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2007年度地方財政計画をめぐって |
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企業偏重の成長政策を転換して、生活の豊かさをつくり支援する自治体改革を 2007年1月26日(2月1日補足) 奈良女子大学名誉教授 澤井 勝(1)07年度地方財政対策は06年12月18日に財務・総務両省で合意。 今回の主な争点は、一方での国税と地方税の自然増収があり、他方ではこの間の地方財政規模の圧縮(決算と計画の乖離是正による地方単独事業の削減、職員定数の削減など) によって、財務省が早くから「地方財源不足の解消」「地方交付税の特例減額と国への融通」を主張したところにある。この点は、地方には「交付税特会」に膨大な借金がありその返済を始めることを主張するなどして反論するなかで、地方財源不足を4兆4200億円を認めさせる一方、国と地方が不足額を折半するというルールは維持しながら、今回は国の責任での補てん措置を行わないこととすることで折り合いをつけたもの。 (2)前提条件等 1、歳入歳出一体改革で2011(平成23)年度までに国と地方のプライマリーバランスを黒字化する。そのための「要対応額」は16.2兆円程度(2006年度ベース)。そのうち歳出の伸びの抑制で11.4兆円から14.3兆円をカバーする。(「経済財政運営と構造改革の基本方針2006」、いわゆる「骨太方針2006」)。残りは歳入改革。 特に響いたのが社会保障関係費の自然増を毎年度2200億円抑制するとする方針。これは一般会計ベースだと対応費用は1兆1千億円でこれを5年で抑制するため。07年度は雇用保険の国庫負担を1800億円削減し、生活保護の母子加算を3年度間で廃止することでクリアしたが・・・。 また地方単独事業は、国の公共事業とならんで、毎年度1%から3%減とされた。 2、景気回復に伴う大幅な自然増収と国の予算 @ 06年11月に「いざなぎ超え」景気に。 特徴は個人消費の伸びがない、好況感なき景気拡大。企業収益は最高を更新する中で、労働分配率は70%台から60%に低下。給与所得は8年間低下し続けている。 企業収益は労働者に配分されず、経営者の報酬の大幅な伸び、株主の配当の急増、設備投資への傾斜がすすむ一方で、引き続き「非典型労働者」「偽装請負」への依存が深まる。(現場では技術力の劣化と士気やモラルの低下が指摘されている。) A 07年度一般会計予算(自然増収、社会保障関係費カット、国債発行削減) ・国税特に法人税の大幅な増収。06年度当初予算に比べて7兆5890億円、16.5%増。 ・所得税は定率減税の廃止による増収が見込まれる。 ・歳出カットは公共事業を3.3%抑制、国家公務員の純減など。 社会保障関係費の伸びを2200億円抑えた。雇用保険の国庫負担を1800億円削減、生活保護の母子加算を3年で廃止、自宅に住む高齢者は生活保護からリバースモーゲージに転換させる、など。 ・国債発行額を4兆5410億円削減して、25兆4320億円に。公債依存度は30.7%。06年度当初予算では37.6%だった。 B 非対称の税制改革 企業減税と家計負担転嫁の税制改革。減税は国税で07年度は4020億円。うち4388億円は企業の減価償却制度の見直し(5%の残存価格を廃止して100%まで償却し全額の損金算入を認める)。金融資産からの利得である株式譲渡益と配当に対する優遇税制(源泉分離の10%課税)は07年度の1年延長。 一方で、恒久的減税とされた定率減税は07年度で全廃。07年1月に所得税、個人住民税は6月以降)。それに参議院選挙後に消費税の増税議論が本格化する。この争点を隠した「本間政府税調答申」は、国民を愚弄するもの。 厚生年金(この9月から14.642から14.996に)と国民年金(07年4月に月額1万3860円から1万4100円に)年金保険料の引き上げ。 障害者自立支援法による利用者負担の導入。介護保険施設利用者にホテルコスト導入、なども。 例外は少子化対策での児童手当ての拡充で、06年度に支給対象児童を小学6年生まで広げ、07年度では2歳児まで1万円に増額。地方特例交付金で財源手当てを行う。 2−1 プライマリーバランスの改善 税の自然増収と歳出の抑制(社会保障費、交付税総額など地方財政経費、公務員数の削減と給与の削減、公共事業費の3.3%削減など)によって、2007年度の国と地方のプライマリーバランスは大きく改善した。