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国庫補助金と分権改革

(初出:自治総研ブックレット64 99年1月)


目次
1 国庫補助負担金制度を改革するということ
2 地方分権推進計画における補助金改革
3 補助対象資産の活用と時のアセスの容認
4 第5次勧告と統合的補助金
5 地方自治体の総合計画の練り直しを


1 国庫補助負担金制度を改革するということ

 分権改革において、その財源面での最大の問題のひとつは、いうまでもなく国庫補助負担金の改革である。広く言うと国庫支出金のうち、地方公共団体に対して支出されるものを国庫補助負担金と呼ぶと言っていいが、この国庫補助負担金こそが、中央政府の地方支配を再生産する元凶であると指摘されてきたからである。それは、行政的あるいは法的な側面での中央による地方支配の道具としての機関委任事務制度とならぶ、財政面での中央支配の主要な機構とみなされている。
 したがって財源保障の議論とは別に、この国庫補助負担金制度の廃止を含む抜本的改革こそが、地方自治体を「中央と地方の支配・服従の関係」から「対等・平等な関係」に組み替えるもうひとつの柱であることは間違いがない。
 結論から言えば、補助金改革は、今回の分権改革の中では、ごく限られた範囲と深さに留まったと言える。このことは、既に多く指摘されているところである。いわく、「財源移譲なき分権改革は分権改革の名に値しない」、いわく「財源なしに分権はできない」、いわく「仕事だけ押しつけて財源は付与しないのは、地方への負担転嫁でしかない」などなど。
 これらは補助金の廃止とそれを地方財源に振り替えるように主張しているようにも聞こえる。しかし、こと補助金に関しては、その廃止や整理合理化が出来なかったことを強く非難する声は、どこからもないのではないか。推進委員会の議論に対しても、国庫補助負担金の廃止論や縮小論は、リアルに提案されたようには見えない。運用の改善策や、自治的な活用を可能にする条件整備の提案は、地方6団体あたりからは出てはいたが。このような運用の改善策の提案の後ろには、国庫補助負担金を重要な財源と考え、その安定的な確保を図りたい、地方側の本音が隠すまでもなくあきらかなのである。
 つまり、今回の分権改革にあたっては、各省庁の縦割り割拠主義の源泉であり、強力なプレッシャー集団である、補助金の受益者集団の暗黙の圧力と風圧を受けて、補助金については、戦う前に限界が見えていたと言っても良いのである。
 このことは、補助金の廃止論が、わが国歴史的経験とその上に立つ行政システムの前には、現在の状況では空想的であることを示している。とすれば、今次の分権改革を一歩でも前に進めるために、補助金改革でなにを獲得すべきか、というふうに問題を立てなければならない。分権改革を推進するために、どのような実現可能性(フィージビリティー)のある補助金改革が求められるのかが、問題なのである。

国庫補助負担金と地方財政法の再定義
 この場合の国庫補助負担金という用語の定義は、地方財政法に求められる。すなわち第一には、同法第10条(国がその全部又は一部を負担する法令に基づいて実施しなければならない事務に要する経費)、第10条の2(国がその全部又は一部を負担する建設事業にようする経費)、第10条の3(国がその一部を負担する災害に係る事務に要する経費)、にかかる国庫支出金である「国庫負担金」である。
 第二には、地方財政法第10条の4にいう(地方公共団体が負担する義務を負わない経費)に係る国庫支出金である「国庫委託金」がある。
 そして第三には、同法第16条にいういわゆる奨励的補助金、財政援助的補助金であり、「国は、その施策を行うため特に必要があると認めるとき又は地方公共団体の財政上特別の必要があると認めるときに限り、当該地方公共団体に対して、補助金を交付することができる」とされているものである。
 「国庫補助負担金の改革」とはこれら三類型の国庫支出金を対象にするものである。
 このことは、「地方分権推進計画」(以下「計画」とする)でも同様な考え方で、国庫支出金を基本的には、地方財政法の枠組みでとらえ、その再定義を行っているといってよい。すなわち「計画」においては、次のように第二次勧告を受けて定義づける。
 「機関委任事務制度の廃止に伴い、地方公共団体の担う事務については、自治事務を原則とし、法定受託事務を例外とする新しい事務の区分を行うこととするが、国と地方の経費負担の在り方については、現在、地方財政法により、当該事務に対する国の利害の度合い等に応じて定められている考え方を基本とする。従って、国と地方の経費負担の在り方と新しい事務の区分とは直接連動するものではないが、概ね以下の方向で整理するすることとする。

ア 地方公共団体の担う事務に要する経費については、原則として当該地方公共団体が全額負担することとする。
イ 例外として国がその経費の全部又は一部を負担するのは、次のものに限ることとする。なお、国はその負担すべき割合に応じ、毎年度確実に負担することとする。
ア)法定受託事務のうち、専ら国の利害に関係のあるもの
イ)法定受託事務又はその実施内容、方法等の基本的枠組みが法律又はこれに基づく政令で定められている自治事務のうち、ナショナル・ミニマムの維持達成のためにはその運営につき国が進んで経費を負担する必要があるもの、又は、全国的な規模・視点から国民経済に適合するように総合的に樹立された計画に従って実施しなければならない根幹的社会資本整備等に係るもの
ウ)災害救助事業、災害復旧事業」
このことは、国庫支出金制度が残る限り、地方財政と中央財政との間の財政秩序を律する考え方として、一応共通の前提として置いておかなければならないのである。

