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地域福祉計画とコミュニティ・ソーシャルワーカー(2013年3月)

コミュニティの再生と創造を目指して
  地域福祉計画とコミュニティ・ソーシャルワーカー
                                              2013年3月15日
                     大阪市政調査会 自治体セーフティーネット研究会報告
                                  奈良女子大学名誉教授  澤井勝
   
まえがき
 ここでは、このコミュニティの再構築という政策課題に対する、福祉施策の領域からの有力な政策ツールとして「地域福祉計画」とそこにおける「コミュニティ・オーガニゼーション」、「ソ-シャルワーク」、「コーディネーター機能」に着目したい。特に、介護保険制度が始まって12年たち、この制度が発足時には予定していなかった地域福祉へのインパクトが明らかになってきている点が注目される。具体的には介護保険法による地域支援事業を担う施設として介護予防のケアプランづくりが主に期待されていた「地域包括支援センター」(介護保険法第115条の46)が、地域での高齢者、障害者、一人親家庭、虐待される子ども、DV被害者などの総合相談機能を担うことが求められていることに注目したい。そこで動き出しているコミュニティ・ソーシャルワーカー機能が、新しいコミュニティを形成する、起点の一つになりつつあるように感じられるからである。
 
1、 住民を地域福祉の参加主体として位置づけた「地域福祉計画」

 社会福祉法第107条に「地域福祉計画」について規定がおかれたのが2000年6月である。このとき、従来の社会福祉事業法が改正されて、社会福祉法と名称を改めている。この改正においては、まず、その第1条(目的)で、この法律は「社会福祉を目的とする他の法律と相まって、福祉サービスの利用者の利益の擁護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という)の推進を図る」と改正の主眼点が示されている。
 続いて第4条で(地域福祉の推進)として、「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。」と規定している。
 この条文のポイントはまず、「地域住民」と「社会福祉事業者」と「社会福祉に関する活動を行う者」とが「協力して」、「地域福祉の推進に努めなければならない」としているところである。
 この場合の地域住民とは、具体的には「自治会・町内会」というかたちである地域住民組織の参加者であろう。それはまた、自治体単位の社会福祉協議会が組織してきた「校区福祉委員会」「福祉推進員」や「いきいきサロン」を担い、配食サービスを支え、またそこに集う利用者、参加者である。つまり小地域ネットワーク事業への参加者である。また、各種のボランティア(手話サークル、読み聞かせサークル、スポーツ少年団など)団体があり、難病支援のNPOなどNPO組織も地域住民の重要な構成メンバーである。
 また「社会福祉を目的にする事業を経営するもの」とは、社会福祉法人のほか、介護保険事業者(株式会社など営利法人やNPO法人など)など営利、非営利の事業者であり、「社会福祉に関する活動をする者」とは社会福祉協議会や民生・児童委員、校区福祉委員会などを指すものと思われる。
 つまり地域福祉の主体である担い手の一つは「地域住民」であることが、この社会福祉法によって初めて規定されたのである。それまでは地域住民は社会福祉事業者の福祉サービスを利用する者であって、それを提供する主体ではなかった。したがって、地域福祉計画は、サービスの受給者としての「地域住民」を、サービスの担い手としての、主体としての「地域住民」に再組織していくための計画であることが求められていたはずである。このことが地域福祉計画の中心に据えられているかどうかが一つのポイントである。

