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地域包括ケア再考

初出:自治研なら第120号 2017年7月

  介護保険制度が20004月に施行されて今年で17年。3年ごとの介護保険事業計画で介護のニーズを推計し、65歳以上の第一号被保険者の納める保険料を市町村ごとに決めてきた。介護保険サービスの利用者は当初の3倍の500万人を超え、介護保険給付費も同じ3倍超えの10兆円に達している。保険料も当初は一人月額3000円以下(全国平均)だったが、現在は5000円を超え、団塊の世代が75歳になる2025年には8000円になると見込まれている。

 これまでも制度改正は何度も行われてきた。それまでの在宅介護支援センターを地域包括支援センターに切り替えたのが2005年の法改正である。法第115条の46を新設した。在宅介護支援センターは、1993年度からの高齢者保健福祉計画の策定を市町村に義務付ける際、各市町村に置かれたものものだが、これを専門職(保健師、主任ケアマネ、社会福祉士)を配置した地域包括支援センターへと改めた。措置から契約への転換に伴う制度改正でもあった。在宅介護支援センター設置費補助金があったが、これが廃止されている。地域包括支援センターの運営財源は、@地域支援事業費のうち地域包括支援センターで実施される包括的支援事業の委託費、A介護予防サービス計画費(介護報酬)に分けられる。@は、介護保険給付費の3%を上限とする。

 このときの介護保険法改正では、予防事業の重視、ケアマネへの支援施策、要介護1の下に要支援1と2を設けて介護認定の幅を広げている。また施設利用者から食費と居住費を取るようになった。制度の持続可能性を担保する施策の一つとして、利用者負担の拡充という方向がはっきりしてきた改正でもある。

2011年の介護保険法改正では、地域包括ケアの理念規定が置かれた。改正後の介護保険法第53項は次のように言う。「国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じた自立した日常生活を営めることができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない。」

つまり、国と自治体は、「住み慣れた地域で」「要介護者の自立した日常生活」ができるように、保険医療サービスと福祉のサービス、予防と悪化防止の施策、日常生活支援の施策を、住宅施策と有機的に結び付けて、包括的に推進するよう努めなければならない。これが地域包括ケアの理念である。2012年度からの第5期介護保険事業計画に向けては、地域包括ケアシステムの要素としての認知症支援策の充実、医療との連携、高齢者の住居確保施策、見守りや配食などの多様な生活支援サービスなどを記載するよう求めている。なお、2012年度老人保健健康増進事業で「地域ケア会議運営マニュアル」の作成が行われ、2013年度には「地域ケア会議活動推進事業」が推進されている。

2013828日の社会保障審議会介護保険部会の資料では、「地域包括ケアシステムの推進について」が提案されている。ここでは2025年までに、地域包括ケアシステムを構築することを目的とすると明示している。その上で、2015年度からの第6期事業計画を「地域包括ケア計画」として策定するよう求め、第5期で開始した地域包括ケアの方向性を継承しつつ、在宅医療と介護との連携を本格化すべきだと提起している。

2018年度からの第7期事業計画に向けては、2017年月に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」で、地域包括ケア施策は障害者施策と連携したものとすること、認知症に対する施策を総合的に推進することが書き込まれている。また介護医療病床の「介護医療院」への転換が制度化されている。利用者負担では、一定以上の所得のある第一号被保険者の利用料を3割とすること、さらに被用者保険者の介護納付金の算定に総報酬制を導入すること、が決まっている。

地域包括ケアシステムを構築する最大のキーは、地域包括支援センターの機能強化にあると思われる。そのため、市町村は、介護保険法第115条の46で、地域包括支援センターの事業の評価を行い、「必要な措置」をとらなければならない、としている

これらと並行して、2015年度から介護保険のサービスのうち、要支援1と2の人が利用していた訪問介護と通所介護を保険から外し、市町村の新たな「総合支援事業」に移行することとなり、2017年度から全市町村で総合支援事業となっている。

介護を必要とする人や家族の地域での自立した日常生活を支えようとする介護保険制度は、もともと「保険」の枠組みだけでは完結しないものであり、医療サービスや移送サービス、ボランティアなど、多様な力の協働で支えられてきている。それを意識化して「地域包括ケアシステムの構築」という言葉で表現しているともいえる。その点では、この方向は実現すべきものではあるが、一方で、介護保険が最初から抱えている財源問題(とくに財務省サイドからの要請)から、利用者負担の拡大と国庫負担削減の動きにゆさぶられることは避けられない。中央でこのようなひずみの拡大を抑えるとともに、現場では、より良い介護システムの構築への動きを支えていくことが望まれている。

 

奈良県地方自治研究センター理事長    澤井 勝

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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