障害者福祉の展開と理念
                                      (02年度生活福祉論講義素材)


1 1948年 世界人権宣言 第二次世界大戦とその後遺症から

  1 差別撤廃の無差別平等の原理

  2 人間らしい生活を求める生存権保障

  3 日本国憲法第25条と第13

  4 障害者の権利宣言 197512月 国連総会決議

 

2 リハビリテーション論 戦傷者の機能回復訓練と社会復帰

    いわゆるADL(Activities of daily living日常生活動作)自立 

     食事、衣服着脱、整容、排泄、起居移動、コミュニケーション

    職業的自活能力と職業的更生(納税者へ)

    運動機能の維持、回復、家事動作の自立

    職業訓練、職能開発(鍼、灸、マッサージなど視覚障害者としての)

    大学における職業教育の保障(アメリカの場合)大学教育の機会均等 

    経済効率性重視の限界


3 コミュニティ・ケア思想

    1960年代半ばイギリスにおける精神障害者の精神医療の改革の中から

    地域社会を治療の場とみなす 施設隔離・病院隔離からの転換

    病院から家庭までの ナイトホスピタル、デイケア、共同住宅、グループホーム  

    共同作業所など中間的ケア

    障害者の地域社会統合(インテグレーション)の促進を障害者福祉の中心に


4 ノーマライゼイション思想  北欧を起源とする

    一般的にはすべての知的障害者に通常の、すなわち社会の普通の生活条件、生活  

    様式を提供するという目標を掲げた理念

    施設から地域へ

    施設内ノーマライゼイションから 日野の七生福祉園の給食をめぐって

    QOL(生活の質)を高めること

    ノーマライゼイションとは、そのためのお金と人手を負担すること、負担を引き  

    受けることを(租税などのかたちで)社会的に合意することでもある。

 

5 自立生活思想の展開

    自立生活IL(Independent Living) 身辺自立や職業自立が困難な重度障害者 

    が必要な援助を受けつつ、自らの生活の主体者として自己形成をはかること

    障害者を保護の対象から生活の主体者として位置づけ、自立を可能とする福祉サ

    ービスを始めさまざまな社会的条件を整備すること

    重度障害者から知的障害者、精神障害者、高齢者へのひろがり

    家族からの独立

(1) 1960年代末からのカリフォルニア大学バークレー校におけるバリアフリーに向け

    たキャンパス委員会の設置

(2) 食事や排泄、入浴に必要な介助システム

(3) 講義や実験に必要なノート取り、点訳、手話など

(4) 移動システム

 

    1973年 リハビリテーション法改正

第504条「資格のある障害者は、何人たりとも障害を持つという理由のみをもって、連邦政府から財政援助を受けているいかなる事業においても、参加を拒まれたり、受けるべき理恵域を損なわれたり、差別を受けることがあってはならない。」

    1972年にバークレー自立生活センター(CIL)設置

    1978年 504条施行規則

     1雇用 2教育 3公的サービスへのアクセス

     差別の3類型 障害を持たない者との別異な取り扱いの禁止

            障害者にとって著しく不利になる効果を伴う取り扱いの禁止

            合理的な範囲で求められる便宜の供与を拒むことの禁止

 
付;ノーマライゼイションと自立生活

    図2−1

             ノーマライゼイション軸

 

               日常生活実現

 

              ケア付き住宅                 

                         自立生活センター

              グループホーム

 

  サービス提供者主体          サービス利用者主体     自立生活軸

       入所施設

              共同作業所  

  

        病院

             日常生活解体

 

6 機会平等の理念  完全参加と平等 国際障害者年(1981年)と行動計画(1979年)

    理念の具体化としてのアメリカ

    リハビリテーション法504条(1977年施行)

    公正住宅修正法(1988年)

    ADA(Americans with Disabilities Act1990年  差別禁止法でもある

     従業員15人以上の事業所、公共輸送機関、施設、生活利用施設のアクセス保   

     障の義務づけ

  わが国の場合は、憲法第14条法の前の平等、は「形式的平等論」が従来、優先して

  きた。一般に国家による法的取り扱いの不均等の禁止、均一の取り扱いを保障するこ  

  と。公選法の法定外文書頒布事件高等裁判所判決「言葉のかわりにビラを配布」

  「実質的平等を保障したものではない」。

  障害者に対する機会平等の問題は、社会活動に参加する機会が障害を持たない者と比  

  較して実施的に平等に与えられているかに重点を置いて考えなければならない。受験、 

  学習、研究などにおけるreasonable accommodation 合理的な便宜供与。

  つまり、差別を受けないことが市民としての当然の権利(Civil Right)と広く考えら

  れている。

  したがって、障害があることによって差別を受けないということは、福祉ではない。 

  人の人としての権利なのである。

  アメリカの場合、公民権法(1964)に範を得ている。

(1)公共的施設の利用、(2)教育などの公共サービス、(3)雇用、の領域におい

て、人種、皮膚の色,宗教を理由にする差別的取り扱いの包括的禁止

1970年には「都市大量交通法(Urban Mass Transportation Act)が成立。「障害者と高齢者が一般の人と平等に都市公共交通機関を利用できる権利を持つことが合衆国の政策である」。

  

7 わが国の場合 心身障害者対策基本法の改正と障害者基本法(1993年) 

  限界:差別禁止法ではない

  わが国の施策体系が生存権を基礎にした福祉モデルであることも関係して、機会平等 

  は抽象的な法概念として認知されているが、市民としての当たり前の具体的な権利と

  いう評価は確立していない。  

  しかし、障害者基本法の制定、障害者基本計画の策定という形で大きく変わりつつあ 

  るという点は、評価をしておかなければならない。

 

8 ばりあふりー再論

ハードのバリア(建築、交通施設、道路など)

 ソフトのバリア(心理的、制度的、精神的障害)

 「私にとってバリアフリーとは、老人や「障害者であるか否かで始まるような関係を拒否し、一人の人間同士として当たり前につながりあえる暮らし」を考えの基礎に置く実践課題である。」(井上由美子『バリアフリー サイン計画とまちづくり』中央法規1998618頁)

 「町の中で暮らすこと、とは当たり前の人間関係の中で暮らすこと」

 

バリアフリーからユニバーサル・デザインへ

 能力あるいは障害のレベルにかかわらず、ほとんどの人が利用できる環境要素であり、全ての要素と空間が、全ての人々にアクセシブルであること

通信におけるユニバーサル・サービス 情報における差別の解消

「段差があって車椅子が使えない建物にスロープをつけるというのがバリアフリーで、始めからから段差をつくらないのがユニバーサルデザイン」(光野有次『バリアフリーをつくる』岩波新書98年8月)

 

9 エンパワーメント

  カイロ会議(第3回国際人口・開発会議)19949月開催

   「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 性と生殖に関する健康と権利

    性や生殖について中絶をも含めて「女性の自己決定権」を認める視点の導入。

    産む主体としての女性の権利の確認。

   「弱者としての女性が力をつけること」

   「ソーシャルワーカーもしくはその他の専門家がスティグマ化されている集団に属し

    ているために差別されていることから生じているパワーの欠如状態を減らすこと目指

     して、クライエントとの一連の活動に携わる過程である」Barbara Bryan Solomon1976

      リーのエンパワーメント・アプローチ1994

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