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新市町村計画への提案
「秩序ある分散型・分権型合併」と「共和国連邦の思想」

(2002年9月14日 丹後の未来を考えるシンポジウム 於:アミティ丹後)
※シンポジウム後に、一部加筆

1、はじめに
 今回の平成の合併は財政事情に後ろから迫られ、前からは分権改革によって要請されるという性格を持っている。財政面での合併に向けた促進要因は、既にいろいろ語られている。特にこの7月に閣議決定された今年度分の普通地方交付税は、京都府内の全ての町村で前年度比マイナスとなるという厳しいものであった。また8月29日の総務省の来年度概算要求では、交付税総額は今年度比4.8%減としている。今年度の4.0%減よりさらにマイナス率が高くなる。
 こういったことから、合併しないにしても合併するにしても、財政事情は今年度より厳しいものになることはさけられない。よりきちんとした財政計画、財政フレームの策定が必要になる。合併したほうがこの厳しさは緩和されるではあろうが、事業の拡大などによってより財政への負荷が大きくなるとも考えられるから、財政見通しとそのローリングは不可欠である。
 分権改革と基礎的自治体への権限移譲の方向は、精神障害者に対する日常生活支援センターの設置、身体障害者福祉での支援費支給制度の開始、雇用促進法改正による雇用行政権限の創設など、より専門性と先見性を求められてきてもいる。さらに、農業の構造改革と担い手育成、林業の環境産業、工業や建設、土木事業などの構造転換など、地域に課せられた課題は多く、従来の町村としての対応は、飛躍的な強化が求められている。

2、合併の前提として考えるべき6つの条件

1、過疎化の促進要因を取り除く
2、地域活性化の成果と蓄積の継承
3、広域的交流圏の生活の広がりを生かす
4、経済のグローバル化に対応する
5、少子・高齢化への積極的対応
6、緑と海、河川それら自然の再生と創造
 こういう市町村合併への圧力が高まる中で、冷静に考えると、合併を考える際に共通のものとして理解をしておく点がいくつかある。ここではそれを次の六点に整理しておきたい。
 まず、今回の市町村合併は、昭和30年代前半の合併の経験から、その弱点を克服しようという仕組みも組み込まれている、という点が第一の条件である。
 昭和30年代合併の反省点の第一は、合併市町村の一体性を確保することを急いだ結果、(役場の統合、学校の統合など)周辺地域の衰退を招き、過疎化に拍車をかけた、という点である。つまり、新市町村を構成する旧町村等の地域性を、つまりなにほどかあったその自立的な共同性を、もっぱら解体する方向での施策しかなかったとも言える。
 このため、今回の合併では、旧市町村の区域をもとにした「地域審議会」の設置を認め、むしろ奨励しているのである。地域審議会をどう組み立てるか、その趣旨は、新市町村を構成する市町村の地域的なまとまりを確保すること、それを基礎に新市町村が構想されることが求められている。
 第二は、昭和30年代と違って、それ以後の「地域活性化」、「過疎対策」、「まちおこし、むらおこし」、そして「モデル定住圏」、「地方老人保健福祉計画」などの地域政策によってそれぞれの地域に、多くの行政資源というストックがあるという点である。そして、活発に活動する住民あるいは住民組織、企業があるという点である。
 この地域活性化とまちづくりの経験、知恵、そしてハード面での財産を、未来都市につなげていくことが重要である。

 したがって、構想されるべき都市像は、分散型国土形成を本格的に、地域において実現していくものであってほしい。分散型国土とは、それぞれの地域が、市町村の内部構造としても「生き生きとして」「個性的」であることで実のあるものになる。自立した地域とそのネットワークの形成、その形成と活性化のための新本庁の機能が必要となる。
 これらの考え方の延長上にはっきりしてきたのは、今回の合併は、「秩序ある分散型合併」が有力な選択肢だというテーマである。「共和国連邦」であるといってもよい。各構成市町村の自律性をそうとう保障しながら、本庁機能をかなり制限して(こぶりにして)、全体の調整と企画機能、税制や徴税機構の強化、法制事務の創造、対外的、国際的な機能を担うものにする、そういった方向性が確認できてきたのである。