2、 コミュニティ・オーガニゼイションと社協
 
 つまり「地域住民を組織化」し、それと市町村の福祉担当者、社会福祉事業者との協力関係をつくっていくための計画でなければならかった。言い換えれば、「コミュニティ・オーガニゼーション」(CO)の展開を提案していたのである。
 「コミュニティ・オーガニゼイション」(CO)とは、「地域に顕在・潜在する諸問題を、住民の主体性や問題解決力を中心に、地域に存するフォーマル、インフォーマル資源の動員、開発などといった組織化活動によって解決・解消しようとする専門技術」である(加山弾『コミュニティ・オーガニゼイション理論形成の系譜』東洋大学社会学部紀要47-1号、2009年)。アメリカやイギリスで19世紀末から始まり、戦間期から戦後にかけて展開されてきた。
 しかしこの「コミュニティ・オーガニゼイション」は「社会福祉協議会」(全国社会福祉協議会、都道府県社会福祉協議会、市町村社会福祉協議会)が目指す本来の機能であったはずである。我が国の社会福祉協議会は1949年11月のGHQの通達、「社会福祉行政に関する6項目」が出され、その5番目に「全国レベル及び県レベルで社会事業団体や施設の社会福祉活動に関する協議会を設置すること」から始まったとされる。これが1951年の社会福祉事業法の成立となり、上から社協が作られていく。そして、1962年には「社会福祉協議会基本要項」が全社協によって作成されている。ここで社協の機能として、「地域の福祉に欠ける状態を明らかにし、適切な福祉計画を立て、その必要に応じて地域住民の協働の推進、関係機関・団体・施設の連絡と調整、及び社会資源の育成などの組織活動を主たる昨日とする」とされていた。ここに示された機能論は、コミュニティ・オーガニゼイションの理論に沿ったものである。(『社協再生』8頁)
 ところが、この「社会福祉協議会」に期待されたコミュニティ・オーガニゼイションの機能とその推進主体が、社会福祉基礎構造改革の推進と介護保険制度の導入に伴い、「市町村」による「地域福祉計画」の策定と推進というかたちに置き換えられているとも言える。
 言い換えれば、社会福祉協議会の機能として「コミュニティ・ワーカー」としての地域リーダーの育成と福祉コミュニティそのもの形成が期待されていたとも言える。ところが1980年代以降、地域福祉の重要性が明確になるなかで、具体的には「街かどデイ」や「会食サービス」「いきいきサロン」という「地域福祉サービス」の提供主体(事業社協化)になり、さらに2000年以降はかなりの社協が訪問介護など介護保険事業者となることによって、このような必要ではあるが部分的な事業に偏ってきたのではないか。それは同時に。市町村行政が安易に社協を、これら在宅福祉推進事業者という下請事業者として利用してきたことでもある。この結果、間接的な組織化活動(コミュニティ・オーガニゼイション活動)が対照的に、希薄になってきたことの裏返しだったということもできる。
 社会福祉協議会の方では、「地域福祉推進総合計画」「地域福祉活動計画」を策定してきている。堺市社協の場合は、「第一次地域福祉推進総合計画」を平成5(1993)年に策定し、その後、5年ごとに改訂してきている。そして平成21(2009)年には、堺市の第二期地域福祉計画と同じテーブルで合同で策定するところまできた。
 しかし、多くの市町村では、社協の計画と地域福祉計画とは必ずしも整合的に作られてはいないようだ。このことは社協側からすると、市町村の地域福祉計画に付き合わせられているという見方が少なからずあるように見受けられる。このことと行政側が、「コミュニティ・オーガニゼイション」機能を理解しないまま、「コミュニティ・オーガニゼイション」の領域を、地域における社協と十分な意思統一なしに(自覚していないが)市町村地域福祉計画の策定と推進というかたちで侵害していることにもあると思われる。
 一方では、社会福祉法のレベルでの「地域福祉計画」の内容は、この「コミュニティ・オーガニゼイション」という理念において、具体的な政策ツールにはなっていなかった。少なくも行政側がそういう理解に立つような助言は行われていない。少なくもそう読み取ることはむずかしい。条文では次のとおりである。
 「第107条 市町村は、(中略)地域福祉の推進に関する次に掲げる事項を一体的に定める計画を策定し、策定し、または変更しようとするときは、あらかじめ、住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映するために必要な措置を講じなければならない。
 一、地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項
 二、地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項
 三、地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項」
 
 ただ、後に展開するように、2005年の介護保険法の改正によって、2006年から「地域包括支援センター」が各市町村に設置されてきたことで、この「コミュニティ・オーガニゼイション」機能の重要性が強く意識されるようになったと言える。それはまず「福祉コーディネーター」機能の重要性として認識されていくと考えられる。
 と言うのは、コミュニティ・オーガニゼイションの中心となる技術は、あまり明示的ではないが、諸機関、諸機能のネットワーク機能の発展だからである。それは、すなわちそれら諸機関や諸機能を担う専門職や当事者のネットワークをつくり、それを運用する(コーディネートする)ことだからである。

