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2006年度地方財政計画と地方自治体
  格差社会を是正しセイフティーネットの再構築を(初出:自治総研06年2月号)

                   奈良女子大学名誉教授   澤井 勝

1、「小さな政府」と来年度予算

 

(1)小泉政権の最後の予算となるはずの2006年度予算は、20051219日に財務省原案が閣議報告された。この前日、谷垣財務相と竹中総務相との会談で、06年度の地方財政対策が決定されている。06年度予算は、好調な景気回復の足取りを追い風として、新規国債発行30兆円の枠と社会保障費、公共事業費の抑制を大きな柱として進められたといってよい。この新規国債発行枠を30兆円とするのは、小泉首相の最初の本格的な予算編成であった02年度予算において掲げられたものだが、経済財政諮問会議を主な舞台として進められてきた「構造改革」のひとつの仕上げと、次期政権への引継ぎという性格をもつとされている。このことは2005621日の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」、いわゆる「骨太の方針」に、政府文書として初めて、「小さくて効率的な政府」を掲げ、「小さな政府」の実現を目標としたことと関連して、歳出予算の大幅な抑制を目指すとしたものだ。

 このような「小さな政府」という言葉のこの時期における政治過程への登場は、同時に、財務省サイドからすれば「消費税の税率引き上げ」のために必要不可欠の前処理の手続きという性格をもつものといってよい。

 さて、06年度の一般会計規模は796860億円と前年度比で3.0%、24969億円の減となっている。これは2年ぶりの緊縮予算ということになる。歳入では租税収入が法人税収を中心に伸びて458780億円と4.3%の増加となっている。国債による収入は、299700億円(うち建設国債5840億円、赤字国債が244890億円)で前年度より44170億円の減となった。それでも歳入総額の37.6%が公債による収入であり、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で際立って高い借金依存度であることに変わりはない。

 歳出では、政府債務、借金の元利償還金である国債費は187616億円と歳出総額の23.5%、4分の1近くを占める。

最大の歳出科目である社会保障関係費は205739億円と1931億円、0.9%の伸びに抑制されている。一般歳出463660億円の44.37%を占める。この社会保障関係費の内訳は、年金保険や医療保険への国庫負担金である社会保険費が161621億円で前年度比1.9%の低い伸びとなっている。これでも医療保険の診療報酬を来年度以降、3.16%下げて抑制した結果である。

 

(2)格差社会への「構造改革」

 

生活保護の増加と自殺

社会保障関係費で最も高い伸びを示しているのは生活保護費で、2461億円(国費ベース)と前年度より1231億円、6.4%の伸びとなっている。これは小泉政権が進めてきた、市場原理主義的な構造改革の一つの結果としての「格差社会」の具体的な姿である。生活保護世帯は99年に70万世帯、約100万人だったが、04年には100万世帯、143万人に増加している。もちろん、90年代の後半のバブル経済の崩壊と、大規模なリストラと高失業時代の強い影響を受けて生活保護費は増大してきたという面はあるが、その流れを格差の拡大を是認する小泉構造改革が加速しているということは確実である。

なお、年間の自殺者が3万人を超えたのは98年で、その後毎年3万人を超えている。10年前の94年には21千人だった(厚生労働相、国会答弁)。景気は回復してきたが、人々のストレスが高まる社会になりつつあり、幸福感は薄い。

 

建設事業縮小と地域格差の拡大

公共投資関係費は78785億円と3935億円、4.8%の減となっている。この建設投資事業の削減は、財政再建と談合社会と利権社会を変えていくためには避けられない課題である。一方で、公共事業に依存してきた道府県や地域に深刻な影響をもたらしている。民間の住宅建設や工場建設に沸く大都市地域と、過疎地を抱えた北海道や東北、九州などとのこの地域格差は開くばかりである。問題なのは、この地域格差を是正し、公平で公正な社会をつくるメッセージが明確ではないという点である。とられる政策もたて割りの弊害を指摘されながら、不徹底であり、従来の施策の縮小したかたちでしかないという側面を強く持っている。地域社会再生に向けた、総合的な、そして後述する21世紀的なテーマを克服できる政策スキームが必要である。それには、地方交付税の条件不利地域への傾斜配分とその使い勝手のいい交付金、補助金の配分がまず必要である。そしてこの財政資金を生かせる受け皿としての、「地域の力」を引き出す後述のような施策が求められる。

 

労働市場の二重構造化

「格差社会」への「構造改革」という面をもっとも端的に表現しているのは、パートタイマーなど非正規労働者の割合が、1990年代後半から急速に高まっていることに改めて注目しなければならない。

OECDの「日本経済白書2005」(大来洋一監訳、中央経済社、20059月)によれば、以下の表のように、管理職を除く被雇用者のうち非常用雇用者(以下パート労働者ということにする。ここには派遣、臨時、請負などを含む)の割合は、1990年には4370万人のうち880万人と18.8%であった。この割合は1996年には19.9%とやや上向きで横ばいだったが、その後急速に拡大してきている。2003年には4950万人のうち1500万人と1.7倍となり、実に28.1%、4分の1以上を占めるまでになっている。パート労働者のOECD諸国の平均は15%であるから(同書、なおNIRAの整理によるとイギリスは23%、ドイツとカナダが20%、米が13%、フランス12%、イタリア11%、日経061221日)、突出して非正規労働者の割合が高い国となっている。またこのパート労働者の賃金は、正規労働者の4割程度である。加えて、収入が低いために、健康保険、年金掛け金、失業保険の適用からも除外されている。