2 地方分権推進計画における補助金改革

 今回の分権改革において、国庫補助金の改革についての勧告は、主として第二次勧告と第五次勧告で行われた。まず第二次勧告であるが、この勧告における主要な改革点は「計画」に引き継がれていると思われるので、以下、「計画」における補助金改革について検討しよう。「計画」では、その第4で、「国庫補助負担金の整理合理化と地方税財源の充実確保」の章で指摘されている。
 この部分の構成は次のようになっている。

1 国と地方の財政関係の基本的な見直しの方向と国と地方の経費負担の在り方
(1) 国と地方の財政関係の基本的な見直しの方向
1)国庫補助負担金の整理合理化
2)存続する国庫補助負担金の運用、関与の改革
3)地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実確保
(2) 国と地方の経費負担区分の原則並びに国庫負担金と国庫補助金の区分の明確化
(3) 国と地方の軽費負担区分の在り方と新しい事務の区分との関係
2 国庫補助負担金の整理合理化
(1)基本的考え方 アからエまで
エ 整理合理化の方策 (1)廃止から(21)維持管理費に係る国直轄事業まで
(2)必要な地方一般財源の確保
(3)個別の国庫補助負担金の整理合理化方策
3 存続する国庫補助負担金に係る運用・関与の改革
(1)基本的考え方 (2)運用・関与の改善方策
ア 統合・メニュー化
イ 交付金化
ウ 運用の弾力化(複合化)
  これは、合築のすすめである。
エ 補助条件の適正化、緩和

 この勧告の内容は、今までに、地方制度調査会、地方6団体、知事会、市長会、地方自治総合研究所など研究機関、自治労などが指摘してきた、零細補助金の整理、サンセット化、スクラップ・アンド・ビルド、一般財源化、などであって、さして目新しいところはない。
 ただ、その中でも、運用の弾力化というふうに言われている、異なった所管の建築物を合築するすることは比較的よく見られるようになっているが、それをもっと拡充する提案になっていることは、評価できる。また、補助条件の緩和も、次のような指摘が着実に実行されるよう、各省庁、特に出先機関の対応を明確化することが都道府県、市町村で求められる。
 「補助条件等については、その交付の目的を達成するために必要な限度を超えて地方公共団体に制約を課すことがないよう、補助目的の達成、運用の適正化等のために必要最小限のものとする。
 とりわけ、施設等の配置及び設備等の基準などの補助条件等は、地方公共団体の自主性の発揮、総合的な事業実施が可能となるよう大幅に弾力化するなど、補助条件の緩和を図る。
 また、通達等により示されてきた職員の職名・資格・配置基準等について、今後、地方公共団体に示す場合においては、「技術的助言」とされたことに伴い、補助条件とされている関係職員等の職名・資格・配置基準等についても所要の見直しを行うこととする。
 なお、国庫負担金についても、地方公共団体の自主性の確保に留意することとする。」

 この「計画」の手柄は、「個別の国庫補助負担金の整理合理化方策」の項目にある。この項では、個別の国庫補助負担金について、どのような整理・合理化方策を採るべきか列挙している。このように個別の補助金について、その整理・合理化方策を示すという勧告は、(改革意見としては一部あったが)ほぼなかったといってよい。その点、国庫補助金の今までにない洗い直しの結果として、個別の補助金を取り上げてその取り扱いを決めるというかたちは今後とも生かされなければならない。いくつか例を挙げよう。

 廃止するものとして、厚生省の軽費老人ホームB型の施設整備費補助金、文部省の地方生涯学習振興費補助金、通産省の中小企業指導事業費補助金など34件。
 一般財源化するものとして、身体障害者相談員設置費や精神薄弱者相談員設置費、社会体育施設整備費のうち野球場などへの補助金、など22件。
 単独事業の範囲を拡大する中での採択基準の引き上げなどによる重点化として、林道改良事業費、海岸保全事業費、漁港修築事業費、地滑り防止事業費、など。
 このような、個別補助金の整理合理化は、既に平成10年度予算で措置済のものが、相当程度を占めている。つまり各省庁としては、昨年来の勧告に沿って措置できるもの措置しているわけで、実害を最小限に押さえる努力が垣間見えるのである。

