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通知の正しい使い方
『介護保険の市町村(保険者)の指導について(通知)』の問題をめぐって

(初出:自治総研00年6月号 コラム)


注釈 (02年7月12日)

 2000年4月の地方分権一括法(475本の法律を一括して改正する)と、新地方自治法の施行によって、従来の通達はその効力を失っている。02年7月現在で、役所のデスクに置かれている通達は、その多くが「技術的助言」の域を出るものではなく、執務参考資料という性格であると思って差し支えない。参考資料としては有益な資料であるから、大いに主体的に利活用することは望ましい。しかし、それに従うべき「指導文書」ではない。
 言うまでも無く機関委任事務制度の廃止にともない、国(各省庁のこと)と地方自治体、国と都道府県、国と市町村、そして都道府県と市町村の関係は「上下主従の関係」から「対等平等の関係」となっているからである。そこには「指導する・指導される」という関係はないのである。
 新地方自治法によって認められる国の地方自治体への関与の類型には「指導」という関与形態はないのである(自治法第245条(関与の意義)。指導通達といわれた文書は、その意味で失効している。国と自治体は、「相談しあう関係」になっている。
 この劇的変化は、しかしながら、なかなか浸透していない。それは、なお「指導しよう」とする国の各省庁の担当者の意識改革が進まないこと、自治体側にも強く「指導を求める意識と行動」があることによっていると思われる。ただ変化は国の各省庁のほうが早いようで、当初見られた誤解は徐々に解消されつつあるようにも見える。むしろ自治体側に認識の遅れが目立つ。

 そこで、残念ながら00年6月に指摘した問題を、以下に紹介しておきたい。このような指摘が不要になる日が早く到来することを強く期待しながら。


 厚生省は、都道府県知事宛に2000年の5月12日づけで老人保健福祉局長名の通知を出している。この通知は以下の観点から不適法であり、訂正されなければならないものである。そして各市町村は、この通知が、「指導」といっている行為が、実は「技術的助言」であり、「資料提出の求め」に過ぎないものであることを確認したうえで、対応すればよい。都道府県の担当者は、この「指導」が、市町村との間に上下関係をつくるものであってはならないことを行為規範として確認すべきである。その上でこの通知を利用するかどうか、主体的に判断することが求められる。

 この通知は、市町村の介護保険事業が適正かつ健全に運用されるように、「保険者事務に関する事項について周知徹底させること」を方針として、都道府県が「保険者を指導する」ために発せられたもののようだ。

 特に介護保険に関する事務処理は、厚生省自身の対応が遅れ、その上にくるくる変わるために、大混乱のまま実施過程に突入することになったという事情もあって、なお未整備であるから、このような「指導」(介護保険法第5条)をせざるをえないということも理解できないことではない。しかし、それを、通知の形式も仰々しく、「指導体制」、「一般指導」、「合同指導」、「実施回数」、「指導の重点事項」、「講評」などとするのは過剰な関与で、分権改革に背馳する不適法な関与である。

 この厚生大臣と都道府県の市町村に対する「指導」の法的根拠は、本通知自身によれば、介護保険法第5条と同法第197条、そして地方自治法第245条の4だとされる。

 介護保険法第5条は、国が「必要な各般の措置」とる権限を定め、都道府県が「必要な指導及び適切な援助をしなければならない。」とする。第197条は、報告を求めることができる規定である。このふたつの規定だけを読めば、本通知のような従来型の指導を許容しているように読むことも可能である。

 しかし、もうひとつの根拠である地方自治法第245条の4は、「地域の事務」に関して、「各大臣又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関は、その担任する事務に関し」、「技術的助言若しくは勧告」をすることができる旨、ならびに「資料の提出」求めることができる旨、定めた規定である。この「助言等」によっては、法律上の義務は生じない。

 したがって、次の規定が生きる。自治法第247条第3項、「国又は都道府県の職員は」、市町村などが「助言等に従わなかったことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならない。」この場合の「助言等」には、なお個別法に残る「指導」などの規定を含む。

 本通知も、このように地方自治法上の根拠規定をかかげなければならず、「指導」の内実が「技術的助言」にとどまることを表明せざるを得ない。つまりこのような「通知」を読むためには、自治体の各係には新地方自治法を必ず備え、参照しなければならないのだ。

(さわい まさる・奈良女子大学)

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