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1998年度地方財政対策の特徴とこれからの課題

奈良女子大学 澤井勝


一、98年度地方財政を条件付けるもの
  経済見通しは名目で2.4%  2兆円減税など景気対策と財政構造改革
  分権推進と新しい財政需要そして財政硬直化
二、国の財政構造改革の下での予讃編成と特別減税
  キャッピング方式の採用と予算
三、98年度の地方財源不足は5兆4千百億円
  通常収支に不足は4兆6500億円  地方財源の補填措置と行財政制度改正
  基本は国と地方のはんぶんこ主義  50年代と同じ  後年度に繰り延べられた額
四、その他の主な施策とこれからの課題
  大阪府などの財政危機と財政健全化債の発行  公債費負担適正化施策の拡充
  地方債の抑制、縮小  地方一般歳出は1.4%減

一 98年度地方財政を条件づけるもの
経済見通しは名目で2.4%

 われわれが、98年度の地方財政対策について考えるときに考慮されなければならない諸条件は、主として次の諸点である。

 第一には、金融システム不安を抱え、景気の低迷のもとで構造改革を迫られているわが国の経済情勢をどう捉え、それに対する政策的な働きかけを含めた、98年度の経済成長率の見通しをどう考えるかという問題である。この経済成長率の見通しは、予算の土台である歳入予算の規模、すなわち国税収入と地方税収入との伸びを、どの程度に見込むかを決定する主要な要素である。もうひとつの租税収入の見込みを左右する要素は、租税弾性値である。

 このふたつの要素は、しかしながら極めて不確定であって、この20年以上にわたって、過去のトレンドを伸ばせばよいというふうにはなっていない。なぜなら元々生き物である経済活動が、経済、金融のグローバル化の中で、従来の経済予測ツールで予測できる範囲から大きく逸脱することになっているからである。

 したがって、政府の経済成長率の見通しは、科学的な装いをまといながらも、その時々の政府と政治的集団による政策的判断と選択、そして政治的決断としての色合いを強く持つことになる。経済見通しに直接関わる省庁は、経済企画庁、大蔵省、そして通産省である。この三つの省庁の間でのやりとりで、経済見通しが決められていき、予算の大蔵原案提示直前の閣議で決定される。このようにして98年度の経済見通しは、実質で1.9%程度、名目で2.4%程度とされた。これは97年度の実績の見込みが実質0.1%程度とされているから相当に努力が必要な数値である。

2兆円減税など景気対策と財政構造改革

 第二には、この問題に関連して、景気対策としての財政政策が問われる。今回の場合は、97年12月のはじめになってからの2兆円減税の決定が、橋本政権の財政金融政策の柱となった。この影響によって、秋の段階で見込まれていた98年度の租税収入の減となるから、歳出予算(7月頃から概算要求を経て積み上げてきたもの)を削らないとするとその補填措置をとる必要がある。

 さらに98年2月になって、市場から強く催促されるかたちで、取りざたされる大規模な4兆円とも6兆円とも言われる補正予算の影響も大きい。このように当初予算が審議に入った段階で、追加の補正予算の議論が具体性を持って論議されるのは、異例のことである。橋本政権の責任が問われるのは当然であるが、財政構造改革の既定路線は変わらないとした場合にも、その期間や規模等は修正せざるをえない。

 この議論に先立つ当初予算の議論では、第三には、財政改革法の成立に伴う、政府債務の対GDP比の縮減という目標に沿った予算としての組立が、地方財政と個々の地方自治体の財政にどのような影響をもたらすかという問題がある。特に公共事業費の削減と地方単独事業の抑制という新しい状況において、地方自治体はどのような政策選択を迫られるか。これに年度途中の早い時期に予想される上記の大規模補正予算が問題を複雑にする。それが減税を中心としたものか、公共事業の復活のような先祖帰りになるかによって異なるが、いずれにしても迷走する中央政府の財政政策にどこまで、どの程度応対するか、と

分権推進と新しい財政需要への対応、そして財政硬直化

 第四に、分権推進委員会の四次にわたる勧告を受けて、政府は分権推進計画の策定過程に入っているが、この影響をどのように考えるか。これは財政面では、主として国庫補助金の削減ないし一般財源化として現象することになる。この一般財源化等の規模自体は、残念なことに大したことはないが、シルバー人材センターの国庫補助の削減(一般財源化とは国庫補助金の削減または廃止のことである)にどう対応するかなど、きめこまかな政策の工夫が求められる。その際、関係当事者の合意をつくりながら、自治体の政策をスクラップすべきものとビルドすべきものに大胆に分別していくことが求められる。