3、 福祉政策の総合化 縦割り行政の克服の方向性 協働の推進

 さらに第6条(福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務)において、都道府県と市町村は、国、社会福祉を目的とする事業の経営者と協力して、「社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう」、必要な措置をとるよう求められている。
 その上に立って、第4条と合わせて、市町村と都道府県(特に基礎自治体である市町村)は、「地域住民、事業者、福祉の活動家、国」と協力して「社会福祉事業を広範かつ計画的に実施」するよう求められている。すなわち行政と住民、事業者との協働を求められている。
そして、第10章に第1節「地域福祉計画」が新たに設けられ、「市町村は、地方自治法第2条第4項の基本構想に即し、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という)を策定する」ことと規定された。また第108条では「都道府県地域福祉支援計画」が定められた。
 ただしこれは市町村や都道府県にこの計画策定を義務付けたものではなく、計画策定はあくまで地方自治体の自治事務である。このためもあって、2012年3月末で、全1742市区町村のうち策定済みが1026市区町村、策定予定が202市区町村、未定が510市区町村となっている。特に1万人未満の町村になると未策定が50%以上となる(厚労省ホームページから)。
 この地域福祉計画は、1990年代初頭から続けられてきた、福祉の分権化と「当事者」
主権の確立の流れを「地域福祉」という受け皿で統合しようとするものと位置づけられるようにも思われる。
 このことを手元にある大阪府池田市の第一期計画(2005年~2011年)を例にすると次のように言っている。
「地域福祉計画は、池田市総合計画を上位計画として地域福祉を推進するための基本理念や取り組みの方向性を定めるものです。池田市は、平成15年3月に「第二期老人保健福祉計画・介護保険事業計画」を、平成15年7月に「第二期障害者計画」を策定し、「池田市次世代育成支援行動計画」「池田市健康増進計画」が本計画と同時に策定されています。地域福祉計画はこれら個別計画に示された各施策が、住み慣れた地域の中で、一人ひとりのライフスタイルにあった形で実現を図るための内容と、地域福祉を推進していくための独自の内容をもった基本計画です。
 また、地域における生活を総合的に支援する計画であることから、教育、就労、住宅、交通、環境、まちづくりなど生活に関連する分野との連携を図りながら推進するものです。なお、地域福祉の主要な推進役である社会福祉協議会が策定する「池田市地域福祉活動推進計画」と連携を図るものです。」
 この池田市の場合、地域福祉計画の推進は、「教育、就労、住宅、交通、環境、まちづくり」と連携して行うとしているところが特色で、就労などは「コミュニティ・ビジネスの育成として、助成、障害者、高齢者等の雇用創出」というかたちで触れられている。(その実現までの政策手段に触れていない点は今後の課題である。)

4、コーディネーター機能への着目

求められているのはコーディネーター機能の明示的な創出である。この場合、コーディネートするべきものは、人々の生活を構成する様々な要素である。福祉、教育、健康、住宅などや生活の安全、所得保障などのうち機能不全に陥っている部分を再生するなり、代替するなり、他の要素で補ったりすることである。

 また堺市の第2期地域福祉計画(2009年~2013年)では、その「計画の位置づけ」で「法律のこうした規定を踏まえ、『第2次堺市地域福祉計画』は、まちづくりの指針である『堺市総合計画』『自由都市堺ルネッサンス計画』のもとで、健康福祉分野の行政計画である『堺市高齢者福祉計画・介護保険事業計画』『堺市障害者長期計画』『新健康さかい21』『健やか親子さかい21』『さかい子どもいきいきプラン』などを、地域福祉の視点で総合的・横断的に推進していく上での『健康福祉マスタープラン』として策定しました」としている。
 しかしながらこの総合化や横断化はなお理念的なものにとどまるおそれがあった。このような福祉施策の相互の連携や総合化は、行政や事業主体間の連携やつなぎを実現するコーディネート機能やそれをになうコーディネーター、ソーシャルワーカーが必要であるが、それを具体的に施策化することには至っていなっかった。
 さらに言えば、これら福祉ニーズを持つ人々にとっては、その人とその家族の生活全体への支援が求められている場合が少なくなく、それはしばしば「処遇困難ケース」として現れる。次の事例など見られるように、一人あるいは1機関による支援を超えた支援が息長く続けられる必要がとされるケースが多い。