07年1月25日の閣議決定「日本経済の進路と戦略(参考試算)」によると、07年度予算ベース(歳出削減Aのケース)で、国は対GDP比で1.7%程度の赤字、地方は1.1%程度の黒字で、差し引き0.6%程度の赤字である。 昨年12月26日の内閣府の資料(経済財政諮問会議提出)によると、基礎的収支黒字化のための要対応額16.5兆円程度(「基本方針2006」)は、足下の税収増を織り込むと13兆円程度と3.5兆円圧縮された。他方、07年度予算での国・地方の歳出抑制によって歳出は3.5兆円程度圧縮される見込み。合わせて要対応額は7兆円の縮小で9.5兆円程度になるとされている。 この勢いだと2011年度という黒字転換の目標は、前倒しで実現できる可能性が高い。そうなると増税論が吹っ飛びかねないところが財務省の泣き所である。なお前提条件として、期間中の実質GDPの成長率は3.0%とされている。この比較的高い成長率には注意が必要である。 3、07年度地方財政対策 @ 地方財源不足は4兆4200億円が生じることが合意された。これは96年以来12年連続で地方交付税法第6条の3第2項の規定に該当する。 財源不足補てんルールは、「平成19年度から平成21年度の間は、平成18年度までと同様、建設地方債(財源対策債)の増発によってもなお財源不足が生じる場合には、これを国と地方が折半して補てんすること」とされた。 折半の方法。国は一般会計から交付税特別会計に「臨時財政対策加算」を行う。地方は「臨時財政対策債」による。その元利償還金相当額は後年度に、その全額を基準財政需要額に算入する。 A 07年度はまず、次のように補てんする。 1、財源対策債(建設地方債の充当率引き上げ) 1兆5900億円 2、臨時財政対策債 2兆6300億円 3、特別交付金(減税補てんの特例交付金廃止に伴う3年度で6千億円) 2000億円 B この結果、折半するべき地方財源不足はこの段階で補てんされ、解消することとなった。したがって国の一般会計からの特例加算は07年度はゼロとされた。 C 臨時財政対策債 01年度以降の既往の臨時財政対策債償還 1兆0252億円 05年度からの乖離是正で一般行政経費(単独)増加分 1兆6048億円 合計 2兆6300億円 この措置で地方財政計画における決算と計画の乖離は、07年で解消することとなった。 D 児童手当の拡充による財源として「地方特例交付金」(児童手当特例交付金)、07年度分として470億円、06年度分と合わせて1120億円とする。配分は対象児童数。 4、07年度の地方交付税の総額 @ 法定交付税率による額 14兆6196億円(前年度当初比8771億円、6.4%増) A 特別会計剰余金 2153億円 B 繰越金 1兆5208億円(06年度中の法人税等の増収の一定割が地方交付税となるが、それを07年度交付税財源として繰り越した)。 C 特別会計借入金償還額 △5869億円 D 利子支払い △5661億円 差し引き 15兆2027億円(前年度比7046億円、4.4%減) 4−2 地方交付税の出口ベースの総額は2000年度から7年連続で減となった。00年度は21兆4107億円だったので、07年度は6兆2080億円減少。29%の減である。 なお交付税と地方税、臨時財政対策債を合わせた一般財源は2007年度は58兆2055億円となり、2000年度以降で最大になった。これは地方税の伸びによるもの。 5、交付税特別会計の借入金の償還を始めたこと。 @ 国はその負担にかかる借入金残高18兆6648億円を07年4月から国の一般会計借入金として振り替える。以後は国債費として償還する(07年度分は1兆7322億円) A 地方はその負担分34兆1509億円について20年間の償還計画をつくり、06年度の補正予算から償還(06年度補正予算は5336億円、07年度で5869億円)する。 6、地方交付税法附則第4条の2等の特別会計への一般会計からの加算など @ 07年度に加算されるものとされていた6251億円は、借入金償還に当てるべく2010年度以降の3年間に均等に加算する。 A 2013年度以降に加算 3712億円 B 08年度と09年度に減算 1546億円 7、07年度から税源移譲(3億円の規模で、所得税から住民税に)が行われる。 この影響を把握する必要がある。また、住民税の徴収率の低い団体は、税源移譲の効果が大きく減殺されることとなるの、その改善対策が重要になる。 8、07年度から地方交付税の算定に新型交付税(面積と人口要件のみで投資的経費を算定、15兆円のうち5兆円程度)の考え方を導入する。