 第五としては、今後とも拡大が見込まれる財政需要をどのように組み込むかという問題がある。特に、公的介護保険制度の2000年4月の立ち上げに向けての、福祉の社会的基盤強化のための財源をどこまで確保するか、あるいは確保されているかが問われる。介護保険制度の実質的スタートは、来年(99年)10月の介護保険証の交付開始と、介護認定事業の開始、及び介護保険事業計画の決定、介護保険特別会計予算を含む自治体の予算編成の開始である。

 国と地方の間の財源の過不足の測定と、地方一般財源が不足する場合の財源保障についてのネゴシエイションの結果である地方財政対策においては、ここまでの施策についての財源対策を示すべきものでもない。ただし、人材の確保、養成や施設整備、サービス提供に要する資器材(各種の自動車、移動入浴設備など)の整備等、単独事業でも進めることが、自治体には求められる。この点については、地方財政計画においても、単独の社会福祉事業費が3兆8,754億円と97年度に比較して4.9%増加となっている。このようなかたちで後押しが行われている点に注目すべきである。

 第六に、92年度半ばのバブル経済の崩壊以降、累次にわたる景気対策に地方財政も協力してきたことを主たる原因のひとつとする、地方財政全体が背負うことになった多額の借入金のあつかいである。

 そして第七に、この間、地方財源の不足が地方交付税法第六条第三項の状態になっていて制度改正が求められているという問題をどう扱うかという問題がある。

 さて最後になるが極めて重要な課題として第八に、大阪府や岡山県などに顕著に見られる自治体財政の硬直化と財政危機を乗り越えるための政策と行政改革に対する支援方策が考えられなければならない。公債費比率の上昇と経常収支比率のアップによって、新しい行政需要への対応が厳しく制限されている自治体財政の構造転換を、ともに考えていくことが求められている。

二 国の財政構造改革方針の下での予算編成と特別減税
キャッピング方式の採用と予算

 97年11月の臨時国会で成立した「財政構造改革の推進に関する特別措置法」においては、主として次の3点が、健全化目標との関連で政府の予算編成を拘束することとなったのである。

 政府の財政赤字(中央と地方と合わせて)については、2003(平成15)年度までに、GDP比で3%以下にする(第4条1項)。これはEUにおいてその通貨統合に参加を認められる基準としての数値目標でもある。大蔵省の予算説明によると98年度のこの比率は、9.7%程度だが、ほぼ23兆円に上る国鉄精算事業団と国有林野累積債務の一般会計承継分を除くと4.7%となり、前年度に比較して1.2%縮減しているという。より堅い数字は、地方財政計画が国会に提出されてから公表される。

 特例公債(いわゆる赤字国債)の発行は、同じく2003年度までにゼロにするのが目標だが、10年度予算では9年度に比較して3,400億円の減少にしかなっていない。これも大蔵省の言いたいところは、特例公債でカバーした減税の影響分を除けば、12,500億円の減額に相当すると言う点だが、これはややぼやきに近い。

 公債依存度については、2003年度の依存度を97年度予算より引き下げるとした。98年度予算では公債発行額が1兆1,500億円削減されたために、依存度は21.6%から20.0%に低下したとされる。

 以上が財政構造改革法に直接関連した課題であるが、来年度予算編成の特色の一つは、昨年夏の各省庁の概算要求前に示されたキャップである。これはサッチャー政権の時代にイギリスが財政再建に向けて採用した方式を日本流に適用しようというものとも見える。このキャップは、従来のシーリングのように、各省庁あるいは各政策課題に対してその経費の伸び率に一律の天井をもうけるのではなく、経費ごとに異なった削減ないし抑制の枠を概算要求段階で設けるものとなっている。おもなキャップとその結果を見ておこう。

 社会保障関係経費は、当然増も含め増加の幅を3,000億円未満とするのがキャップであるが、予算では2,921億円で2.0%増に押さえ込まれた。この中には、新ゴールドプラン達成のためのヘルパーやデイサービス、ショートステイなどの大幅な増加を含んでいるから、他の厚生省経費が絞られていることになる。