事例(所正文「堺市社協における地域福祉発展戦略としてのコミュニティソーシャルワークの推進」『地域福祉実践研究』2010年5月)から。

「70歳代の母親(要介護状態)と40代の息子(精神障害)の2人暮らし。年金を担保に借金があり、自転車操業での収支状況。公共料金等の請求時期に息子から母への暴言暴力がある。母と息子へ、それぞれの専門機関(包括、在介、居宅介護支援事業所、保健センター)が関わっているが、金銭管理がネックになり支援が困難になり、母親の保護を目的に世帯分離を検討し得ている状況で、世帯に対して包括的に支援方針を立てることができていなかった。
 その段階で関わったCSWは、ソーシャルサポートネットワークの形成を目的にケース会議を呼びかけ、各機関の支援経過や生活ニーズの整理を行い、共通課題と支援方針の共有化(チームアセスメント、チームプランニング)を図った。つぎに着手できていなかった多重債務の課題への積極支援(定期訪問)を行い、本人が自ら借金返済ができるよう、節約や金銭管理のサポートを行うと同時に、世帯に対する支援のマネージメント役を担い、各機関の専門支援とともにチームアプローチを行なった。その結果、多重債務解決の見通しがつくとともに、息子の暴言暴力が減り世帯分離せずに地域生活が継続できている。」

この場合は、障害者の自立支援、多重債務解消、要介護支援、生活自立支援など多機関の多種に渡るニーズに、コーディネーター役としてCSWが介入したものである。ケース会議を通じたアセスメントによって包括的な支援プランを立て、それをインフォーマルな支えにつないで、生活自立支援に結びつけることで多重債務を解消する見通しを立てることができている。なにより息子の信頼の確保と精神的安定がみられたことが大きい。世帯分離にいたらずに地域生活を維持できている。

 このようなコーディネート機能が働かせることができるかどうかこそ福祉施策が人と人の生活を支えるものとなるかどうかを決めると考えられる。この堺市の事例では、地域福祉計画に位置づけられたコミュニティソーシャルワーカー(区社協配置CSWと在宅介護支援センターのCSW機能)がこのようなコーディネーター機能を担った。

5、コミュニティ・ソーシャルワーカーの機能とは

 ところでコミュニティ・ソーシャルワークの働き(コーディネート機能ともいえる)とはなにかを、大橋謙策の「コミュティソーシヤルワークの機能」(『コミュティソーシャルワークの理論』特定非営利活動法人日本地域福祉研究所、2005年)に準拠して所が示している(『地域福祉実践研究』19頁、2010年5月)。ここでは10の機能(触媒機能)が挙げられている。
 ① ニーズキャッチ機能
 ② 個別相談・家族全体への相談機能
 ③ 援助方針の立案及びケアプランの遂行
 ④ ストレングス・アプローチ、エンパワーメント・アプローチ
 ⑤ インフォーマルケアの開発とその組織化機能
 ⑥ ソーシャルサポートネットワークの組織化、ネットワーク会議の開催
 ⑦ 当事者組織化とピアカウンセリング活動促進機能
 ⑧ 地域問題の再発予防及び解決策のシステムづくり機能
 ⑨ 市町村の地域福祉実践に関するアドミニストレーション機能
 ⑩ 市町村における地域福祉計画づくり機能
 
 前記の70代の母親と息子の事例では、これらのコミュニティソーシャルワーク機能のうち、少なくも②、③、⑤、⑥、の機能が働いていることが確認できる。この機能は、CSW設置によって、初めて有効に働くこととなっていることが了解できる。
 
