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国庫補助負担金とその改革

(初出:『地方財務』06年6月号所収)


目次
はじめに 
1、2003年度の三位一体の改革と補助金の改革 (1)国庫補助負担金の一般財源化にともなう財源措置 (2)三位一体の改革 (3)人口に比例して配分する方式の採用
2、2004年度国庫補助金改革と税源移譲 (1)所得譲与税 (2)義務教育費国庫負担金 (3)先送りされた生活保護費国庫負担金の負担率引き下げ
3、2005年度の三位一体改革と補助金
4、2006年度の三位一体改革と国庫補助金
5、これからの補助金改革の方向

                奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

はじめに

90年代に始まったわが国の地方分権改革は、2000年度の地方分権一括法による、自治体への法律解釈権の付与という第一期の改革を受けて、地方への財源移譲を主たる目的とした第二期改革が望まれた。それは03年度からの補助金、税源移譲、交付税の「三位一体の改革」というかたちで、民間議員、総務省、財務省などによる経済財政諮問会議の議論として展開されることとなった。しかしこの「三位一体の改革」は、「地方交付税モラルハザード論」を振りかざして地方財政を抑制することを第一の課題とする人々との妥協と、補助金を所管する各省の抵抗や、逆提案などによって、結果としては分権と自治を確立するための改革とは遠いものになったと言わざるを得ない。

国庫補助金改革について言えば、4兆円超の補助金を改革し、3兆円の税源移譲を実現したとされている。しかし、その内容は義務教育教職員給与費(中学校)国庫負担金の負担率を2分の一から3分の一に引き下げるなど、補助率引き下げに依存する割合が高い。

これでは、国に行政権限を残したまま、地方負担を増やすということにしかなっていないから、とても分権改革とはいえない。児童扶養手当なども同様である。

また国民健康保険の国庫負担の一部を都道府県に肩代わりするという、市町村に対する都道府県の調整機能を拡大しながら、国庫負担を減らすというようなものもある。

ここでは三位一体改革の経過を検証しながら、自治と分権をこれから推進するための、国庫補助金改革の方向について検討することとしたい。

 

1、2003年度の三位一体改革と補助金の改革

 

(1)国庫補助負担金の一般財源化にともなう財源措置

03年度の地方財政対策のひとつの中心は、国庫補助負担金の一部の一般財源化とその財源措置のあり方であった。これについては竜頭蛇尾に終わったともいえるが、いわゆる三位一体改革の芽を出したものと言われる。

 結論的には義務教育教職員給与費国庫負担金の一部(共済長期国庫負担金)2184億円を一般財源化した。これに在宅福祉事業費補助金等の一部160億円を一般財源化ガ行われた。合計2344億円の国庫補助負担金が廃止されることとなった。

 国庫補助負担金が廃止することを一般財源化という。なぜなら、国庫補助負担金が廃止されても、その国庫補助負担金などの対象事業は都道府県や市町村が実施すべきものとして残るから、この事業に必要な財源は都道府県、市町村がそれぞれの一般財源で賄うことになる。このように国庫補助負担金を廃止しても、事業が自治体に残る場合は、自治体の一般財源負担がその分増加するから、その一般財源はなんらかのかたちで保障されなければならない。特にそれが、義務教育教職員の設置費(給与費)などであれば、全面的な財源保障が必要である。さもなければ、義務教育の水準を維持することができず、国の行政責任の放棄になるからである。

 この一般財源化にともなう財源措置は、本来なら地方のもっとも基幹的な財源である地方税によって補填すべきものである。府県であれば、地方消費税の税率の引き上げなどが考えられる。市町村であれば、住民税の所得割の税率を一定率引き上げるなど。これに対応して国税の消費税や所得税の税率を引き下げ、地方税の増税を国税の減税で相殺する。いわゆる「税収中立」である。

 

(2)三位一体の改革

 この年はいわゆる三位一体改革の芽を出すということが予算編成の目標として掲げられた。すなわち021120に当時の片山虎之助総務相が経済財政諮問会議に提出した、「三位一体の改革について」では、以下のように示されていた(一部を要約、抜粋)。

 

「T、国庫補助負担金の廃止・縮小 

 国の関与を縮小し、地方の権限と責任を大幅に拡大する観点から、国庫補助負担金を大幅に廃止・縮小し、所要額を地方の自主財源として移譲。「改革と展望」の期間中に数兆円規模の廃止・縮小を行うことが重要。

(注:02125日の閣議決定、「構造改革と経済財政の中期展望」のことを「改革と展望」という。この「期間中」とは02年度から06年度の5年間を指す。)

