今進めたい地域福祉計画の策定
(初出:自治総研02年6月コラム)澤井勝
来年(03年)の4月から、社会福祉法の一部が施行される。すなわち、同法第107条(市町村地域福祉計画)および、同法第108条(都道府県地域福祉支援計画)がこれである。このふたつの条文が施行されることによって、市町村は改めて地域福祉計画の策定を、また都道府県は市町村を支援する計画を法的な根拠に基づいて行うことが求められることとなる。もっとも、この規定は、自治事務と位置付けられているから、計画策定を義務付けたものではなく、各市町村がそれをつくろうとつくるまいと、その採否は市町村に任されている。とはいいながら、以下に述べる理由から、市町村は是非、積極的に策定に取り組むべきであると思われる。
ところで20世紀の最後の1990年代に行われた一連の福祉改革は、介護保険制度の導入によって、かなり明確なデザインが示された。
ひとつは、福祉の領域での「市町村主義」である。基礎的自治体である市町村を、住民にもっとも身近な政府として、福祉行政の第一の主体として位置付ける、そういう改革である。例えば、これも同じく来年の4月から障害者福祉においても、措置制度から支援費支給制度に転換が行われるが、その支援費支給事務は、市町村が実施することになる。このため、市町村の障害福祉担当は昨年からそのための準備に追われている。
一方で、「計画行政」という筋道もかたちがつくられてきた。第二次の介護保険事業計画と高齢者保健福祉計画(これは真面目にやれば第三次の改定計画となる)、エンゼルプランを見ながらの地域子育て支援計画、そして障害者福祉計画。これら三つの計画をこれまでに策定している自治体は、都市部ではほぼ出揃ってきているようだが、町村部ではまだ策定されていないところが多いと思われる。
そして、「地域福祉計画」である。この「地域福祉計画」は、これらの既存の計画を地域から位置付けなおす、そういう「総合計画」である。もちろん各市町村の基本構想や総合計画と整合的に考えられなければならない。
この「地域福祉計画」の中心的な課題は、「地域福祉の担い手づくり」であり、「福祉コミュニティの自律的形成支援」である、といって差し支えない。社会福祉法の第4条では、次のように規定している。
「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び者起伏しに関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。」
この規定の特色は、「地域住民」を地域福祉推進の主体として積極的に位置付けている点である。これは一種の理念的規範である。が、しかし、将来に亘って実現を目指すべき理念的規範である。われわれは、それを着実に現実にすることを目指したいと思っている。「地域福祉の主体的担い手としての地域住民」を可能にすること、そのための政策手段の発見。
その際に、この地域住民をもっと幅広く定義しておくことも必要だ。それは企業市民や通勤市民、遠隔地からの支援者たちも、ここにいう「地域住民」として考えるべきだと思うからである。
もうひとつ、市町村計画ではあるが、広域的な協力、連携、協働の仕組みを組み込むことも避けられない。特に医療や、精神障害などへの専門家の組織的支援を考えた場合、ひとりひとりの自立支援プランの構築と、そのケア・カンファレンスや地域ケア会議の展開のためには、広域的な支援プランが欠かせない。
現状はこの理念にはほど遠い。依然として住民の中にある過度の行政依存意識との戦いが、ソフトに展開されなければならない。そして、現在の多数派を形成している福祉や医療の専門家集団、そして研究者集団との駆け引きも重要な戦線である。
「地域福祉計画」を策定し、それを実効あるものとして展開するためには、まず、自立的に活動している人々の問題意識を確実に把握するリサーチが必要だ。その上で、その課題意識や活動指針を、まず、先端で活動している人々の中で共有することが求められる。このような活動者が人口の1%いるだろうか。1%いたら、それは貴重な資源である。この比率を2%にし、5%にしていくことが具体的な推進計画であり、活動計画である。それとあわせて、地域を代表しうる複数の校区や大字などの地区をモデル地区として設定し具体的な活動をつくることも必要だ。理念と経験を可視化するわけである。福祉や保健の領域も超えて教育委員会や産業課など、この面での総合化も求められる。
いずれにしても、市町村はこの地域福祉計画策定に早めに取り組むべきだ。特に市町村合併の議論が進んでいるところほどこの取り組みの有無とその成熟度が地域の、新市町村の、将来を決めるにもなりうるとも考えられるからである。
ところで、このような地域福祉計画を策定するにあたって、是非とも必要と考えられることのひとつは、政策を策定するための「調査」あるいは「実態調査」であり、ニーズ調査である。「政策をつくるための調査」は、しかしまだまだ十分に行われているとは思われない。「調査」は「調査」、「政策化」は「政策化」という場合が多いように見受けられるというのが、残念ながら実情のようだ。