6、コーディネーターとしての「地域包括支援センター」 富士宮市の挑戦

 このようなコーディネーター機能を、「地域包括支援センター」自体が担うところもある。
 次は富士宮市の事例である。以下は『地域包括支援センターにおける困難事例への対応に関する調査研究報告書』平成20年3月、社団法人生活福祉研究機構、の第5章の要約である。
 富士宮市は人口12万5690人(平成19年10月1日現在)で65歳以上の高齢者率は19.85%。面積は314平方キロ。日常生活圏域は行政区単位で10地区だが、一圏域2300人から23000人とばらつきは大きい。 
 富士宮市の地域包括支援センターは市の直営で市役所の一階にある。障害福祉と統合された介護障害支援課の中にある。スタッフは社会福祉士2名、主任ケアマネ1名、保健師2名、精神保健福祉士1名、ケアプランナー6名、事務員1名。他に介護予防担当として保健師6名、理学療法士1名、作業療法士1名がいるので合計21名である。特徴は、介護予防指導や予防ケアプラン作成とは別系統で地域包括支援センターの本来の相談、コーディネーター機能を担える体制(6名体制)となっている点である。
 これに加えて、従来の在宅介護支援センター7ヶ所を「地域型支援センター」として再編成し、サテライトとして配置している。この地域型支援センターは、市内10ヶ所の生活圏域に12ヶ所ある社会福祉協議会組織と連携し、民生委員・老人会・自治会区長・ボランティア等が地域福祉ネットワークをつくっている。民生委員や地区社協のメンバーは、地域型支援センターの専門職の支援があるから安心して協力してくれるようになったという。
 富士宮市では、平成17年の地域福祉計画の策定時点では、高齢者、障害者、児童の相談窓口がバラバラで担当課相互の連携も十分ではないことが問題で、これを必要な支援をスムーズに受けられる育にすることが課題と意識されていた。一方、平成18年度に向けて、在宅介護支援センターを見直し、総合相談、介護予防マネジメント、包括的継続的マネジメント、権利擁護の4つの基本機能を持った「地域包括支援センター」構想が見えてきた。
そこで富士宮市では、この地域包括支援センターを中心に、障害者自立支援法に基づく相談支援事業と児童福祉法における子育て支援事業の相談部分を関係法による縦割りの相談支援体制から、ワンストップでインテーク(初期相談を受け入れて問題や課題を分析・把握すること)ができるように再編することとした。
 現在の(2010年)富士宮市では、高齢者だけではなく障害者も子どもも地域に暮らす人々をわけることなく、どのような内容の相談であれ、地域包括支援センターがワンストップで対応する仕組みとなっている。
 富士宮市の担当課は介護障害支援課で、高齢者と障害者の担当課が一元化されている。そして福祉分野の初期相談(インテーク)機能を地域包括支援センターが果たしている。要介護認定の申請や障害者自立支援法のサービス利用の申請などのように主訴が明確な内容は、地域型支援センターや各機関の窓口につなぐ。そうではない主訴が明確ではないケースや重層的な課題があるケースにおいては、地域包括支援センターで相談を受理し、課題の整理や支援に必要な関係機関への連絡調整、総合的な支援体制のコーディネイトを行い、必要に応じて、連絡調整会議を消臭してケースカンファレンスや支援体制を構築していく。
 この富士宮市の地域包括支援センターは次の5つの機能を持っている。
① ワンストップ相談機能 相談に訪れた利用者に対して、相談の分野にかかわらずワンストップでインテークできる専門職(社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、主任ケアマネ)を配置する。
② 関係機関との調整機能 インテークの段階で各機関の連絡調整が必要と判断した場合は、コーディネーターの権限で関係機関の連絡調整会議を招集する。
③ 具体的な支援機能 必要な情報の提供、関係機関・サービス提供機関につなげ、必要な支援を行う。
④ 社会資源の開発機能 不足している社会資源がある場合には、行政や市民に働きかけて社会資源の創設を働きかける。
⑤ 権利擁護機能 成年後見制度や権利擁護事業への相談や、具体的な申し立てや申請に対応する。
 高齢者や障害者、児童の虐待に関する相談に応じる。
 このようなワンストップの相談事業が構築できていることから、既存の法制度の枠内では解決できない次のような生活課題にも対応できているという。
 交通事故にあった母子世帯のお母さんが入院、中学生の子供が二人、家に残された。地域包括支援センターがコーディネーターとなり、関係機関や地域の民生委員などとネットワークを組んで、入院から退院まで母と子を支援したという。

