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分権改革と地方自治体

1998年2月12日
奈良女子大学 澤井勝


目次

はじめに 経過と今後の見通し
1、勧告の基本認識とビジョン

Tその背景とビジョン(中間報告と第二次勧告)
U目指すべき分権社会の姿
1、自己決定権の拡充
2、新たな地方分権型行政システムの骨格
3、地方公共団体の自己責任
2、眼目としての機関委任事務制度の廃止
  法定受託事務  自治事務  通達による指導監督の廃止
  有権的解釈の存在の余地なし  一般的指揮監督の廃止
3、国と地方公共団体との間の紛争処理機関 勧告又は通告  調停  訴訟の提起
4、具体的な事務に即して考えてみると
5、市町村と分権改革
6、府県と分権改革
7、国庫補助負担金の整理(合理化と地方税財源の充実確保)
8、都道府県と市町村の新しい関係
9、地方公共団体の行政体制の課題
10、終わりに  自治事務化  権限委譲  補助金改革  税財源移譲の課題

はじめに 経過と今後の見通し
(1)地方分権大綱方針(94年12月25日閣議決定)から地方分権推進法へ(95年5月19日成立、7月3日施行)
(2)地方分権推進委員会(95年7月設置)
(3)中間報告(96年3月)
(4)勧告

第一次 96年12月
第二次 97年 7月
第三次    9月
第四次   10月
(5)分権推進基本計画(98年6月)
(6)立法及び改正(99年1月通常国会)
(7)分権一括法施行(00年4月)

1 勧告の基本的認識とビジョン
I その背景と理由(中間報告、IIも)

1 中央集権型行政システムの制度疲労
2 変動する国際社会への対応
3 東京一極集中の是正
4 個性豊かな地域社会の形成
5 高齢社会・少子社会への対応
II 目指すべき分権型社会の姿−−地方分権推進の目的・理念と改革の方向
1 自己決定権の拡充−−規制緩和と地方分権
2 新たな地方分権型行政システムの骨格
第1に、国と地方公共団体の関係を上下・主従の関係から対等・協力の関係へ。
そのために機関委任事務制度を廃止。
第二に、国の関与を最小限に縮小。
国と地方公共団体の間の調整ルールと手続きを公正・透明なものに。
第三に、立法統制、司法統制を中心に。行政統制を可能な限り縮小。
3 地方公共団体の自治責任
  • 議会
  • 職員
  • 住民参画
  • 地方公共団体は鋭敏かつ誠実に応答する責任を負う

4 地方分権型行政システムに期待される効果−−分権型社会の姿
  • 知事市町村長、議会の立場の明確化
  • 行政サービスの総合化、個性化。自治体間の差異の拡大。
  • 官官折衝のコスト削減

2 眼目としての機関委任事務制度の廃止
(1)機関委任事務の罪
包括的指揮監督権と上下・主従関係。長の二重性格。
責任の不明確。時間とコスト。都道府県と市町村の関係も。