 

表 従業上の地位別の被雇用者(百万人)

 

合計

管理職を除く計A

非常用雇用

比率

A/B (%)

1990

46.9

43.7

8.8

18.8

1991

48.8

45.4

9.0

18.4

1992

50.3

46.6

9.6

19.0

1993

51.2

47.4

9.9

19.3

1994

51.4

47.8

9.7

18.9

1995

51.7

47.8

10.0

19.4

1996

52.4

48.4

10.4

19.9

1997

53.5

49.6

11.5

21.5

1998

53.4

49.7

11.7

22.0

1999

52.8

49.1

12.3

23.2

2000

52.7

49.0

12.7

24.2

2001

53.4

50.0

13.6

25.5

2002

53.4

49.4

14.5

27.2

2003

53.4

49.5

15.0

28.1

『OECD日本経済白書2005』中央経済社、2005年、227頁、を加工した。元データは総務省労働力調査。

 

このパート(派遣や請負、臨時、短期出向を含む)労働者の特徴は、女性の割合が高いことと、男性の場合は若年層で比率が高いことである。女性の労働者のうちパートが占める割合は90年には31.8%だったが、2003年には41.6%に高まっている。男子のうち、15歳から24歳の年齢層では90年の14.9%から2003年の28.3%まで上昇している。いずれも95年以降に急速に伸びているのだ(「同白書」228頁、第6―3表)。

これを同白書は「日本の労働市場の二重構造化」と指摘している。この「二重構造化」これからの日本社会に二つの面で悪影響を及ぼす。一つは、若年層が「貧困の罠」にはまることで、労働者としての「スキル」や「能力」を獲得するチャンスを奪われる、という点である。これは社会全体の生産能力とその活力を奪うことにつながる。もうひとつは、正規労働者と非正規労働者の間には流動性がとぼしいので、生涯賃金に大きな格差をもたらすことになり、「公正」という面で大きな問題が生じる。要するに、労働者の4分の1以上、三分の1近くが大幅に低い賃金と、低い社会保障しか受けていないのに、その階層が雇用調整の対象として不安定な条件を背負わされているのである。この状況はこの10年の間に深刻化しているのである。

まず若年層を中心とした職業訓練プログラムの拡充を推進すると共に、「リビング・ウェッジ」という「公正労働賃金」の実現に向けた運動を強めること、社会保障面での、正規労働者との均等待遇の実現を図る必要がある。さらに、生活保護など基礎的なセイフティーネットの再構成が必要である(貝塚啓明、日経051230日)。

 

所得格差の拡大

この労働市場の二重化は、所得の格差を拡大してきている。例えば、内閣府経済社会総合研究所の太田清総合政策研究官、『フリーターの増加と労働所得格差の拡大』               (20055月)は次のように指摘している。

1990年代後半から最近にかけて、個人間の労働所得格差が拡大していることがわかった。いずれの年齢層でも格差は拡大しているが、特に若年層でその拡大テンポが速い。この若年層内における格差の拡大は、フリーター化など非正規雇用の増大の影響が大きい。
 若年層の間での格差拡大は、日本社会の将来の姿を先取りしたものである可能性もある。本稿の分析結果は、若年者が職業能力(稼得能力)を獲得する機会を十分に持てるようにする政策が極めて重要であることを改めて示している。また、やや技術的な問題に関する含意であるが、経済的格差の拡大等、経済社会の重要な変化をできるだけ早期に察知できるよう、統計の整備が望まれる。」

 

 このような「格差社会」の出現は、この間に進められた「構造改革」が推進した規制緩和と競争原理の社会全体への浸透によって、わが国が従来になく「リスク社会」に転換しつつあることのひとつの結果でもある。

 

(3)06年度末の政府債務残高は775兆円(国が542、地方が204で重複除き)となる見込みだ。この巨額な政府債務を解消するために、まず基礎的財政収支(プライマリーバランス=国債収入を除いた租税収入で借金返し分を除いた歳出を賄えるかどうか)黒字化はこれも必要なことである。06年度予算では、このプライマリーバランスの赤字は、05年度予算から47千億円ほど縮小して112千億円になる(日経など)。このために基礎的収支の黒字化の目標年次を、2010年代初頭と、05年度の見込みより一年前倒して2011年度とすると伝えられる。

 