 公共投資関係では、全体として7%以上の削減を掲げたが、98年度予算では7.8%減となっている。額にして9兆7,447億円から8兆9,853億円への減額である。これは特に補助事業の採択基準の引き上げや、事業の中止や休止も含む重点化が初めて行われた結果のようである。

 文教予算と防衛関係経費は、前年度同額以下に抑制とされた。文教予算は1.8%、防衛関係予算は0.3%の減である。

 このような抑制的な予算編成とは逆の方向に働くのが減税である。ひとつは所得税の特別減税で、98年の2月以降に、本人は18,000円、配偶者と扶養親族一人あたり9,000円を税額控除するかたちで行われる予定。もうひとつは法人税の減税で、普通法人の税率を37.5%から34.5%に引き下げ、中小法人の軽減税率を28%から25%に、公益法人の軽減税率を27%から25%に下げるとしている。これらの税制改革の地方財政への影響は、法人事業税への外形標準課税方式の導入も視野に入れながら論議しなければならない。

三 98年度の地方財源不足額は5兆4,100億円
通常収支の不足は4兆6,500億円

 地方財源不足とは、当該年度に必要と考えられる地方一般財源に対して、制度のうえで収入されると見積もられる地方一般財源(主に地方税と地方交付税、地方譲与税)では不足するという状態を言う。すなわち、国が来年度の予算を編成する過程で、地方公共団体を通じて行う補助事業の補助裏(これには建設事業ばかりではなく義務教育や生活保護などの経常的経費の地方負担も大きい)や各種5カ年計画に計上された地方単独事業として予定される地方負担、国が行う直轄事業の地方負担など、が積算されてくる。このような地方負担なしの裏付けなしに、各省庁の予算は編成も執行もできないのが、現在のわが国予算制度の大きな特徴のひとつなのである。

 この地方負担は、結局のところ地方の一般財源で賄われなければならない。 そこで一方で、現在の地方財政制度と経済情勢を前提にして、来年度にどの程度の一般財源が出てくるかの見積もりを行う。都道府県税と市町村税の収入見通し、同じく地方譲与税の収入見込み、国の歳入予算の確定に伴う地方交付税の収入見込み(これには国と地方の間で従来行われ約束されてきた貸し借り関係の当該年度の影響額、すなわち特例加算または特例減額が考慮される)などである。

 この両者の比較から、通常収支の不足額が計算される。このようにマクロな国の予算ベースでの地方財源の過不足を積算するのが、この地方財政対策および、地方財政計画の主たる機能なのである。地方財政計画は、地方交付税法第7条に基づいて国会にに提出することが義務づけられている「地方団体の歳入歳出総額の見込額」のことだが、その主たる機能はこのような地方財源の過不足を測定し、地方財源を全体として保障するところにある。

 98年度の通常収支不足額、4兆6,500億円という額がこれにあたる。来年度の場合は、この通常収支の不足の他に、2兆円特別減税に伴う地方財源の減収額として7,600億円が地方財源不足に加わり、合計で5兆4,100億円を地方財源不足としてカウントすることが自治省と大蔵省との折衝できまった。

地方財源の補填措置と地方行財政制度の改正
基本は国と地方の半分こ主義――昭和50年代と同じ方式

 この地方財源不足は、なんらかの形で補填しないと国の各省庁の予算も執行できないはめになるから、必ずその対策が必要で、それが地方財政対策ということになる。最近の地方財源不足の状況はおおむね下記のようになっている。(地財対策時点)
(億円)
 94年度95年度96年度97年度98年度
地方財源不足58,53069,50086,20058,54454,100
通常収支不足分29,88642,60057,50057,50046,500
減税分(94〜96、98)28,64426,90028,700 7,600
地方消費税未平年度化分 12,000 
補填措置
資金運用部からの借入金29,17933,40036,90018,30019,400
4条の2加算など交付税増額1,7601,8004,1382,6003,000
臨時特例加算 4,2351,000
元本償還繰り延べ1,9794,1924,2654,7146,500
財源対策債9,00015,60020,30019,90018,900
減税補填債16,34614,00016,400 6,200
減収補填債   12,000 

 ごらんになってわかるように、多額の通常収支の不足がここ5年間にわたって生じていることがわかる。このような地方財源の不足は、地方交付税法第6条の3第2項の状態に該当する。同条は次のように定める。「毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引続き………著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第6条第1項に定める率の変更を行うものとする。」この状態は、3年以上連続して交付税総額の1割以上の財源不足を生じた場合とされている。したがって、地方行財政に係る制度の改正か、交付税率の引き上げをしなければならない事態であることははっきりしている。

