TOPPAGE>文献解題

 

 ここも徐々に増やしていくようにします。地方財政の議論は、経済学的な分析やモデル構築と共に、行政学的なアプローチや、歴史学的な位置づけ、政治学的分析、さらに総合的な政策研究の財政的・経済的な基礎付けなど学際的な研究が求められる領域です。そのような各分野の文献も、個人的な趣味や趣向に走りがちですができる限り紹介していきたいと思っています。新しいものを優先しますが、少し前のものも、必要に応じて。


   

    30、『自治体改革第2ステージ−−合併新市計画のつくり方』ぎょうせい、2003年4月。
       澤井勝、新川達郎、木谷晋一、中越豊、共著。

       市町村合併の進行についてのひとつの具体的な提案。分散型・分権型合併と「まちづくり
       型合併など。

    第1章   市町村合併とまちづくり−−新しい地域社会の設計図(澤井)
             分散型・分権型都市像の提起
    第2章   新市建設計画の視点(澤井)
             住民の希望とニーズを基礎として
    第3章   新しい都市像の創造−−「まちづくり型合併」を考える(新川)
    第4章   市町村の区域と自治的組織(木谷)
    第5章   政策過程への住民参加(木谷)
    第6章   まちづくりの主体としての住民と住民組織(新川)
    第7章   財政改革と行政構造改革(澤井)
    第8章   一人一人の職員が輝く自治体像(中越)

    29、『自治体主権のシナリオ  ガバナンス・NPM・市民社会』中邨章著、芦書房、2003年1月
       第1章の標題、ガバナンスから市民社会へに示されるように、国際的に広がっている「ガバナンス」
       という概念を、極めて説得的に展開している。

   28、『地方財政改革の現段階』地方財政レポート2002、(財)地方自治総合研究所、2002年10月。
地方自治総合研究所の地方財政研研究会の2年間のまとめの報告書。
第1章地方交付税制度の現状とその課題 平成9年度から13年度
 古川卓満
第2章地方分権論の対立軸:「統一・協調モデル」対「分離・競争モデル」
ドイツ・代替的経済政策グループの「統一・連帯モデル」の紹介を通じて
 町田俊彦
第3章介護・医療に関する広域連合の現状と課題
空知中部広域連合(介護,国保)と隠岐広域連合(医療・介護)について
 横山純一
第4章自治体課税の可能性 東京都銀行税条例判決をめぐる応益応能原則の検証
 飛田博史
第5章市町村合併と交付税
 高木健二
第6章東京都都区財政調整制度とその改革動向 大都市財政調整の一研究
 菅原敏夫
第7章ドイツ州間財政制度の改革基準法を中心にして
 中村良広
27、『大阪市の税財政を考える』財政研究会報告、大阪市政調査会『市政研究』2001年冬号、2001年1月。
木村収、長沼進一、松本淳、澤井勝の研究者4人と、大阪市労働組合連合会の活動家の共同研究会の報告。