3 補助対象資産の活用と時のアセス容認

 この中で、特に重要な改革は、ふたつある。そのひとつは、「補助対象資産の有効活用、転用」を図ることとした点である。これは、具体的にはいわゆる義務教育小学校などの空き教室の再利用や転用、活用である。
 これについては僻地児童のスクールバス、ボートの住民利用、公立学校整備費負担金にかかる学校施設の転用、防衛庁所管の防音工事費対象の教育施設の転用、社会福祉施設の他の社会福祉施設への転用、医療、保健施設についても転用を認め、手続きを簡素化するとしている。
 たとえば、公立学校施設整備費補助金の場合、「余裕教室等を学校施設以外の施設に転用する場合の財産処分手続きについて、地域の実情に応じて余裕教室等が一層積極的に活用されるよう、(1)報告により承認があったものと取り扱われる事項の大幅な拡大、(2)公共施設への無償による転用は納付金が不要であることの明文化、などの改正を行うとしている。これは、既に措置済である(平成9年11月20日文部省助成局長通知)。
 もうひとつは、「長期にわたり実施中の国庫補助事業等の再評価」というかたちで示された、国庫補助事業の再評価システムの導入と、それにともない、国庫補助事業を中断する場合、執行済の国庫補助事業に係る国庫補助負担金を返還する必要がないということを確認したことである。これは、たとえば中海の干拓事業のようなものに適用があるとすれば、無駄な投資と環境破壊の進行をその限りで、制限することが出来る画期的な確認である。
 このことは、いわゆる適正化法(国庫補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)の解釈として確定された。すなわち同法第10条第1項において、「各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をした場合においては、その後の事情の変更により特別の必要が生じたときは、補助金等の交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又はその決定の内容若しくはこれに付した条件を変更することができる。」と規定されている。この規定の解釈内容としては、「同項の適用があるときには、既に事業等の執行が済んだ部分について補助金等の返還を求められることはない。」とされたのである。これは適正化法の条文の改正を拒んだ財政当局とのあいだで、解釈として確定することで合意に至ったものなのである。

4 第5次勧告と統合的補助金

 第5次勧告の経緯や、意義については別項に譲るが、この勧告でもっとも重要な成果は、統合的補助金の創設である。この議論は、中央省庁のスリム化を目指す中央省庁等改革基本法(平成10年6月)の目的を実現するものという位置づけを与えられている。勧告の「第1章公共事業の在り方の見直し III補助事業の見直し 2統合的補助金の創設」では、次のように述べられている。

(1)「基本法(中央省庁等改革基本法)46条2号は、公共事業の補助事業については、@道号に規定する個別の補助金等を交付する事業は、国の直轄事業に関連する事業、国家的な事業に関連する事業、先導的な施策に関する事業、短期間に集中的に施行する必要がある事業等特に必要があるものに限定する。Aその他の事業に対する助成については、出来る限り、個別補助金に代えて、適切な目的を付した統合的な補助金等(以下「統合補助金」という。)を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させることとしているので、この規定に基づき、統合補助金を創設する。」
(2)この統合補助金の基本的性格及び仕組みは、次の通りとする。
@基本法第46条第2号の「地方公共団体に裁量的に施行させる」ことの要件としては、「国が箇所付けをしない」ことを基本とする。
A具体の事業箇所・内容について地方公共団体が主体的に定められるよう、次のような基本的な仕組みとする。
a 国が策定する公共事業に関する長期計画に対応して地方公共団体が策定する中期の事業計画を基に、国がその年度における地方公共団体ごとの配分枠(金額のみ。具体の事業箇所・内容は示さない)を定める。
b aの配分枠の範囲内で、地方公共団体が当該年度において実施すべき具体の事業箇所・内容等を定めた上で、補助金を申請する(国は、申請に基づき補助金を交付決定)。
c 交付決定後の事業箇所・内容等の変更は、事業計画等に適合している限り、国の関与を極力要しないものとする。(引用者注:この部分は、勧告の原案では、「変更手続きを要しないものとする」となっていたもので、折衝の結果、後退したといってよい。)
BAのタイプの統合補助金とは別に、一定の政策目的を実現するために複数の時御油を一体的かつ主体的に実施することができるような類型の統合補助金を創設する。」
 この統合補助金の対象事業は、二級河川、公営住宅、公共下水道、都市公園、港湾の既存施設の有効活用、農業農村整備事業、漁港漁村整備事業、まちづくりに係る新たな統合補助金、住宅宅地関連公共施設等整備促進事業、が挙げられている。

5 地方自治体の総合計画の練り直しを

 この統合補助金は、地方自治体の裁量範囲を拡大し、事業の主体的な選択と総合化を可能にするきっかけになるかもしれない。この統合補助金は国に箇所付けをさせないというところがそのキーポイントである。もちろん、事実上の国による箇所付けはしぶとく生き延びようとするであろう。むしろ地方自治体側が箇所付けの苦心から逃れるために、国による箇所付けを要求するようなことも多発するであろう。
 しかし、そのような状況を乗り越えて、自律的、自発的な地域政策が、この統合補助金という制度を活用して実現されなければならない。そうでなければ分権改革の名がすたるというものである。その中心点は、地方自治体の「事業計画」が、どれほど説得性をもち、長期的、中期的な構想の中に位置づけられているか、という点である。また、したがって、その計画や構想がどれほど住民の真のニーズに根拠を置いているかにも大きく依存する。そう言った意味でも改めて、自治体の基本構想と、総合計画が市民参画のもとに練り直されなければならないのである。

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