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議会基本条例の使い方
  十津川村議会基本条例に即して
                        2015年9月2日
                        橿原ロイヤルホテル会議室
                        奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

  1、          十津川村議会は、平成2212月に議会基本条例を制定し、平成234月に施行  しています。この議会基本条例の制定と施行は、地方分権一括法の施行(平成12年  )によって、二元代表制の一方である議会の役割がより大きくなったことにこたえ  るための方策の一つであるとされています。

 二元代表制とは、20歳以上の住民の直接選挙によってえらばれた市町村長と、これも直接選挙で選ばれた議会が対等な立場で、市町村の法規をつくり、市町村の運営をともに担うことを言うとされています。

しかし、憲法第92条から95条までの地方自治の定めと、それを受けた地方自治法の定めるところでは、市町村長により大きな権限が与えられています。

たとえば、予算を編成し、執行する権限、専決処分をする権限は市町村長に専属しています。こういう中で、直接選挙で選ばれた議会は村長の施策に関する議案と予算の提案を受け、それを審議し、修正し、議決することを通じて、市町村長の施策をチェックすることが主な役割として期待されています。

また、一般質問など議会での審議を通じて、村の施策について意見を述べ、新しい提案を行うことも重要な役割です。

 

議会(議員)と市町村長とは、少しづつ村の状況や今後の在り方について、ズレがあるのが普通です。このズレを大事にして、双方の合意を作り、村の将来をともに作っていくことが求められているといえます。

  

  ○この議会基本条例は、2006年(平成18年)に北海道の栗山町で最初に制定されていますが、その後、広く制定が進み、2014年(平成26年)4月には本村も含め571自治体が制定しています。

 

  

2、          この十津川村議会基本条例の「基本的な狙い」は、これまで十分ではなかった議会活動の村民(選挙民)への公開だといえます。

 

「開かれた議会」をめざし、

第一には、議会報告会を開催すること。

第二は、この報告会も含めた村民との意見交換、情報の交換をすすめること。

第三には、議員研修を充実し、議員間の議論を活発化すること。

第四には、これらを通じて、政策立案と提案能力の向上を図ること。

これらによって、「着実に自主・自立のむらづくり」を進めると、本条例は定めています。

 

3、          十津川村議会は、議会活動を広く住民に公開する一環として、これまで、平成1718年度に村内全戸に光ケーブルが敷設されたのを受け、ケーブルテレビによって議会の一般質問をリアルタイムで各世帯に配信しています。また議会の動きは、毎月の「村報 十津川」内に設けた「議会だより」で随時、情報提供を行っています。

 

4、          議会報告会について

   (1)村議会基本条例の第6条は、「議会は、村政全般にわたる諸課題について、村民と情報交換及び意見を交換するため、議会報告会を開催するものとする。」と定めています。これが「議会報告会の位置づけ」です。

 

   議会報告会は、在籍議員を数人ずつの「班」に分けて、担当することとしている議会が多いようです。しかし、奈良市議会の平成27年第1回の報告会では、全議員が参加しています。市民の参加者も81人とたいへんに多かったと報告されています。

 

また、議会基本条例を制定することなく、あるいは、制定する前に「議会報告会」を開いてきている市町村もあります。さきほど、最初に議会基本条例をつくった栗山町などはそうです。また、同じく北海道の福島町でも町民懇談会を合併問題等で積み上げてきてからの基本条例づくりになっているようです。

 

また、青年団や婦人会など、住民の各層ごとに議会との懇談会的な方法をとることも考えられます。

 

   (2)この「議会報告会の位置づけ」は、もう少し具体的にすると、たとえば伊賀市議会による「議会報告会の基本的考え方」によると次のような7点が挙げられています。

   イ、市民との意見交換の場

   ロ、市民との情報共有の場

   ハ、議会および市政への市民参画の場

   二、市政への民意反映の場

   ホ、意思決定機関としての議会による説明責任を実行する場

   へ、議会が二元代表制の一翼であることの再認識を得る場

   ト、議会に対する理解を求める場

 

  

 (3)議会報告会の「あり方」としては、

     イ、運営は議会が行う 会場の設営、参加村民への案内、記録の手配、当日の会場の整理、報告会の進行管理などを含む。

     ロ、報告会が定着してきた段階では、当該地域の自治会、町内会との共催にしていくことも考えられます。

     ハ、会場設営では、参加者が10人以下など少数の場合は、車座やロの字型での意見交換の場としての設定も有効だと思われます。

     二、会場の後片付けも議員が行う。

ホ、議会活動であるので、議会報告を行う際には、議員個々人の意見、見解は述べないこととする。

 

(4)議会報告会の「内容」としては、

イ、報告会は概ね2時間

 

ロ、次第(一つの例)

 

(1)開会あいさつ

あわせて班の構成員(出席議員)の紹介

(2)議会報告及び質疑応答

 配布資料に基づく報告及び質疑応答

(3)意見・提言等

 議会および市政全般における意見・提言等の聴取

(4)閉会あいさつ

 

 

ハ、班の代表者は、「報告書」を作成し、議長に提出する。

     ・議長は、受理した「報告書」を市議会ホームページに掲載する。

     ・特に重要な要望、提言等は、議長が班長会議などに諮り、市長に文書で報告する。

 

