TOPPAGEまちづくり、地域活性化>二宮金次郎

二宮金次郎、二つの肖像(6)

                グラミン銀行の先行を行く5常講
           堺市SS情報ひろば第21号(2014年10月1日)

                       


 前回は尊徳の「道徳なき経済は犯罪 経済なき道徳は寝言」という言葉と、それを実践している伊那食品工業という会社を紹介した。尊徳の考え方は現代にも生きている。同じように、第4回で触れた五常講も協同組合に引き継がれる。この五常講は、さらに大きな後継者を持っている。
 2006年のノーベル平和賞は、バングラデシュでグラミン銀行を創設したムハメド・ユヌス氏に与えられた。グラミンとは「農村の」という意味で、農村の貧農、特に女性たちへの少額融資の仕組みである。NG0としてできたのは1976年。1983年に政令で政府が60%、すべてのメンバーが40%の株式を持つ特殊銀行になった。このような金融のやり方をマイクロ・クレジットという。貧しい人を対象にした「小さな信用貸し付け」あるいは「ちょっと融資」とでもいうか。このグラミン銀行が最初で、現在は世界各国に広がっている。
 このグラミン銀行が五常講に似ているのは、まず、無担保・低利融資という点である。高利の借金を低利のそれに借り換えることで、生活再建の糸口をつくる。担保はとらない。5人から10人程度の小グループを作って、その相互協力で融資されたお金を返済する。この小グループの協同扶助組織を担保にしている。
 それに、どういう生活をするかについての理念がある点である。これは現代人からすれば役に立たない理屈とも考えられようが、生活の立て直しという点では明確な基準があった方がわかりやすいのも事実だ。五常講でいえば、「仁義礼智信」である。
 グラミン銀行には、「生活を改善するための16の決意」がある。道徳のある経済だ。1984年にメンバー100人が決めた。例えば、「私たちは、どのような人生を歩んだとしても、グラミン銀行の4つの原則である、規律、団結、勇気、勤勉を守ります。」「私たちは、できるだけ早く家を改築するか、新築できるように、仕事に励みます。」「私たちは1年中野菜を作り、たくさん食べます。」「私たちは、簡易トイレを設置し、使います。」「私たちは、だれかが困っているなら、みなで助けます」。など。この結果、返済率は98%とも言われる。
 生活再建のための貸し付けが目的で、儲けは目的ではない。利子相当分は、次の貧者救済の原資となる。この道徳を持った経済の考え方は、近江商人の家訓とされている「三方良し(さんぼうよし)」=「買い手良し、売り手良し、世間良し」にも通じるところがある。