(4)負担増への転換

 昨年から、政府税制調査会でも消費税等の税率の引き上げの議論が展開されてきている

が、景気回復もあって、国民負担を軽減してきた政策を次々に転換してきている。もっと

も年金や医療保険、それに税制など構造的な制度見直しという面も強い。今年から来年に

かけての国民負担増の動きをまとめてみた。なお、○は負担軽減の施策である。

20061月  ・ 所得税の定率減税半減で12520億円。

        ○ 所得税の寄付金控除の拡大 10000円以上から5000円以上に。

4月  ・介護保険料引き上げで2600億円。月3200円平均から、月4100円平均への引き上げ。高齢者の増加と予防事業の本格的導入が主たる原因。

・障害者の福祉サービス利用に自己負担導入。原則一割負担。施設の食費・光熱費は原則自己負担に。

・国民年金保険料の引き上げ。月13580円から13860円に。毎年引き上げ。

○ 児童手当の拡大。小学校3年生までを6年生まで。第二子まで月5000円、第三子から一万円。

5月  ・酒税の見直し。第三のビール1缶(350ml)当り3.8円上げ。清酒は1.8l当り36.9円引き下げ。

6月  ・65歳以上の住民税控除廃止で1003億円。

・住民税の定率減税半減で3330億円。

7月  ・たばこ税の一本一円上げで1800億円。(たばこ税増税で児童手当の拡充。しかし防衛庁の省への昇格との取引だということは明白)

9月  ・厚生年金保険料の引き上げで2700億円。労使で14.288%を14.262%。2017年度まで18.3%まで毎年引き上げる。

10月  ・70歳以上の高所得層の医療費の窓口負担拡大で750億円。2割を3割に。

70歳以上の長期入院者の食費と住居費を全額自己負担に。

・ 高額医療費の自己負担限度額引き上げ。70歳未満で一般所得の場合は72300円を8100円に。

○ 出産一時金の引き上げ。一人につき30万円を35万円に。

071月 ・所得税の定率減税を全廃。

076月 ・地方税の定率減税廃止。

    なお、昨年10月から介護施設入所者のホテルコスト徴収開始など。

 

 (5)公務員数の削減 20056月の「骨太方針(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」)」で地方公務員は今後5年間で4.6%純減とした。これは来年度地方財政計画では23千人の純減としている。

なお、総務省の自治行政局の調べでは、0541日現在で地方公務員数は3042122人で、前年より41475人の純減となっている。これは04年で33407人、02年で27319人のそれぞれ減だったので、それを上回るテンポで地方公務員数が減っていることがわかる。

内訳は一般行政部門は20291人減、教育部門は14733人減(児童生徒数の減、大学の独立行政法人化)、公営企業10300人減(病院の民間委譲、民間委託など)などだが、一方で、警察官は34101、と消防職員は448人は増加となっている。

     また総務省「新地方行革指針」(05329日)と「集中改革プラン」の05年度内公表に向けての「助言」が分権の流れに逆行して行われている。職員数の削減など数値目標の設定とその期間を明示するなどだが、本来、自主的に進めるべき行政改革に対する権力的関与に近く問題がある。1217日に総務省が公表した進捗状況では、この集中改革プランをつくることに消極的な団体が名指しされている。それは鳥取県、旭川市、品川区、神奈川県藤野町、山梨県芦川村、鳥取県日野町である。

 

(6)06年度地方財政対策のその他の背景など

1、まず政府の総合規制改革会議(現在は規制改革・民間開放推進会議で議長は宮内義雄オリックス会長)が進めている市場化テストの一部導入の流れがある。これは、国立博物館、美術館などや国立大学の独立行政法人への転換(04年度)など、イギリスのサッチャー改革で取られた施策の導入がある。自治体の指定管理者制度の導入やPFI手法の活用なども同じ流れにある。すなわち、公務員労働分野への「市場原理の導入」である。あるいは、公務員労働の分野の民間への開放である。

   

   2、経済動向は物価はなおデフレ基調だが、実質成長率は2%程度(政府経済見通し)と見ている。経済の状況は、GDPの半分を占める個人消費が堅調で、それが民間の設備投資を拡大してきている。また米国経済の持ち直しと中国経済の9%台の高い成長に引っ張られて輸出も好調である。このため法人税収の好調を持続している。

一方で所得税は低調だが、これはこの10年以上にわたって進行してきたリストラや年功賃金制の見直し、成果主義の導入の圧力もとでの賃上げの停止、抑制と労働分配率の低下による、雇用者所得圧縮がまずあり、また先ほど見たような、「労働市場の二重化」によって、低賃金のパート労働者の増加が全体の食水準を引き下げているためである。

      また、地域間の経済格差が広がる中で固定資産税の伸びは二極化している。とくに東京周辺の大都市地域の一部では「ミニバブル」が生じて、地価が上昇している一方で、地方の県庁所在都市でも全体的には地価の下落に歯止めがかかっていない。

      なお、0511月と12月の全国の消費者物価指数は2年ぶりに、いずれも対前年同月比0.1%程度とわずかに上昇に転じ、デフレ脱却の期待が高まっている。

 

