居場所はコンビニの数ほど(初出:自治日報 03年01月31日号)

                            奈良女子大学 澤井 勝

 それぞれの市町村での第二次の介護保険事業計画の策定作業も大詰めとなっている。3月議会にかける03年度から05年度の第一号被保険者の保険料も、ほぼその引き上げ幅が確定してきた。全国平均で12%程度アップ、平均で月に3200円。奈良県内で10%程度の引き上げという話もある。中には、保険料を引き下げるところもある。これは前の計画が過大だった可能性があり、開けてみたら、サービスの利用量が計画を大きく下回ることとなった結果である場合が多い。しかし、これは全く例外的で、ほとんどの市町村は、つぎのような理由から保険料の引き上げが必要なのだ。

 第一には、高齢者数の増加による。各市町村の高齢化率は、次の計画期間中にさらに上昇する。これは、総人口が減少する中で、高齢者が増加するパターンの自治体が増えていることも大きい。

これに加えて、第一号被保険者のうち、要介護度の認定を受ける人の割合が高くなってきている。これは、介護保険の意味が相当に浸透してきている証左でもある。

第二には、介護保険サービスの利用量が顕著に増加してきている。特に、在宅の訪問系のサービス、すなわちホームヘルプサービスが伸びてきている。さらにこの訪問介護の伸びは、02年度の途中から、拡大している。この傾向は全国的にもまた、各市町村レベルでも見られる。これには、施設が一杯で、供給が追いつかないという事情もある。

京都市の新しい介護保険の保険料は、同市の事業計画中間報告では、4000円になろうかという水準だが、この理由はサービス利用量がこの一年で計画を大きく上回って極めて大きくなったところにある。特に訪問介護の伸びが大きい。この利用量の伸びをカバーする供給力の伸びがあるということでもある。

保険料のアップは、サービスの需要が拡大し、利用量が予想以上に増大していることから当然であるし、別の見方をすれば、介護保険制度の意味がようやくかなり知られるようになってきたためだということもできる。制度の趣旨からすればめでたいことでもある。

しかし、このような保険料のアップがどこまでも可能であろうか。保険料のアップを抑制する政策をより強力に進めないと、介護保険制度自身がパンクすることは目に見えている。マクロな制度面での改革では、在宅サービスの充実ための介護報酬システムの改正、介護予防のためのケアマネージメント制度の改革、それに保険基盤の拡大強化(例えば第2号被保険者を20歳以上に拡大する)、などに注力する必要がある。

一方で、市町村がやるべき課題も多い。第一には、施設入所者や入所希望者が、地域で自立して生活できるような地域社会をつくることである。これには、京都市上京区の春日学区の地域づくりや、北九州市の小学校区ごとの市民福祉センターと区レベルの保健福祉センターの仕組みなど有益な前例がある。

 第二は、福祉施設や医療施設の地域社会への開放である。これも、施設側からの動きがあり、尼崎の園田苑とグループハウス、大阪市住吉区の特別養護老人ホーム花嵐、奈良市の万葉苑など、地域社会の福祉ネットワークの核になる施設が目立つようになっている。

第三には、介護保険事業計画と保健福祉計画の実現すべき理念(すなわち政策目標)として、「本人の選択に基づき、居宅で、自立した生活を送ることができること」が明確に掲げられる必要があることを改めて強調したい。これは、介護保険法の第1条と第2条に掲げられている理念である。そして、旧町村単位の「地区福祉総合計画」が「分散型・分権型都市」をめざす、新市町村建設計画や新総合計画の中心に置かれなければならない。

そして第四に、この介護保険などの制度をつつんで、高齢者も障害者も、子育て中の母親も、気軽に集える街角の民家や旧校舎などの溜まり場が、ボランタリーな手と専門家の手とに支えられて、コンビニの数(昔はポストの数)ほどあるとよい。みんな「居場所を求めている」のだから。

このように、要介護高齢者を増加させず、出来れば減少させるように需要をコントロールしようという政策意図が、市町村という現場で働きやすいのも、「出ずるを量って入るを制する」介護保険制度のメリットなのである。