第一部 大阪市財政の<課題と展望>
 役割分担から見た大阪市行財政の特徴と課題   木村 収
 転換期における大阪市財政の構造と特徴     長沼進一
 第三次地方財政危機と大阪市財政の展望
    財政の自律方策としての税源移譲を考える 澤井 勝
第二部 転換点に立つ特別会計
 大阪市交通事業財政の現状と課題        山口百合子
 大阪市水道事業財政の現状と課題        上山耕一
 大阪市の下水道財政の課題           加藤英一
 大阪市国民健康保険事業財政の現状と課題    松本 淳
 大阪市民病院事業におけるザ意思の現状と課題  大阪市職員労働組合病院支部
第三部 表とグラフで読む大阪市財政
26、『破綻する自治体、しない自治体』公職研、2003年3月。
財政危機が進行している。地方税収も交付税も縮小する中で、どのように財政運営をやりくりするか。この臨時増刊号は、現場の知恵と技術を公開して、財政診断を行い、財政分析の手法を提供する。いずれにしても、地方自治体の財政は生き物であって、その場とそのときに応じた対応が求められる。
25、『交付税改革』高木健二著、敬文堂、自治総研叢書、2002年12月。
地方交付税の改革論について、特にこれまでの学界や行政を通じた議論を詳細な注記で跡付ける。最近の経済学的なモデル論からする交付税改革論の側も、このような沿革的な議論を踏まえてもらうことが必要だ。
 なお、古川卓満著『地方交付税制度の研究』敬文堂、自治総研叢書は、1995年に著されたもので、克明に基準財政需要額と基準財政収入額の変遷を政策論的に位置付けた、交付税制度研究の必読文献である。
24、『地方財政改革論議』岡本全勝著、ぎょうせい、2002年5月。
 副題は「地方交付税の将来像」である。雑誌『地方財務』に02年3月まで連載したもの。地方交付税と国庫補助負担金が、ナショナルミニマムを達成したともいわれる現在、縮小再編成の過程に入らざるを得ない、その意味でのパラダイムシフトが求められていることを前提に、地方財政制度改革の論点を、総務省官僚として整理し、将来のあるべき機能と仕組みについても述べる。
23、『NPOと法・行政』山本啓、雨宮孝子、新川達郎編著、ミネルヴァ書房、2002年9月。
NPOの制度設計、経営政策、行政との相互関係の構築、市民社会とステークホールダーなど、理論的かつ実践的最前線で活動中の人々の共同執筆。
22、『がんばらない』鎌田實著、集英社、2000年9月。
 長野県の諏訪中央病院の医師、鎌田さんのエッセイ。患者のこない病院に赴任した若い医師たちが、患者、スタッフと学びながら地域医療の先進的な拠点として再生させていく。自伝を通じたメッセージ。
21、『地域福祉と自治体行政』大森彌編著、ぎょうせい、シリーズ地域福祉を拓く第4巻、2002年10月。
 2003年4月から社会福祉法の「地域福祉計画」の部分が施行されるにあたって、「地域福祉計画」策定とための考え方を整理し、提起しようとするもの。この本の第1章を澤井が担当,執筆している。
第1章 地域福祉と自治体行政    澤井勝
第2章 地域福祉計画の策定      武川正吾
第3章 変化の時代と自治体職員   大森彌
第4章 地域資源の活用と地域福祉の推進  金子和夫、小林雅彦
第5章 地域の特色と地域福祉    坂野貢、高橋信幸、渡辺洋一、岸本和行
20、『日本の地方自治ーその現実と課題』阿部斉、天川晃、澤井勝著、放送大学教育振興会、放送大学大学院文化科学研究科、地方自治政策T、2002年3月。
 02年3月に開校した放送大学大学院文化科学研究科(修士課程)の、地方自治政策Tの教科書。歴史、政治、財政の3人が分担執筆したスタンダードな教科書。
天川:明治国家と地方自治、戦後改革と地方自治、地方分権改革、地方自治の統治構造――首長と議会、地方自治の政策課題、国際化と自治体外交
澤井:自治体の財政規模、歳入の自治の可能性、自治体財政の課題
阿部:都市計画と地方自治体の役割、自治体の福祉政策、自治体の女性政策、自治体の危機管理、自治体と住民参加、地方自治の国際比較
19、『EXCELによる自治体財政診断--政策提言のために』世利洋介、九州大学出版会、2001年。