7、この10年の状況変化 地域福祉計画と地区社協

 このような地域福祉計画が策定され、地域福祉施策が多くの都市でそれなりに推進されてきた。かなりの計画策定自治体では第二期の地域福祉計画が策定されている。
 地域福祉施策自体は、この地域福祉計画以前は、主に社会福祉協議会によって担われてきた。具体的には小地域福祉事業の展開(小地域ネットワーク事業)であり、その中でも「ふれあいサロン・いきいきサロン」の取り組みが多い。特に高齢者向けの「いきいきサロン」は32,522箇所に設置されている。これは調査集計社協2249のうち、小地域ネットワーク事業を実施している1049社協の取組内容である(社会福祉協議会基本調査、2005年4月、中央法規『社協再生』40頁)。また会食サービスや配食サービスもその典型である。
 堺市を例に取ると、堺市社会福祉協議会は昭和44(1969)年から小学校区ごとに校区福祉委員会の結成を推進してきた。2011年現在では、1校区を除く92校区に設けられている。いわば「校区社会福祉協議会」であり、それを名称としている校区福祉委員会もある。
 この「校区福祉委員会」は、大阪市では「校下社会福祉協議会」または「地域社会福祉協議会」であり、京都市では「学区社会福祉協議会」にあたる。大阪府内の都市では大阪府社協の方針もあって「地域福祉委員会」を名乗る場合が多い。
 堺市は、この校区福祉委員会を基盤に、もともと堺市社会福祉協議会による「小地域ネットワーク活動推進事業」が活発に行われてきた都市で、大阪府が1998年度から始めたのに続き、1999年度から始めている。このときは府の補助事業(5年間)として、1校区あたり年間50万円が予算化され、33校区で始まった。2005年度には92校区のうち86校区で、「地域のつながりハート事業」の名称となり、堺市単独事業として年間60万円を上限としたメニュー事業となった。いきいきサロン、ふれあい食事会、地域リハビリ、世代間交流、子育て支援、ふれあい喫茶、などが取り組まれていたが、2007年度には全93校区のうち校区福祉委員会未設置の1校区(南区の竹城台東校区)を除く92校区(堺区の熊野校区は独自活動)で実施されるようになっている。
 また一人暮らし高齢者や障害者を月に1回から数回訪問して安否を確かめ、月に一回は訪問員が情報交換会を行う「お元気ですか訪問」(堺区湊西校区では、対象者50人を警察官と一緒に訪問している)や、通学路での交通指導と見守り、外出援助、家事援助、配食などもこの「ハート事業」のメニュー事業で行なっている。

 ただ、策定した自治体でも、「計画は出来たが棚ざらし」といった状況のところもあるように見受けられる。そのようなところは、地域福祉の主な実戦部隊と期待されている「社会福祉協議会」が、行政の在宅福祉事業の下請けや介護保険の在宅サービス事業の受託事業やその他の自主事業の経営に振り回され、過度に「事業社協化」してしまっている可能性がある。つまり、本来のコミュニティソーシャルワーク機能を発揮して地域の組織化を担うはずが、自らの経営にのみ関心を持つ経営体に一面化しているのである。この「事業社協化」は社会福祉協議会自身が1980年代から選択してきたという一面ももっている。
それは社協が見える事業を行っていないという行政側からの批判と、地域の老老介護の問題や在宅障害者の問題、一人ぐらし高齢者の食事など生活支援への施策が社協の仕事から落ちているという反省もあって、在宅サービスに取り組む社協が多くなり始めた(おそらく90年代から)。1982年には全社協が「市区町村社協機能強化計画の指針(社協モデル)」を発表。「①地域福祉の中核的機能を担い専門性を高めること、②活動の焦点を日常生活で援助を必要とするものの問題解決におくこと、③福祉コミュニティの軽視絵に取り組むこと、の三つに重点を置いた」(『社協再生』11頁)。1990年には社会福祉事業法の一部改正で「居宅福祉」が規定され、94年には「事業型社協推進事業」が国庫補助事業となった。
 特に介護保険が始まって、介護保険事業(そのうちでもケアマネジメント、訪問介護事業、訪問看護、デイサービスなど)の事業者となる社協が増加した。しかし、それは「両刃の剣」でもあった。事業所としての経営を維持するべく力が裂かれて、自治体全体の地域福祉へのニーズ把握調査、企画、組織化が手薄となるという事態も見られたからである。
 このことは社協の歳入の財源構成の変化からも読み取れる。

    全国市区町村社会福祉協議会の収入構成の平均(%)
       会費 共同募金 補助金 委託費 寄付金 その他 介護保険事業
2004年度   2.3    3.1    19.5   25.3    1.9 1    53        39.6
1999年度   3.0    4.0    25.5   50.0     3.0    14.6        ―
1986年度   6.3   10.8    33.2   27.9     6.5     8.3       ―

堀口伍喜夫他『社協再生』2010年、中央法規、116頁から作成。元資料は、「平成17年度社会福祉協議会基本調査結果」2006年、全社協。「社会福祉協議会活動実態調査・財政調査」2000年、全社協。「社会福祉協議会・基礎調査」1987年、全社協。
 