特に次のような国庫補助負担金については速やかに一般財源化。職員設置費、法令施行の事務費、施設の運営費、住民に身近な生活基盤整備に係るもの、公共施設の維持補修、改良等。

 U、税源移譲を含む税源配分の見直し

 地方税中心の歳入体系とするため、国から地方への税源移譲等により、国税:地方税=

1:1を実現する。」

 

 この結果、先にも見たように、03年度は、義務教育教職員給与費国庫負担金のうち共済長期負担金と在宅福祉事業費など、2344億円が一般財源化されることとなったのである。

その財源手当は、第一に地方特例交付金によってその半分の額(1172億円)について行う。この地方特例交付金は、「第二種地方特例交付金」として新設される。「第一種地方特例交付金」とは、「恒久的減税に伴う財源補填」のための交付金である。

 第二に、地方交付税を1172億円増額する。これは交付税特会の借り入れによるが、その4分の3879億円)は国が元利償還する。このため、これらの経過で税源移譲に相当するのは、第二種特例交付金1172億円プラス交付税増額分の879億円、合計2051億円となる。地方負担は4分の1ということになる。

 この第二種特例交付金の配分方法は、「見直される国庫補助負担金の対象事業の実施主体に応じて、都道府県分(1116億円)及び市区町村分(56億円)に分別し、各都道府県及び市区町村の最近の国勢調査人口により各々の総額を案分して交付することとしている。」(平成15120日付け「財政課長内かん」)

 

(3)人口に比例して配分する方式の採用

ここでは配分方法として、国勢調査人口という「簡便な」方法を採用した点に注目したい。このように交付金等を「人口に比例して」配分するという方法は、地方交付税の配分の簡素化を要求する議論では以前から強い。それが、常に退けられ、細かい需要算定等の手続きを経るべきものとされてきた長い歴史がある。それがここであっさり採用されているのである。これは経済財政諮問会議における地方交付税の廃止あるいは財源保障機能の廃止・縮減の議論と併せて、繰り返し算定方法の簡素化が論議されたことと無縁ではありえないであろう。

 なお、この「人口比例による配分方式」は、このときもうひとつ採用されている。それは、臨時財政対策債58696億円についてである。この臨時財政対策債は、地方交付税特別会計の借入金の代わりに自治体が起債するものである。そのため、地方財政計画の上では、普通地方交付税を計算するときに用いる「基準財政需要額」から、それに相当する額を削減する必要がある。このことを先の「財政課長内かん」は次のように言っている。

 「前年度に引き続き臨時財政対策債の発行に伴い、58696億円を需要額から減額することとしていること。」

 

2、2004年度国庫補助金改革と税源移譲

 

04年度の国庫負担金改革に伴い、それに必要な一般財源を「所得譲与税」および「税源

移譲予定特例交付金(仮称)」として「税源移譲」を行うこととされた。

 なお、この所得譲与税、税源移譲予定特例交付金、減税補填特例交付金および恒久的

な減税に伴なう減税補填債相当額、先行減税に伴なう減税補填債相当額については、その

75%を交付税計算に用いる基準財政収入額に算入することされている。通常の地方譲与税

は基準財政収入額には100%算入である。

(1)所得譲与税

イ、04年度分として公立保育所運営費補助金1661億円、介護保険事務費交付金305億円、軽費老人ホーム事務費交付金167億円、在宅福祉事業補助金(うち生きがい活動支援通所事業)50億円、土地利用規制等対策費交付金20億円、教員研修事業費等補助金39億円など、その対象事業が引き続き地方自治体が主体となって実施するべき国庫補助負担金(計2440億円)については、04年度から一般財源化し、交付税計算のための基準財政需要額に全額を算入する。またこのうち、配偶者特別控除の上乗せ分の廃止にともなう増収分を充てることとされた児童手当の事務取り扱い交付金(87億)を除いた額のうち、税源移譲すべき額として整理された2198億円については「所得譲与税」として「税源移譲」することとされた。なお、この所得譲与税は地方税であって、総務省自治税務局の所管とされている。

ロ、平成1503)年度に「三位一体改革の芽だし」として行われた国庫負担金の一般財源化(要するに補助金の廃止)にともなう自治体の一般財源増加額2334億円についても、基準財政需要額に算入するとともに、国負担分とされた2051億円を所得譲与税として「税源移譲」する。

このイとロの合計が、新設される「所得譲与税」となり、4249億円となる。各自治体へ

の配分は、単純な人口割りとする。都道府県と市町村の分割基準は、11とする。

(2)義務教育費国庫負担金のうち、退職手当と児童手当に関わる部分(2309億円)の一般財源化に伴なって臨時的な一般財源移譲を行う。今後その額が増大することを考えて、

