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書評「無防備都市運動の源流ーー林茂夫が残したもの」

(初出:「月刊自治研」06年10月号) 

書評『無防備地域運動の源流――林茂夫が残したもの』日本評論社、20067月発行。

                        奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

 

 在野の軍事評論家であり、それ以上に戦略的な平和運動家であった林茂夫さんが047月に75歳でなくなられて2年、その仕事の継承を願って本書は編まれている。評者は林さんとは一年半ほどある研究会でご一緒し、沖縄県や那覇市の基地政策をヒアリングする旅も共にしたが、その飲み会での議論も楽しかった。

三部構成の第一部は、林さんの著書になっていない作品8本を集めている。主に8号までの「無防備地域運動パンフ」からである。林さんは、様々な活動領域を持っていたが、特に自治体を「平和のとりで」にするための具体的な運動に力点の一つを置いて「非核自治体宣言」や武蔵野市などの「平和予算」に可能性を見出し、その延長上に「無防備地域」運動を切り開いてきた。それは制度や法が必ず持つ二面性のうち民衆の生活を守る側面を生かす努力によって既成秩序を転回できる、と言う基本的な思いがあったためだと思う。「平和とか自由とか民主主義とか人権とかというものも、異なる宗教、異なる文化をもつ人々が共有できる、地球社会にふさわしい内実があるものでなければなりません。それをやはり地域の共同体をとりでにして、手のとどく、地域共同体の政策にする。少しずつ、平和に生きる権利と言うものを内実のあるものにしていく」ものとして創造していかねばならないと述べる。平和と民主主義、自由は、イエーリンク『権利のための闘争』にあるとうり、また憲法前文に言うとおり、9.11以降も、われわれの普段の具体的な努力で内実のあるものにしていかなければならない。本書はそのための実践的武器となりつづける。

05520日の衆議院本会議で、この「無防備地域」をも第59条に含む、捕虜の扱いや非武装市民の保護などを決めた「ジュネーブ協定付属第一議定書」が全会一致で批准された。国民保護法など有事立法の一環としての批准であったが、同時にこの批准は、戦争を法規範のもとに置く国際法秩序に日本政府と自衛隊を組み込んだのであり、この点を最大限活用していくことも林さんの遺志を継ぐことになるにちがいない。

 

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