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増大する地方公務員へのニーズと減少する人員

           高いモラルとモチベーションを持ったプロ集団の再構築

(初出:『都市問題』2012年7月号)

奈良女子大学名誉教授 澤井 勝


目次
はじめに/始まりは第二次臨調のプライバタイゼーション
/集中改革プラン/国際比較/部門別職員数の増減状況
/ひずみが出る職場
/定員削減は限界に来ている/非常勤職員の増加と「基幹職員化/不安定な雇用関係、低給与(ワーキングプア)、責任関係の不明確さ
/おわりに

   高いモラルとモチベーションをもったプロ集団の再構築

                      奈良女子大学名誉教授  澤井 勝

はじめに

 地方公務員数が多いという声は依然として大きいようだ。しかし、後に見るように実際には大幅に減少してきている。1975年から自治省行政局(当時)が始めた「地方公共団体定員管理調査」によると、この調査対象となる地方公務員の総数は、1994年(平成6年)にピークの3282492人を記録したあと、減少に転じた(第1表)。直近の「2011年調査結果」によると、201141日時点では2788989人である。実数で493千人の減少で、減少率は15.0%に及ぶ。

対象の職員は普通会計と公営企業会計等に属する「常勤の一般職」であり、これに常勤の教育長、再任用職員、任期付き職員と研究員、育児休業に対応する任期付き職員が含まれる。

地方公務員法333号、17条、22条などのいわゆる「嘱託職員」「非常勤職員」「臨時職員」などは含まれていない。公立大学法人や公務員型の特定地方独立法人の職員も対象ではない。これら「臨時職員」などの非正規の地方公務員がここのところ急速に増えている。このことが地方自治体の責任ある公共サービスの提供に影を落としている。

一方では、国の財政再建と地方分権改革の進展もあって、地方への権限移譲や新しく地方自治体の仕事として付加される事務・事業は増えている。さらに、地域社会では高齢化や児童虐待防止への対応が迫られる中で、家族の紐帯や地域共同体の支え合いの力が弱体化している。企業社会も終身雇用体制が崩れ、賃金体系は年功序列型から成果主義への転換が進んだ。OJTの機能も弱体化している。雇用面では非正規雇用が36%を超える水準にまで来ている。生活保護受給者数は205万人を超えた。地方自治体が直面する処遇困難ケースは複雑化し、縦割り行政を越えた創意ある取り組みが求められる。求められる公共サービスは量的に拡大し、公共サービスの担い手は質的・技術的なスキルアップを求められる。これにうまく対応できるか、懸念する声も高まりつつある。

 

1

総職員数の推移(定員管理調査)

         総職員数  増減数   

1990   3228318   9566

1991   3241911   13593

1992   3254291   12380

1993   3270799   16508

1994   3282492   11693

1995   3278332  ▲4160

1996   3274481  ▲3851

1997   3267118  ▲7363

1998   3249494  ▲17624

1999   3222158  ▲17336

2000   3204297  ▲27861

2001   3171532  ▲32765

2001   3144323  ▲27209

2003   3117004  ▲27319

2004   3083597  ▲33407

2005   3042122  ▲41475

2006   2998402  ▲43720

2007   2951286  ▲47106

2008   2899378  ▲51918

2009   2855106  ▲44272

2010   2813875  ▲41231

2011   2788989  ▲24886

資料:各年『地方公共団体定員管理調査結果』(総務省)から作成。

 

1,始まりは第二次臨調のプライパタイゼーション

 この定数削減の施策の発端は、1981年に発足した第二次臨時行政改革審議会(土光敏夫会長)の提言にある。国鉄や電電公社、専売公社の民営化を最大の柱とする民営化改革に合わせて、1984年に「行政改革の推進に関する当面の実施方針について」が閣議決定された。翌年1月には事務次官通知「地方公共団体における行政改革推進の方針(地方行革大綱)の策定について」が示され、定員適正化計画の策定と実施が求められることとなった。

 その後は、この「地方行革大綱」の制約もあってか、減少から横ばいが続くが公共投資の拡大や医療や福祉の拡充にともない1990年頃からふたたび増勢に転じ、1994年のピークに到達している。