 さらに、第三には、モータリーゼイションの成熟と消防や救急におけるヘリコプターの活用に見られる交通手段のイノベーション、インターネットなどデジタル通信手段の普遍化など、人々の活動は極めて広域化し、交流の密度も濃くなってきている。その意味では、この広域的な人的、物的、情報的な交流に対応する合併として考えられなければならない。
 特に21世紀は日本にとって本格的な「観光産業」の時代になる可能性があり、むしろ積極的に、アジアを中心とする交流人口をひきつけられるどうか、そのサービスの質を開発できるかどうか、この点に地域の将来はかかっているとも言える。

 そして、第四に、経済のグローバル化に積極的に対応できる産業構造の転換であり、その産業内部の構造転換である。農林業におけるバイオ技術、林業を環境産業に転換すること、沿岸漁業の再構築、工業におけるニッチ産業や新エネルギーへの転換、繊維産業の市場開拓とデザインおよび複合素材の新工夫、などなど。
特に、従来型の公共事業に依存してきた諸産業を、環境産業や福祉産業に組替えていくためのきめ細かい産業政策が、新市町村の主要な施策として考えられ、施行されるべきである。この中でも福祉産業をどう地域的な産業にできるが最重要課題である。

 この高齢化・少子化という確実に進行し、20年後にはピークを迎える人口構成の大きな変動が第五の条件である。これからの自治体は、この高齢化のなかで、障害者も高齢者も子どもも、そしてその家族も安心して暮らし、最期を迎えることが出来る地域を、一年一年の施策の積み重ねの中で実現できるかが問われている。これに成功した自治体は、若者が戻ってくるひとつの条件を満たす。それはまた福祉、医療の多くの雇用を地域に生み出し、保険財源などの域外の資金を動員できる。

 もうひとつの、第六の条件は、以上の条件のさらに基礎となる緑と水の豊かな環境が求められている、という条件である。生活の場としての自然環境、働く場としての自然、遊ぶ場としての自然、寛ぐ場としての自然、食べ物とエネルギーの源としての自然、そして廃棄物をもとの姿に返す場としての自然。これらの自然は、里山であり用水であり、地先の海岸と砂浜、沿岸域である。全て人が適切に手を入れることによって再生産されて、維持されてきたものだ。
 これは、国連の地球環境サミットでの合意を実現する「子ども達によりよい地球を手渡すための『持続可能な発展』」のために、わが国民が果たすべき役割のひとつでもある。

3、住民の希望とニーズを基礎にして
 以上のいくつかの観点とともに、地域の住民ニーズが、新市町村建設の第一の土台にならなければならない。合併協議会の行った「新しいまちの建設計画策定のための住民意識調査結果報告」から読み取れる特に重要なポイントは次の点である。

(1)地域の将来像で、第一位が「工業・商業・サービス業が活発で働く場に恵まれた産業のまち」、第二は「海岸や海浜などの美しい景観や水・緑を生かした自然豊かなまち」、第三位が「高齢者や障害者など全ての人が安心して暮らせる福祉のまち」、となっている。
 この産業と自然と福祉の三位一体がまちの将来像としてもっとも広く期待されているといってよい。
(2)将来望まれる政策では、「工業の振興や地域内での雇用の場の確保」が49.2%、「地域外との行き来が便利になるような幹線道路網の整備」42.1%、「福祉的施設、体制の整備」と「保険・医療施設、体制の整備」がともに34.5%、「子育てを支援する施設・体制の整備」が22.7%となっている。
 また高校生の意識調査では、定住意向は「町内に住みたい」が18.3%、「町外にすみたい」が27.0%である。しかし、この「町外に」という高校生のうち「都会に魅力」を感じるから28.9%だが、「働く場がない」が28.3%、「楽しむ場がない」が20.8%である。つまり、働く場があり、楽しむ場などがあれば地域にいたいという高校生が多いのである。

4、新市町村建設計画の柱 以上のニーズを考えながら、新市町村の実現すべき地域課題、すなわち25年後に先の三位一体を実現するための政策の柱は、次の5点ということになるだろう。