 このため、通常収支の不足分については、まず財源対策債の発行を府県と市町村にお願いして1兆8,900億円をとりあえず補填する。残りの2兆7,600億円については、地方交付税を増額(交付税率以上に交付税を増額する)することによって補填する。その財源はまず交付税特会の借入金のうち、98年度に償還期日がくる元金6,500億円を、後年度に償還を繰り延べすることでひねりだす。

 残りの2兆1,100億円の財源は、これを国と地方が半分ずつ責任を持って負担する。地方の持ち分1兆550億円は、これを全額資金運用部から借り入れをして賄う。国の持ち分のうち3,000億円は、国の一般会計からの特例加算により、残りの7,500億円は国の一般会計の責任で、資金運用部から借り入れを行い、交付税特別会計に繰り入れる。この方式が「国と地方の半分こ主義」と言われるもので、1979年度においてとられた措置となぞらえられる措置である。

 なお、国からの交付税の増額措置3,000億円のうち分けは、地方交付税法付則第4条の2第3項に基づく加算額2,191億円と、たばこ特別税(仮称)の創設によるたばこの売り上げ減少による地方たばこ税の影響と国のたばこ税減の交付税への影響額を「勘案し」た、国の補填額200億円、及び国が負担する借入金の利子相当額609億円だとされている。

 ここにいうたばこ特別税(仮称)とは、旧国鉄と国有林野の累積債務の償還財源の一部として、一本あたり0.82円のたばこ税率の引き上げを行う(98年10月1日から)というものだが、たばこの売り上げ減を見込みながら、債務償還財源(それもその一部)をひねり出す苦肉の策といってよい。

 これが、地方交付税法第6条第3項にいう「制度改正」なのかというと、大いに疑問がある。借入金の増大をまねき、将来の地方財源を先食いしているに過ぎないと言う批判は当然うけざるをえない。この地方交付税法第6条の3第2項の趣旨からして、地方一般財源不足についての制度改正は、あくまで一般財源の国からの移転(ひとつの方法は地方交付税率の引き上げ)又は地方税の税率引き上げや新税創設によるのが筋であろうからである。

 いずれにしても、地方財源を支える制度は、現行の補助金や行政のシステムのもとでは、その制度的に与えられた財源規模からすれば過大な財政需要を抱え込まざるを得ない位置におかれている。それを中央レベルの借入金と、地方自治体レベルの借入金でカバーしつつ運営してきているのだ。そのひずみは、大きくなるばかりである。根本的には、現状の構造的な財源不足を解消するための思い切った地方財源移譲をはかり、さらに中央政府と地方自治体の権限の再配分による、歳出構造の転換がはかられなければならないであろう。

 特に地方自治体にあっては、投資的事業の徹底的洗い直しによる事業選択とコスト削減を、すべての部局の建設事業について行う必要がある。現在の地方建設投資は、起債充当率が非常に高いこともあって、事業を着手するに当たってごく少額の一般財源を用意すれば良いことになっている。そこで事業効果、あるいは政治効果が高そうに見えるハコものの採択順位が高くなるのは、ある意味で自然である。しかし、起債部分は後に、利子付きで自前の財源で返済しなければならないのであるから、将来の一般財源を食っていることに変わりはない。

 そして介護保険制度の立ち上げにむけた福祉自治体への転換をはかるべきである。経常経費の面においても、特に基準財政需要額の構造の転換、すなわちスリム化すべき事業とビルト・アップすべき事業との間に明確な差異をもうけるといったかたちで、歳出構造の転換を貫いていくことが望まれるのである。そのことはまた、中長期的な人事政策の確立による、新しい専門性の追求と役場の活性化に結びつける必要があることを示唆しているといってよい。

 98年度に繰り入れられるべき国からの財源で後年度に繰り延べられた額1兆55億円

 以上の他、歴史的経緯から98年度に、国から地方交付税特別会計に繰り入れをするように約束されていた次の額1兆55億円が、2004年度以降に繰り入れが伸ばされることとなった。この分は、地方政府が全体として国庫に対して持っている債権(国からすれば債務)のうち98年度にかかるものということになる。