縦割り機構の末端までの貫徹。(予算と補助金)
「地方分権推進法の趣旨に即して、国と地方公共団体との関係を抜本的に見直し、地方自治の本旨を基本とする対等・協力の関係とする行政システムに転換させるため、この際機関委任事務制度そのものを廃止することとする。」
(2)機関委任事務制度を廃止。現行の機関委任事務は次のように整理する。
1 事務自体を廃止する(ごく少数に限定)。
2 「法定受託事務」を設ける。
「事務の性質上、その実施が国の義務に属し国の行政機関が直接執行すべきではあるが、国民の利便性又は事務処理の観点から、法律又はこれに基づく政令の規定により地方公共団体が受託して行うこととされる事務」
3 法定受託事務として整理したもの以外の事務は、全て「自治事務」とする。
(3)561(法律の数)の機関委任事務を整理。自治事務に区分したものは二次勧告までで384件、法定受託事務260件(うち111件はメルクマール7)。第四次勧告までで、自治事務は都道府県で707件、
指定都市42件、中核市16件、政令で定める市29件、保健所設置市39件、市町村89件、その他9件。その他政令市への委譲が7件、中核市が10件、20万以上の都市へは12件、全ての市に4件、すべての市町村に8件など。
(4)「地方公共団体の行政に関連して制定される新たな法律(及びこれに基づく政省令)は、「地方自治の本旨」に適合し、かつ、「国と地方の役割分担の原則」に沿ったものでなければならない。」
 その「法律(及びこれに基づく政省令)は、「地方自治の本旨」及び「国と地方の役割分担の原則」に基づいて、これを解釈運用しなければならない。」
(5)その他大きく変わる点
1) 通達による指導監督の禁止(報告の徴収や技術的助言に限定) 2) 一般的指揮監督権の廃止 3) 有権的解釈はなくなる、解釈は万人に開かれる 4) 法律を所管する省庁は違法となる限界を示すことはできる
(6)新しい政府間の調整ルール     
1 法定主義の原則  国の関与の根拠やあり方は法律又はこれに基づ政令に定めなければならない。
2 一般法主義の原則 国の関与の基本類型は一般ルール法による。
3 公正・透明性の原則 書面主義、及び審査基準、標準処理期間の設定など
(7)国の関与の類型
1 自治事務に関して
1)技術的助言・勧告、報告徴収
報告徴収基準で必要なものは通達によらず法令(告示)に定める法令の解釈を示すことができる
2)事前協議、合意(又は同意)
合意を要するものとして例外を限定列挙
国の税制上の措置等に係わる計画(山村振興計画、地方拠点都市など7本)
その他個別法で(土地利用基本計画、農業振興地域の指定基準など11本)
3)是正措置要求(法令違反、著しく不適正かつ明らかに公益を害している場合)
指示(災害発生防止のための高圧ガスの取り締まり、森林病害虫の駆除など16本)

2 法定受託事務に関して

1)技術的助言・勧告、報告徴収
2)事前協議
3)許可・認可・承認
4)指示  法令等の解釈に関する一般的な指示も
5)代執行 裁判所又は第三者機関に裁判又は最低を求めてから

3 国と地方公共団体との間の紛争処理機関
 「 対等・協力を基本とする国と地方公共団体との間で万が一紛争を生じた場合には、国が優越的な立場に立つことを前提とした方法によりその解決をはかるのではなく、国と地方公共団体の新しい関係にふわしい仕組みによって係争を処理することが必要となる。この仕組みは、地方公共団体に対する国の関与の適正の確保を手続き面で担保するものであると同時に、地方公共団体が処理する事務の執行段階における国・地方公共団体間の権限配分を確定するという意義をも有するものであるから、対等・協力の関係にある国と地方の間に立ち、公平・中立にその任務を果たす審判者としての第三者機関が組み込まれているものであることが必要である。」

(1)〇〇〇に第三者機関として国地方紛争処理委員会を置く
(2)会長、委員、は常置。必要に応じて専門調査員
(3)庶務担当職員
(4)対象は技術的助言、勧告等を除く国の関与
(5)審査及び勧告
(6)審査申出人は国、地方から
(7)市町村に対する都道府県の関与については自治紛争調停制度を活用
(8)国は地方公共団体が指示、是正措置要求に従わないとき申し出でができる
(9)審査手続きは行政不服審査法
(10)勧告又は通告
(11)法定受託事務の代執行は現行制度に準じる(係争処理員会の審査。勧告の対象外)
(12)職権による調停
(13)訴訟の提起 地方公共団体の長による不服の訴え(関与の取り消し等)
    国の行政機関の長による違法確認の訴え
(14)機関訴訟の一として行政事件訴訟法による
(15)地方公共団体の区域を管轄する高等裁判所から
(16)条例の違法審査の仕組み

4 具体的な事務に即して考えてみると

(1)職安法第11条(市町村長の職務) 法定受託事務に整理
   市町村長は、公共職業安定所長の指示に従い、左の事務を行う。
一 公共職業安定所に直接申し込むことのできない求人又は求職の申し込みについて、これを公共職業安定所に取り次ぐこと。
三 公共職業安定所からの求人又は求職に関する通報について、これを知値周知させること。
(2)準用河川の管理 市町村の自治事務として整理(第一次勧告)
河川法100条、「一級河川、二級河川以外の河川で市町村長が指定したしたものについては、この法律中二級河川のに関する規定を準用する。施行令56条、57条
(3)悪臭防止法、振動規制法、水質汚濁防止法の改善命令等 市町村の自治事務として整理