 (7)分権改革と三位一体改革の推進。

三位一体改革では、国庫補助金負担金の整理4兆円と税源移譲3兆円ということで昨年1130日に政府・与党が合意した。懸案だった生活保護費については、厚生労働省の補助率引き下げ案は、地方6団体の事務返上も掲げた強い反対で通らなかった。しかし、義務教育教職員の国庫負担制度は補助率を引き下げて残存し、児童扶養手当と児童手当の国庫負担率が引き下げられ、地方負担に転嫁された点は大きな問題を残した。地方自治体の裁量権の拡大をもたらさない、数字合わせという各知事や市長からの批判は当然である。

交付税総額の圧縮では、「計画と決算の乖離の是正」措置がとられ、投資単独事業を2兆円圧縮し、他方で経常経費の単独事業を1兆円積み増すことで、差し引き1兆円の規模の圧縮が図られた。さらに、事業費補正係数の一部廃止など積算の簡素化、スリム化が行われる。そして、小規模自治体(人口1万人以下の町村)に対する段階補正の縮小が2000億円の規模で引き続き行われる。

所得税の一部を住民税個人所得割に移譲することも決まった。07年度から実施で、06年度は347億円の「所得譲与税」でカバーするとしている。

 

 (8)06年度からの地方債の協議制への移行(後述)。

 

 (9)、市町村合併の進行と財政。

     1999331日現在で3232あった市町村は、200641日には1820になる見込みである。これ以降も新合併特例法によって自主的合併の推進が掲げられ、都道府県の構想の策定と勧告などが予定されている。また廃止とされた合併特例債については道路など一部事業について事実上継続されるが、交付税への算入率などは引き下げる(829日日経)。

 

 

 (10)、医療制度改革と府県、市町村。

      昨年10月に医療制度改革についての厚生労働省医療制度改革試案が公表された。種々議論があったが1130日には、政府与党の合意で政府の医療制度改革大綱が決定された。将来の医療費抑制のために、「生活習慣病」(心臓や脳血管系の動脈硬化と高血圧、糖尿病、肝臓病、歯周病など)対策をとるよう、都道府県に医療費適正化計画策定を義務付ける。後期高齢者について新たな医療保険制度をつくり、都道府県単位の広域連合で処理する。政管健保と組合健保などを統合するとともに、国保の広域化を図る。患者の自己負担の引き上げを進める。

 

 (11)地方自治制度改正  第28次地方制度調査会の「地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申」(05129日)に基づいて、地方自治法改正案を1月からの通常国会に提出する、としている。

    1、現行の副知事・助役、出納長・収入役を廃止する。新たに副知事・副市町村長制度を導入して、長の権限を委任できる旨の規定を置く。定数は条例で定める。トップマネージメントの強化が主眼としている。

    2、教育委員会は任意設置とする。社会教育、文化、スポーツ、幼稚園、生涯学習などは、長が所掌するか教育委員会が所掌するかは自治体が選択できるものとする。

    3、農業委員会も任意設置とするなど。

 

2、5年連続して縮小した地方財政計画の規模。

 

 (1)2006年度の地方財政規模は831800億円程度で、前年度より5900億円、0.7%減。これは、付表2にあるようにピークの2001年度の893100億円から61300億円、6.1%の減となっている。これは平成7年度(1995年度)、すなわち12年前の水準となる。

 (2)地方財源の通常収支不足額の圧縮とその補てん。

    ・通常収支不足は2003年の13.4兆円から2006年度は57044億円に縮小した。しかし、この状態は地方交付税法第6条の32項の規定に該当する。すなわち3年以上連続して交付税総額の1割以上の財源不足があるため、地方財政制度の改正か、地方交付税率の改正によって、この財源不足を補填する義務がある。これで11年連続して財源不足ということになる。

     (定率減税など恒久的減税などによる地方税及び地方交付税の減収分と合わせた財源不足は、17.4兆円から11.2兆円に縮小した。)

     この不足額、57044億円の補てん措置は次の通りである。

1、地方交付税の増額 11500億円。

国の一般会計からの加算措置=既往法定分4443億円および臨時加算7029億円(国と地方の折半分)

なおこれに恒久的減税に係る特会借入金利子負担分700億円が加わる。

    2、臨時財政対策債  29072億円。

       ・財源不足地方の折半分 7029億円。

       ・既往臨財債の元利償還分 22043億円

       この臨時財政対策債はその元利償還金の全額を後年度に地方交付税計算の基準財政需要額に算入することとされている。

    3、財源対策債    16500億円。

これは建設地方債である一般公共事業費にかかる起債充当率の引き上げによる。

    4、なお、2006年度税制改正による所得税から個人住民税への税源移譲に伴い、所得税に係る地方交付税率分の大幅減少の影響を緩和するために、2007(平成19)年度に2600億円、08年度に2000億円、09年度に1400億円を交付税の総額に加算することとした。

     また、所得税の定率減税の縮減による交付税原資の増加分(4051億円)は、特

別会計借入金の縮減に充当する。

 

 (3)恒久的な減税に伴う地方税の減収の補てん措置。3376億円。

     1999(平成11)年度からの恒久的減税については、06年度の税制改正で、定率減税は所得税については06年分、個人住民税については06年度分から廃止することとされている。

    1、減税補てん地方特例交付金 地方税の減収見込みの4分の3から、2のたばこ税移譲分と、3の法人税の交付税率引きあげ分を控除した7456億円を減税補てん地方特例交付金として自治体に配分する。