税源移譲までの各年度の退職手当支給に必要な額を確保して積み立てるため「税源移譲予

定交付金」(仮称)として、2309億円を交付する。なお、義務教育費国庫負担金の一般財

源化について、平成18年度までに義務教育制度の在り方を検討する中で判断することと

された。各自治体への配分は、人口をベースに他の要因を入れ込む方式が予定されてい

る。

(3)先送りされた生活保護費国庫負担金の負担率引き下げ。

04年度の三位一体改革の中心は、補助金1兆円削減であったが、当初、厚生労働省が提示したのは生活保護費の国庫負担率の引き下げという最悪のパターンであった。全国知事会などの強い反発もあって、最終的には今回は見送りという結果にはなった。

厚生労働省の当初案では国庫負担は減り、府県や都市の財政負担は増える。ところが、生活保護行政は国の規制が強く、自治体が裁量権を働かせる余地は小さい。この状態では、生活保護行政は、国の下請け行政でしかないうえに地方の負担は増える。特に大都市部で影響が大きく、財政破綻の決定的な要因になりかねない国の提案であった。まったく「分権改革」に背を向ける改革提案であり、数字のつじつま合わせのために地方分権の原理をふみにじるものだという批判はまぬがれない。

この他に、まちづくり交付金の創設(1330億円)が行われた。これは省庁横断的に、それぞれの省がもつ補助金を使えるようにしたもので、窓口を内閣府とする。

 また、「スリム化」の改革が行われ、4235億円について削減されることとされた。

 

3、2005年度の三位一体改革と補助金

05年度の三位一体の改革では、国庫補助金の改革が次のように行われることとなったが、交付金化など各府省の権益を維持するかたちが強くでたといってよい(財務省企画官が整理したものに総務省資料を加味した)。

(1)、税源移譲に結びつく改革は11239億円。(税源移譲額は111160億円)

・義務教育国庫負担金のうちこのとき対象となった中学校教職員給与費8467億円のうち、暫定的に05年度は4250億円、税源移譲予定交付金にする。05年秋までに中教審で審議をし(地方代表も入れて)、結論をうるとされた。

・国民健康保険国庫負担金は5449億円を都道府県負担に転嫁する(全体では6862億円)。養護老人ホーム等保護費負担金567億円、公営住宅家賃対策費等補助320億円、など合計6989億円。両者併せて、11239億円を廃止し、縮減する。

(2)、交付金化の改革(3430億円)省庁横断的な交付金制度の創設(内閣府におく)。

汚水処理施設整備交付金(下水道、農業集落排水、合併浄化槽)490億円道整備交付金(道路,農道、林道)270億円港湾整備交付金(港湾,漁港)50億円、など。

 4、2006年度の三位一体改革と国庫補助金

20051130日に政府・与党合意「三位一体改革について」が行われて、これまでの改革を整理したうえで、次のようにされた。

(1)、2004年度から2006年度までの国庫補助負担金の改革の合計は、これまでの議論を整理して46661億円とされている。

(2)、このうち税源移譲に結びつくものは31176億円である。とはいうものの、先に根拠のはっきりしない「4兆円」などの数字が先行し、そのために分権改革の理念や目的を無視した補助率引き下げや、廃止することに疑問のある補助金の削減や廃止など、数字合わせという批判が強い。義務教育教職員給与費国庫負担金(2分の1から3分の1への引き下げによる4217億円)のように自治体への裁量権の移譲なしに負担転嫁を図る負担率引き下げというかたちのものが額的に大きいのである。

経常経費系統では

・児童扶養手当給付費負担金  1805億円 4分の3から3分の1に。

・児童手当国庫負担金     1578億円 3分の2から3分の1に。

・介護給付費等負担金(うち施設等給費)  1302億円。

公共事業関係では

・地域介護・福祉空間整備等施設整備費交付金のうち都道府県分(特養等)  389億円

・公営住宅家賃対策等補助金のうち法に基づく国庫負担分          620億円

・公立学校施設整備費補助金の一部                    170億円

 なおこの3事業のほか、公立保育所施設整備交付金(次世代育成支援対策施設整備交付

金のうち)については、特別の地方債の発行を認め、その元利償還金は全額後年度に基準

財政需要額に算入するなど、交付税の将来を拘束する方式が踏襲されているのも特色であ

る。

(3)この税源移譲対象補助金については起債充当分を除き、全額基準財政需要額に算入

するとともに、394億円については07年度からの税源移譲分として、当面06年度は

所得譲与税として税源移譲する。この所得譲与税は、先に見たように自治税務局所管の地

方税であり、全額基準財政収入額に算入される。配分基準は国勢調査人口による。06年度

は都道府県に21794億円、市町村に8300億円となる。

(4)07年度からの税源移譲

 06年度中の税制改革によって、394億円については、住民税の所得割の税率を10

の比例税率として移譲する。都道府県民税4%、市町村民税6%。

 

