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大阪府市統合と地域主権

           『フォーラム大阪』121号(復刊1号)


                      大阪地方自治研究センター

                          『フォーラムおおさか』121号(復刊1号)

                                         20107月号

 

                       奈良女子大学名誉教授

                       自治総研非常勤研究員

                             澤井 勝

 

 大阪府と市を統合して、東京23特別区のように20の特別区を設置するという「大阪維新の会」の提案は、福島区の市議補選でリアリティが増しているようにも見える。「『大阪都』構想は夢物語ではない」(毎日新聞530日、論説委員人羅格)のように、問題提起として応援する意見もある。一方で朝日新聞の528日付けでは5人の識者が意見を寄せているが、積極的なのは一人だけで、後の4人の方は慎重論か批判的な意見だ。

 都構想の核心は基礎的自治体としては大きすぎる大阪市を廃止して22の行政区を合区し8つの特別区(基礎自治体)に再編するところにある。同様に堺市についても3基礎自治体に再編する。合わせて、豊中市や吹田市など9市を特別区にするとしている。東京都の例にならえば大坂都は水道、交通、消防を担う。また20区の内の固定資産税・法人関係税は大坂都の収入になる。ここでは、大阪市域では公選の区長と議会が新たに生まれるので住民自治の拡充にはなる。しかし、他方でその他の地域の特別区では水道や消防の仕事を失い、該当する税収も失う。自治権行政権と自治財政権は大幅に制限されることになる。

 この大阪市の解体と特別区の設置という発想は地域主権という考え方からするとうまく平仄が合わない。「地域主権改革」とは、「日本国憲法の理念の下に、住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革」であるから(内閣府設置法改正法案=この国会で成立する予定だった)、まず自治体の存廃は住民自身の声を尊重することから始まらなければなるまい。

 自治体の存立はそれぞれの地域における「自治の経験」に依存している。東京都が1943年に都制という法律によって成立しているが、これは実質的には東京市が東京府を吸収したものである。後藤新平など東京市のほうがはるかに自治の伝統と見識があった。ところが今回の大阪都は府が大阪市や堺市を解体し統合する視点で構想されているから、逆になっている。自治の伝統は関一以来、大阪市のほうがはるかにある。

 市議補選で維新の会候補が当選したことで大阪都構想が歓迎されたか。そうではなかろう。維新の会に投票した人々は、そういうかたちで大阪市行政への不満を表現したとも言える。府としては、国の権限を移譲させ、日本を引っ張るセンターとして東京と並立させようとするなら、経済特区構想のほうが手っ取り早いのではないか。大阪の経済が停滞しているのは、大都市制度という自治制度の問題よりは、経済インフラの整備に向けた政策的イノベーションと市民の活気を引き出す方策の停滞に主な原因があるように思える。今のところ大坂都構想は、それをシンボルとした知事による議会多数派形成に意味があるという指摘があたっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

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