確保

     地方財政計画の歳出に、地方の重点課題に対応するための歳出や、公共施設の老

朽化対策に係る歳出を重点的に確保(4000億円)したうえで、同額を歳出特別枠(地域経済基盤強化・雇用対策等対策費)から減額する。実質的に前年度水準を確保。

 

9、地方財政の運営面では、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27630

日閣議決定)と、「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について」(平

27828日付け総務大臣通知)の基づき、行政サービスの効率化を目指して、地方交付税に基準財政需要額算定を通じた誘導措置を強化するとしている。

 

    2016年度に着手する取り組み

    民間委託等        学校用務員事務

                 道路維持補修・清掃等

                 本庁舎清掃、案内・受付、公用車運転、
                 本庁舎夜間警
備、電話交換

                 一般ごみ収集

                 学校給食調理、運搬

    指定管理者制度導入、民間委託等               

                 体育館管理、競技場管理

                 公園管理

    庶務業務の集約化     人事、給与、旅費、福利厚生等

    情報システムのクラウド化 戸籍住民基本台帳費、徴税費、包括算定経費

 

    2017年度以降に取り組む事項

   指定管理者導入        図書館管理

                  博物館管理

                  公民館管理

                  児童館、児童遊園管理

                  青少年教育施設管理

   地方独立法人化        公立大学

   窓口業務のアウトソーシング  戸籍住民台帳業務、税証明業務、社会福櫛費、高齢者保健福祉費、保健衛生費

                  (第31次地方制度調査会において、窓口業務の外部資源の活用について検討中)