 1994年には、バブル経済の崩壊のもとで、地域経済の景気対策に応じながら、他方で地方分権の議論が盛り上がる中で、事務次官通知「地方公共団体における行政改革の推進のための指針」が出されている。ここでは自治体が自ら自主的・主体的に行財政全般にわたる総点検を行うという方向性が再度示された。

 1997年には、地方分権推進委員会の第二次勧告を受けて、三度目の事務次官通知「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」(旧地方行革指針)が示されている。ここでは、「定員管理の状況及び定員適正化計画の数値目標について公表すること」が求められた。

 2000年の地方分権一括法の施行を受けた同年12月の閣議決定「行政改革大綱」の中でも、「定員管理の適正化及び給与の適正化」など自主的・主体的な行政改革が要請された。この効果もあってか、地方公務員の総定員ははっきり下降し始める。

これには、自治体側の危機意識もあったと見られる。それは、1988年ごろから1992年頃までのバブル期を経て、それが崩壊した後の景気後退時期に、大規模な公共投資を地方債に依存しつつ行ったつけが回ってきたからである。国によって推進された借金による投資事業は、補助事業でも単独事業でも行われた。「地方財政白書」で見ると、1993年から5年ほどは決算ベースで毎年度30兆円程度の普通建設事業をおこなっている。それからほぼ10年後の2009年度の普通建設事業は13兆円程度、43%程度の水準であるから、いかに大きかったかがわかる。地方債計画は1996年度に18兆円になったが、これは1993年の10兆円の1.8倍の規模だった。このため、財政の硬直度を測るとされる経常収支比率は2000年度以降は都道府県、市町村とも90%を超える水準で推移している。そして元利償還金がこの比率の中で占める割合は2008年度でも都道府県で22.9%、市町村で20.1%という高い水準となっている。一方で、この間、人件費の占める割合は一貫して低下してきている。都道府県の場合、1997年の50%から2009年の42.9%に、市町村は32.0%から26.7%に低下した。

 

2,集中改革プラン

この定員削減の傾向を加速したのは、20014月に成立した小泉政権である。20026月の閣議決定「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(骨太の方針第二弾)に盛り込まれた「三位一体改革」で方向が定められた。「三位一体改革」には、国から地方への一部税源移譲なども含むが、その中心は地方財政計画の総額を圧縮することである。特に地方交付税は大幅に圧縮された。2000年度の214千億円が2007年度には152千億円まで、62千億円、29%も削減された。これは特に交付税への依存度が高い町村を直撃し、市町村合併の強力な後押しとなった。

具体的には、20053月に「新地方行革指針」(総務事務次官通知)が示され、全ての地方自治体に2005年を起点に2009年度までの「集中改革プラン」を策定し公表することを要請した。これに当時の片山善博鳥取県知事が反発して、「鳥取県は既にやっているからつくらない」と主張したことがニュースとなった。

その内容は、事務・事業の再編・整理、民間委託(指定管理含む)等の推進、手当の点検・わたり是正、などの給与の適正化、そして201041日時点の定員目標の明示、などを要求した。さらに過去5年間の純減実績▲4.6%を上回る総定員の抑制を図るとした。

これに従った各都道府県、市区町村がまとめた集中改革プランの取り組み目標は、都道府県が4.5%減、政令指定都市が9.4%減、市区町村が8.6%減だった。しかし、20104月時点での実績はこれを大きく上回っている。すなわち都道府県は5.3%、政令指定都市は10.6%、市区町村は9.9%の減となった。

 

3,国際比較

ところで、日本の公務員数は欧米と比較して少ないと言われてきた。それさらに削減していくことで公共サービスの水準や範囲は維持できるのであろうか。改めてデータを見てみよう。内閣府の経済社会総合研究所が野村総研に委託した調査報告書(2008年)がある。これは日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカを比較したものでほぼ2004年時点での数値を扱っている。

