ユビキタスな情報基盤の整備を (初出:自治日報03年04月11日号)

                             奈良女子大学 澤井勝


奈良県宇陀郡の菟田野町社会福祉協議会は、昨年から「地域福祉行動計画」の策定にとりかかっている。町の福祉課や保健センターなども議論に参加しているのがここの特徴だといえる。

 昨年の
5月から8月にかけては、障害者団体や子育て中の若い母親、ボランティア団体や老人クラブなどと地域に何が必要か、お互いになにができるかといった課題について、5回ほど懇談会を持った。民生委員や特別養護老人ホーム施設長、病院の事務長、隣保館長、小学校長などとも意見交換を行っている。


 中心は、地域住民が主体となって、様々な支援を必要としている人々を、地域で支える仕組みを構築するための議論である。今までやってきたこと、やろうとして出来なかったこと、こうあってもらいたい支援サービス、など多様な思いが交錯する。


 町社協が他に先駆けて、この「行動計画」策定に取り組んだのには理由がある。それは,市町村合併の動きである。この宇陀郡では、奈良県内では早く、01年秋に6町村(大宇陀町、菟田野町,榛原町、室生村、曽爾村、御杖村)で任意の町村合併協議会を設立して合併協議をおこなってきている。その中で、地域福祉の基礎となる旧町のつながりをしっかり確立しておくことが必要だと考えたからである。


 できれば、新しい自治体の地域福祉のありかたに具体的に政策提起を行うことが考えられてもよい。いわば新自治体における地域福祉モデル事業としての位置付けをも展望する。地域のよさを,新自治体においても継承し、新自治体のあり方にも具体的な提案をしようという積極的な試みなのである。


 この発想は、奈良市への合併を考えていると言われる月ヶ瀬村においても、地域福祉行動計画の策定を急ぐというかたちで共有されているようだ。このように、合併後の新自治体のあり方を具体的に提案する地域での地道で具体的な取り組みこそ、集中型・集権型ではない、分散型・分権型まちづくりの基礎となるものだ。旧町村を単位とした自律的なまちづくりを包み込んだ新自治体こそ、新しい基礎的自治体にふさわしい。


 ところで、昨年02年10月から11月にかけては、「一人暮らし高齢者」、「高齢者のみ世帯」、「一般世帯」の三つのグループの生活意識調査を行った。私達はこの調査のお手伝いしたが、いくつかの興味深い知見を得ることが出来たと思っている。


そのうちのひとつを紹介しておきたい。それは、どのようなときに生きがいを感じますか、という質問に対する回答である。人はそれぞれで、答えは分散した。その中でも最大値となったのは、「人とのふれあい」である。これはなるほどと思える回答だ。


 意外だったのは、「テレビを見る」が第二位に入ったことである。どうしてテレビを見ることが生きがいなのか。いろいろ議論してみた。ひとつの解釈は、「人のつながり」をテレビを通して感じているのではないか。では、どんな番組なのか。今回はそこまで聞いていないので、今後の調査の課題である。


 ただ注目すべきことは、テレビの役割の大きさを改めて確認するべきだということである。他の質問で、何について知りたいかという質問には、ボケ予防の知識、寝たきりにならないための知識を求める声が圧倒的に多かった。このことも踏まえると、市町村が、このメディアを駆使して、そのようなニーズに応え、見て楽しい放送内容を提供する工夫が絶対に必要だということである。CATVもいいだろう。テレビと融合したパソコンのネットでもいいだろう。
 
 いずれにしても、双方向性のある情報基盤とその番組内容、そして高度な映像編集技術などのソフトな運用技術が市町村に定着することが必要だ。そのような自己発信力のある情報基盤が高齢者や障害者など全ての住民、そしてグローバルな市民にアクセスしやすいかたちで整備されなければならない。

 それが、少子・高齢社会においてノーマライゼイション原理が生きる地域社会の実現に大きな役割を果たす。過疎地でも、広大な地域を持つ合併後自治体でも、大都市の小学校区単位の小地域でも、このようなユビキタスな(どこでも,誰でも、いつでも、つまりブロードバンド・ネットによる情報のユニバーサルデザイン化という意味)情報基盤のハード、ソフト両面での構築が不可欠である。