鳥取県の第一次試算では、全市町村がマイナスとなる。 9、地方財政再建法案がこの通常国会に提出される見込み。総務省の「新しい地方財政再生制度研究会」の報告(06年12月8日)では4つの指標の整備と早期是正スキームと再生スキームの提案が行われている。特にストック指標がどうなるかが重要。 10、地方税の見込み 07年度の当初の見込みでは40兆3728億円で、前年度より5兆4745億円、15.7%の増加である。道府県税が22.2%増、市町村が10.5%増。 道府県民税のうち住民税所得割91.4%増、法人税割29.6%増、利子割59.1%増、法人事業税16.5%増。一方で、地方消費税は0.3%の減、個人消費の低迷を反映している。 市町村民税では、所得割21.3%増、法人税割30.9%増。固定資産税は2.2%の伸びが鈍い。
11、地方譲与税 所得譲与税が税源移譲にともないなくなるので、前年度比81.0%、3兆233億円減の7091億円(道路譲与税、石油ガス、航空機燃料、自動車重量譲与、特別トン)である。 12、地方特例交付金など3120億円 @ 地方特例交付金(児童手当)は前述のように 1120億円 A 減税補てんの特例交付金の後継者である特別交付金 2000億円 13、地方債 @ 地方債計画は12兆5108億円、前年度比1兆4358億円、10.3%の減。 A うち普通会計債は9兆6529億円で、1兆1645億円、10.8%減だ。 B 退職手当債を5900億円計上している(団塊の世代対策として)。 C 臨時財政対策債は2兆6300億円計上している。 D 政府資金の繰上げ償還(補償金なし)を行う。 政府資金とは、財政融資資金、簡保資金、公営公庫資金である。 普通会計債と公営企業債(上水、工水、下水道、地下鉄、病院に限る)の5%以上の金利の地方債を対象とする。全体で5兆円の規模。 14、これからの課題 昨年度に提案していることに加えて、以下の具体的な取り組みが望まれる。 @ 地域社会での格差を是正できるところから 1、障害者自立支援のために ・単独の支援策として利用者負担の軽減 ・生活支援相談員の配置と関係機関との連携強化、研修 2、低所得者の自立支援 ・就労支援 ・職業訓練 ・生活相談 3、アスペルガーなど教育支援事業 A 地域最低賃金の引き上げ(民主党は時給1000円に引き上げを主張)。最低基準としてのリビング・ウェイジ(生活できる賃金)の基準を生活保護基準と整合性のある水準に定めるべきである。
A 公正労働基準を地域で確立する。 1、公契約条例の制定と「包括的一般競争入札制度」を求める運動を。NPOや民間委託先の雇用労働条件の引き上げに向けて。 2、役場での「非正規雇用」(臨時職員、嘱託職員、パート、アルバイト、請負従業員)などの待遇改善、同一労働同一賃金の実現の公共部門での実現の取り組み。
B 専門職の最低賃金の確立、特にホームヘルパーが安心して働ける労働条件を。登録ヘルパー制度の廃止も考える。短時間公務員制度も検討する。
C 税の公平性の確立。 1、所得税の累進性を回復する。少なくも1988年度の最高税率60%に(国と地方の合計)。 2、金融資産からの所得の総合課税化。基礎年金番号等による名寄せの実施。 3、消費税を複数税率とする。インボイス方式に。 4、法人事業税の外形標準課税は、資本金要件は撤廃する。
D 最後のセイフティーネットとしての生活保護制度の改革。「はいりやすく、出易い生活保護」。生活支援就労相談員の配置。社会福祉事務所は生活支援センターに。 E 公契約改革としては、談合および官製談合の防止に全力で取り組む必要がある。 府県の公共事業の落札率(落札予定価格と落札予定額との比率)がなお半数以上で90%を超えていない(読売新聞調査など)。また、市区町村では一般競争入札を導入しているのは06年4月現在で46.8%にとどまる、国土交通省、総務省、財務省の3省による調査(東京新聞)。 F 団塊の世代の「地域定住」施策の展開。若年層の地域定住、雇用・就労政策の展開。 「元気で90まで」の地域医療・保険・福祉施策による医療保険など社会保障経費の抑制に向けて。 H 自治労など労働組合とNPOなど市民との協働と協議・論議の場をつくる。1950〜60年代の地区労運動や「いのちとくらしを守る運動」。地域の祭り。連続したシンポジウム。「新しい市民社会」を目指して、現代の「コーヒーハウス」をつくる。労働組合がNPOをつくる。
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