5、これからの補助金改革の方向

以上に見てきたように、今回の補助金改革は次のような特徴をもっている。

 第一に、改革すべき国庫補助金について、国側にはなんの基準も考え方もなく、その場限りでの対応に終始したという点である。全体で4兆円という改革の縛りに応答するために、適当な補助金を改革(廃止又は縮小)のまな板にのせたにすぎないといわざるをえない。国民健康保険や生活保護費などや、最後に出てきた児童扶養手当などが典型である。

第二には、補助率の引き下げという分権改革に背を向ける手法が多用され、国と地方との役割と責任を明確にする方向とは逆の方向となっている。地方自治に対する無理解と、中央集権システムへの強い愛着が見られる。

 このような現状を目の前にすると、補助金改革が地方分権の実現を目指し、地方自治体の自立性と自律性を強化するものだという目標と理念を明確にし、個々の改革を評価し、内容を改めることが重要である。その上で、次の点も考慮したい。

(1)国庫補助金は、これからも残ることが十分に考えられる。地方6団体の設置した「新地方分権構想検討委員会」(神野直彦委員長)の議論でも国庫補助金の半分を廃止するとしている。またこの間に新設された補助金や交付金も多い。これら補助金のうち、これから廃止、縮減する補助金を税源として地方に譲渡する方法としては、税源移譲ができる一定のロットになるまでは、今回活用された所得譲与税などにプールし、ただちに自治体に配分するべきである。その配分は、人口割も考えられる。

(2)国庫補助率の引き下げを行うなら、同時にそれに伴う権限を全て、地方に移譲すべきである。すなわち教職員給与費の場合、教職員の定員を定めることを国が放棄し(国の考え方を示すガイドラインはあってもよい)、義務教育の実施主体を、都道府県と市町村とした上で、たとえばその費用の3分の一を、国が実施主体を支援する「義務教育推進支援交付金」とする、などが考えられる。この「義務教育推進支援交付金」によって、国の義務教育に対する行政責任を果たすものとする。交付にあたって国による条件はつけない。都道府県への交付基準はそれまで5年間のシェアの実績などとする。経済財政諮問介護方式による三位一体改革の失敗は、「お金の話」に限定し、権限移譲については地方代表の意見が極めて制約される現行の中教審の議論に委ねたところにある。

(3)国庫補助金も所得再分配機能を持っていることを明確にする。この所得再配分機能を担う国庫補助負担金は国の責任であることを必須の条件とする。このような国庫補助負担金として、生活保護や児童扶養手当、特別児童扶養手当がある。また、低所得の障害者や要介護高齢者に対する、ミーンズテストなしの、一律の所得代替手当ての創設も考えられる。この財源は、将来の租税債権を当てにした建設国債で行われている公共事業財源、または一般財源化を決めている道路特定財源(2006年度予算ベースで自動車重量税5712億円、石油ガス税143億円、揮発油税29573億円、合計で35428億円)などを充当することも考えられる。この道路特定財源については、相当部分を地方道整備として自治体、特に道府県に配分し、この交付金を種にした市町村および住民と協働で行う「道普請」の財源とすることも必要である。

 なお、電源立地交付金の他の地域への配分も必要である。

(4)公共事業関係の補助金は、その財源は現在は建設国債であるが、これは将来の税で償還していくことを考えれば、それを現在の時点で地方に税源移譲することが望ましい。その財源移譲にあたっては都道府県と市町村が共同で策定する「地域再生事業計画」(仮)を基礎に、6団体と各省庁との協議によって枠配分を行うことがひとつの目標である。つまり、財源配分の優先度を、都道府県と市町村、国と自治体が協議し、決めていく仕組みを作っていくことが必要である。非常に難しいとは思うが、これが補助金のくびきを除去していく正道だと思われる。

 つまり、都道府県と市町村における政策選択の優先度を、現在のように国庫補助金の有無ではなく、市民参加による政策評価にきちんと置きなおすことが必須の条件である。このような政策評価と実施計画との関係を構築しようとがんばっているのが岐阜県多治見市など先進自治体だと思われる。政策の優先順位を、補助金ではなく、市民の現在と将来のニーズによって決定すること、そのことがこれからの補助金改革と税源移譲の基礎になるはずである。

 


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