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指定管理者制度と隣保館


 05年2月18日の全国隣保館協議会近畿ブロック研修会のレジュメに加筆)

指定管理者制度と隣保館               

                         奈良女子大学 澤井 勝

1、改正地方自治法第244条の2

「地方公共団体は公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該地方公共団体が指定するもの(「指定管理者という。」)に当該公の施設の管理を行わせることができる(第3項)。」

 

 この規定は、地方分権改革推進会議の「事務・事業のあり方に関する意見」(200210月)および総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第二次答申」(200212月)にのっとり、20036月の自治法改正により成立したもの。

 

 従来の「公共的団体への」管理の委託制度に変わって規定されたものである。

ただし、現に管理を委託している場合には、施行の日(200392日)から起算して3年を経過する日(200691日)までは従前の例による。

 

その背景としては、公の施設の管理を営利企業に委任する道を開くなど、特にPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業の受け皿をつくり、市場に開放する規制改革がある。行政活動を広く民間の株式会社などの企業活動に開放するもので、NPM(ニューパブリックマネージメント)の方法のひとつである。

 

2、分権改革との関係(2004月以降の国と地方)

(1)国と地方は対等・平等な関係に。

(2)法律の解釈権が都道府県、市町村に。

(3)通達は基本的には失効している。通達行政の廃止。

(4)国の関与は、地方自治法(第245条から245条の8など)に定める種類に限定。

    ・技術的助言及び勧告、資料の提出の要求

    ・是正の要求、勧告、指示

    ・代執行

(5)国の機関委任事務も原則として自治体の事務に(自治事務と法定受託事務)

(6)「指導」の廃止。一般的指導監督県の否定。

(7)都道府県と市町村の関係も同様である。

 

3、指定管理者制度の特色

 参照:三野靖「指定管理者制度と自治体行政の責任」『自治総研』0410月号、同「自治体行政の流動化――指定管理者制度と地方独立行政法人」大阪市政調査会『市政研究』05年冬号、および稲葉馨「局部数法定主義の廃止と指定管理者制度の導入」『自治総研』041月号。

(1)法は多くの制度設計の内容を条例に委ね、総務省も条例準則や詳細な解説通知をしていない。

    ・自治体現場は試行錯誤。

    ・経費削減と経済効率追及のための、単なるアウトソ−シングのための手法として使うことが広がる恐れも指摘される。

    ・つまり、制度の具体的内容は各自治体の条例の定めに委ねられている。

 

(2)公の施設の管理権限を指定管理者に「委任するもの」で、条例の定めによる「行政処分」としての性格を持つとされる。藤原俊博総務省理事官、地方自治038月。

   「法律を根拠として管理権限を委任する方式」であって、「行政権限の委任」である。

 

したがって、

   1、民法上の業務委託や従来の管理委託とは異なり、契約行為ではなく、自治法234条から234条の3の契約に関する規定は適用されない。

   2、一般競争入札の対象とならず、20033月改正の自治法施行令による「工事又は製造の請負の契約」以外のその他の請負契約にも適用されることとなった「低入札価格調査制度」や「最低制限価格制度」も対象とならない。すなわち「総合評価一般入札制度」の意義を、生かすような制度設計(公募条件の条例による設定など)が必要となる。

   3、請負に該当しないために、自治法の兼業禁止規定(92条の2142条)の適用はない。すなわち、条例よって規制すべき問題となる。

 

(3)指定管理者の指定は、

  ・議会の議決をえなければならない、という意味では、重い行政処分である。それとともに、議会および住民の統制下におくこができるという意味では、拓かれた制度となる可能性をもっている。

  ・二回の議会の議決が必要。

    1、指定管理者の指定の手続き、管理の基準、業務の範囲

    2、管理を行わせようとする公の施設の名称、指定管理者となる団体の名称、指定期間

  ・業務の範囲では、経済性・効率性だけではなく、施設の使命(ミッション)と公共性の確保が重要。

・指定の手続きでは、その選定基準をどう定めるかが重要。総務省の通知では、その例示的基準として、「住民の平等利用の確保」「施設効用の最大化」「管理経費の縮減」「管理を安定的に行う物的、人的能力の保有」をあげている。すなわち、公平性、有効性、経済性、安定性、という4つの基準が挙げられている。

・この有効性とは、「アウトカム」指標で図られるべきもので、図書館で言えば、貸し出し冊数というアウトプット指標ではなく、図書館の社会的使命(ミッション)としての機能に対する社会的評価(評価委員会などによる)でなければならない。(実際には、効率化が全面に出るという危惧がある。)(中川幾郎帝塚山大学教授「地域の公立文化施設の課題」『指定管理者制度でなにが変わるか』)