 したがって、地域福祉計画の実効性はかなりの程度、その市町村の社会福祉協議会のあり方によって変わってくるというのが実情のようである。

8、地域包括支援センターと生活保護
 また、この間に、地域福祉をめぐる状況にかなりの変化が生じている。それをいくつかあげてみよう。
 まず、介護保険制度の改正のインパクトがある。そのひとつは、2007年から導入された「地域包括支援センター」である。また2010年頃から提案されている「地域包括ケア」の考え方も影響してきている。
 ついでは地域雇用政策が多様に展開されてきたことが、地域福祉の領域にも浸透してきている。
 また、この間に生活保護が量的に拡大するとともに、その受給者の構成に変化が生じている。広く言えば、格差の拡大、非正規雇用の拡大である。地域での貧困問題が地域福祉の領域に強く関わってきている。
 また2000年の児童虐待防止法、高齢者虐待防止法、障害者虐待防止法なども地域福祉の課題をつきつけている。
 特に東北大震災後は審査など大災害時における災害弱者支援策が地域福祉の課題となっている。
 その中で、地域包括支援センターの地域福祉におけるコーディネーター機能の重要性が明確になってきている。それは福祉の領域から生活全体をカバーすべきものとしてより明確になってきている。

世帯累計別に見た被保護世帯(1ヶ月平均)
     総数  高齢者   母子  傷病・障害  その他
1975 704785  221241   70211   322458   90875
      100    34.3     9.5     46.1    10.2
1985 778797  243260   113979    348881   72678
      100    32.5    14.4      43.6     9.5
1995 600980 254292 2373 252688 41627
100 43.7 8.6 42.3 5.6
2000 750181 341196 63126 290620 55240
100 46 7.8 40.3 5.9
2005 1039570 451952 90531 389818 107259
100 43.5 8.7 37.5 10.3
2010 1405281 603540 108794 465540 227407
100 42.9 7.7 33.1 16.2
2011 1498375 636469 113323 488864 253740
100 42.5 7.6 32.6 16.9
厚生労働統計協会『国民の福祉と介護の動向』2012・2013年、188頁