   (5)また東京財団研究員の中尾修氏(元栗山町議会事務局長、第30次地方制度調査会臨時委員)の大阪府堺市や宮崎県延岡市の議員研修での提案では次のように述べられています。

 

 ○議会報告の内容としては、

  (1)議会内部に関するもの(報酬、活動日数、政務調査費など)

  (2)1年間議決した主な議案の審議状況

    (3)総合計画の主な事業内容、または毎年度当初予算の内容と審議状況。

 

 ○開催要項での注意事項

    (1)参加者からの発言は、より多くの方が発言できるよう運営に配慮  する。

    (2)議員の発言は、特定の議員に偏らないよう、お互い良識をもって対応する。

  (3)報告会終了後は、報告会の成果・効果等について反省総括する。

    (4)質問・要望等で重要なものは、議長から村長へ文書等で報告し、その対応を求める。

    (5)会場の設営・準備等は町内会または自治会と合同で行うことがある。議会単独の場合は議会だけで行う。

 

 

  5、条例の重要事項

   ○十津川村議会基本条例では、以下の条文が特に重要だと思われます。

    

2条(議会活動の原則) 議会は村民の代表であることを自覚し、公正性、透明性を重視するとともに、開かれた議会運営に努めるものとする。(開かれた議会)

      第2項 議会は、村民の多様な意見を把握しながら政策形成に資するため、自由な討論の推進に努めるものとする。(自由討議)

    第3条(議員活動の原則)議員は、自己の能力を高める研さんを重ね、議員相互の自由な討議を推進することにより、村政の課題全体について、村民の意見を的確に把握するとともに、一部の団体及び地域の代表にとらわれず、村民全体の福祉の向上に努めるものとする。

    第4条(村民と議会との関係)議会は、議会の活動に関する情報の公開を積極的に行い、村民との情報の共有を推進するとともに、説明責任を十分に果たさなければならない。

    第8条(議会審議における論点情報の形成)議会は、村長が提案する重要な政策、計画、施策及び事業について、議会審議における論点を明確にするため、村長に対し、次に掲げる資料の提出を求めるものとする。

(1)政策等の提案に至るまでの経過

(2)他の自治体の類似する政策等との比較

(3)政策等実施による効果(見込み)

(4)財源措置

(5)その他の必要なもの

    第10条(監視及び評価)議会は、村長等の事務執行について、監視する責務を有する。

      2 議会は、本会議における審議、議決等を通じて、村民に村長等の事務の執行についての評価を明らかにする責務を有する。

    第11条(政策立案及び政策提案)議会は村の政策水準の向上を図るため、政策立案の強化に努めるものとする。

      2 議会は、政策立案を行うに当たっては、第8条各号に規定する事項を村民に公表するものとする。

      3 議会は、条例の提案、議案の修正、決議等を通じて、村長等に対して政策提案を行うものとする。

 

6、議会報告会ばかりではなく、まずは議会情報の公開を進める。

たとえば「村報」内における「議会だより」について

   (1)現在、十津川村では、村の広報紙「村報」内に、「議会だより」が置かれており、一般質問の内容などが載せられている。また、ケーブルテレビで議会での一般質問の各戸への配信が行われている。

 

       このうち、「議会だより」については、

(2)議決内容の報告が簡単に過ぎるきらいがある。たとえば、7月号での報告では、次年度への繰り越し事業中、南和広域医療組合事業費負担金4478万円などは3行程度でその事業内容等を説明したほうが、村民にはわかりやすいと思われる。主眼は、主な議決事件を村民目線で、わかりやすく伝達することである。

そのためには、たとえば、議員による「広報編集委員会」を置き、そこが責任をもって、「議会だより」を編集するようなことが検討されてもよい。それが議会基本条例の趣旨を生かすことになる。

 

 7、 議会による村民への責任をもった広報活動としては、議会報告会、議会

だよりのほか、ホームページの充実、も重要である。福島町議会(人口

4584人、平成277月、議員定数11名)のホームページや議会だよ

りも参考になると思われます。

「福島町議会だより」(年4回発行)の平成278月号の目次を紹介し

ます。議会運営委員会が編集方針を指示し、事務局が編集しています。

 

 表紙

 25頁 時期体制へつなげるため!4年間の議会活動を振り返る

 69頁 平成27年度一般会計補正予算 定例会6月会議 採決態度

 10頁  一般質問

 11頁  文書質問

 1213頁 常任委員会レポート

 1420頁 第5次総合計画策定に関する調査特別委員会

 21頁  会議等出席状況

 2224頁 町内会連合会と議会との懇談会

       意見等を行政に伝え、回答を町内会長へ周知

 24頁 町民の声(福島町商工会女性部長)、議員の雑感、編集後記

 

なお福島町の議会改革は、平成11年度(1999年)の傍聴者への資料

配布から始まっていますが、議会基本条例の制定は、その10年後の平

213月。現在の町議会ホームページの目次は次のようになって

います。

 

 議会のあいさつ・議会概要・議会白書(平成23年度から)・一般質問

等答弁事項進捗状況調査・議会の活性化(1)・議会の活性化(2)・議

会の活性化(3)・映像配信・本会議・協議会・委員会・諮問会議・会議

録・会議、行事予定・議会だより・報道記事・視察受け入れ・議会例規

集・議会用語集・例月出納検査報告・リンク集・通年議会等の試行

     

                                以上