    2、国のたばこ税の一部移譲    1142億円。

    3、法人税の交付税率引き上げで  4962億円(35.8%)。

    4、減税補てん債         4520億円(元利償還金は全額需要額算入)。

 

    なお、2007(平成19)年度以降、恒久化される恒久的減税にかかる地方税の減収の補てんは、次のようなかたちで補てんする。

    ア、地方たばこ税の増収措置の恒久化。

    イ、法人税の地方交付税率は34%とする。

    ウ、それでも補てんされない部分は国と地方が折半ルールで補てんする。(国の負担部分は下記のエ、を含む)

    エ、減税補てん特例交付金は07年度は4000億円、08年度に2000億円とし、09年に廃止する。

 

 (4)恒久的な減税に伴う地方交付税の減収の補てん。12296億円のうち06年度に新たに発生する減収10888億円については国と地方が折半ルールで補てんする。

    1、国の負担分5444億円は交付税特会が借り入れ、交付税の一部として地方自治体に配分する。これは国の一般会計が財政融資資金および民間金融機関(短期市場)から借り入れる。10年で償還する。

    2、地方の負担分5444億円についても交付税特会借り入れで補てんし、交付税の一部として地方自治体に配分する。スキームは同じ。

 

 (5)地方交付税(地方自治体に配分される交付税=交付税特別会計の「出口ベース」の地方交付税)は159073億円程度で、前年度から9900億円、5.9%減となる。地方交付税はピーク時の2000年度の214107億円から55千億円、27.5%減。つまりピーク時の4分の3にまで縮小してきたことになる。

ただし、一般財源総額(地方税、地方交付税、所得譲与税を除く譲与税、減税補てん特例交付金、減税補てん債、臨時財政対策債など)は556334億円で前年度比204億円増。

     ・臨時財政対策債は29100億円程度、前年度は32231億円。

 (6)歳出減の要因は主に二つある。

   1、給与関係費は人員を2.3万人純減、給与構造改革などで4000億円減。ただし退職手当は増となっている。そのために退職手当債の拡充などが行われる。

   2、投資単独事業は9091年水準に抑制し、4000億円減。これに「計画と決算との乖離是正」で2兆円圧縮(経常の単独は1兆円増)して10900億円に、19.2%の減となった。。

   なお、国庫補助事業は社会保障関係費中心に6000億円ほど増となった。

 

 (7)三位一体改革(20051130日政府・与党合意「三位一体改革について」)

   1、2004年度から2006年度までの国庫補助負担金の改革の合計は46661億円とされている。

   

2、このうち税源移譲に結びつくものは31176億円である。

     いわゆる数字合わせという批判が強い。義務教育教職員給与費国庫負担金(2分の1から3分の1への引き下げ)4217億円のように自治体への裁量権の委譲なしに負担転嫁を図る負担率引き下げというかたちのものが額的に大きいのである。  

      051130日の政府・与党合意では次の国庫補助負担金について補助率の引き下げ等の改正が行われた。

     経常経費系統では

     ・児童扶養手当給付費負担金  1805億円 4分の3から3分の1に。

     ・児童手当国庫負担金     1578億円 3分の2から3分の1に。

     ・介護給付費等負担金(うち施設等給費)  1302億円。

     公共事業関係では

     ・地域介護・福祉空間整備等施設整備費交付金のうち都道府県分(特養等)

                          389億円

     ・公営住宅家賃対策等補助金のうち法に基づく国庫負担分

                          620億円

     ・公立学校施設整備費補助金の一部     170億円

     なおこの3事業のほか、公立保育所施設整備交付金(次世代育成支援対策施設整備費交付金のうち)については、特別の地方債の発行を認め、その元利償還金は全額後年度に基準財政需要額に算入する。

 

   3、この税源移譲対象補助金については起債充当分を除き、全額基準財政需要額に算入するとともに、394億円については所得譲与税として税源移譲する。この所得譲与税は、自治税務局所管の地方税であり、全額基準財政収入額に算入される。配分基準は国勢調査人口による。

     06年度は都道府県に21794億円、市町村に8300億円となる。

 

   4、2人まで月500円、3人目から月1万円の児童手当を小学校修了までに年齢を引き上げ、所得制限を緩和する。そのための地方負担増に対して、地方特例交付金(児童手当特例交付金)を創設する。国と地方のたばこ税増収を考慮して、06年度は704億円とする。

 

  5、決算と計画の乖離の一体的是正。

      昨年度に非続き、地方財政計画と決算との間の乖離を是正する。この乖離は投資単独事業では計画が決算を上回り、人件費などでは決算が計画を上回っている現象を指す。地方財政計画の歳出の投資的経費(単独)を2兆円(一般財源ベースで1兆円)削減し、他方で、一般行政経費(単独)を1兆円(全額一般財源)増額するとしている。この乖離是正分の一般財源に相当する地方財源不足分については、他の財源不足対策と同様、基本的にはその2分のTを国が、2分のTを地方が負担するが、06年度分はとりあえず臨時財政対策債とし、今後5年で段階的に通常のルールに移行するとされている。

