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「地域主権の確立」目指せ

2009年9月4日
『自治日報』コラム自治
    奈良女子大学名誉教授 澤井 勝


 
 09830日、衆院で308議席を得た民主党中心の連立政権が成立することとなった。権力が移動したのだ。新しい中央政府がまずやるべきことは、当面ふたつある。

一つは「国と地方の協議の場を法律に基づいて設置する」ことである。民主党マニフェストに言う「地域主権」は、中央集権と官僚制を脱却して「地域のことは地域が決める」という意味だと理解できる。とすれば、国と地方が対等に議論し、合意を形成し、新しい改革施策をともにつくるアリーナ(舞台)が絶対に必要であり、その設置から話は始まる。

全国知事会の主張に沿えばこの協議会(仮称・地方行財政会議)は「国と地方の役割分担、国による関与・義務づけ、国庫補助負担金、地方税財政制度、地方への新たな事務・負担の義務づけとなる法令・施策等」について協議(合意と決定)を行うことになる。

ところでこのマニフェストに言う「地域主権」のポイントは、「基礎的自治体の強化」と、国と地方の役割分担を補完性原理で再構成するところにある。それを通じて、本来の主権者である市民を主体とした「新しい公」の形成によって、市民自治を形成することを目指す。(「地域主権研究会」の『日本を元気にする地域主権』PHP出版、089月などから)。新しい「地方行財政会議」の協議はこの軸足をブラさないことが大事だ。

そのために、第一に、地方代表はたとえば知事、市長、町村長3名づつ9名、中央政府からは、総務大臣と副大臣、政務官の他、国家戦略局担当、行財政刷新会議担当を委員などとする。このとき、会議の議長は首相(代理としての官房長官)が務めるべきである。それはこの会議が、これからの中央―地方の国家システムを構想し決定していく戦略会犠だからである。第二に、この会議の常設事務局は総務省、財務省、内閣府や、地方6団体などからの出向者の他、民間シンクタンクや大学研究機関の若手を積極的に活用したい。

この「地方行財政会議」は、10月に予定される臨時国会冒頭に設置法を提案し、12月初旬には発足させる。それは例年は1220日前後に決定を見る「地方財政対策」(交付税総額の確保、地方税制改正、地方債計画と国庫補助負担金の整理など)の事前協議を最初の仕事にすべきだからである。そのぐらいのスピードで引っ張ると改革の流れができていく。

さて新しい中央政府のまずやるべきことの二つめは、先にも触れたが、「地域主権確立」のための分権改革(地方分権改革推進委員会の答申の内容を実現し、それをさらに超える分権改革)を進めるとともに、「地域主権の確立」こそが「市民が主体となる地方政治」を確立するものだという観点をより鮮明にすることである。特に、来年の参議院選挙に向けたマニフェストのブラッシュアップの柱にすることによって「地域主権」が市民にとってどういうメリットがあるかをはっきりさせたい。

「分権改革」という言葉は、率直に言って市民のハートを捉えているとは言えない。国と地方が内輪もめしている、と言う感覚で、自分には関係ないことだとばかり関心が薄い。だから政治的用語として「地域主権」という言葉が選択されてきたのだろう。また自民党と経団連などが推進してきた道州制論は、市民不在のまま、上から目線で安上がりの「国のかたち」を構想するもので、市民の議論の対象にもなっていない。「地域主権」が、基礎自治体を重視し、究極的には市民の選択によって「地域のことは地域が決める」ものだとすれば、「分権を通じた市民自治の確立」が市民のハートにひびく言葉なのだ。

そして中期的には、明治21年以来の「地方行政法」の色彩の強い現行の地方自治法を、市民自治の観点から抜本的に改正すべきである。それが現在多くの自治体で実現している「市民自治基本条例」や「市民参加推進条例」、「議会基本条例」、「市民と行政,NPOとの協働推進要項」など、新しい自治立法の時代の「地域主権確立」の法的基盤となる。

なお、民主党マニフェストには、地域主権確立の第一歩として「自主財源を大幅に増やす」としているが、これは「地方一般財源を増やす」でなければなるまい。自主財源を地方税とすれば、税源のない自治体は落ち込むばかりで地域格差は広がる。「地域主権」を確立する財源的基盤は、地方交付税と地方税を包含する「地方一般財源の拡充」である。

 

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