公務員の範囲は、日本では国家公務員が中央省庁、国会、裁判所、などと防衛庁と自衛官、公社公団、独立行政法人、政府系企業の職員。地方公務員は地方公共団体の職員、それに自治労加盟組合加入の非常勤職員31万人、地方公営企業、地方公社、第三セクターの職員などとなっている。「地方公共団体定員管理調査」の範囲より相当広くなっている。広義の公務員数と言って良い。イギリスなどはパートの職員もカウントされているが、日本の場合は、正規職員と自治労加盟組織でカウントされた非正規職員31万人が加算されている。なお、2008年時点では、後に見る「自治研作業委員会報告」の推計では、全団体の非常勤職員は60万人とされている。

 

2

各国の公務員数(人口千人当たり) (イギリスはフルタイム換算職員数)

 

国家公務員        日本  イギリス  フランス  アメリカ  ドイツ

 行政機関・議会など   4.0人  32.9人   44.2人   7.5人   4.4

 国防省・軍人      2.4人   3.5       7.1人   2.3人   2.3

 公社公団        3.7人   6.0人    8.8人   ―    7.3

 政府系企業      2.5                                       8.4

 計           12.6人   42.4人   53.1人   9.9人  22.3

地方公務員

 行政機関・議会     23.2人   35.9人   26.4人   64.0人  42.8

 地方公社など       6.4人         16.3人        4.5

 計           29.6人   35.9人   42.7人   64.0人  47.3

合計           42.2人   78.3人   95.8人  73.9人  69.6

資料:「国際比較」から作成。

 

これで見ると、日本は国家公務員の中の行政機関職員も地方公務員の行政機関の職員もかなり少ない。両者の公務員総数もかなり少ないことがわかる。

 

4,部門別職員数の増減状況

 さて、地方自治体の職員配置は、法律や政令や省令で決められていた保育士や、公立学校の教員などもある一方、政策的なバイアスで変化する要素もある。行政部門ごとの職員数の増減は次のようになっている。ここで「福祉関係」とは福祉分野と環境部門(清掃と保健など)を含む。

 まず、もっとも削減率が高いのは「一般管理部門」である。1994年からだと21.0%の削減率となり、14万人ほど減っている。一般事務部門が最も定数削減の対象になりやすい。この分野では、窓口担当職員までも嘱託職員に置き換えたりする非常勤化が進んでいる。

「福祉関係」も1994年までは増加してきたが、それ以降は縮小過程に入っている。ここでは清掃事業の民間委託や保育所の措置費補助金の一般財源化で保育士の非常勤化が進んでいる。公立大学が独立行政法人となった影響もある。

ただし、集中改革プランの期間(2004年から2009年)で見れば、防災部門が17.7%の増加、また環境保全が2.7%、観光が5.6%、福祉事務所が生活保護のケースワーカー増員で10.4%、児童相談所が16.5%、それぞれ増加している(「報告書」42頁)。

「教育」では少子化の影響と人口のスプロールもあって、学校の統廃合が進み、教員数の縮小となっている。また、用務員や給食調理委員の民間委託も響いている。公営企業等会計部門は減少しているが、同じく集中改革プランの時期でも介護保険部門は6.3%増となっている。

 

3表 部門別職員増減率

       20111975   20111994

        増減率      増減率

普通会計     ▲5.9%     ▲21.0

 一般管理    ▲20.6      21.0

 福祉関係    ▲7.2      ▲21.3

 教育      ▲7.8      ▲17.6

 警察       24.8              11.0

 消防             50.1              8.6

公営企業会計        0.6            14.1

 病院             46.7            6.8

 水道      37.0      ▲32.5

 下水道      19.9            30.2

 交通           54.7      ▲43.0

 その他     9.4             20.7

合計             5.1             15.0       

資料:「報告書」から作成。

 

5,ひずみが出る職場

 同じ「報告書」の「地方公共団体の意見」の章では、神奈川県、静岡市、土浦市、多古町(いずれも「定員管理研究会」のメンバー市)からの意見をつけている。そこでは「組織構成・組織運営に与えた影響」では次のようなことが指摘されている。

