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枚方市の総合計画案をめぐって

(初出:自治総研01年4月号)

 昨年、2000年の11月7日に、枚方市総合計画審議会は、その第14回の会議で第4次総合計画の基本構想および基本計画について中司市長に答申を行った。第一回の審議会が前年の11月11日に開かれているから丁度一年の審議期間ということになる。委員は公募市民委員2名のほか市議会各会派8名、学識経験者14名の24名であった。

 また、これに先立って1998年7月からの職員参加による「総合計画研究チーム」による研究と提言、市民団体による「まちづくり市民研究会」からの提言活動があるので、実際の検討期間は2年半ほどになる。前者の職員による研究チームは、20台後半から40台前半の「平社員」37名が、6つの班にわかれ、それぞれ大学の研究者などの助言者と共に、10数回の研究会をもって、その結果をまとめたもの。2000年の3月に市長や助役を前にして発表が行われている。後者は、17市民団体からまちづくりに関する提言をもらい、同年の4月に4時間にわたる提言発表会が行われている。

 以下、この総合計画案の策定に参加させてもらった者の一人として、その過程で考えたことのいくつかを記しておきたい。

 第一には、総合計画の位置付けである。枚方市の場合は、総合計画の体系は、議会の議決を必要とする基本構想、(期間15年)およびそれをもとにした基本計画(期間10年)が審議会の審議事項とされ、実施計画は行政(企画政策課を中心として)が取りまとめる領域とされている。実のところ総合計画の体系についての理解は、各自治体において、まちまちなのである。このことは自治事務であるから、当然のことではあるけれども、審議の入り口のところで、かなり議論を必要とした点である。つまり参加する委員がどのような時間的なスパンで議論すべきか、という枠組みの設定自体を主体的に確定することが求められたのである。結果として、事務局からの原案をたたき台にしながら審議会で議論をしつつ、それを事務局が整理し再提案することによって、審議会としての合意事項となった。

 それも、「基本構想」、「基本計画」の「試案」を議論する中で、行きつ戻りつしながら整理がついていったというのが実情である。つまりどのような時間的スパンでどのような抽象性のレベルで議論するか、ということがそれぞれの委員のなかにイメージとして共有される過程が必要だったのだ。

 第二の問題は、計画策定過程への市民参加にかかる問題である。

(1)計画策定の調査段階での市民意向調査という点では、市民のアンケート調査、意向調査がある。これは参加以前の問題だが、基礎的データとして蓄積、集積しておくことが求められる。枚方市の場合もこれら調査が当然行われ、審議会資料としても活用された。ただ、行政内部でこれらの意識調査やアンケート調査が、充分に共有され活用されてきたかというと問題がないわけではなさそうである。枚方市民の「生活と意見」について、定期的な研究会や検討会が行われ、生の資料から、ひとつの統一したイメージが描かれているかどうか。それが重要な政策選択の基準となからである。行政の行う意識調査の結果報告書でも、充分に膨らみとひろがりをもった分析がされている場合は少ない。

 それとともに、専門家や事業者、研究者などに対してデルファイ法などによる地域の将来展望を聞くことも必要であった。それは福祉や環境、教育などについての中長期の展望と課題を明確にするための素材として不可欠である。そのような領域ごとの「長期的な展望と課題」が、行政内部でも、参加委員の中でも、ある程度共通の認識となっていくことが望ましい。もちろん、このような共通認識は、審議の経過のなかで生まれてくるものでもある。つまり地を這うような、今日ただいまのニーズをビビットに把握する虫の目と、長期の見通しの中で日々の現実に隠れている課題をつかむ鳥の目という複眼的な見方がなければならない。

 また、特に基本計画案の策定過程では、行政内部での計画案づくりの段階で生じる実現可能性への過度の配慮を制御するためにも必要である。「それは難しい」、「それは無理です」という担当者の発言で議論が終わる場合が多々ある。しかし、それは現状保守の、あるいは無前提の思い込みから出る言葉である場合が多い。本当の政策論議は「無理だ」から始まる。その無理を克服し、困難を解決する知恵を絞るのが、委員会の議論なのである。長期的に実現すべき価値や理念について合意があるなら、それを実現するために現状の困難を克服するための方策いかんというふうに議論を進めなければならない。

 そういった点では、高齢者保健福祉計画や環境基本計画、都市マスタープラン、下水道計画などの既存計画の基礎となっている調査データや、アンケート調査を検討する時間ももっと必要であった、と思われる。

(2)審議会の公開という点では、今回はいろいろな工夫がされ、会議の公開という点ではさらに拡大する方向となった。

 第一には、審議会の委員の公募方式の定着である。今回は総合計画の審議会委員としては初めて2名の公募委員が入って議論が活性化した。東京都の調布市や三鷹市、日野市等では、応募してきた市民は原則として全員市民委員会に参加してもらい、分科会を設けて意見の取りまとめと市への答申をするといった形をとっているようである。三鷹市の場合で見ると、本審議会には公募市民は入っていない。本審議会は別に学識経験者など専門家による。ここでは市民委員会は市民が自由に発言し、意見を調整して市民委員会としての意見を纏め行政に提出する位置付けとなる。これはこれで市民参加のひとつの形態として興味深い。しかし、枚方市のように市民委員が直接に審議会に参加することは、もうひとつの形態として積極的に進めたい。その際、もっとも大きな課題になるのは、議論のルールや議論の仕方についての文化に相異があるという現実である。つまり行政の慣れ親しんできたルールとは異なる議論のしかたが求められる。そのために、審議会の初めには、そのルールづくりにしっかり時間をとれるようにしておきたいものだ。

 第二には、会議の傍聴のしかたである。(1)今回は傍聴者の資料は委員と同様とする、(2)審議会の日程と場所は市の広報に必ず載せる、(3)傍聴者は質問や意見を会議終了までに会長あてに文書で提出でき、会長がそれに対する回答や取り扱いを示す、(4)会議録は発言者名も付して、次回の審議会で確認し、公開する。要約ではなく、発言のニュアンスまで表現できる記録として、情報公開室に常備し、だれでも閲覧できる。

 第三は、インターネットのホームページでの基本構想試案、基本計画試案の公表と、それに対する市民意見の公募である。いわば「パブリック・コメント」の枚方市版である。この試案は、ダウンロードできるから、それに加除した修正提案が可能になったことも、議論の効率性という点では大きい効果があった。

 第四は、計画試案の公表後におけるポスターセッションなど、各地区公民館での資料展示と市民との意見交換、および文書、はがき、書簡、アンケート用紙等による意見表明の機会の多様化である。

 とにかく、市民が計画策定に直接かかわる機会を、さらに拡大し、自らのまちづくり計画だという実感に裏打ちされた計画に限りなく接近させたい。さらに、その後の計画の策定過程のモニターと議論への市民参加が次の課題のひとつである。

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