 表計算ソフト、エクセルを駆使して財政分析をする提案。具体的に入力画面を示して、初心者でも使えるように工夫されている。時永祥三さん、出崎弘史さんとの共著。
18、『地方財政』林宣嗣、有斐閣ブックス、1999年。
 教科書だが、特に第4章「地方公共支出の経済学」での、効率性論は説得性と示唆にとむ。前著、日本経済新聞社「都市問題の経済学」1993年、や日本評論社「地方分権の経済学」1995年も。
17、『自治の流れの中で』柴田護著、ぎょうせい、昭和50(1975)年。
 昭和16年に内務省に入り、昭和41年には自治省事務次官、44年退職。終戦直後から昭和43年まで、地方財政の制度作り、地方税や交付税をめぐる人と政治を読みやすくまとめた。「戦後地方税財政外史」の副題を持つ。地方税制や財政の制度設計や、組み立てなどについての知恵と洞察は、おそらく時代を超えて不変なものだ。何度読み返しても新しい発見がある。
16、『地方交付税 仕組みと機能』岡本全勝著、大蔵省印刷局、1995年。
 自治省の地方交付税課長補佐を3年勤め、「時の法令」に約2年間にわたって連載したものに加筆してまとめたもの。交付税担当者が、一般の公務員や市民にも理解してもらおうと工夫のあとが随所に見られる。
15、『自治体財政はやわかり』兼村高文、星野泉著、イマジン出版、2001年。
 副題に「予算・決算、バランスシートから行政評価の作成まで」とあるように、当面する新しい課題と、旧くて新しい問題を平易に紹介する。イマジン出版は、なかなかいいセンスをした「D−file」という新聞切り抜き情報誌を出しているところ。
14、『財政基盤の確立と会計制度』森田朗、澤井勝編著、東京法令出版、2000年。
 シリーズ「図説 地方分権と自治体改革」のうちの第7巻。地方公務員の財政現場職員を中心に編まれている。執筆者は、澤井のほか、斎藤武史(小平市総務部職員課主任)、肥沼位昌(所沢市財政部財政課主任)、飛田博史(地方自治総合研究所研究員)、石井恵美子(千葉県都市部宅地課主任主事)、稲沢克祐(群馬県東京事務所主幹、後に四日市大学)、菅原敏夫(東京自治研究センター研究員)、金子邦博(神奈川県出納局出納課主任)、である。
13、『税の仕組み』宮島洋著、岩波ジュニア新書、1992年。
 宮島さんが中学生の娘さんの意見を聞きながら、おおいに苦労して、解りやすく書き下ろした労作。このジュニア新書には、必読文献が多い。
12、『入門地方財政』伊東弘文著、ぎょうせい、1992年。
 財政分析に触れて、市町村職員向けに編まれた雑誌連載記事を一書に。この分野での先駆的な業績といえる。伊東さんの『現代ドイツ地方財政論』は、ドイツ研究者の必読文献である。
11、『地方分権改革と地方税』木村収著、ぎょうせい、2001年。
 木村先生は、長く大阪市の財政畑を歩かれて大都市の税制や財政を運営するとともに、国や府との関係を具体的に組み立て、企画する仕事をされてきた。その経験をバックに分権改革化の地方税を具体的に考える。
10、『環境税とは何か』石弘光著、岩波新書、1999年。
 地球環境を保全するために、税制の面での規制あるいは経済的インセンティブを与えることが強く期待されている。地方財政においても、特に税制面での工夫が求められる。三重県の産業廃棄物税、東京都の自動車税のグリーン化(後に地方税法の改正に道を開く)、など。そのための基礎文献のひとつ。
9、『財政学講義』加藤芳太郎著、地方自治総合研究所、1997年。
 元都立大学および中央大学教授で、財政社会学と予算論の加藤先生の財政学を、1960年代に雑誌論文として公表した作業を基礎にして加筆したもの。また、先生の『自治体の予算改革』東京大学出版会、も予算論の基礎文献である。
7、『イギリスの地方税』竹下譲、佐々木敦朗著、梓出版社、1995年。
8、『現代イギリス地方税改革論』北村裕明著、日本経済評論社、1998年。
 この両著は、イギリスの現状を、地方税の改革という観点から詳細に調べた労作である。イギリスの地税の地位は大きくない。また地方自治体の権限は、法律によって厳格に付与され、日本に比べてかなり小さいこと、そのことによってイギリスの地方自治のありかたも新しい照明が当てられている。
