オフサイトとオンサイト                          
                                 (初出:自治日報 コラム 02年8月25日号)

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 奈良県の人口6000人余りの町、菟田野町で02年の7月から8月かけて、町社会福祉協議会の「地域福祉行動計画」の策定のために、福祉関係者の懇談会を行った。社会福祉協議会に登録しているボランティア団体、民生児童委員、在宅高齢者を介護している家族、障害者をサポートする住民組織、小学校長など。テーマは、「今、みんなが悩んでいること。こうすればもっとよくなること。」という、必要とニーズの調査である。例えば、

1)一人暮らしの後期高齢者が、地域で暮らすのは難しい。火の心配や、倒れたときの対応が困難。さらに痴呆をともなうと一層難しくなる。近隣からすれば施設や病院に入ってもらったほうが安心だが、本人は住みなれた自宅で過ごしたいのだ。このような自宅で一生を全うしたいという人々の希望を実現したい。

2)重複障害を持った子供たちにとって、高齢者施設を活用したデイサービスは実によい施策だ。より重大な問題は、親が支援を出来なくなったとき、どのような支援策があるのか。働き口もごく制限されている、など。

地域福祉計画と地域福祉政策が解決すべき中心テーマは、集約すれば、「一人暮らしや二人暮しの痴呆や障害を持った人々とその家族が、自宅で、安心して、日常生活を送り、一生をその人らしく全うすること。そして子育てを地域で支えること」、である。

 そして、行政として最も重要なのは「人権を守る」ための、当事者とその家族に対する支援活動の組織化である。この行政としての人権擁護の活動が、ボランタリーな市民活動を、基礎において支えるものとして地域福祉政策に明確に位置付けられければならない。

このような課題を地域、市町村、県、それに人々のネットワークでどこまで解決できるか。地域福祉政策とは、このことに尽きる。その場合の、各政策主体の、役割分担と協力関係を組織すること、そのことが、「市町村地域福祉政策」となる。つまり市民の自立したネットワーク型の地域活動が生き生きと展開できるよう、市町村の地域福祉政策が組み立てられる必要がある。

しかしこのことは非常に難しい。行政の縦割りでヒエラルヒッシュな組織原理と、ネットワーク型の組織原理は、両立することが困難だからである。特に行政側の官僚制の弊害が大きい。長い稟議制によって現場の感覚がない2、3年で異動する管理職が権限を持ち、前例墨守型、問題先送り型の「大過なく大功なし」をよしとする官庁風土は、即断即決型の現場主導を持ち味とするネットワーク型の意思決定と行動パターンになじみ難い。

 このネットワーク型組織に対応できる行政組織とはどういうものか。そのひとつのあり方が、この間「北九州方式」というかたちで、広く知られるようになった北九州市の取り組みから見てとれる。

 第一には、縦割り行政の克服のための本格的な機構改革である。北九州市の場合、この課題は、従来の「衛生局」と「民生局」の統合として実施され「保健福祉局」というかたちをとった。この「保健福祉局」への両部門の統合は、他の県や都市における取り組みの先鞭をつけたと言ってもいい思う。ただその特色は、保健部門の指揮系統を、福祉部門のもとに編成替えしたところにある。端的には保健師は福祉の仕事をするように位置付けられた。ある保健師いわく、「あたまの中がごちゃごちゃで、たまらんですわ。」上司いわく、「それはそうや、あなたがたのあたま、ごちゃごちゃにするために作ったんやから」

 第二は、現場主義である。特に、地域の各政策主体との直接の、それも現場(オンサイト)での、そしてオフサイト(庁舎をはなれたアフターファイブの、そして費用は割り勘の)での積極的な交流と討論、意見のぶつけ合いだ。その中から、ネットワーク組織への具体的な支援方策のアイデアが生まれ、それを予算化し、全市的に波及させる。係長、主査クラスに起案とその実施権限を相当程度委ねるとともに、課長や部長クラスも医師会や市民組織の活動に積極的に顔を出し、いろいろきつい注文を聞き、それに反論し、などの現場での情報と意見を常に掴み、働きかけをするという気風である。

オンサイトとオフサイト(オフサイドではない)こそ、ネットワーク組織に柔軟に対応できる可能性を持っている。

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