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         ユニットケアはできている?
                             初出:『なら自治研』第121号、2017年10月
                                                  澤井 勝

 最近、ある市の介護保険運営協議会の仕事の一つとして、地域密着型デイサービスを訪問してサービスの内容など、スタッフからお話を伺う機会があった。2階建ての空き家を改装して、1階部分のみを使う。登録者18人(一日8人から10人)を6人のスタッフで9時半から16時までケアし、その後は自宅まで車で送るという。昼食は一人が担当して調理して提供する。施設長は20年以上、特養やデイサービスなどで経験を積んできたケアマネージャーだという。

このとき昼食などはスタッフと一緒にとるんですかと聞いたら、別にするという。そこで「ユニットケアの考え方で言うと、スタッフと一緒に食事するとか、利用者にも調理や配膳などに参加してもらうとかは、どうなんですか」と尋ねたところ、「そうですね、考えてみます」とのことだった。「ユニットケア」という言葉自体は伝わったようだ。ただこの言葉は、デイサービス事業の現場では、ちょっとなじみにくいかもしれない。

「ユニットケア」とは、特別養護老人ホームや老人保健施設などの旧来の高齢者施設の介護を改善しようとして、2000年ごろから実践がおこなわれ、理論的な提起も行われてきた。2000年8月に筒井書房から『ユニットケアのすすめ』が出ている。著者は外山義(当時は京大大学院教授、著書に『クリッパンの老人たち スウェーデンの高齢者ケア』、『グループホーム読本』など、グループホーム導入を先導し、ユニットケアを進めた。02年8月に53歳で没)、辻哲夫(厚生省老人福祉課長を経て厚労省事務次官、現在は東大の高齢社会総合研究機構特任教授)、大熊由紀子(元朝日新聞記者、『寝たきり老人のいる国、いない国』)、武田和典(1999年設立で現在も活動中の「特養・老健、医療施設ユニットケア研究会」の代表」)、など5人。

それまでの特別養護老人ホームなど施設介護は、8人部屋や4人部屋など混合室で、介護者の都合で、集団的な処遇が行われ、一斉起床、一斉食事、入浴時期も職員の都合に合わせて順番に、など一人一人の生活のリズムを無視したものであった。個室もなく、プライバシーはなかった。病院の病室と同じだったといってよい。

これを変えていったのがスウェーデンの福祉を6年間にわたって見てきた外山義であり、収容施設ではない家(いえ)としてのグループホームを提案し、またユニット型特養をつくっていった。1996年に富山県の宇奈月町が外山の設計と監理による「特養おらはうす宇奈月」を建設したが、これがユニット型特養の原型といってよいのだろう。ユニット型特養では、たとえば100人の入居者を10人程度のユニットに分け、それぞれ10の個室と共同のスペースである食堂リビングとキッチン、ユニットをつなぐ空間で構成される。外山の設計によるグループホームではおなじ1996年の岡山県笠岡市の痴ほう性高齢者グループホーム「炉端の家」が早い。グループホームは個室と食堂、キッチン、リビングで構成される。2000年には千葉県八街市に生活クラブ生協の特養「風の村」を建てている。

 ユニット型特養やグループホームは、「入所」する「施設」ではなく、「入居」する「家」である。厚労省は2001年以降に建設される特養は、全部を個室としたユニット型とするよう指導している。しかし、建物は個室とリビング、食堂で構成されても、職員のほうのケアが、従来からの流れ作業で集団処遇から抜けられない場合が多いようである。そのために、一般社団法人「ユニットケア推進センター」が活動しており、現在も全国各地で職員やリーダー向けの研修をおこなっている。

 ユニットケアという個別ケアのかたちを今まで見てきた複数の事例などからまとめると次のようになる。

個室にそれまで使っていた家具や鏡や化粧道具をもち込み、表札をつけるなどのしつらいを設ける。自分用のトイレがある場合もある。部屋には鍵がかかる。職員も各ユニットごとに同じ職員が常駐するので、顔なじみになり、利用者のそれまでの生活の歴史や家族との関係など課題を共有できる。

朝食はそれぞれの起床時間に合わせて始まる。ユニットでご飯を炊き、みそ汁を作るので、いいにおいが漂う。盛り付けもユニットで行い、食器洗いもするので、利用者が手伝うことがいろいろある。若いスタッフが教えてもらうこともある。お風呂も一人づつ好みに合わせて入浴できる。地域とのつながりもあり、通いなれた理髪店や美容院にも行けるし、なじみの居酒屋にもいける。コンビニで買い物もできる。喫茶店などが施設内にあり地域の住民も利用できるところでは、自然に地域の住民との交流が生まれる。ユニットではビールやお酒を飲むことができる。施設内に地域に開かれたサロンをもち、手芸などのサークルも定期的に活動しているので、参加は自由だ。園庭に野菜畑や花壇をつくり、入居者が世話をする。施設内にリハビリデイサービスがあれば、定期的に目標を立ててリハビリに励むこともできる。職員もユニフォームではなく、リビングで利用者と一緒に座って話をしていると、誰が利用者かすぐにはわからない。走っているスタッフはいない。呼び出しブザーはほとんど鳴らない。笑い声が絶えない。窓は開けてあり、良い風が流れていく。周囲の緑がよく見える。

 このようにユニットケアの考え方とは、それまでの生活の継続を基本にし、その人のペースでくらしていくことを支援することだ。それによってそれぞれの人の尊厳を保つことを基本に生活を一緒に組み立てるということに尽きる。このようにして、施設にいても要介護度4から2年ほどで介護保険を卒業する例も生まれている。旧来型の特養や老健でもこのユニットケアの考え方を実現することはできる。

今後の介護事業所のサービスの評価は、改めてこのような原点に立ち戻ることが求められている。

 

 

 

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