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議会基本条例


 0912月、奈良県十津川村の議会勉強会での提案)

 

 

議会基本条例について

20091218

      於:十津川村議会               

                  奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

1、2000年第一次地方分権改革と議会改革

 

 2006518日、北海道の栗山町議会は全会一致で、全国で初めて「議会基本条例」を可決し、同日施行した。その後、今年6月の天理市議会を含めて091019日現在で73団体が議会基本条例を定めている。都道府県議会9、政令市1、市37、町村26である(『自治体議会改革フォーラム』ホームページから)。

 

 栗山町議会が全国で初めて議会基本条例を制定したのは、それ以前からの議会改革を制度的に定着させることが目的だったとされる。その議会改革は、2元代表制の一つの柱である、地方議会を活性化することによって、2000年から施行された「分権改革」をより活力あるものとするのが動機だった。

 

機関委任事務制度の廃止と議会権限の拡大

 500本近い法律を改正した2000年の地方分権一括法による地方分権改革の中心は、国の「機関委任事務制度」の廃止だった。それまでは、知事や市町村長は公選で選ばれた住民代表という性格と、法律又はそれに基づく政令で命じられた事務を「国の機関として」執行する各大臣の下部機関としての性格をもつ存在だったのである。この国の機関委任事務については、知事、市町村長は大臣の指揮監督下にあり、その事務は議会の統制がおよばないという性格を持っていた。これが自治体の議会を、首長サイドに対して。大きな劣位におくことになった。いわば、機関委任事務的な集権制のもとで、議会全体が国の機関としての首長に従属する傾向があったのである。そこに議会の議論の低調さや、首長への迎合ともいえる自主性のなさの根拠のひとつがあった。ちなみに機関委任事務は都道府県事務の8割、市町村の事務の4-5割とも指摘されていた。

 

 この仕組みが2000年の国の機関委任事務制度廃止によって、同時に廃止されている。議会と首長は制度的には対等になりうる条件の一つが与えられたのである。

 

もちろん、現在の地方自治法はなお首長の優位を保障している。予算編成権と提案権は首長にあるのなどはその最たるものである。権力の分散主義を取るアメリカ連邦制の場合、日本の二元代表制よりもさらに徹底している。すなわち予算編成権は議会にある。大統領は毎年1月の「予算教書」で予算についての考え方を示すにとどまる。これを受けて与党が議会で予算を編成し、審議し決定する。拒否権はあるものの提案権はないのがアメリカの大統領である。その点、同じ大統領制をとる日本の地方自治体の首長は、アメリカの大統領よりはるかに強力な権限を集中していることになる。

 また原案執行権(177条)や専決処分(179条)も首長の優位性を象徴するものである。このような制度上の首長優位主義については、これを正していくかどうかも含めて今後の議論の対象にしていかねばなるまい。

 

しかし、現在の法制度の下でも、機関委任事務制度の廃止などを契機に、議会権限の活用と議論の活性化によって「分権改革」を地域から推進していことも可能である。そう考えたのが栗山町議会の議長である橋場利勝氏であり議会事務局長の仲尾修さんであった(神原勝『自治・議会基本条例論』公人の友社、第V部参照)。

 

2、栗山町の議会改革

栗山町が議会改革として始めたのは、まず情報公開条例の制定(2002年)であった。それは議会改革にあたって議員達がもっとも強く意識したのが、「選挙のとき以外に議員や議会の姿が見えない」という住民からの声であったからである。

 

(1),議会改革はまず議会と町民との関係の改革から始まったのである。この情報公開条例は、議論は議会から始まったが行政もその必要性を認めて、町としての情報公開条例となった。

 

(2),また、インターネットによる議会の「ライブ中継」を庁内34の施設で行う(2002年)こととなった。

 

(3),そして議員が不特定多数の町民に議会活動について報告し、町民からも議会への批判や意見を提案し、町の運営についての提言を行う場所として「議会報告会」を2005年から始めている。

 

(4),政務調査費については使途は詳細に報告され、政策視察などに使われている。

 

(5),町長の予算編成過程では、行財政の枠組みや政策について議会との意見交換を行う。

 

(6),定例会における質問と答弁については、一問一答方式に2003年から変更している。

 

こうした議会改革の積み重ねの中から、議会基本条例としてこれらの改革を安定的に持続させようとの流れが生まれてきたという。

 

 

3、二元代表制の活性化と議会基本条例

 日本の現行の地方自治制度は、強い首長とそれより相対的に弱い議会によって構成されているが、この首長も議会も住民の直接選挙で選ばれている、と言う点では「二元代表制」である。国の場合は、衆議院・参議院の議員を選ぶだけの一元制であり、議員内閣制をとっているのは周知の通りである。

 

 2000年以降に栗山町から始まったと言っても良い「議会改革」は、この二元代表制=機関対立主義の活性化につなげ、地方自治全体の活性化を図るものとして進んできた。その中心は、二つある。

 

一つは、自治体の議会全体が「首長に対する批判機能」を持つことが期待される、と言う点である。

第二は、自治体の議会が持つ「決済機能」である。

 

第一の議会全体が、行政に対して批判機能を持つという点だが、機関対立主義をそのように機能させるためには、議会の討論を通じた「争点の明確化」と「論点の形成」が目指されなければならない。その議論を通じた「争点の形成・明確化」のために、議会における市民参加が求められるということになる。

 

2番目の「決済機能」については、自治体議会の議決について、住民に対して決済をした議会が説明する責任がある、ということを要請していることになる。それが「情報公開」とその手段としての「議会報告会」である。

 

これらの二元代表制の活性化を、議会の側から、法形式として担保するのが「議会基本条例」である。そういう意味でも、この議会基本条例は常に見直しの対象とされ、新しい住民参加や参画のツールや、新しいルールを追加するなど進化することが期待されているのである。