9、地域包括ケアの提案と地域包括支援センターの機能強化について

 第5期介護保険事業計画(2012年度から)への移行を前にして、福祉施策にまた大きな変化が生まれている。それは、「地域包括ケア」の考え方が、これからの高齢者のケアシステムとして中心的な位置を占めるようになり、それに伴って2007年に各市町村に設置された「地域包括支援センター」の機能強化が政策的な課題として浮上してきたことだ。この「地域包括支援センター」の機能強化の中心は、介護予防のケアプラン策定事業から撤退し、介護保険事業所、医療機関、民生委員などをコーディネートする「コミュニティソーシャルワーク」機能を拡充することである。それには、地域包括支援センターの総合相談機能をワンポイントの総合相談窓口とすることも含まれる。また、「地域包括支援センター」の担う機能を高齢者施策に限定することなく、障害者や児童、DV被害者、母子家庭への支援もワンストップで対応するセンターとする。
 地域包括ケアとは、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護、予防のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援を、日常生活の場(日常生活圏域)で一体的に提供していくという考え方。その際、地域包括ケア圏域については、『おおむね30分以内に駆けつけられる圏域』を理想的な県域として定義し、具体的には中学校区を基本とする」とされている(厚労省「地域包括研究会報告書」(2009年5月)。
 もともとは、介護保険制度の導入の前、1993年度からの「高齢者保健福祉計画」策定とその推進の時代も含むほぼ30年間に、広島県御調町にある公立みつぎ総合病院を中心として、その病院管理者であった山口昇氏を指導者として構築された、医療と福祉の総合ケアシステムである。現在御調町は尾道市に合併されているが、合併前の尾道市医師会も同様の地域包括ケアシステムを推進してきている。
 具体的には、公立みつぎ総合病院(急性期病棟、療養病棟、回復期リハビリ病棟、緩和ケア病棟)に保健福祉センターと訪問介護ステーション、ヘルパーステーション、基幹型在宅介護支援センターを併設、さらに保健福祉総合施設(老人保健施設、特別養護老人ホーム、地域型在宅介護支援センター、デイサービスセンター、リハビリテーションセンター、ケアハウス、グループホーム、老人性認知症センター、福祉人材研修センターを隣接地に集約している。医療機関に在宅訪問サービスステーションを設け、急性期から退院後の在宅ケアを医療(訪問看護と訪問診療)と生活支援(ヘルパー訪問や)、在宅リハビリで支援する。ターミナルについても病院でのホスピスと在宅での見取りとを保障する。
 2013年春現在、いくつかの都市や広島県、京都府でこの「地域包括ケア」への取り組みが進められている。この中で、みつぎ病院にはなかった「地域包括支援センター」のコーディネート機能に関心が集中してきている(政策的誘導もあるが)。
 平成22年3月の「基幹型地域包括支援センターモデル事業報告書」でも、「これまで明らかにされた地域包括ケアの考え方において、共通して示されている重要なキーワードとして、「コーディネート」が挙げられる。このコーディネートが包括センターの設置目的(役割)であり、高齢者支援機関のみならず、フォーマル・インフォーマルを問わない多領域における多様な連携により、地域住民のニーズに応じたサービスのコーディネートを行うことと言える。
その役割を果たすために必要なことは、関係機関や住民活動などのインフォーマルな活動の連携によりサービス提供を可能とする「ネットワーク化」、及び実際に地域の中でサービスをマネジメントするための資源や手法の「情報の確保(収集・管理)」であるとしている。
 最後に立教大学の「地域包括ケアシステム構築のための保険者と地域包括支援センターの関係性に関する調査研究事業」報告書(平成24年3月)では次のように指摘されていることを紹介しておきたい。
「地域包括ケアという概念は、もともとは、ねたきりゼロ作戦の提唱者で知られる広島
県御調町(当時、現在尾道市)の公立みつぎ総合病院の山口昇医師によって昭和50 年
代に使われはじめたものである。
 山口医師によれば、脳卒中などの後遺症の患者たちの生活の質を確保する上で、治療
(キュア)のみならず予防、リハビリ、福祉、介護を専門サービスのみならず、住民参
加による地域ぐるみの活動も包含したみつぎ病院の実践展開を説明する、いわば実践か
ら生まれた概念であった。
 その後、2003 年に公表された厚生労働省老健局の高齢者介護研究会による「2015
年の高齢者介護」と題する報告で、再定義が行われ、05 年の介護保険改革における「地
域包括支援センター」創設にあたって目標として達成すべき政策概念として用いられる
ようになり、さらに、今回の介護保険改正にあたって、その考え方を整理した「地域包
括ケア研究会」の報告書において、介護保険改正が目標とすべき概念として提起され、
また、同時並行的検討が進められた社会保障国民会議の報告においても、今後の医療と
介護の改革にあたっての嚮導概念として用いられた。今回の「税と社会保障の一体改革」
の目標にもこの概念が使われ、政策概念として定着するに至っている。
今後、地域包括ケアが現実のなかで、一つの提供体制として確立するためには幾つか
の重要な課題がある。
 第一に、地域包括ケア提供体制をどのように構築していくべきか。構築主体の問題が
ある。公立みつぎ総合病院の場合は国民健康保険直営の医療機関として、町役場の保健
福祉部門さらに社会福祉協議会と一体化して地域包括ケアの提供体制が実践に即して
展開されてきた。しかしながら、多くの自治体では、このような条件は存在していない。
そこで、05 年改革では地域包括支援センターを介護保険の保険者機能として創設し、
地域包括ケア推進の拠点として整備することが目指されたが、実際には、多くの地域包
括支援センターは社会福祉法人や医療法人への委託機関であり、単なる相談機関として
みなされ、地域ケアのマネジメント機能は未成熟のまま今日に推移しているといえる。
また、市町村の保険者機能としての提供体制整備についても、政策能力や専門性の問
題もあり、提供体制の設計と運用といった課題を保険者機能として果たすには少数の例
外の自治体を除いて多くの困難があるように思われる。多元的なサービス提供体制を地
域連携システムとして構築し、運用を可能にするには、多くの課題をクリアしなければ
ならない。
 第二に、地域包括ケア提供体制を構成するサービス群とその制度的配置の整理が必要
である。保健医療福祉の統合として構想された介護保険において、介護保険法上、居宅
サービス優先の原則が謳われたにもかかわらず、施設依存が特養待機者の増大のなかで
克服されていない。」



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