(1)地方交付税法付則第4条の2第3項に基づく平成10年度の加算額4.797億円から2,191億円を除いた額

2,606億円

(2)平成4年度までの国庫補助負担率引き下げ措置(投資的経費)に伴い一般会計から交付税特別会計に繰り入れを予定していた額

3,305億円

(3)平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担金の見直しに関し、一般会計から交付税特別会計に繰り入れを予定していた額

1,066億円

(4)平成9年度の地方消費税の未平年度化の影響に関し、一般会計から交付税特別会計に繰り入れを予定していた額

101億円

(5)平成9年度の国民健康保険制度の見直しに関し、一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額

639億円

(6)昭和61年度、平成4年度から平成8年度までの間、及び平成10年度における交付税特別会計借入金に関し、一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた利子負担相当額(後年度に償還財源繰り入れ予定のものを除く)

2,388億円

四 その他の主な施策と今後の課題
大阪府など財政危機と財政健全化債の発行

 今回の地方財政対策で目新しいものは、地方自治体の財政健全化の推進対策としてふたつの財政措置が講じられる点である。

 そのひとつは、財政健全化債である。これは岡山県や大阪府など財政硬直化の深刻な府県などで経常収支比率が100%を越えているような自治体の支援措置と伝えられる。自治省の「平成10年度地方財政対策資料」では次のようにされている。「行政改革大綱等に基づき数値目標等を設定・公表して行政改革や財政健全化に取り組んでいる地方公共団体について、当該数値目標等により、将来の財政負担の軽減が見込まれる範囲内において、充当率の引き上げ等により、健全化債を許可」する。

 この財政健全化債は、昭和50年代の地方財政危機のときにとられた政策で、それをいわば復活させるものだとされている。『地方財政小辞典』によれば「毎年自治事務次官通達に基づき、財政構造が悪化している地方公共団体が財政健全化のための計画を策定し、当該計画に基づき自主的に財政構造の健全化をはかる等の措置を講ずる場合に、 当該健全化措置に伴う増収額および経費の節減額の範囲内において、当該団体の財政状況を勘案して許可されるものである。なお、対象事業は地方財政法第5条但し書きに定める事業のうち、普通会計に属する事業に限られる。」

 充当率の引き上げ等により、といい、また普通会計の範囲で、ということになると、府の場合で都市計画事業(97年度で50%の充当率)、道路(同20%)などが対象事業になるのではなかろうか。いずれにしても、「財政健全化計画」を「行政改革大綱」に沿って策定することが求められる。この健全化計画いかんによって、この健全化債の発行が認められるかどうかが決められる。

公債費負担適正化計画の拡充

 ふたつめは、公債費負担適正化措置の拡充である。現在、地方債許可制限比率が15%以上の市町村については、自主的に公債費負担適正化計画を策定して、歳出の削減施策と歳入の確保施策をたててそれを実行していく場合には、特別地方交付税で利払いの一部を補給する措置が執られている。これを以下のように拡充するとしている。

 1 前年度の起債制限比率(3年平均)が15%以上の市町村に加え、今後2年度以内に15%以上となる見込みの市町村を対象とする。

 2 計画期間を5年度以内から7年度以内に延長する。(この措置は支援措置を認める条件の緩和ということになろうか)

 3 特別地方交付税の算定に用いる基準金利を3.5%から2.5%に引き下げる。(これは、特別地方交付税による利子補給の対象となる起債をより低利の借り入れにも拡大することを意味すると思われる。)

 4 大規模災害等により起債制限比率が大幅に上昇した市町村にあっては、計画期間・起債制限比率の引き下げ幅について弾力的に運用する。(たとえば神戸市の場合、95年度決算で地方債制限比率は18.0%になっているが、改善の見通しは厳しい。)

地方債の抑制、縮小

 地方債計画は2年連続して縮減されることになった。総額は97年度にたいして7.3%減の16兆940億円である。このうち普通会計分が11兆300億円(9.1%減)、公営企業会計分が5兆640億円となっている。これは、政府の財政構造改革の公共事業抑制の効果がここでも出ていることを示している。もっとも、公共事業の減少をカバーするために一般単独事業債の中に地域経済対策債分として新たに3,000億円を設けている。

 この地方債計画額の中身には、先に触れた住民税の特別減税分にたいする減税補填債6,220億円が含まれる。同じく通常収支の不足の補填措置としての財源対策債1兆8,900億円が予定される。これは一般公共事業債の起債充当率を通常の20〜40%から、95%に引き上げることなどによって、つまり通常債のうえに、75%から55%の財源対策債をオンする形で行われる。