 

   6、地方交付税の総額の抑制

     ・行政改革インセンティブの創設  歳出効率化努力の反映、徴収率向上努力の反映。

     ・企業誘致による税収確保努力の反映。

     ・ごみ収集や学校給食等についてアウトソーシングによる効率化を反映

                            マイナス2000億円。

     ・小規模町村に対する段階補正による割り増しの縮小

                            マイナス2000億円。

     ・都道府県分の補正係数を半減。事業費補正の大幅な縮減。

     ・計画と決算の乖離の是正(前述)

     ・不交付団体の人口割合を00年の11.5%から05年度の18.4%にした。

      2010年代初頭に人口割合で3分の1、税収割合2分の1をめざす。

 

  (8)地方税制の改革

   1、06年度税制改正で所得税から個人の住民税所得割に3兆円を移譲する。実施は07年度から。10%の比例税率で都道府県に4%、市町村に6%としている。(ただし、地方税法の定めによるが、この都道府県4対市町村6という税率の配分は、自治の観点から検討の余地もある。条例で、各市町村が異なる税率とする可能性も検討することも考えられてよいであろう。不均一課税や超過課税も考えられるところだ。

   2、06年度は所得譲与税394億円で財源手当てを行う(先述)。この配分基準は単純な人口割としてきている。

   3、06年度税制改正において所得税から個人住民税への恒久的税源移譲を行う。その際、個人の負担増を調整する措置を取る。

     ア、所得税の税率を、5%、10%、20%、23%、33%、40%、の6段階に。

     イ、個人住民税所得割りは10%とする。都道府県4%、市町村6%。

  

 (9)地方債の許可制から協議制への移行(06年度から)。

   ・地方財政法施行令の改正による。

     1、地方債の発行は予算の定めるところによる(地方自治法第230条)。しかし、地方財政法第5条の3は次のように定めている。「地方公共団体は、地方債を起こし、又は起債の方法、利率若しくは償還の方法を変更しようとする場合は、政令で定めるところにより、総務大臣又は都道府県知事に協議しなければならない。」

     2、協議によって総務大臣又は都道府県知事が同意した地方債についてのみ、公的資金を借り入れることができる。

     3、地方自治体が総務大臣又は都道府県知事の同意を得ないで地方債を発行するときは、あらかじめ議会に報告しなければならない。

     4、協議制度に移行した後にも、一定の条件下の自治体にあっては、許可団体に移行することとされている。その条件とは、新しく設定された「実質公債費比率である。この実質公債費比率が18%以上の団体は許可団体に移行するとされている。

     5、実質公債費比率は次の算式による。

     ・分母は拡大された標準財政規模(地方交付税、標準税収入額、地方譲与税(所得譲与税も)、臨時財政特例債、地方特例交付金を含む)である。

・分子には地方債の元利償還金と準元利償還金(満期一括償還方式地方債の年割り額(30年として年3.3%)、公営企業と事務組合への繰り出し金のうち元利償還金として充当されると見られるもの、債務負担行為のうち元利償還に類似する用地取得費や利子補給など)とを合算した額。

 いわば普通会計と公営事業会計とを結んだ連結決算ベースの元利償還金を対象とするものである。

このことによって生じる可能性があるのは、自治体間の格差が広がるということである。というのは、起債が原則自由化されるなかで、民間金融機関からの自治体の財政力、あるいは起債の償還能力についての格付けが厳しくなるなかで、この起債許可団体か否かで、貸付利子率に差が設けられることは必至だからである。

     6、実質収支の赤字が一定規模以上は許可団体に。都道府県と政令市、標準財政規模500億円以上の団体は2.5%、200億円以上の市町村は5%、50億円の市町村は10%など。

(10) 団塊の世代の定年退職を迎えて、06年度以降の退職手当の大幅な増加に対応するために、10年間の特例措置として、許可により、定年退職者の退職手当に当てるために、退職手当債の発行を拡充する。そのための条件は次のとおりとされている

     (1)平年度を上回る退職手当額があること。

     (2)定員と人件費の適正化計画を定めて総人件費の削減に取り組む団体。

     (3)発行可能額は平年度ベースを上回る額(国家公務員ベース)の範囲内。

 

3、地方自治体のこれからの課題

さて、これからの展望を考えるとき、つぎのような論点が改めて重要になる。

(1)公共投資の削減と総人件費の抑制について

まずプライマリー・バランスの黒字化に向けての、歳出削減圧力をどこまで見ていくかという点である。現在の歳出構造の問題は、第一に、公共投資の水準が、なおOECD諸国に比して高いという点である。これは財政資金への談合や偽装といったたかりの構造を圧縮するためにも必要なことだが、問題点もある。それは先に触れたように、まず、公共事業に依存してきた地域の再生をどう図るか、という問題である。

もうひとつは、人件費の圧縮をどこまで考えるか、という点である。これも二つあり、公務員数の削減をどう考えるか、という問題がある。その場合も、ラインのアウトソーシングに重点をおくか、それともスタッフ部門のフラット化と権限の移譲による意思決定過程の短縮と組織の活性化か。