(1)産業が活力あるための先端的・複合的産業政策
・自治的な雇用労働政策の展開
 ハローワーク、民間求人情報企業との連携
 インターネットによる求人、求職情報ネットワーク
 総合相談窓口とその出前
 府職業訓練機構と連携した職業教育
・先端的産業を支援するための情報インフラの整備
(ブロードバンドとCATV、光ファイバー網)
・既存施設の改良などによるインキュベーターの設置
(2)少子・高齢化社会を安心して豊かにする福祉産業の育成と地域福祉の確立
   そしてこれら福祉保健医療のまちづくりを通じた雇用の創出
・先進的な地域福祉計画と個別計画の総合的実施
 社会福祉協議会、農協、大字と区
・高齢者福祉施設を中心とした複合的保健医療施設の拡充
・大字ごとくらいの住民による宅老所、地域デイ
・医療と福祉情報の映像を基礎とした双方向の情報ネットワーク
・子育て支援のための計画と保育所・幼稚園の再構成
・ボランティアセンターなど住民活動の場の整備
・福祉教育(小中学校、高等学校、成年それぞれの)
(3)地球環境を地域から守るための環境産業の育成と地域産業の転換
・バイオ産業の育成と誘致
・バイオマスなど新エネルギー開発
・ベンチャー企業、SOHOの新規立地施策
・建設業、土木事業などの環境を改善する企業への転換
・持続可能な発展についての情報の世界への発信
(4)地域内、地域外の交流を活発化し、こころ休まる観光立地
・海と海浜、海岸の保全と回復
・里山の再生と景観の回復
・食べることを楽しむ
・参加するツーリズム
・帰って来たいこのまちへ
(5)自治的教育と学習のまち
・生涯学習と住民講師   教えられるものが教える
・学校教育の地域化
 (地域を知る、福祉と環境教育、基礎的学力向上の同時実現)
・学校は地域の中心として開かれた施設に
・大学や研究機関との相互協力、そのための人材が定着できる環境整備

5、新市町村建設計画の基礎
 そしてこの5点を実現するための基礎として

(1)小学校区あるいは大字などを単位とする地域住民自治組織の構築。そこへの事務事業の移譲(可能なものから)。自ら考え、自ら働き、自ら出資する。職員は住民として参加し、鍛えられる。
(2)以上の政策の基盤となるITネットワーク、の構築が必要で、これが20年後の地域社会の情報基盤となる。そのための住民の能力開発(ソフト面でのバックアップ)を集中的、かつ継続的に行うことが求められる。
(3)新自治体の財政基盤の強化
(イ)特別職の削減等による余剰財源を活用し、一部は新市町村建設基金に繰り入れる。
(ロ)地方交付税の計算において、合併算定換え(合併以前の各団体の交付税の合算)と一本算定(ひとつの自治体として算定)との差額を、留保財源として常に考慮する。つまりその差額は、新しい政策のための、先ほどの高齢社会政策などの基盤投資と管理に充当する。
(ハ)財政基本計画を、財政再建計画と同様な形式で策定し、毎年度見直しを行い、逐次改訂を行う。
(ニ)政策評価システムのひとつとしてまちづくり指標を策定し、住民に公開する。
   まちづくり指標は住民参加で策定し、政策評価の一部として毎年度住民アンケートを実施する。
(ホ)企画部門や財政・税務・総務部門など合併によって統合され余剰人員が生じる部門から、支所や福祉センターなど現場を手厚くする職員配置をすすめる。
(ヘ)職員の定数削減計画を、原則として欠員不補充で計画的に実施する(例えば10ヵ年で○○人削減など)。その際、毎年度必ず新規職員の採用と、専門性のある部署などへの中途採用を行い、全体の職員構成のバランスと職員集団の能力と信頼性の強化をすすめる。
(ト)ミニ公募債の発行を行う。具体的な、施設あるいは政策実現を掲げた債権を、住民(個人と法人)、及び京都や大阪、東京に出て行った旧住民、および通勤者を対象に発行する。例えば「図書館併設、総合保健医療福祉センター」あるいは「子ども館・特別養護老人ホーム・障害者デイセンター合築のコミュニティーセンター」などに対して、額面1万円から10万円、償還期限5年、利率は国債をやや上回る、という条件で10億円の起債を行う。
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