 単独事業では、この10年以上にわたって拡大してきた地域総合整備事業債が、はじめて前年度計画を下回り、2.0%減の2兆1,595億円となったが、これは地方単独事業の伸びを、マイナス4.0%に設定したものの、この地総債を相対的に優遇した結果である。

 この中では、ダイオキシン対策としてごみ焼却工場にたいする厚生省の補助制度が、大型かつ広域施設に絞り込まれたことを受けて、この補助基準にもれる小規模施設建設を財政支援措置をとることになったことが注目される。

 ところで、厚生省のこの大規模施設を市町村に強制する補助事業の採択基準の一方的変更は、これまでダイオキシン排出規制に及び腰であった同省のあり方の反省の上に立ったものとは言い難く全く賛成できない。またダイオキシン源として黒の意見が強い塩化ビニールの製造販売を野放しにしつづけながら、市町村自治の犠牲の上に処理施設の広域化と大規模化による燃焼温度の維持によってのみ管理しようというもので、ことの本質的解決を先に延ばすものである。無数の産業廃棄物の処理施設を放置しながら、小規模な施設を建設し、それをダイオキシンが生成しないように管理していく地域と自治体、そして現場労働者の努力と工夫、ごみ発生量の抑制と分別収集の徹底という地方自治体と住民の努力を無視する厚生行政は、薬害エイズのときの対応にきわめて近似している。

 ともあれ、今回の地方財政対策では、地理的に近隣市町村と協力できない、あるいはどんなに広域化しても一日百トン以上のごみは集まらない、また過密で用地がない、などの市町村を財政支援するのはダイオキシンのこれ以上の発生の現実的抑制に効果的である。そして大規模な炉で何でも燃してしまうのではない、市民参加のごみ処理行政を通じた地域コミュニティ形成によるリサイクル社会の展望も開いて行くべきである。従来の支援措置は、充当率75%の一般廃棄物処理事業債の他に、その元利償還金の50%を交付税の基準財政需要額に算入しているものだ。これを充当率を85%に引き上げるとともに、交付税措置も70%にすることによって、自治体の負担を事業費の4割程度と、100トン炉の補助事業なみにすることになる。

地方税の伸びは道府県で3.0%、市町村は4.6%増加

 地方税の見通しは、全体として3.9%の伸びを見込む。道府県税では地方消費税の平年度化が大きい。97年度の1兆30億円が、98年度の見通しは約3倍の2兆9,887億円となっている。事業税の5兆4,240億円、道府県民税の3兆9,980億円につぐ地位である。一方で道府県民税が減税の影響でマイナス5.5%、事業税は法人の落ち込みでマイナス4.5%ととなり、道府県民税全体では8.5%の伸びが見込まれている。ここから、市町村に配分する地方消費税交付金や利子割り交付金、ゴルフ場利用税交付金などを控除すると、道府県税の伸びは3.0%となり、額は15兆1,195億円である。

 市町村税は、この県からの税交付金を含めて、4.6%の増で、23兆8,480億円となる。市町村民税は2.7%減の9兆2,859億円、固定資産税は3.7%増の9兆760億円。県からの税交付金を勘定に入れないと、0.4%の増加に留まる。

 いずれも、住民税所得割が減税の影響を受けるほか、法人関係税が大きく落ち込む見通しとなっている。その落ち込みを、消費税と固定資産税の伸びでカバーした上で、かなりの伸び(GDPの名目の伸びを上回る)を確保することとなっている。特に地方消費税の導入が地方財源面での安定性をかなり改善しているといってよい。

地方一般歳出はマイナス1.4%

 政府予算案が決定された後に公表された地方財政収支見通しでは、地方財政の歳入歳出規模は、87兆600億円で、前年度比全くのよこばいである。これは財政構造改革期間中の歳出抑制方針に従ったものだが、地方一般歳出(公債費を除く)でみるとマイナス1.4%になる。

 一般財源比率は65.0%で、前年度の63.4%から1.6%ポイント改善している。これは地方債依存度を12.7%に抑制するとともに、地方交付税が2.3%の増加、地方税の3.9%の増加に助けられている。