もうひとつは、賃金水準と賃金構造の問題である。これは、地域手当の導入と、地域の賃金水準の問題である。

 

(2)ふたつめは、本格的な消費税税率引き上げの議論をどう考えるか、である。税率引き上げの是非もある。どうしても引き上げなければならないとしたら、まず、複数税率の導入が検討されなければならない。また社会保障目的税としてのしっかりしたデザインが必要で、社会保障特別会計への繰り入れ措置なども必要である。

 

 (3)三つ目は交付税総額の抑制がどこまで行われるか、という問題である。この地方交付税については、特にその財源保障機能が、地方のモラルハザードの温床となっているという批判が一部の「エコノミスト」や、東京のジャーナリストや学者の中に依然として強い。しかし、あらためて強調しておきたいのは、地方交付税は地方的地域に傾斜的に配分されるべきだということである。

  分権時代にあっては、人口がますます集中する都市部には税源も集中する。したがって、自主課税権をより自由に活用できる自治的課税システムが検討されなければならないのである。固定資産税の不均一課税や、住民税の税率引き上げなど現実に可能になるようなしかけを考えたい。また。都市部においては、法人企業も集中するから、これら法人企業に「企業の社会的責任」を果たすよう、その協力を求めていくことも必須の課題である。

  その上で、地方交付税は地方的地域に「傾斜配分」することが求められる。生活と生産にゆとりのある、グリーンツーリズムの基地があるような豊かな地方を形成し、そのような地域を再生する意味をもう一度考えたい。そのために地方的地域の自立的、自主的な活動を支援する、しっかりしたセイフティーネットを構築することが必要で、それが大都市の競争的な社会活動を支えていくことにもなる。このことを長期的に、かつ効果的にキャンペーンしなければならない。

この地方的地域のセイフティーネットとは地方交付税に他ならない。すなわち地方交付税の基準財政需要額の算定では、大都市部の需要額を調整しながら、地方的地域の財政需要をカバーするような重点的な配分が行われるべきである。

ひとつは、高齢化率を単位費用に反映させることが必要である。その内容は、医療制度改革に連動して、生活習慣病など加齢にともなって重度化する疾病を予防し、「健康寿命」をできる限り延伸する予防活動(長野県民が展開してきたPPK運動のように)の需要額の算定が必要である。現在の介護保険財源では全く不足する。

また介護保険料や国民保険料、あるいはこれらサービスの利用者の自己負担分を減免せざるを得ないような低所得の高齢者が増加することを考えると、その減免措置を裏打ちできるだけの需要額を盛り込むことも必要である。

次には、森林を管理し、河川を維持すること、そのことを通じて生物多様性を維持し、持続可能な地球環境を守るための財政需要が適正にカウントされる必要がある。これらの環境保護活動は市場原理だけでは、なかなかうまく機能しないからである。このような領域でNPOやNGOの専門性と都道府県と市町村の行政的権能の活用による広域的連携が、地域住民の自立的活動と長期的に支えられて展開されなければならない。

そのためには、林道など管理道路網の設置や維持管理の費用なども適切に需要額に算入するベきである。

  その上で「地域福祉計画」や「環境管理計画」などそれぞれの「行政計画」の策定とその進行管理を市民参加によって行うことによって、これらの需要額が活用されているかを評価することも必要であろう。

 

  以上のような論点を踏まえて、これからの地方自治体が考えるべき課題を検討すると次のようになるのではないだろうか。

 前提1、地方財源は伸びない、または縮小する。2011年度のプライマリー・バランス(基礎的収支=公債収入を除く租税収入で、国債費を除く歳出を賄う)黒字化は実現すべき政策目標であり、マニフェストであるとして。大規模な地方への税源移譲を実現しても、同じことがより強く地方の自己解決能力が問われることになる。

 前提2、リスクの拡大に対応するための公共的サービスは拡大する。

     「公共的課題(public problem)とは、個人または個々の家族の自助努力(self-help)をもってしては充足・達成・解決することができない課題だ」(西尾、東大出版前掲『自治から考える公共性』136頁)

   

方向性1、

@行政と市民が協働して公共サービスを担うことで、市民の自己統治能力(自分たち

で政府やマーケットの力等に必要な支援をうけながら、内部の対立を克服して、課題を

解決し、あるいは調整する能力)を形成できるか否かが、誇りある町にできるかどう

かを左右する。

Aしたがって、財政資金は、市民の力を引き出し、地域の力をつくることに集中して投下されるべきだ。人の能力形成(塾や市民大学)、拠点や場の形成(現代のコーヒーハウス)、そして市民ファンド(市民と市民である企業の寄付を基礎とした)の形成、を支援し推進するために。

B行政は市民の新しい動きやその芽をつぶさないことが大事だ。ワークショップで腕を組んで後ろに立っている職員は最悪だ。同じテーブルで、しかし、行政にたずさわる者として、市民感覚を研ぎ澄ますような議論ができるような訓練が必要だ。