・指定期間の制限が無いため長期の管理運営が可能。

  ・使用許可権限の付与もできる。

  ・利用料金制が採用できる。

  ・指定取り消し権が制限されている。経営が著しく悪化しているなど、公の施設の適正な管理に重大な支障が生じる恐れがある場合、に限られる。

  ・「法人その他の団体」であって、「公共的」との規定はない。任意団体であるボランティア組織でも可である。ただし個人は対象とならない。

 

(4)指定管理者の指定の手続きは条例による。そのために、申請方法や選定基準、選定方法等も条例によるから、選定の対象を限定することも可能である。香川県仲南町では町出資の法人の場合は審議会をバイパスできる規定、北海道美幌町では公募によらず町出資法人を選定対象とすることができる規定を設けている。

 

4、公の施設とは、「普通地方公共団体は,住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という。)設けるものとする。」(自治法第244条)

  ・「住民」とは、地方自治法第10条に定める住民で、自然人・法人を問わず、国籍を問わない。住所要件のみ。

  ・「住民の福祉を増進する目的」を具体的に規定する必要がある。

 

(1)「地方公共団体(指定管理者も含む)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない(法244条第二項、なお、101,2項参照)。」

   ・「正当な理由」 使用料を払わないなど。政治集会を認めないなどは、言論の自由の観点から「正当な理由」とはならない。

    公民館などにNPO団体が有料で行う集会のチラシ等を置くことを「営利行為」だからと拒否することは、違法と見られる。

    「営利行為」とは、事業収益を団体の構成員が「利益」として分配する行為をいう。団体の目的を達成するため、その団体活動に必要なものとして、収益から役員報酬などや常勤職員の給与を支払う行為は、ここにいう「営利行為」ではない。

   ・他の地方公共団体の住民

 

(2)また、「地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取り扱いをしてはならない(同第3項)。」

   ・「不当な差別的取り扱い」 「信条、性別、社会的身分、年齢などにより、合理的な理由なく利用の便宜を図ったり、使用料を減免したりすることは、不当な差別的取り扱いに当る。反対に、合理的理由があれば、差別的取り扱いも認められる。生活困窮者に使用料を減免することと、貴重な図書の閲覧について特定の資格を要求することなどである。」(古川・澤井『逐条研究地方自治法 第4巻』敬文堂、636頁)

 

5、公の施設としての隣保館

(1)「隣保館設置運営要綱 事務次官通知」の性格。

    国庫補助金補助要綱という性格と考えられる。「なお、この設置運営要綱は、国において運営費等について予算措置をする隣保館の事業等を定めるものであるので、念のため申し添える。」(厚生労働省社発0829002号、平成14829日 各都道府県知事、指定都市市長、中核市市長殿  厚生労働事務次官)

 

(2)新要綱での隣保館

 2−1  「隣保館は、社会福祉法に基づく隣保事業を実施する施設として、その事業を実施してきたところであるが、さらなる事業の推進を図るため、別紙の通り、」

 

 2−2(別紙)

   「隣保館は、地域社会全体の中で福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティセンターとして、生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を総合的に行うものとする。」

 

 2−3 設置と運営主体は市町村である。

 2−4 運営の方針

      ・事業計画の策定と事業の実施

      ・関係機関、社会福祉法人、ボランティア等との連携

      ・公正中立を旨とし、広く地域住民が利用できるよう

      ・必要な情報の提供

      ・苦情受付窓口の設置

 2−5 事業

  (1)基本事業

      1 社会調査および研究事業

      2 相談事業

      3 啓発・広報活動事業

      4 地域交流事業

      5 周辺巡回事業

      6 地域福祉事業

  (2)特別事業

      1 隣保館デイサービス事業  障害者及び高齢者

      2 地域交流促進事業

      3 継続的援助事業

 

 2−6 職員  館長と指導職員

 

 2−7 規模・構造・設備

 

 2−8 備品

 

 2−9 (隣保館運営審議会)削除

 

 2−10 関係行政機関との連絡協議  福祉事務所等の関係行政機関との連絡協議会をおこなうと共に、社会福祉法人等とも同様に積極的な連絡協議に務めることとする。

 

6、三位一体改革と補助金の廃止、削減

   隣保館の補助金は一応維持されたが。先の展望はどのように考えたらよいか。

   (三位一体改革は別紙)

 

7、地域福祉、人権啓発の住民交流の拠点、開かれたコミュニティセンターとはなにか。

 (1)・ドロップ・イン

   ・アウトリーチ

   ・議論し討論する場の創設

 

 (2)設置条例のありかた。指定管理者条例の検討。

   ・行政目的を明確に書き込むことなど。