・年齢構成が非常にいびつになっている。バブル崩壊後、採用を抑制したため、特に30歳代前半の層が極端に少ない。将来的に大きな課題だと認識している。

・職場がかなり忙しくなってきているという実感がある。モチベーションの維持や事故防止は大きな課題である。仕事上の凡ミスが増えていることが気がかりである。

・これまでの世論は、どちらかと言えば、「職員数を削減しろ」という傾向であったが、先日実施した『行政システム改革の今後の取り組み方針』のパブリックコメントに、「職員数が削減されて県民サービスが低下しないか心配だ」との意見が見られた。最近までは見られなかった意見との印象を受けている。

・これまでの議会は行政のスリム化を求めてきたが、最近になって、出先機関の再編に対して、県民サービスの低下を懸念し、かなり厳しい反応も出てきた。市町村長からも同様の意見が出てくるようになった。

・当団体では非常勤職員は、平成17年から平成21年の4年間で33%増加している。再任用短時間勤務職員も含めて多様な任用形態の活用を図っているところであり、正規職員が本格的業務を担い、非常勤職員が補助的な業務を担う経営ができつつある。

・時間外勤務が平成17年から平成12年の4年間で14%増加している。職員が日常業務に忙殺されて、政策・企画的な面がおろそかになることが懸念される。

・監査においても、市民サービスや職員の士気への影響などについて検証し、次の計画に反映させることが望ましいとの意見があった。

・職員への影響として、全国的な傾向ではあるが、精神疾患が増えていることを懸念している。

・福祉関係では、増加する生活保護世帯に対応するため、職員配置をふやしている。保育所においても、待機児童解消のために職員配置を増やしているが、すべて非常勤職員であり、現在、非常勤職員と正規職員の比率がおおむね1:1となっている。

63課・署147係から49課・署117係へと大幅に組織を見直した。1人の職員が様々な仕事を担うことで対応している。

・合併によって一部の地区では住民サービスの低下が出ている可能性がある。また、職員数の減少により、目に見えないサービスの低下が起きている可能性はある。

・定員の純減を進めることは、規模の小さい市町村ではかなり厳しい状況にある。既に減らせるだけ減らしたという印象を持っている。

 

6,定員削減は限界に来ている

今の指摘あるように、主に退職者不補充で定員を削減してきたことで、職員の年齢構成が極めていびつになっている団体が多い。この問題は民間からの中途採用の拡大とその後の組織運営によって補正していくことが求められている。しかし時間がかかる。同時に、いわゆる2007年問題(団塊世代の大量退職)にともない退職者の経験知を中心とした行政ノウハウやネットワークの喪失が生じている可能性がある。このような経験知の継承がないと、行政の継続性に大きな穴が空き、公共サービスの欠落が生じる。一定の年齢層の職員が手薄となり、これからの幹部職員の担い手が不足することも懸念される。行政の機能不全である。

人員不足から単純ミスが増えている。このことかが大きな事故やミスにつながる可能性も高い。いわゆる労災の現場での「ヒヤリ・ハット」事象である。複数の仕事をかけもちするため、じっくり腰を落ち着けて事態に対応することができない。複雑な処置や連携が不可能になる。よく考えずに処理するために、表面的で官僚的で受け身にしかなれない。ここからは創造的な取り組み事例は出にくい。結果としてルーチンワークに逃げる職員の士気が低下することは避けられない。

また「地積調査のような必要であるが不急の事務には、職員を十分に配置できないため、作業が遅れている」の事例に見られるように、将来のまちづくりのための投資やリスクをとる時間的な余裕がなくなり、新しい行政手法の開発が停滞する。これも職員の志気をくじく。

(財)地方公務員安全衛生推進協議会の調査では、地方公務員の長期病休者数は毎年増加している。1998年の14432人から2008年の19777人まで37%も増加している。特に精神疾患を病む公務員の割合はこのうちの13.3%から46.3%にまで達している。(「報告書」41頁)。このメンタルヘルスへの組織的な対応が十分にできていない団体が少なくない。

 