6、『変動期の地方財政』澤井勝著、敬文堂、1993年、
 1980年代後半からの仕事を纏めたもの。特に地方財政対策の流れと、その時期での論争点、すなわち財政をめぐる政策的イッシュウを整理している。国庫補助金の削減問題、東京一極集中問題、社会資本投資と社会的共通資本、地方老人保健福祉計画の策定の意義、消費税と地方財政など。
 なお、「社会的共通資本」の議論は、宇沢弘文『社会的共通資本』岩波新書、2000年や、宇沢・高木『市場・公共・人間』第一書林、1992年を参照してもらいたい。
5、『分権改革と地方財政』澤井勝著、敬文堂、2000年。
 90年代後半の地方財政対策の流れを、その当時の現実の中で位置付ける。前著での作業を継続して、1985年度から14年度間の編年的分析の試みである。それにあわせて、地方財政を見る視点と、財政診断の手法について述べる。予算編成の手法と理論、財政構造改革と地方財政、起債許可制度の廃止と起債のコンとロール、第三次地方財政危機とはなにか、分権改革と地方財政など。
 同時に地方分権改革の意義を展開する。機関委任事務制度の廃止の意義は、指導の廃止である。自治事務と法定受託事務、自治体に法律の解釈権がきたことの意味、通達の失効。そして行政目的の再定義とニーズ把握、虫の目と鳥の目。
4、『地方財政読本 第4版』佐藤進、林建久編著、東洋経済新報社、1994年。
 地方財政に関する標準的な教科書。数字などが少し旧くなったが。制度改正が相次ぐこの時代は、学者・研究者も追いつくのは大変である。
3、『地方に税源を』神野直彦、金子勝編著、東洋経済新報社、1998年。
 地方分権改革の進行の中で、分権推進員会の財政部門の専門委員で補助金・税財政検討グループ座長であった神野さんと法政から慶応に移った金子さん、立教の池上岳彦さん、日大の小倉波子さんの共同執筆。国税所得税の一部を住民税所得割に移譲する案などを、本としてまとめた。
 同じように神野、金子の共同作業としては、『福祉政府への提言』岩波書店、1999年などがある。
 また、自治・分権ジャーナリストの会との神野さんの共著『課税分権』日本評論者、2001年も参照されたい。
 そして、神野編では、「ぎょうせい」から出ているシリーズ「分権社会を創る」の第5巻『分権型税財政制度を創る』および第6巻『分権型税財政の運営』(いずれも2000年)も有益である。前者の共同執筆者は、林崎理(大阪府総務部副理事兼財政課長)、末宗徹郎(茨城県総務部長)、黒田武一郎(熊本県副知事)、牧慎太郎(北海道総務部財政課長)、平井伸治(鳥取県総務部長)、である。後者の共同執筆者は金沢史男(横浜国立大学)、白石真澄(ニッセイ基礎研究所主任研究員)、小泉和重(熊本県立大学)、大住荘四郎(新潟大学)、中井英雄(近畿大学)、並河信乃(行革国民会議理事兼事務局長)、である。
2、『現代の地方財政(新版)』和田八束、野呂昭朗、星野泉、青木宗明編、有斐閣、1999年。
 同名の文献がかなりあるが、これはいわば和田一門(藤田武夫先生の流れというか)とその協力研究者との共同作業による教科書である。特色はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスという各国の財政 制度が最近のデータと改革の過程を含めその詳細が示されていることと、歴史的観点が重視されていることであり、年表が付属する。初版は1992年だが、分権改革や財政構造改革、福祉改革を受けて抜本的に改定されている。
1、『4訂 地方財政小事典』横田光雄等、ぎょうせい、1998年。
 地方財政用語辞典としては最も有益な辞典。編者のひとり横田光雄さんが福岡県の地方課長時代の1977年に初版が出て、その後加除、増補されている。監修者の一人、石原信雄さんは自治事務次官から竹下内閣以来、細川連立、村山自社さ連合内閣など長く内閣官房副長官を務めた。『地方財政調整論』などは、率直な語り口が際立つ名著で、交付税論の必読文献である。
Copyright© 2001-2003 Masaru Sawai All Rights Reserved..