 地方交付税特別会計の借入金残高は、97年度末で17.1兆円で、うち地方の負担分が15.2兆円と見込まれている。これが98年度末には、19.1兆円(うち地方負担分16.4兆円)に拡大することとなっている。またこの借入金残高を含む地方の債務残高は、97年度末で149兆円程度、98年度末で156兆円程度にのぼると見られている。

社会福祉系統費は4.9%増

 福祉関係では、一般行政経費の社会福祉系統費が4.9%増となった。これは、98年度は新ゴールドプランの完成年度の前年度ということから、在宅サービスに重点的に予算配分されたことの反映ともいえる。厚生省予算では、ホムヘルパー16万7,900人、ショートステイ5万1,917人分、デイサービスセンター1万583カ所、在宅介護支援センター7,964カ所、特別養護老人ホーム27万6,355人分などとなっている。介護保険導入に向けた準備では、要介護認定の試行とケアプラン策定の準備的作業を全市町村で行うという予算査定である。介護事業計画策定に向けた市町村の作業を支援する施策も盛り込まれた。その他、緊急保育対策での低年令児受け入れ数の拡大、障害者プランでのホームヘルパーの増員、グループホームと福祉工場の増設などもある。一方では、分権の論議と財政構造改革の論議を受けて、地方自治体に同化したとみられた事業を中心に、かなりの削減措置がとられている。主な補助金の廃止(一般財源化)では、がん検診費補助、妊婦健康診査費、休日夜間急患センター運営費などがある。

歳出構造の見直しと転換

 地方自治体の財政面での最大の課題は、自らの財政構造の見直しである。特に分権改革の時代にあって、これまでの歳出構造を大胆に福祉自治体の方向に切り替えていくべきである。国の機関委任事務制度が廃止され、これらの事務は基本的には自治事務になる。法定受託事務というかたちは、国の関与の特例として作られるが、この法定受託事務も自治体が実施する、団体の事務であることには変わりがない。どの自治事務をその程度実施していくかは、強く自治体(行政と議会)の裁量に委ねられると想いをいたすべきである。裁量権を活用して、地域が自己決定しうる領域を拡大するためには、改めて、地域住民の本当の意味におけるニーズ調査が行われなければならない。自治事務が自治事務として成立し、法定受託事務を地域自決のエリアに引き出せるかどうかは、「地域住民の意思」をどのように把握し、そして鍛えるかにかかっている。

 総合計画と基本構想の見直しにあたって、現在の各種投資計画を、すべて住民投票に付すぐらいのことが考えられても良い。少なくとも、きちんと住民の意識調査のスクリーンに通した上で、公聴会の制度を活用するなどして、政策の優先順位を検討し、財源配分の重点を切り替えていくべきだと思われる。特に公共事業関係の補助金が削減され、奨励的補助金の整理も進行するから、事業の存廃も含めて検討されるべきである。

 いま多くの住民は、介護保険の導入にその7〜8割が賛成したところに見られるように、また環境アセスメント法の成立を後押しした各NPOやNGOとそれを担う市民の活動の広がりと、若者の環境への意識の高まりに見られるように、現在の多くの役所の論理や感性と違うところで、地方自治体の存在根拠を問うているのである。この食い違いを読み損なった自治体は、市民の厳しい批判にさらされることになる。逆にこのような市民意識の高揚に的確に応答できる自治体は、その職員にとっても働きがいのある、気持ち豊かな職場になるにちがいない。

 そういった歳出構造の転換を図るためにも、一方で交付税の計算に用いる基準財政需要額の見直しが強く求められる。特に、投資的経費の内容では、補助事業の負担分のカバー分を縮減すると共に、単独事業の財源確保のための需要額の算入度合いを拡大すると共に、投資的経費を全体として抑制して、投資事業のテンポをゆるめることが必要である。そしてこの面からも必要度(業界の必要度ではなく住民とっての必要度)に応じた開発事業の選別を進めることが、繰り返しになるが、避けられないのである。

 そして、介護保険制度の発足に向けて、現在一般財源を投入して進められている地域保健福祉サービスを、さらに発展させる必要がある。すなわち介護保険料を投入すべき事業と、それを補完ないし先導する事業で一般財源を投入して行うべき事業を区分けし、それぞれを一人一人の要介護高齢者のニーズに応答しうるサービスとして、組み立てていくことが必要である。このような一般財源を投入すべきサービスの基盤整備については、基準財政需要額に確実に算入すべきであり、この点でも基準財政需要額の構造転換が急がれることになるのである。

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