7,非常勤職員の増加と「基幹職員化」

 既にいくつも指摘がされているように、おそらくこの10年で、自治体職場で非常勤職員が非常に増えている。非常勤職員とは、地方公務員法第22条の「臨時的任用職員」、第17条の一般職非常勤職員(学校のパートタイム調理員など)、第3条第3項の特別職非常勤職員(嘱託員、調査員など)を指すものとされている。しかし、実態はこの公務員法の規定にあてはまらない(柔軟な)運用がされている。また継続的にこれら非常勤職員の調査がおこわなれてきてはいないようである。総務省も一定の条件を置いて200541日現在で調査をしたものがおそらく最初の確実なものと言える。この条件とは、任用期間が6月以上又は6月以上になることが明らかであり、かつ、1週間当たりの勤務時間が20時間以上の者、である。このときの非常勤職員の数は455840人であった。「総務省研究会」の調査では、200841日現在で、497796人となっている。3年間で41956人、9.2%増加している。このペースで非正規化が進行するわけではないと思われるが、仮にこのペースで進むと2011年にはさらに4万人程度増えている可能性がある。もし合計50万人とすると、常勤と非常勤を合計した地方公務員の15%は非常勤ということになる。

 自治労の自治研作業委員会の実態調査(20098月)では、全地方自治体を対象に調査票を配布し、1104自治体(回収率59.8%)から回答を得た。この調査では、総務省調査より広く対象職員を捉えようとしている。結果は342,801人となった。これをもとに推計すると非常勤職員は60万人となるという。

 また、同じ「実態調査」によると、臨時・非常勤職員の割合は常勤職員と臨時・非常勤を合わせた全職員に対しては全団体で27.6%。県が16.0%だが、一般市(政令市、特別区を除く)では31.7%、町村では31.4%にのぼる。50%以上という団体も29ある。

 

8,不安定な雇用関係、低給与(ワーキングプア)、責任関係の不明確さ

このような非常勤の大幅な増大によって次のような課題が挙げられている(「報告書」および「実態調査」から)。

・採用時に勤務条件が明示されない。労働基準法上の休暇(有給休暇、産前産後休暇、生理休暇など)が無い事例がある(「報告書」)。

・健康保険や雇用保険の適用があいまいであり、パート労働法の適用除外に対して問題意識が薄い(「報告書」)。

・同一の者が「任期の更新」をしてきているのに、正規化がされない。雇い止めのトラブルが少なくない(「報告書」)。

・任期の定めのない常勤職員と同様の本格的業務を行っている臨時・非常勤職員について、報酬水準や手当の支給について、常勤職員との均衡が図られていない(「報告書」)。

・非正規職員の圧倒的多数は女性である。「実態調査」では80.8%。そのためもあって、フルタイムなのに時給800円など主婦パート並みの賃金水準となる(「実態調査」)。

・分権改革もあって市町村に移譲された新規業務や新しい業務は、非正規職員主力で始められる。各種相談員、学童指導員などだが、新しい専門職=非常勤、総合職=正規職員という線引きが生じている。正規職員の司書が主流であった図書館職員は大幅に非正規化されている。これらの分野では、行政が率先して安価な労働市場を作り出している。高いコストを払って資格をとってもそれに見合うリターンがない(「実態調査」)。

・非正規職員のうちフルタイム(正規職員と勤務時間がまったく同じ)は全体平均で28.4%、町村では47.1%に達している。正規職員の4分の3(平均16時間)以上勤務者だと63.2%となる(「実態調査」)。判例でもこれらは常勤の労働者とみなされる(枚方市事件など)。

・基本給の支給形態は日給又は時給が64.6%、月給が35.5%。時給など時間当たり賃金が800円未満は24.3%、900円未満が30.8%。たとえば時給850円で週30時間程度(年間1500時間)では年収は130万円に届かない。これは2009年の貧困線125万円すれすれである(貧困線とは民間平均給与の中央値の2分の1)。月給では14万円以上16万円未満が最も多く26.2%。これを含む16万円未満が58.7%で、年収は200万円以下である(「実態調査」)。

 