 

4,財政健全化法で強まる議会の役割

 周知の通り、2007年に新財政健全化法が制定され、20084月から施行されている。20099月には2008年度決算による下記の4つの財政健全化判断比率が公表され(公表は20089月末の2007年度決算から行われている)、このうち一つでも一定の基準を超えると、1、早期健全化計画の策定(国の関与なし、議会の議決必要)が義務づけられ、さらに悪化すると2、財政再生計画(従来の財政再建計画にあたる計画、国の関与あり、議会の議決必要)を策定することが義務付けられた。

 

(1)実質赤字比率  一般会計等(普通会計)を対象とした実質赤字の標準財政規模に

対する比率。

(2)連結赤字比率  一般会計、公営企業会計(下水道、病院など)、国保、介護保険、

 など全会計を連結した実質赤字額、および資金不足額。

(3)実質公債費比率 一般会計等が負担する元利償還金、および「繰出金」や「負担金」

に含まれる公営企業債や組合債の元利償還金に当てるもの、債務負担行為のうち公債費

に準ずるもの、一時借入金の利子、などの標準財政規模に対する割合。

(4)将来負担比率  一般会計等の地方債現在高+債務負担行為に基づく支出予定額(P

FI事業に係わるもの、住都公団の建て替え負担金、国営土地改良事業等への負担金、

土地開発公社の土地取得に要する費用など)+公営企業(下水道、病院など)の公債費に

対する一般会計等からの繰り入れ見込み額+組合等の公債費への一般会計等の繰り入れ

見込み額+退職手当支給予定額+第三セクターなど出資法人の負債のうち一般会計等が負

担する見込み額(地方道路公社の借入金の一定部分、土地開発公社に対する債務保証額

および負債の一定額+地方独立法人の繰越欠損金+その他の法人への損失補償の額、等の

標準財政規模に対する割合。

 

 これらの「早期健全化計画の策定」と「財政再生計画の策定」には議会の議決が必要で

ある。このため、議会の審査能力が高めることが求められている。またこれらの財政健全

化判断比率の公開は毎年度、地方自治体に義務づけられているから、その際に議会が十分

にこれら指標について質疑し、議論することが求められていることは当然である。

 

 また、監査委員については、毎年度の決算審査の一環としてこの財政健全化判断比率の

審査を実施することが義務づけられ、監査委員の権能は格段に広がっている。

「総務省としては(08年)9月下旬に全団体の健全化判断比率等を暫定値として公表する

ことを予定しているところである。健全化判断比率等は、監査委員の審査を経た後、議会

報告や住民への公表が行われることとされているため、監査委員による審査については、

従前の決算審査の時期を早めることを含め、健全化判断比率や資金不足の審査時期との相

互調整が必要になることがある。

また、従来の決算審査にない審査項目が多くあることから、監査事務局と財政部局が事務作業についての十分な共通理解を得た上で、連携を図ることが重要となる。」(総務省財務調査課、「地方公共団体財政健全化法について」平成2064日)。

 

5,議会改革の進行と討論の場の設定

 ところで、自治体議会はこの財政健全化法に基づく議決という事態にいたる以前に、そ

の本来の権能に基づき、予算及び決算の審議を通じて議会としての統制を行うことが期待

されている。しかし、実際にはその審査能力は十分とは言えず、一部先進的な議会以外は

市民の付託に答えきれていないのが実情だと言わざるを得ない。

 とは言え、この議会による予算・決算審査能力を向上させることも含めて、自治体議会

の改革が進んでいる。市民や研究者による「自治体議会改革フォーラム」が行った「全国

自治体議会実態調査結果」によると回答のあった1508議会のうち、53.9%がなんらかの形

で議会改革を実施し、うち35議会は常設の議会改革推進組織を設置している(『自治日報』

0951日号)。

「議会基本条例」はこの3月末までに54議会(6月末で73)が制定済みで、他に74

会が制定を検討している。

執行部の「反問権」を条例や規則で定めている議会は47議会。議員間の「自由討議」を要項や規則でルール化しているのが43議会ある。議会改革の火付け役である北海道の栗山町議会の取り組みで広がっている住民への議員による「議会報告会」は54議会で開かれている。

 三重県議会の「政策討論会」のように、政策提案のための調査・検討の場を委員会とは

別に設けている議会は29ある。

 いずれにしても、議会改革に向けての議員同士が議論する場の設置、「政策討論会」の定

期的開催、住民への議会報告会の開催、などは前記の財政指標の審査に向けた基本的な力

量の形成につながる重要な取り組みである。特に住民への「議会報告会」は重要である。

一般に人は誰でも、だれかに説明をしようとすることで、説明内容の理解が確実なものと

なる。ギリシャの数学者で哲学者であるアリストテレスは、教えることで自らの哲学の内

容を発展させたと言われているが、それはいつでも真実である。

 議員もまた、市民に説明を行うことで、説明すべき問題の理解が不正確であったり、論

理が飛躍していること、そのために説明が十分にできないことに気がつくはずである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(付属資料)

天理市議会基本条例

平成21年6月23
条例第20

目次

前文

第1章 総則(第1条)

第2章 議会及び議員活動の原則(第2条―第4条)

第3章 市民と議会の関係(第5条―第7条)

第4章 議会と行政の関係(第8条―第12条)

第5章 自由討議の保障(第13条・第14条)

第6章 委員会の活動(第15条)

第7章 政務調査費(第16条)

第8章 議会及び議会事務局の体制整備(第17条―第20条)

第9章 議員の政治倫理、身分及び待遇(第21条・第22条)

10章 最高規範性