5 市町村と分権改革

(1)市町村での機関委任事務の自治事務化を
  • 条例による規制
  • 住民参画による自治事務の構築 都市計画、公園、都市施設、福祉サービス、環境行政と公害規制
  • 料金徴収における自治
  • 雇用労働行政
(2)同時に府県における機関委任事務の自治事務化(土地利用基本計画の策定、農業振興地域の指定、保安林の指定、地域森林計画の樹立、林地開発許可、都市計画区域の指定、など)を推進する共同責任を担うこと
  • 具体的に市町村に対する県の「指導と命令の関係」を改めるための制度改正に向けた提言と協議を
(3)次の段階として府県の権限を市町村の自治事務に(小規模町村の課題)
   府県と市町村関係も対等・協力関係となる。
(4)法定受託事務の自治事務化を進めること
(5)そして内なる分権化(例えば)
小学校区と中学校区
地域のテーマの明確化と優先順位
住民組織、農協や生協などNPOの連携、住民事業への支援
事務事業の整理と再構築
企画機能の確立(調査、研究部門の再編成)
法制部局の自立、強化(解釈権の確立、自主立法能力の強化)
情報公開と住民参加(住民の知らない保健福祉計画)
議会事務局の強化

6 府県と分権改革
 (1)機関委任事務制度廃止で府県が最も大きい影響を受ける
 (2)700件以上が自治事務となる 府県は初めて自治体になる可能性を得た
 (3)市町村との関係も対等・平等に
 (4)中間機関から行政責任を果たしうる自己統治組織に
 (5)県民が主体

7 国庫補助負担金の整理合理化と地方税財源の充実確保
 (1)国と地方の財政関係の基本的見直しの方向と地方経費のあり方
 (2)国庫補助負担金の整理合理化
 (3)地方税源の充実確保
 (4)地方交付税の改革
 (5)地方債の許可制度の廃止
    起債許可制限比率および地方財政再建促進法に代わるもの
    地方債資金の確保に向けて

8 都道府県と市町村の新しい関係
  役割分担を明確化し、対等・協力の関係を新たに構築
 (1)市町村優先
 (2)関与は最小限に

9 地方公共団体の行政体制の課題
 「地方分権の推進は、地方公共団体の自己決定権を拡充する。そして、自己決定権の拡充は、必然的に自己責任の拡大を伴うことになる。地方公共団体の議会の議員及び首長、並びに地方公共団体の住民は、このことを明確に自覚し、この新たな役割を担うに相応しい地方公共団体の行政体制の整備確立に勤めるべき責務を有する。」

(1)行政改革の推進 行政改革大綱の策定と数値目標の設定
(2)定員管理、給与の適正化
(3)人事交流、育成
(4)住民への情報提供
(5)市町村合併と広域行政の推進
 「地方分権の効果を偏く全土に浸透させるためには、基礎的地方公共団体である市町村の行財政能力の充実強化が不可欠である。そのためには、市町村の規模の拡大や能力の向上も重要な課題であり、市町村の自主的合併を一層強力に推進する必要がある。」
(6)地方議会の活性化
(7)住民参加の拡大・強化
(8)公正の確保と透明性の向上

10 地方分権大綱(機関委任事務の廃止後における地方公共団体の事務のあり方及び一連の関連する制度のあり方につての大綱 97年12月24日 自治省)
 地方分権推進計画の作成及び関係省庁における所管法令の改正作業に資するため、自治省として、機関委任事務制度の廃止後の事務のあり方等について、地方分権推進委員会の勧告に即してとりまとめたもの。

  • 法定受託事務も地方公共団体の事務として明確に整理
  • 勧告との違い 国地方紛争の紛争処理手続き

11 おわりに
(1)自治事務化を実のあるものにすることが主たる課題となる
(2)市町村への権限委譲の推進
(3)国庫補助金改革を進める
(4)税財源移譲の主張の強化
(5)中央省庁の再編
(6)分権は現場から

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