おわりに

 まず確認しておきたいのは、職員定数は既に十分に減少していることである。その上で第一に求められることは、この定数削減の現状について、その経緯を含めて適切に情報公開していくことである。そして必要な部署に必要な職員を配置してきていることをわかりやすく説明することが大事だ。特にケースワーカーの増員や、コミュニティ・ソーシャルワーカーや各種生活相談員などの新しい専門職について、それが市民の難問解決にどう応えているかを説明できると良い。

 第二には、改めてこのような時代に求められる公務員像を明確にすることである。その時代とは役所が民間企業と競り合い、またNPOや専門性の高い住民と協働する時代である。そのような協働の相手はみなモチベーションが高い。「そこでの公務員像は、『行政のプロ』としての公務員である。自発的なモチベーションと高度な専門能力を備えたプロフェッショナルの集団でなければならないのだ。」(太田肇『公務員革命』ちくま新書、2011年)。そのためには「成果主義」や「懲罰主義」は百害あって一利なしである。

 第三は、そのためにも少なくなった職員がより働きやすくなるよう、またその士気を維持するか、高めるためには「組織機構のフラット化」が求められる。高浜市は現在も実行している。決裁権限を現場に近いところに下ろす。決済の階梯を3段階ぐらいにまでに圧縮する。仕事のやりがいは高まるし、中間管理職ポストは最小限となり、ラインがスタッフの機能・権能も担うことになる。現場に近く、生きの良い判断を迅速に行えるので、市民との協働にはより有効に働く。ただし、その判断過程は、事前または事後に適切にチェックし、透明化する。

 第四には、手薄の年齢層には使命感を持った民間からのプランナーなどを中間採用で補填する。これが組織全体の活性化につながるようマネージすることが必要となる。

 第五には、非常勤職員(嘱託、臨時、派遣などの総称)の労働条件を改善する。まず労働基準法水準は確保する。専門職として定着し基幹労働者と評価された者は逐次常勤化する。いずれにしても、非常勤労働者の雇用の安定化とスキルアップによって公共サービスの市民的信頼を確保することが求められる。場合によっては、日本の公務職場での公正な「ワークシェアリング」(熊沢誠『リストラとワークシェアリング』岩波新書、2003年)が検討されても良い。また改正パート労働法(20084月施行)の実質的適用も場合によっては検討されるべきだろう。

 第六には、アウトソーシング(民間委託、下請け、指定管理者の活用)については、「公契約条例」の考え方を適用して、公募要項中や随意契約条項中に、雇用条件などを必ず付加する「総合評価制度」を適用する。これによって賃金水準や社会保険適用、障害者雇用、などの面でも地域における民間企業で働く労働者の働く状況の底上げを図り、社会的責任を果たそうとする企業を応援する。それが、公務職場での非常勤職員の待遇改善の基盤ともなり正規職員も含めた公務職場のモラールの向上にもつながる。逆の場合、すなわち差別の上にあぐらをかく職業現場は退廃することは避けられない。

 第七には、市民に公共サービスを企画、発想段階からまかせて本格的な「協働」の仕組みをつくる。これを、市民や専門家による第三者委員会等でその有効性と効率性、公共性を評価し、チェックする。

 いずれにしても、若手職員の定着という課題もあり、人事政策と組織機構全体の再構築が求められる。

 

参照文献 

1,地方公共団体定員管理研究会報告書『地方公共団体における適正な定員管理の推進についてー集中改革プランの取り組みを踏まえて』平成222月(本文中「報告書」とする)。

2,総務省自治行政局公務員部『平成23年地方公共団体定員管理調査結果』平成243月(本文中「2011年調査結果」とする)。

3,内閣府経済社会総合研究所『公務員数の国際比較に関する調査報告書』平成1711月(本文中「国際比較」とする)。

4,総務省『地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会報告書』平成21123日。

5,自治労自治研作業委員会『臨時・非常勤等職員の実態調査』20098月(本文中「実態調査」とする)。

6,上林陽治「基幹化する図書館の非正規職員」『現代の図書館』20111月号。

 

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