C市民は、行政への安易な依存やお願い、過大な期待をやめることが大事だ。まず自分たちで、自腹を切り、時間を使い、家や場を開くことからはじめる。人の話を聞き、よく調べ、具体的な提案と、それを自らかたちにしてみせるところが成功しているようだ。

Dこのことを通じた、地域での「小さな公」の形成、下請けではない本物の「協働」、「市民的公共性」の形成への努力が求められる。この「小さな公」とは次のようなかたちで言われることもある。

  「堅気の暮らしを守ってはいるが、ある志を抱いて、そこから歩み出て、他の人々と

共同の関係を結び、広く世のため人のための活動をしようとする人々がいる。玄関か

ら出た先のこと、世間のこと、他人様のことにも関心を持ち、なんらかの言動を行お

うとするタイプである。そうした人びとを広く「有志」と呼ぶことができる。この場

合の「志」とは、自分と家族の生活が地域社会のあり方や世の中の動きと結びついて

いることに気づき、その世の中のことに関心を寄せ、そこに課題を見つけ、その課題

の解決を通じて世の中を少しでも良いものにするために働きかけを行おうとすること

をいう。そのためには、若干の時間・労力・資金を惜しまないのである。このような

(酔狂な、奇特な、変な)有志の活動こそ、地域社会に変化を刻むエネルギーとなる。

志高く、志を持続させる人びとがいてこそ、地域社会は生き生きとして参加型社会に

発展するとも言える。」(大森、『自治から考える公共性』東大出版20047月、164

頁)。

 

方向性2、

行政はこれまでのやり方では、リスク社会に対応できなくなっている。市民と家族の観点からの「選択と集中」を徹底することによって、これからの明確な「まちづくり」の方向を示すことが重要だ。たとえば「福祉社会」と「環境都市」に。市民参加推進計画、協働事業推進計画の着実な実行による、行政文化の改革といってもよい。

  1、「行政都市」の解体的再編。組織のフラット化。組織管理業務のスクラップ。「情

報を経営資源として捉えるならば、階層の整理が俎上に上らざるをえなくなる。

マネジメント上の階層のほとんどが何もマネジメントをしていないことが明らか

になる。それらの階層は、トップとボトムから届くかすかな信号を増幅している

だけである。

     情報理論の第一法則によれば、あらゆる中継器が雑音を倍増しメッセージを半

減させる。同じことが、人のマネジメントをせず事業上の意志決定もしないマネジメント階層についても言える。それらの階層は情報の中継器に過ぎない。」(ピーター・ドラッカー『ネクスト・ソサイエティー』2002年)

  2、事務事業評価と政策評価を進めて、現行事業の4割を整理し、2割の新規事業をは

めこむ。愛知県多治見市の西寺雅也市長が進めている総合計画の実施計画では、

財源の減少を前提に事務事業の3割程度をスクラップし、一方で新規の事業が出

てくることを予想して一割をそれに振り向けるとしている。

長野県泰阜村の松島貞治村長が提案しているのは、道路事業などは長野県に委託するなど、県内どこでも同じ事業は県にまかせる。村は在宅福祉事業に集中する、としている。

     この場合の新規事業とはなにか。例をあげると次のようなことが考えられる。

     (1)地域就労支援事業  大阪府が04年度から各市町村と協力して実施している事業で、若者、障害者、母子、生活保護世帯を対象にするもので、できればコミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)を配置して、そのCSWが、各機関と要支援者とを繋ぎ、最初の相談から就職まで一貫してフォローする態勢が求められる。さらに、就職した後も引き続きカウンセラーとして相談に乗ることが不可欠である。

     (2)家族支援事業  これには、専業主婦の世帯も含む子育て支援がある。新規に立ち上がった事業である児童虐待防止法関連の事業、高齢者虐待防止法にかかる事業、、ドメスティック・バイオレンスの事業、学習障害児者への支援事業など、いずれも一担当者の兼務か、嘱託など臨時の対応にとどまっている場合が多い。

     (3)在宅医療と在宅ホスピスが実現できるよう、在宅介護と予防ケア、在宅医療などのための拠点施設の設置が必要だ。それを住民や利用者参加で運営することを支援する事業。

     (4)地域経済活性化のひとづくり。これには、第三セクターで始めた長浜市の「黒壁」などのノウハウが必要である。また、役場の職員の能力をつけるためには、新潟県黒川村の本物の職員派遣事業がもっと注目されて良い。

     (5)地球環境を守る地域循環型生産。山形県長井市などのレインボープランなど。

     (6)ふるさとを捨てない学校教育。     

    

 われわれは、一方で規制緩和と競争原理の導入のもとで、株高やボーナスの割増支給な

どの恩恵を受ける人々の豊かな消費生活の輝きを見ている。他方では、格差社会の現実に

直面している。このような「陰鬱な時代」にいることを改めて確認したい。私たちは人口

4分の一が低所得と低社会保障の階層から抜け出せない状況を改めるために、まずきち

んとしたセイフティーネットの再構築に向かわなければならない。そのような中央政府と

地方自治体をつくることが求められていると思う。

 

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